トランプ大統領の今回の来日は、安倍首相との“親密性”、日米軍事同盟の強化をアピールする政治的パフォーマンスの連続でしたが、その中で注目されたのが元号(令和)の度重なる使用でした。
26日、大相撲の千秋楽を観戦し、表彰式で「米大統領杯」を渡したトランプ氏は、表彰状をこう読み上げました。
「あなたの栄えある優勝をここにたたえます。令和元年5月26日、アメリカ大統領ドナルドJトランプ」(写真左)
さらに、27日夜の徳仁天皇主催の宮中晩餐会では、トランプ氏はこうスピーチしました。
「日本の新しい元号は『令和』で、美しい調和を意味する。この言葉は『万葉集』と呼ばれる日本古来の和歌集に由来していると聞いている。万葉集の古い和歌を日本の子どもたちに受け継いできたように私たちの同盟も受け継がれなければならない」(写真中)
元号=天皇制と日米同盟をリンクさせた象徴的なスピーチでした。
元号の普及を図る勢力をこの上なく喜ばせるトランプ氏の相次ぐ「令和」のリップサービス。それは、日米首脳会談(27日)の冒頭で、「令和の時代にも日米同盟の絆が強固だと鮮明に内外に示すものとしたい」と述べた安倍首相の意図にぴったり沿うものです。
私は大相撲の表彰状の言葉も、宮中晩餐会でのスピーチも、ゴーストライターは安倍政権ではないかと推測しますが、その真偽はともかく、いずれも安倍氏の狙いが忖度されていることは確かです。
トランプ大統領を徳仁天皇就任後初の「国賓」として招き、「天皇の新時代」と「日米同盟の強化」をリンクさせようとする安倍首相の狙いは、元号(令和)の度重なる強調に象徴的に表れていたといえるでしょう。
ところがここで、おそらく安倍氏は予想していなかったであろう事態が起こりました。それは、トランプ氏とは逆に、当の徳仁天皇は晩餐会スピーチで元号をまったく使わずすべて西暦で表記したことです。
徳仁天皇は「アメリカと皇室との交流」を振り返るなどして合計7回年次を示しましたが、それはすべて西暦でした。もし元号を使おうとすれば、安政、昭和、平成の3つを使うことになり、もちろんトランプ氏にはちんぷんかんぷんです。「トランプ大統領歓迎のあいさつ」で西暦を使うのは当然のマナーであり常識です。
天皇制の象徴である元号を懸命に流布しようとしている安倍政権の狙いとは裏腹に、それは世界の中で日本にしかない、日本でしか通用しないきわめて特異で閉鎖的な政治的紀年法であることを、天皇みずから示したと言えるのではないでしょうか。
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全くつたない内容ですが、何かの参考になれば幸いです。よろしくお願いいたします。