29日付の琉球新報、沖縄タイムスはともに1面トップで、辺野古新基地建設を強行する安倍政権が、「来月中旬に土砂投入」と報じました。
「本部港塩川地区の使用許可が下りずに懸案となている埋め立て用土砂の搬出は、引き続き本部町を説得する一方、不許可が続く場合は計画とは別の搬出場所を利用することで解決を図る」(29日付琉球新報)というのです。「別の搬出場所」として「名護市安和の琉球セメントの桟橋」が検討されているといいます。
民意を無視し、あの手この手であくまでも辺野古埋め立て・新基地建設を強行しようとする安倍政権の強権ぶりは露骨です。
同時に、問題の焦点がいよいよ明確になってきました。それは、県内の港湾使用の許可権限をもつ玉城デニー知事が、辺野古埋立土砂を搬出するための港の使用を認めるべきではない、認めてはならないということです。
本部港はもちろん、「琉球セメントの桟橋」という”裏ワザ“も、知事の権限で使用を阻止することはできます。
辺野古新基地問題に詳しい北上田毅氏によれば、「琉球セメントの安和桟橋は、沖縄県が公共用財産使用許可を出した桟橋である。公共の海を特定の民間企業が排他的に使用することを特別に許可したのだから、どんなことでも出来るというものではない。…辺野古への土砂搬送のために使用することなど許されない。県は、目的外使用で許可条件違反だとして、ただちに公共用財産使用許可を取消すべきである」(ブログ「チョイさんの沖縄日記」)。
玉城氏はいまだに「対話」一辺倒ですが、28日で終了した非公開の「集中協議」も、「期間中、県は工事阻止に向けた法的措置を控えた一方、政府は工事を続けた。この間に土砂投入までの準備を進められたのは事実だ。その間の協議で強引な印象を薄めつつ、工事を進められたのは政府の狙い通りだったとみられる」(29日付琉球新報「解説」)ものです。「菅官房長官に近い国会議員は『官邸の手のひらで踊っている』と県政の対応を冷やかした」(同琉球新報「透視鏡」)とさえ報じられています。
ほんとうに辺野古新基地を阻止する気があるなら、そしてその世論を広げようと思うなら、玉城氏が行うべきことはすべての知事権限を行使することです。その当面の課題は、本部港、琉球セメント桟橋はじめ、沖縄のすべての港を辺野古新基地建設のために使わせないことです。
不可解なのは、「オール沖縄」陣営はじめ辺野古新基地に反対する市民・団体・メディアから、「知事は港の使用を許可すべきではない」という声が出ていない(表面化していない)ことです。
知事が辺野古埋立のために港の使用を許可したのはこれが初めてではありません。昨年9~11月、翁長雄志知事(当時)は奥港、本部港、中城港の使用(石材搬出)を相次いで許可しました。この時は市民から批判が噴出しました。
沖縄平和運動センターの山城博治議長は2017年11月10日の同センター定期総会で、「これまで翁長雄志知事を正面から批判したことはないが、覚悟を決めて翁長県政と向き合う必要が出てくる」(2017年11月12日付沖縄タイムス)と奥港の使用許可をきびしく批判しました。
元参院議員の山内徳信氏は「石材搬出許可は撤回を 県内港湾 戦争利用許すな」の見出しの「論壇」で、「港湾法における港湾管理者は自治体の長(知事や市町村長)であることを深く認識して対処すべきであった。私は改めて申し上げたい。港湾法による港湾管理者の名において(使用許可を―引用者)撤回をし、沖縄県内(宮古、八重山含む)のすべての港が戦争のために利用されることがないよう心すべきである」(2017年11月29日付沖縄タイムス「論壇」)と主張しました(写真右)。
市民からも「奥港使用許可取り消しを 知事の重大な公約違反だ」(2017年12月7日付琉球新報、野島雅安氏の「論壇」)などの声が上がりました。
いずれもまったく妥当な指摘です。こうした声が今回の「港使用」に関してまったく聞かれないのは、いったいどうしたことでしょうか。
いまこそ声を大にして言うべきです。「玉城知事は辺野古埋立土工事のための港湾使用を許可すべきではない!」