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アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

コロナ禍の「面会制限」はなぜ今も続くのか

2025年07月18日 | コロナ禍と政治・社会
 

 コロナ禍で行われた病院や施設の「面会制限」。精神科医の高木俊介氏によると、「5類になってちょうど2年の今年5月に全国の大学・日赤病院について調べたところ、昨年9月の調査からほとんど改善されていない」(15日付京都新聞)といいます。なぜなのか?それはどういう意味を持つのか?

 高木氏は「「やめよう、面会制限」再び」と題したコラムでこう指摘します(抜粋)。

<家族や親しい人の死に際に会えない苦悩と悲嘆、家族と会えずに弱っていくお年寄り、家族と縁遠くなるばかりの施設入所している障害者が後を絶たない。

 最期の時には会ってもらっています、と弁解する医療者もいる。逆に言えば、末期にならなければ会えないということだ。日常の当たり前を例外とすることが、医療の常識になってしまった。知らず知らずのうちに、医療を最優先して他を顧みない考えが社会に一般化したかのようだ

 そのようなことが5年間続き、その間に育った新人医療者は、それを当然と考えるようになった。なぜ、煩わしい面会の世話をしなくてはならないのか、私たちだって大変なのだ、と。

 海外では厳しすぎた制限の反省から様々な検証が行われ、面会制限に科学的根拠がないだけではなく、患者や家族の健康に悪影響であるとしている。実際、面会制限の厳しい病院でも感染が起こる。

 根拠のないことを権威ある医者が言えば、それは強制と服従の関係になる。その関係が当たり前になれば、社会全体が権威にかしずくだけの、全体主義的社会になってしまう。>(15日付京都新聞)

 磯野真穂・東京科学大教授(文化人類学)も「面会制限の恒久化」に警鐘を鳴らしています。

 磯野氏の調査では、「ペットは許可だが、孫はダメ」(ある東北地方の緩和病棟)、「病院の受付から退館まで20分、面会時間は10分のみ」(長野赤十字病院)などの例があります。

 磯野氏は、「社会には、明文化しないままに人をある方向に動かす力がある」と警告します(5日京都市内、シンポジウム「ポストコロナを探る:パンデミックは私たちの社会と生活をどう変えたのか」での報告、写真右)

 高木氏と磯野氏が共通して指摘しているのは、根拠がない(非科学的な)ことでも、「権威」あるもの(その最たるものが政府でしょう)が主張すれば、人々をある方向に動かすことができるということ、それが全体主義社会だということです。

 参政党など右翼政党が伸長する背景には、「3・11」という大きな社会的出来事を検証して社会改革に繋げることができず、逆に「ネオコン」を誕生させた経緯があると分析した書籍を紹介しましたが(17日のブログ参照)、「コロナ禍」も同じことが言えるのではないでしょうか。どちらも安倍晋三政権が深くかかわっていたことはけっして偶然ではないでしょう。

 非科学的な「陰謀論」のまん延を食止め、社会の全体主義化を防ぐためにも、「コロナ禍」を科学的に徹底検証し、教訓を導くことが必要不可欠です。

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コロナ禍と戦争―磯野真穂氏の近著に学ぶ

2024年11月07日 | コロナ禍と政治・社会
   

 個人の生活も社会も一変させたコロナ禍。そこで繰り広げられた個人(私)の行動、政府・自治体の政策はどんな意味があったのか―ずっと気になっている問題です。
 磯野真穂氏(人類学者・医療人類学)の近著『コロナ禍と出会い直す』(柏書房2024年6月)は、それに多くの示唆を与えてくれます。

 磯野氏は「コロナ禍のフィールドワークを実施した背景と理由」をこう記しています。

「2020年春、「緊急事態宣言を出さない政府」を批判する人々の声が高まった。私はこの状況に心底驚いた。いや、もっと率直に吐露すると怖かった。緊急事態宣言は、国民の自由を政府が制限する宣言である。そんなことはさせまいと抵抗するのが、抵抗が許されているのが民主主義国家だと信じていた。しかしこの国では、国民が自分たちの自由を制限するようにと声を上げた。しかもその中には、当時の安倍政権に大変に批判的な人たちも多く含まれていた」

 磯野氏の問題提起は多岐にわたっていますが、特に印象的な2点を抜粋します。

「日本文化の型」 3年余り続いたコロナ禍の感染対策は、不登校、失業者、自殺者の増加、看取りの機会の剥奪など、感染対策と引き換えに社会が被った犠牲は看過できない。
 ところが、それに対して何か振り返りがなされたかといえばそうでもなく、5類に移行して1年も経過しないうちに「コロナ」を冠した記事はあまり読まれなくなっていった。
 問題の根本は、「日本文化の型」に起因している。自粛の名の下に行われた感染対策のあり方を眺めると、日本は明文化されない慣習の力によって社会の統合をいまだ図ることのできるユニークな国家であることがわかる。日本はいまだ原始的な側面を残す社会ということだ。

 コロナ禍の「正義」 医療崩壊はしないほうがいいに決まっています。その絶対に反対できない道徳の前に、生活の目的が「コロナにならない・うつさないこと」に集約され、その判断基準のもとに、私たちの日々の行動が、わかりやすい善悪で二分されていっています。
 「コロナにならない・うつさない」という善のためであれば、人権の制限も個人の監視も許すべきだ、そんな空気が世界を覆っています。
 「そんなことを言っている場合ではない」という声がどんどん強まっているからこそ、反対できない道徳が何を奪い去っていくのかを考えねばならないと思うのです。
 私たちがありふれた生活を諦め、これまでの生活の中で決して許されなかったことを許容し、遂にはその生活に慣れる時、私たちはそこで何を手放し、失うことになるのかも想像すべきではないかと思います。
 未来が不確定な時、不安に駆られた私たちはより大きな声の統制を望みます。それは安心を与えてくれるかもしれませんが、その安心は思考停止と表裏一体です。
 「感染拡大を止める」という絶対的な正しさが覆い隠す事柄に目を向けるべきだと思うのです。(緊急事態宣言が出される2日前の2020年4月5日のインタビューより)

 「絶対に反対できない道徳」「わかりやすい善悪による二分」「絶対的な正しさが覆い隠す事柄」…こうした磯野氏の指摘ですぐに脳裏に浮かぶのはウクライナ戦争です。「侵略は許されない」「ロシアは悪」という「善悪二分」論、「絶対的な正しさ」=「正義」によっておこる思考停止と、日常生活の喪失、国家による統合・統制。
 それはまさに、79~93年前の日本の姿でもありました。

 コロナ禍の日本は“戦時体制”だったのだと改めて気づかされました。だからこそ、その実態を現象、政策、統治、思想の各面にわたってしっかり振り返り、教訓化する必要があります。

 日本は侵略戦争・植民地支配の歴史の検証と責任の明確化を放棄して今日に至っています。それが戦争国家の再来につながっています。コロナ禍で同じ愚を繰り返すことはできません。

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コロナー死亡者追悼・後遺症対策は急務

2023年05月08日 | コロナ禍と政治・社会
   

 岸田政権はきょう8日から新型コロナを2類から5類に引き下げます。国が対策から手を引き、患者の自己責任・自己負担が増え、医療従事者の重圧が増す重大な後退です。

 この日を前に、「忘れないで!亡くなった人のことを Withコロナ 誰もが悲しみを語れる社会へ」と題した講演会・討論会が京都市内で行われました。
 龍谷大学社会的孤立回復支援研究センター(黒川雅代子センター長)が主催。ノンフィクション作家の柳田邦男氏が講演し、遺族、医師、弁護士らが討論しました(写真右は閉会後記者団に答える登壇者ら)。
 重要な気付き・学びがたくさんありました。

 第1に、遺族の無念です。

 弟が沖縄で独り在宅死した高田かおりさん。実父が病院をたらい回しされた挙句、陽性と診断されて5日後に亡くなった島田招子さん。その痛切な訴えから、コロナで亡くなった人々、その家族の無念は決して薄らぐことはないと知りました。

 5類への移行で政府はコロナによる日々の死亡者の発表を止めますが、島田さんは「死亡者の発表で、亡くなった父を偲んでいた。それまでもこの国は奪うのか」、高田さんは「臭いものにフタをしようとするのか」と、ともに怒りをあらわにしました。

 こうした思い・怒りは、当事者でなければ、その声を直接聴くことがなければ分からないと、自分の立場性を知らされました。

 第2に、追悼の必要性です。

 コロナで亡くなった人は、発表では6日現在7万4679人。しかしこれにはコロナによる医療逼迫のために亡くなった人や自死者は含まれていません。
 これほど多くの犠牲者を出していながら、国はその追悼のための手立てをなんら行っていません。イギリスなどでは政府が遺族の意見を聞いて追悼碑の建設を検討しているそうです。

 これも指摘されて私自身ハッとしたことです。
 柳田氏は「死の社会化」という思想の重要性を強調しました。コロナによる死を個人的なこととするのではなく社会的な問題と捉えること。
 島田さんは言いました。「首相はコロナで何回か記者会見したが、まず「日の丸」には頭を下げても、亡くなった人へのお悔みを言ったことがない」

 討論の中で、パネラーの医師から「この場でも追悼しましょう」という提案がなされ、予定になかった「黙とう」が参加者全員で行われました。

 第3に、後遺症の深刻さです。

 オンラインで討論に加わって伶さん(仮名)は昨年3月に感染し、いまだに強い後遺症に苦しんでいます。全身の倦怠感はじめ体のさまざまな所が痛みます。
 怜さんの話でとりわけ深刻だと思ったのは、いろいろな病院に行っても、後遺症についての知識が医師自身に不足していることです。そのため言う事、処方もバラバラ。真剣に対応する医師は多くない、といいます。

 後遺症の問題は、以前から重大だと思ってきましたが、一向に改善されていない現状がうかがえました。これは過去の問題ではなく現在進行形、さらには今後ますます深刻になる問題です。

 亡くなった人々を忘れない、追悼するためにも、後遺症の対策を国、医師会が早急に強化すること、させることの重要性を再認識しました。

 第4に、検証の必要性・重要性です

 遺族の高田さんや島田さんは「なんで、どうして、という思いが消えない」と何度も訴えました。なぜ自宅で独りで死ななければならなかったのか、なぜ病院をたらい回しされて死んだ挙句、遺体にも触れられず「骨」だけが渡されなければならなかったのか。

 なぜこれほどの死者・患者が出たのか、これほど後遺症に苦しまねばならないのか。国のコロナ対策は何が問題だったのか、今も何が問題なのか。それが検証されていない。それを検証して対策に生かさなければ、また同じ犠牲を繰り返すことになる。それは登壇者・集会参加者全員の思いでした。

 重大な事故・災害・過ち・失敗を検証しない。学ばない。都合の悪い事にはフタをして、弱者を切り捨てていく。
 侵略戦争・植民地支配にはじまって、水俣病、東日本大震災・東電原発事故、入管死亡(殺人)…そして今度はコロナ。
 この国(政府・政治・社会)の根本的欠陥に、歯止めをかけねばなりません。


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「コロナ」で怖い後遺症、岸田政権は無為無策

2022年07月19日 | コロナ禍と政治・社会
   

 コロナ感染は第7の大きな波を迎えています。受診したくても医療機関につながらない状況が生じており、事態は猶予なりません。しかし岸田政権は、「重症者・死亡者は少ない」として抜本的な対策をとろうとしていません。

 さらに重大なのは、岸田政権がまったく放置している問題があることです。後遺症対策です。新株の後遺症の特徴はとりわけ「倦怠感」が長期化することといわれています。

 ドイツでは、コロナ後遺症を「新しい国民病」と位置付け、対策を強化しています(12日のNHK「キャッチ 世界のトップニュース」)。

 アメリカでは後遺症の原因・対策の研究が進められ、日本でも後遺症外来の専門医からは早急な対策を求める声があがっています(6月11日、17日のブログ参照)。

 全国の国公立大学病院で初めて「コロナ・アフターケア外来」を開設(2021年2月)したのは岡山大病院です。副病院長の大塚文男医師が、中国新聞のインタビューに答え後遺症の原因・対策について語り、警鐘を鳴らしています(6日付、写真右)。要点を抜粋します(カッコは記者の質問)。

(なぜ後遺症専門外来を?)コロナ感染後、快方に向かったがどうもしっくりこない。そう訴える患者が目立ち始め、このままでは帰せないと若手医師から声が上がったのがきっかけです。後遺症の存在が確認された2020年秋に準備を始めました。

(症状の特徴や傾向は?)倦怠感が最多。昨年末から広がったオミクロン株はそれまでの嗅覚異常や脱毛が大きく減り、せきや呼吸困難が増えました。不安や睡眠障害が欧米に比べてかなり多いのも特徴です。

(後遺症の原因は?)大まかに言えば三つ。心身の疲労、デルタ株で目立った過剰な免疫反応「サイトカインストーム」、そして血栓です。免疫が暴走して臓器を攻撃したり、小さな血栓が体のいろいろなところで影響を与えているようです。

(後遺症は治りますか?)倦怠感を訴えた患者は3カ月間でピーク時の4割程度にまで症状は改善しますが、治療継続は必要です。嗅覚異常と倦怠感は回復しにくい一方、デルタ株で多かった脱毛は数カ月で回復することも分かってきました。

 ただ注意が要るのが筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群に進展する可能性。夜も眠れず、昼も仕事ができない難治性のものです。それに当たるケースが16%ありました。当初の想定は3%。見逃せない多さです。

(診療で気を付けていることは?)後遺症は周囲から見えにくく、詐病を疑われ傷つく患者もいます。時間をかけて信頼関係を築くことが非常に大切だと感じます。

(コロナの教訓は?)コロナは急性期から後遺症まで一貫した対応が必要です。医療の世界は専門ごとに研究が進んできましたが、英知を結集して対応する重要性が今こそ高まっていると感じます。>(6日付中国新聞)

 見えにくく長期化し、仕事や家庭生活に大きな影響を及ぼす倦怠感は、一過性の高熱より深刻ともいえます。

 大塚医師が指摘する「後遺症外来」の拡充、原因・治療の研究、さらに患者の生活支援という3つの分野で、後遺症対策を直ちに抜本的に強化することが喫緊の課題です。

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「コロナ後遺症」研究の最前線と岸田政権の無策

2022年06月17日 | コロナ禍と政治・社会
    

 通常国会が閉会した15日夕、岸田文雄首相は記者会見で内閣に「感染症危機管理庁」を設置し、専門組織としてアメリカのCDC(疾病対策センター)に倣って「日本版CDC」を創設すると述べました。

 参院選に間に合うように「専門家会議」に報告書を急がせ、「コロナ対策」をアピールしたものですが、これで岸田政権のコロナ無策を覆い隠すことはできません。驚いたことに1時間の会見中、岸田氏は「コロナ後遺症」については一言も触れませんでした。記者たちも誰も質問しませんでした。

 「コロナ対策」において後遺症の研究・対策は不可欠であり、現場の医師は今後ますます重大な事態になってくると警鐘を鳴らしています(11日のブログ参照)。

 欧米諸国はすでにその対策に力を注いでいます。たとえば「CDC」の本家アメリカは、「コロナ感染者の5人に1人はなんらかの後遺症に苦しんでいる」との分析の下、研究をすすめています。

 その中で、後遺症で認知機能障害が起きるのは、コルチゾールというホルモンの血中濃度が大幅に低下するためではないかというところまで突き止めています。

 また、長期にわたって後遺症を訴えた人の75%は感染した時に入院治療を受けていない人だったことも分かっています。

 研究に携わっているイエール大学医学部の岩崎明子教授(免疫学)(写真右)は、「全く症状が出なくても、2~3カ月するとロングコビッドみたいな症状が出だす人もいる」とし、「無症状・軽症でもコロナ後遺症になるリスク」の研究をすすめてきました。

 その結果、従来のワクチンが重症化防止を主眼に開発されたにのに対し、感染自体を食い止めるワクチンが必要だという結論に達しました。そこで考えられているのが、鼻・喉の粘膜に抗体をつくる「経鼻ワクチン」です。

 岩崎教授は、「経鼻ワクチンを使うと感染をすべて止めることができる、本当にかからなくてすむと私たちは期待しています」と述べています。(以上、14日のNHK国際報道2022「コロナ後遺症研究の最前線」より)

 「経鼻ワクチン」ができれば画期的です。研究の進展を期待したいものです。

 こうしてアメリカでは「コロナ後遺症」を「ロングコビッド」として重視し、原因・治療の研究を進めています。
 日本でこうした研究が行われているという話を聞いたことがありません。「日本版CDC」と名前だけアメリカを真似た“入れもの”をつくっても対策がすすむわけでないことは明らかです。

 多くの後遺症患者を診ている平畑光一医師が指摘したように、①後遺症を診る病院の拡充。そのための診療報酬の引き上げ②患者生活のサポート。とくに傷病手当金の出ない自営業者・フリーランスらの支援―は政府の喫緊の責任です(11日のブログ参照)。

 安倍・菅・岸田と3代にわたる自民党政権の「コロナ対策軽視」に明確な審判を下さなければ、日本のコロナ・感染症対策の遅れは取り戻せません。
 

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「コロナ後遺症」無策は自民政権の重大失政

2022年06月11日 | コロナ禍と政治・社会
   

 岸田政権は10日から外国人ツアー客の入国を原則解禁しました。政府のコロナ規制の緩和に伴って、観光地の人出は一気に増えました。それと前後して、発表される「新規感染者」数は下降しています。まるでコロナ禍は峠を越えたかのようですが、はたしてそうでしょうか。

 そもそも「新規感染者数」はPCR検査の件数によって大きく変動します。検査数が減れば「感染者数」も減ります。多くの新規感染者が発表されていた時期に比べ、現在の検査数はどうなのでしょうか。十分な検査が行われた上での感染者の減少なのか、疑問は残ります。

 一方、疑問ではなく確かなことがあります。それは多くの人が重い「コロナ後遺症」に苦しみ、生活破壊さえ起こっている実態です。

 NHKクローズアップ現代「急増“オミクロン後遺症”最前線からの報告」(7日、写真も)によると、オミクロン株の後遺症の特徴は、陰性になったあとも、のどの激痛、強いけん怠感、止まらないせきなど、重い症状が長く続くことです。

 高校生2年のさやかさん(仮名)は去年4月に感染。感染自体は軽症でしたが、けん怠感、めまいなど起き上がれないほどの症状が1年以上続き、結局今年、スポーツ推薦で入学した高校をやめざるをえませんでした。

 40代の女性は今年1月に感染。やはり軽症でしたが、その後、極度のけん怠感と「箸が鉄アレイに思える」ほどの関節痛のため、3月に退職を余儀なくされました。高校生の娘と両親の4人家族の大黒柱でしたが、収入が途絶え、補償もなく、途方に暮れています。

 後遺症患者を3000人以上診てきた平畑光一医師は、「感染者の10人に1人が後遺症になると言われているので、全国レベルでは100万人近くが後遺症になっている可能性がある」と言います。

 平畑医師が診た後遺症患者3480人のうち、1年以上通院している人が644人(19%)、2年以上は77人(2%)。また、1012人(29%)が休職、179人(5%)が退職・解雇を余儀なくされました。

 京都大学の上野英樹教授は、血液検査の結果、「オミクロン株は従来株より後遺症が長引く可能性がある」と指摘します。

 聖マリアンナ医科大学の佐々木信幸医師は、「これから今まで経験したことがない(後遺症の)大きな波が来るのではないか」と警鐘を鳴らします。

 感染自体は軽症でも、起き上がれないほどのけん怠感など重い症状が、年齢に関係なく長期にわたって続き、結果、休職・退職を余儀なくされ、生活が破壊されていく―それがコロナ後遺症です。

 対策には何が必要か。平畑医師は、①後遺症を診る病院の拡充。そのための診療報酬の引き上げ②患者生活のサポート。とくに傷病手当金の出ない自営業者・フリーランスらの支援③周囲の理解―の3点を挙げました。

 後遺症対策が放置されているのは、自民党政権が軽視しているからにほかなりません。
 たとえば、後遺症研究の国家予算をみると、アメリカ(国立衛生研究所)は約1300億円、イギリス(国立衛生研究所)が約30億円に対し、日本(厚労省)はわずか2億円です。アメリカの0・2%にすぎません(2021年11月2日「クローズアップ現代プラス」)。

 「コロナ」では、新規感染者数、医療体制などに注目が集まりがちですが、表に出てこない(報道されない)後遺症の実態は深刻です。直ちに対策を抜本的に強化することは政権の喫緊の責任です。


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米軍外出制限解除、またも沖縄の声無視

2022年02月01日 | コロナ禍と政治・社会

    

 新型コロナ(オミクロン)感染の元凶である在日米軍基地。その米軍関係者の外出制限が、31日で解除されました。夜間(午後10時~午前6時)の外出禁止も撤廃。感染がまったく収まっていない中で、またしても米軍の横暴な振る舞いがまかり通ることになります。

 そもそも米軍基地のクラスター化で、日米地位協定の抜本改定が急務であることが改めて明確になったにもかかわらず、岸田文雄政権はそれを拒否し続けてきました。その上に今回の制限解除。日米安保条約に基づく日本政府の対米従属は際限がありません。

 米軍の外出制限解除にはまったく正当性がありません。

 外務省は28日、「米軍側から連絡があった」と発表しましたが、その根拠は明らかにせず、ただ、「基地内の感染者数の減少傾向などを踏まえ、日米間で協議した上で決めた」(29日付中国新聞=共同)としているだけです。

 林芳正外相は1月20日の参院本会議で、在日米軍関係者のコロナ感染者が19日午後現在、6350人にのぼり、そのうち在沖米軍関係者は4141人(65%)であることを明らかにしました(21日付琉球新報)。

 この実態はその後どう変わったのか、現在の感染者はどのくらいなのか。そうした基本的データを何ら示すことなく、「減少傾向」だと言っても、むなしく響くだけです。

 米軍の外出制限解除に大きな不安を持ち、制限の継続を切望していたのが、沖縄の人々です。

 沖縄県幹部は、「(感染拡大が)ぶり返されたら困る。日本政府が米軍に(延長するよう)言ってほしい」(29日付琉球新報)と語り、米軍基地感染の発端となったキャンプ・ハンセンを抱える金武町の仲間一町長も、「コロナの収束がまだ見通せない中で残念だ」(同)と不安を隠せませんでした。

 玉城デニー知事は20日の段階で、「感染拡大が収束するまで」米軍の外出制限を続けるよう要請していました。そして「解除」が強行される前日の30日にも、「(県内は)まん延防止等重点措置期間中で、米軍基地も、まだまだ外出制限措置が解除できる状態にあるとは言えない」と重ねて指摘し、「時期尚早とするコメントを発表」(31日付沖縄タイムス)しました。

 こうした沖縄の声は、日米両政府・在日米軍に一顧だにされず、踏みにじられました。
 日米両政府だけではありません。「本土」メディアは、沖縄の声をどれほど伝え、米軍の制限解除の不当性を追及したでしょうか。

 ところで、米軍の外出制限解除が強行された31日は、自衛隊によるコロナワクチン接種が東京で再開した日でした。これは偶然でしょうか。

 そもそも、なぜ民間の医師・看護師ではなく、自衛隊という軍隊がワクチンを接種しなければならないのでしょうか。そこには、市民が望むワクチン接種を利用して、憲法違反の軍隊である自衛隊を市民社会へ浸透させようとする政治的思惑があることは明白です。

 日米安保条約の深化によって一体化を強めている在日米軍と自衛隊。米軍の理不尽な外出制限解除を、自衛隊のワクチン接種で隠す。案の定、NHKはじめメディアは自衛隊のワクチン接種に集中し、米軍の制限解除問題はほとんどスルーしています。
 ここにも、コロナ禍における米軍と自衛隊の一体化・連携プレーがあるのではないでしょうか。

 


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沖縄のコロナ感染爆発は構造的差別の表れ

2022年01月13日 | コロナ禍と政治・社会

    

 コロナ感染第6波の重大な発生源が在日米軍であることが明らかになっている中、外務省は11日、自民党外交部会に対し、「在日米軍施設区域における感染者数」(10日午後現在)を明らかにしました(11日の朝日新聞デジタル)。

 それによると、全国の米軍基地感染者の総数は3638。そのうち沖縄県内の基地が2302。全体の63・3にのぼっています。

 外務省が明らかにした米軍基地別の感染者数(10日現在)は次の通りです。

【沖縄】(2302人)

▶キャンプ・ハンセン362人(写真左)▶嘉手納飛行場274人▶キャンプ・フォスター(瑞慶覧)227人▶普天間飛行場102人▶キャンプ・キンザー(牧港)89人▶キャンプ・コートニー38人▶キャンプ・シュワブ32人▶トリイ通信施設17人▶ホワイト・ビーチ7人▶キャンプ・レスター(桑江)2人▶北部訓練場1人▶所属確認中1151人

沖縄以外】(1336人)

▶岩国飛行場(山口県、写真中)518人▶横須賀海軍施設(神奈川県)245人▶三沢飛行場(青森県)183人▶厚木飛行場(神奈川県)109人▶横田飛行場(東京都)93人▶佐世保海軍施設(長崎県)86人▶キャンプ富士(静岡県)53人▶キャンプ座間(神奈川県)49人

 この一覧で改めて分かるのは、沖縄にいかに米軍基地が集中しているかということです。
 米軍基地感染者全体の63・3%が沖縄の基地であることは、米軍専用施設の約70%が沖縄に集中していることの反映に他なりません。
 基地別の感染者をみても、最も多いのは岩国飛行場ですが、2番目(キャンプ・ハンセン)、3番目(嘉手納飛行場)、5番目(キャンプ・フォスター)など、上位は沖縄に集中しています。

 沖縄に米軍基地が集中しているのは、米軍戦略とともに、「本土」で反対運動が起こった基地を沖縄に持ってきた結果です。これが沖縄に対する「構造的差別」です。
 米軍基地の集中は沖縄を再び前線基地にしようとするものですが、「平時」でも軍事基地が感染症拡大の元凶になる危険を沖縄が集中的に被っていることが、コロナ禍で浮き彫りになっています。

 それだけではありません。

 沖縄の玉城デニー知事はすでに2日の記者会見で、県内で「オミクロン株」感染が広がっていることについて、「米軍が要因となったのは間違いない。米国の状況を日本に、沖縄に持ち込むな」と「強い憤りを表明」し、「感染対策の障壁となる日米地位協定の改定を日米両政府に求めた」(3日付琉球新報、写真右)のです。

 しかし、日本政府はこの沖縄の声にまったく耳を貸そうとしませんでした。
 日米両政府が米兵らの「行動制限」で合意したのは、岩国基地をはじめ沖縄以外の「本土」の米軍基地でも感染が広がっていることが問題になってきた6日のことでした。
 松野博一官房長官が記者会見で、「在日米軍基地から感染が拡大したとの見方について…「(要因の)一つである可能性がある」との認識を初めて示した」(12日付沖縄タイムス)のは11日です。
 沖縄県庁関係者が、「「政府は…問題が沖縄以外に飛び火し、ようやく動いただけではないか」と冷ややかに語った」(12日付沖縄タイムス)のは当然でしょう。

 沖縄が悲痛な声を上げても聞こうともせず、「本土」で騒ぎが大きくなると動き出す。これこそ、米軍基地を沖縄に集中させたのとまったく同様の「構造的差別」に他なりません。

 在日米軍基地がコロナ感染拡大の元凶になっているのは、日米安保条約・地位協定が根源であり、沖縄がその被害を集中的に受けていることは、沖縄に対する「構造的差別」の再生産に他ならないことを、「本土」の日本人は肝に銘じる必要があります。


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「おとなしい」のは「子どもたち」だけか

2022年01月10日 | コロナ禍と政治・社会

    

 「おとなしい日本の子ども 議論避ける風潮変えよう」―こういう見出しの、長谷川眞理子・総合研究大学院大学長の論稿が年末の中国新聞(12月29日付)に載りました。要旨(抜粋)は次の通りです。

< 日本の子どもたちはおとなしい。保育園児のような小さい子どもも、思春期の中学生たちも、ともかくおとなしいと感じる。誰と比べてかというと、欧米の子どもたちだ。おとなしいとは、よく大人の言うことを聞くので制御しやすい、という意味である。

 保育園児たちが、保育士さんらに連れられて街中を散歩している風景をときどき見る。子どもたちは、みんなで手をつないで歩き、車など全く来ない静かな場所でも、みんなで一斉に手を挙げて道を渡る。

 欧米では、こんな光景は見たことがない。どの子も、ずっと勝手に動いている。小さな子どもの御しにくさと、保育士1人当たりが面倒を見る子どもの数とは、反比例するのだと思う(長谷川氏によれば、日本の基準は保育士1人あたりの担当は、3歳児で20人、4歳児なら30人―引用者)。

 ドイツの友人が、こんなことはドイツでは不可能だと言って驚いていた。フランス人やスウェーデン人の知り合いは皆、はなから「無理、無理」と言う。

 日本の学生は欧米の学生に比べて大変に静かだ。明らかに発言することが抑制されている。

 日本財団が行ったアジア・欧米9カ国の18歳意識調査(2019年)では、自分は責任ある社会の一員だと思うか、将来の夢はあるかなど全項目で、日本は最低の数値である。

「自分の国に解決したい社会課題があるか」という問いに「ある」と答えた日本の若者は46・4%で半分に満たない。他の国々はほぼ70%以上だ。「社会課題について周りの人と積極的に議論しているか」という質問では、イエスと答えた日本人はたった27・2%なのだ。他の国々はだいたい70~80%。>

 保育園児から大学生まで、「日本の子ども」たちが、いかに「おとなしい」か、制御しやすいか、議論を嫌うかという興味深い指摘です。共感しながら、同時に思いました。「おとなしい」のは子どもたちだけだろうか。

 コロナ禍、欧州各国では、政府による規制強化、ワクチンの事実上の強制に対し、大規模な抗議デモが起こっています。しかし、日本でコロナ・ワクチン問題でデモが行われたという報道はあったでしょうか。ワクチンに対する見解は様々ですが、それとは別に、国家による事実上のワクチン強制に反対の声が上がるのは当然でしょう(写真左はイタリア、中はフランスのデモ)。

 昨年11月、オーストリア・ウィーンで、「規制強化とワクチン接種義務化に反対する数万人規模のデモ」に遭遇したある日本人研究者が、こうレポートしています。

<「自由」の文字が書かれた多くの横断幕が、この巨大なデモの真剣さを証言している。…若い年代の集団が、「抵抗」と何度も叫びながら通り過ぎていった。…この数万人を動かしているのが、個人の身体に国家権力が介入することへの至極まっとうな拒否感であることはよく理解できる。デモ隊の中にすでにワクチンを接種した者も多く含まれていたことが後日報じられた。

 …たとえ感染爆発であっても、少数派の「自由」を守ろうと「抵抗」する人が何万人もいるヨーロッパでの方が、日本よりもはるかに安心して生活できているように感じる。>(大川大地氏、「靖国・天皇制問題情報センター通信」2021年12月27日号)

 そして、在日米軍によるコロナ感染の爆発的拡大。

 日米安保条約・地位協定の下、日本市民の健康・生命を顧みず、傍若無人の振る舞いを続ける米軍・米政府。その横暴にまともに抗議もせず、「地位協定改定」すら要求しない日本政府。それこそ「数万人規模のデモ」が起こってもおかしくありません。が、日本ではそのような怒りの抗議デモは起こっていません。

 おとなしくて制御しやすいのは、「日本の子ども」よりむしろ、「日本のおとなたち」ではないでしょうか。子どもたちの「おとなしさ」は、「おとなたち」の姿の反映に他ならないでしょう。

 なぜ日本人は「おとなしい」のか、何が「おとなしく」させているのか。究明する必要があります。そして、怒るべきことに正当に怒り、国家権力にとって制御しにくい市民になることが、日本人の重要な課題ではないでしょうか。

 


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「子どもの貧困」11億人、アフガン子ども100万人命の危険

2022年01月01日 | コロナ禍と政治・社会

     
 2022年が始まりましたが、世界はけっして明るくありません。コロナ禍・紛争による貧困で、とりわけ犠牲になっているのは、子どもたちです。

< コロナ貧困の子ども 1億人増  ユニセフ史上「最大の脅威」

 国連児童基金(ユニセフ)は8日、新型コロナウイルス流行により、さまざまな形の貧困状態に陥った子どもが世界で推計1億人増えたとの報告書を発表した。

 報告書は、経済面だけでなく、教育や健康、衛生などの面で不十分な状態を含めて「貧困」と位置付けた。こうした状態にある子どもは、2019年比で約10%増え、計約11億人に上ると推計。

 フォア事務局長は「今日ほど子どもを最優先するアプローチが重要視されることはない」と強調。>(2021年12月10日付沖縄タイムス=共同から抜粋)

< アフガン飢餓深刻  子ども100万人命の危険  タリバンへの制裁で経済危機

 アフガニスタンでタリバンが政権を掌握し15日で4カ月。ユニセフによると少なくとも100万人の子どもが重度の栄養失調による死の危機に直面している。

 ユニセフは、同国人口約4千万人の半数以上に当たる約2300万人が深刻な食料不足に直面しており、5歳以下の320万人が年内にひどい栄養失調に陥ると試算。うち100万人が緊急に手当てしなければ死亡する恐れがあるとしている。

 ユニセフは、食料を得ようと持参金目当てに娘を渡す家族が報告されているとして「児童労働や児童婚を強制される重大な危険がある」と警告。>(12月15日付中国新聞=共同から抜粋)

 アフガンは、アメリカなどの資産凍結による経済危機に加え、長い深刻な干ばつに襲われており、食料危機をいっそう深めています(写真右は干ばつの状況=「ペシャワル会報」12月8日号より)。

 さらにアフガンは、場所によって零下20度まで気温が下がる極寒の季節を迎えており、飢餓と寒さで多くの命が失われる恐れがあります。

 11月上旬にアフガンを訪れたWFP(世界食糧計画)のビーズリー事務局長は、英BBCのインタビューでこう訴えています。
「アフガンは地球上でもっとも破局的な状況になっている。…世界の指導者に言いたい。このまま数百万人も亡くなっていいのか」(同上「ペシャワル会報」)

 もちろん、「貧困」は日本でも深刻な問題です。日本に住む人の相対的貧困率は15・4%、子どもの貧困率は13・5%、一人親世帯のそれは48・1%にのぼります。

 この根底にあるのは、富の偏在です。国際研究報告では、世界上位1%の超富裕層の資産が世界全体の個人資産の37・8%を占めています。日本の富の分布も「非常に不平等」と指摘されています(12月27日付中国新聞=共同)。コロナ禍がこの格差をさらに拡大しています。

 こうした現実を正面から受け止めなければならないのは、「世界の指導者」だけではないでしょう。
 私たちにはそれぞれの生活があり、それは決して楽ではありませんが、この時代に生きている者として、子どもたち、日本と世界の子どもたちの命を守り、一人でも多くの子どもたちを「貧困」から救い出す、そのためにも格差社会を変革することを、私たち自身の最優先課題にしたいものです。


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