

新型コロナ(オミクロン)感染の元凶である在日米軍基地。その米軍関係者の外出制限が、31日で解除されました。夜間(午後10時~午前6時)の外出禁止も撤廃。感染がまったく収まっていない中で、またしても米軍の横暴な振る舞いがまかり通ることになります。
そもそも米軍基地のクラスター化で、日米地位協定の抜本改定が急務であることが改めて明確になったにもかかわらず、岸田文雄政権はそれを拒否し続けてきました。その上に今回の制限解除。日米安保条約に基づく日本政府の対米従属は際限がありません。
米軍の外出制限解除にはまったく正当性がありません。
外務省は28日、「米軍側から連絡があった」と発表しましたが、その根拠は明らかにせず、ただ、「基地内の感染者数の減少傾向などを踏まえ、日米間で協議した上で決めた」(29日付中国新聞=共同)としているだけです。
林芳正外相は1月20日の参院本会議で、在日米軍関係者のコロナ感染者が19日午後現在、6350人にのぼり、そのうち在沖米軍関係者は4141人(65%)であることを明らかにしました(21日付琉球新報)。
この実態はその後どう変わったのか、現在の感染者はどのくらいなのか。そうした基本的データを何ら示すことなく、「減少傾向」だと言っても、むなしく響くだけです。
米軍の外出制限解除に大きな不安を持ち、制限の継続を切望していたのが、沖縄の人々です。
沖縄県幹部は、「(感染拡大が)ぶり返されたら困る。日本政府が米軍に(延長するよう)言ってほしい」(29日付琉球新報)と語り、米軍基地感染の発端となったキャンプ・ハンセンを抱える金武町の仲間一町長も、「コロナの収束がまだ見通せない中で残念だ」(同)と不安を隠せませんでした。
玉城デニー知事は20日の段階で、「感染拡大が収束するまで」米軍の外出制限を続けるよう要請していました。そして「解除」が強行される前日の30日にも、「(県内は)まん延防止等重点措置期間中で、米軍基地も、まだまだ外出制限措置が解除できる状態にあるとは言えない」と重ねて指摘し、「時期尚早とするコメントを発表」(31日付沖縄タイムス)しました。
こうした沖縄の声は、日米両政府・在日米軍に一顧だにされず、踏みにじられました。
日米両政府だけではありません。「本土」メディアは、沖縄の声をどれほど伝え、米軍の制限解除の不当性を追及したでしょうか。
ところで、米軍の外出制限解除が強行された31日は、自衛隊によるコロナワクチン接種が東京で再開した日でした。これは偶然でしょうか。
そもそも、なぜ民間の医師・看護師ではなく、自衛隊という軍隊がワクチンを接種しなければならないのでしょうか。そこには、市民が望むワクチン接種を利用して、憲法違反の軍隊である自衛隊を市民社会へ浸透させようとする政治的思惑があることは明白です。
日米安保条約の深化によって一体化を強めている在日米軍と自衛隊。米軍の理不尽な外出制限解除を、自衛隊のワクチン接種で隠す。案の定、NHKはじめメディアは自衛隊のワクチン接種に集中し、米軍の制限解除問題はほとんどスルーしています。
ここにも、コロナ禍における米軍と自衛隊の一体化・連携プレーがあるのではないでしょうか。
コロナ感染第6波の重大な発生源が在日米軍であることが明らかになっている中、外務省は11日、自民党外交部会に対し、「在日米軍施設区域における感染者数」(10日午後現在)を明らかにしました(11日の朝日新聞デジタル)。
それによると、全国の米軍基地感染者の総数は3638人。そのうち沖縄県内の基地が2302人。全体の63・3%にのぼっています。
外務省が明らかにした米軍基地別の感染者数(10日現在)は次の通りです。
【沖縄】(2302人)
▶キャンプ・ハンセン362人(写真左)▶嘉手納飛行場274人▶キャンプ・フォスター(瑞慶覧)227人▶普天間飛行場102人▶キャンプ・キンザー(牧港)89人▶キャンプ・コートニー38人▶キャンプ・シュワブ32人▶トリイ通信施設17人▶ホワイト・ビーチ7人▶キャンプ・レスター(桑江)2人▶北部訓練場1人▶所属確認中1151人
【沖縄以外】(1336人)
▶岩国飛行場(山口県、写真中)518人▶横須賀海軍施設(神奈川県)245人▶三沢飛行場(青森県)183人▶厚木飛行場(神奈川県)109人▶横田飛行場(東京都)93人▶佐世保海軍施設(長崎県)86人▶キャンプ富士(静岡県)53人▶キャンプ座間(神奈川県)49人
この一覧で改めて分かるのは、沖縄にいかに米軍基地が集中しているかということです。
米軍基地感染者全体の63・3%が沖縄の基地であることは、米軍専用施設の約70%が沖縄に集中していることの反映に他なりません。
基地別の感染者をみても、最も多いのは岩国飛行場ですが、2番目(キャンプ・ハンセン)、3番目(嘉手納飛行場)、5番目(キャンプ・フォスター)など、上位は沖縄に集中しています。
沖縄に米軍基地が集中しているのは、米軍戦略とともに、「本土」で反対運動が起こった基地を沖縄に持ってきた結果です。これが沖縄に対する「構造的差別」です。
米軍基地の集中は沖縄を再び前線基地にしようとするものですが、「平時」でも軍事基地が感染症拡大の元凶になる危険を沖縄が集中的に被っていることが、コロナ禍で浮き彫りになっています。
それだけではありません。
沖縄の玉城デニー知事はすでに2日の記者会見で、県内で「オミクロン株」感染が広がっていることについて、「米軍が要因となったのは間違いない。米国の状況を日本に、沖縄に持ち込むな」と「強い憤りを表明」し、「感染対策の障壁となる日米地位協定の改定を日米両政府に求めた」(3日付琉球新報、写真右)のです。
しかし、日本政府はこの沖縄の声にまったく耳を貸そうとしませんでした。
日米両政府が米兵らの「行動制限」で合意したのは、岩国基地をはじめ沖縄以外の「本土」の米軍基地でも感染が広がっていることが問題になってきた6日のことでした。
松野博一官房長官が記者会見で、「在日米軍基地から感染が拡大したとの見方について…「(要因の)一つである可能性がある」との認識を初めて示した」(12日付沖縄タイムス)のは11日です。
沖縄県庁関係者が、「「政府は…問題が沖縄以外に飛び火し、ようやく動いただけではないか」と冷ややかに語った」(12日付沖縄タイムス)のは当然でしょう。
沖縄が悲痛な声を上げても聞こうともせず、「本土」で騒ぎが大きくなると動き出す。これこそ、米軍基地を沖縄に集中させたのとまったく同様の「構造的差別」に他なりません。
在日米軍基地がコロナ感染拡大の元凶になっているのは、日米安保条約・地位協定が根源であり、沖縄がその被害を集中的に受けていることは、沖縄に対する「構造的差別」の再生産に他ならないことを、「本土」の日本人は肝に銘じる必要があります。
「おとなしい日本の子ども 議論避ける風潮変えよう」―こういう見出しの、長谷川眞理子・総合研究大学院大学長の論稿が年末の中国新聞(12月29日付)に載りました。要旨(抜粋)は次の通りです。
< 日本の子どもたちはおとなしい。保育園児のような小さい子どもも、思春期の中学生たちも、ともかくおとなしいと感じる。誰と比べてかというと、欧米の子どもたちだ。おとなしいとは、よく大人の言うことを聞くので制御しやすい、という意味である。
保育園児たちが、保育士さんらに連れられて街中を散歩している風景をときどき見る。子どもたちは、みんなで手をつないで歩き、車など全く来ない静かな場所でも、みんなで一斉に手を挙げて道を渡る。
欧米では、こんな光景は見たことがない。どの子も、ずっと勝手に動いている。小さな子どもの御しにくさと、保育士1人当たりが面倒を見る子どもの数とは、反比例するのだと思う(長谷川氏によれば、日本の基準は保育士1人あたりの担当は、3歳児で20人、4歳児なら30人―引用者)。
ドイツの友人が、こんなことはドイツでは不可能だと言って驚いていた。フランス人やスウェーデン人の知り合いは皆、はなから「無理、無理」と言う。
日本の学生は欧米の学生に比べて大変に静かだ。明らかに発言することが抑制されている。
日本財団が行ったアジア・欧米9カ国の18歳意識調査(2019年)では、自分は責任ある社会の一員だと思うか、将来の夢はあるかなど全項目で、日本は最低の数値である。
「自分の国に解決したい社会課題があるか」という問いに「ある」と答えた日本の若者は46・4%で半分に満たない。他の国々はほぼ70%以上だ。「社会課題について周りの人と積極的に議論しているか」という質問では、イエスと答えた日本人はたった27・2%なのだ。他の国々はだいたい70~80%。>
保育園児から大学生まで、「日本の子ども」たちが、いかに「おとなしい」か、制御しやすいか、議論を嫌うかという興味深い指摘です。共感しながら、同時に思いました。「おとなしい」のは子どもたちだけだろうか。
コロナ禍、欧州各国では、政府による規制強化、ワクチンの事実上の強制に対し、大規模な抗議デモが起こっています。しかし、日本でコロナ・ワクチン問題でデモが行われたという報道はあったでしょうか。ワクチンに対する見解は様々ですが、それとは別に、国家による事実上のワクチン強制に反対の声が上がるのは当然でしょう(写真左はイタリア、中はフランスのデモ)。
昨年11月、オーストリア・ウィーンで、「規制強化とワクチン接種義務化に反対する数万人規模のデモ」に遭遇したある日本人研究者が、こうレポートしています。
<「自由」の文字が書かれた多くの横断幕が、この巨大なデモの真剣さを証言している。…若い年代の集団が、「抵抗」と何度も叫びながら通り過ぎていった。…この数万人を動かしているのが、個人の身体に国家権力が介入することへの至極まっとうな拒否感であることはよく理解できる。デモ隊の中にすでにワクチンを接種した者も多く含まれていたことが後日報じられた。
…たとえ感染爆発であっても、少数派の「自由」を守ろうと「抵抗」する人が何万人もいるヨーロッパでの方が、日本よりもはるかに安心して生活できているように感じる。>(大川大地氏、「靖国・天皇制問題情報センター通信」2021年12月27日号)
そして、在日米軍によるコロナ感染の爆発的拡大。
日米安保条約・地位協定の下、日本市民の健康・生命を顧みず、傍若無人の振る舞いを続ける米軍・米政府。その横暴にまともに抗議もせず、「地位協定改定」すら要求しない日本政府。それこそ「数万人規模のデモ」が起こってもおかしくありません。が、日本ではそのような怒りの抗議デモは起こっていません。
おとなしくて制御しやすいのは、「日本の子ども」よりむしろ、「日本のおとなたち」ではないでしょうか。子どもたちの「おとなしさ」は、「おとなたち」の姿の反映に他ならないでしょう。
なぜ日本人は「おとなしい」のか、何が「おとなしく」させているのか。究明する必要があります。そして、怒るべきことに正当に怒り、国家権力にとって制御しにくい市民になることが、日本人の重要な課題ではないでしょうか。
2022年が始まりましたが、世界はけっして明るくありません。コロナ禍・紛争による貧困で、とりわけ犠牲になっているのは、子どもたちです。
< コロナ貧困の子ども 1億人増 ユニセフ史上「最大の脅威」
国連児童基金(ユニセフ)は8日、新型コロナウイルス流行により、さまざまな形の貧困状態に陥った子どもが世界で推計1億人増えたとの報告書を発表した。
報告書は、経済面だけでなく、教育や健康、衛生などの面で不十分な状態を含めて「貧困」と位置付けた。こうした状態にある子どもは、2019年比で約10%増え、計約11億人に上ると推計。
フォア事務局長は「今日ほど子どもを最優先するアプローチが重要視されることはない」と強調。>(2021年12月10日付沖縄タイムス=共同から抜粋)
< アフガン飢餓深刻 子ども100万人命の危険 タリバンへの制裁で経済危機
アフガニスタンでタリバンが政権を掌握し15日で4カ月。ユニセフによると少なくとも100万人の子どもが重度の栄養失調による死の危機に直面している。
ユニセフは、同国人口約4千万人の半数以上に当たる約2300万人が深刻な食料不足に直面しており、5歳以下の320万人が年内にひどい栄養失調に陥ると試算。うち100万人が緊急に手当てしなければ死亡する恐れがあるとしている。
ユニセフは、食料を得ようと持参金目当てに娘を渡す家族が報告されているとして「児童労働や児童婚を強制される重大な危険がある」と警告。>(12月15日付中国新聞=共同から抜粋)
アフガンは、アメリカなどの資産凍結による経済危機に加え、長い深刻な干ばつに襲われており、食料危機をいっそう深めています(写真右は干ばつの状況=「ペシャワル会報」12月8日号より)。
さらにアフガンは、場所によって零下20度まで気温が下がる極寒の季節を迎えており、飢餓と寒さで多くの命が失われる恐れがあります。
11月上旬にアフガンを訪れたWFP(世界食糧計画)のビーズリー事務局長は、英BBCのインタビューでこう訴えています。
「アフガンは地球上でもっとも破局的な状況になっている。…世界の指導者に言いたい。このまま数百万人も亡くなっていいのか」(同上「ペシャワル会報」)
もちろん、「貧困」は日本でも深刻な問題です。日本に住む人の相対的貧困率は15・4%、子どもの貧困率は13・5%、一人親世帯のそれは48・1%にのぼります。
この根底にあるのは、富の偏在です。国際研究報告では、世界上位1%の超富裕層の資産が世界全体の個人資産の37・8%を占めています。日本の富の分布も「非常に不平等」と指摘されています(12月27日付中国新聞=共同)。コロナ禍がこの格差をさらに拡大しています。
こうした現実を正面から受け止めなければならないのは、「世界の指導者」だけではないでしょう。
私たちにはそれぞれの生活があり、それは決して楽ではありませんが、この時代に生きている者として、子どもたち、日本と世界の子どもたちの命を守り、一人でも多くの子どもたちを「貧困」から救い出す、そのためにも格差社会を変革することを、私たち自身の最優先課題にしたいものです。