今年最後のブログ、1年の回顧を書こうと思っていたのですが、とんでもない記事が出たので、これについて書きます。30日付地方紙各紙は、共同通信配信の次のような記事を掲載しました。
<福島原発事故で天皇避難打診 当時の民主・菅政権 宮内庁断る「あり得ない」 悠仁さま京都行きも検討>(30日付東京新聞2面トップの見出し)
以下、記事から抜粋します(表記=絶対敬語は、不本意ながら、記事のままとします。改行・太字は引用者)。
<東京電力福島第1原発事故の直後、当時の民主党の菅直人政権が、天皇在位中の上皇さまらに京都か京都以西に避難するよう非公式に打診していたと、元政権幹部が29日までに証言した。
宮内庁側は上皇さまのご意向として「国民が避難していないのに、あり得ない」と伝え、政権側は断念したという。
複数の元官邸幹部は皇位継承資格者である秋篠宮さまの長男悠仁さまの京都避難も検討したと明かした。
原発事故から来年で10年。上皇さまの被災者へ寄り添う姿勢が改めて浮かんだ。
菅元首相は共同通信の取材に「頭の中で考えていたことは事実だ。だが、私の方から陛下(当時)に打診したり、誰かに言ったりしたことはない」と述べた。
元政権幹部の証言によると、菅氏から依頼を受け、人を介して宮内庁の羽毛田信吾長官(当時)に上皇さまのご意向を内々に尋ねた。当時の宮内庁関係者は「お断りした覚えはある」と証言。上皇さまへ伝えたかどうかは「事後的にお伝えしたことはあったかもしれない」とした。>
記事が事実だとすれば、菅直人政権は住民に対しては「20~30㌔なら直ちに人体に影響はない」(枝野幸男官房長官=当時、現立憲民主党代表)と言って避難指示を怠りながら、天皇と「皇位継承資格者」は京都へ避難させようとしていた(少なくとも菅直人首相はそう考えていた)わけです。開いた口がふさがりません。
「国民」の安全・健康・生命はおざなりにして責任を持たないが、天皇(天皇制)を守るためには細心の注意を払う。それが日本の政権、国家権力の実態であることを改めて浮き彫りにしています。
それが自民党政権だけでなく、「野党」であった民主党政権(当時)も同様であったところに、日本の病巣の深刻さが表れています。民主党政権の失態は数々ありますが、これはその中でも特筆すべき愚行といえるでしょう。
同時に見逃すことができないのは、この記事(共同通信、それを掲載した各紙も同列)がいま唐突に現れた意味、その政治的狙いです。
客観的きっかけがあったわけではないこの記事は、何者かによるリークと思われます。冒頭「元政権幹部が証言した」とありますが、必ずしもそこがリーク元とは限りません。
この記事の主眼は、「上皇さまの被災者へ寄り添う姿勢が改めて浮かんだ」、すなわち天皇の美化です。
それは10年を迎える東日本大震災をあらためて天皇制賛美と結び付ける意図もありますが、それだけではなく、今日のコロナ禍とも無関係ではないでしょう。宮内庁は29日、天皇徳仁のビデオメッセージを1日に公開すると発表しましたが、この記事はそれと連動しているように思えます。
リークは宮内庁によるものと私は考えますが、その当否はともかく、この記事が宮内庁とメディアが一体となって、コロナ禍でますます影が薄くなっている天皇(制)の存在をアピールしようとしていることは確かです。
コロナ禍であっても、いいえ、あらゆる人権侵害・差別の根絶が求められているコロナ禍だからこそ、日本の差別構造の根幹である天皇制の見直し・廃止は急務です。それは2021年でも引き続き重要な課題であることをこの記事は逆に示していると言えるでしょう。(1日の「天皇のビデオメッセージ」の問題点については2日に書きます)
※今年も拙ブログをお読みいただき、誠にありがとうございました。
今年も「明日」へ明るい確かな展望がもてないまま年を越すことになりますが、引き続き、自分にできることを自分なりにやるしかない、という思いで2021年に臨もうと思っています。
今後ともよろしくお願いいたします。皆さま、お体大切に。