25日は乗客106人と運転士1人が死亡した尼崎JR脱線事故から18年だった。その日の京都新聞夕刊に、事故で次男の芳国さん(当時35歳、美容師)を失った沖剛さん(86)の記事が載った。(写真は沖さんと芳国さんの肖像画)
事故の前年に長男が病気で亡くなっており、事故の翌年には妻も病死した。突然一人取り残された沖さん、「死のうと思ったことも何度もあった」という。
< そんな時、芳国さんの美容師仲間やかつての常連客から届いた手紙が、ぽっかりとあいた心の穴を埋めた。(兵庫県)三田市出身で千葉県船橋市に住むパート野口麻衣子さん(44)は、高校時代に芳国さんによく髪を切ってもらっていた。過去の経験から男性に不信感があったが、芳国さんは信頼して話ができる貴重な存在だった。「穏やかにフフッと笑う、聞き上手で共感力の高い方。心の回復の支えになってくれた」
野口さんは葬儀に参列後、剛さんに手紙を書いたのをきっかけに交流が開始。今年は芳国さんの誕生日に剛さんに電話をかけた。「忘れていない人がいるよ、と伝えたかった。お父さんにはいつまでも元気でいてほしい」と話す。>
この記事になぜ引かれたかというと、「人は死んだらどうなるのだろうか」という疑問に1つのヒントが示されているような気がしたからだ。
僧侶で看護師の玉置妙憂氏は、「生命の行方」(死んだらどうなるか)について、「だいたい次の五つのどれかに当てはまる」という(4月3日付京都新聞)。
①肉体的な生命で完結する(この世だけ。死んだら終わり。何もなし)。
②死後の生命の永生を信じる(あの世がある。天国や極楽浄土で幸せに暮らす)。
③形を変えて存在する(輪廻転生。魂は続くが、形は変わる)。
④自己の生命を子どもや孫に託す(DNAで永遠に続く)。
⑤永遠の生命(天、宇宙、自然、神、仏など)に融合する。
これまで①だと信じて疑わなかった。しかし、それではいかにも寂しい、と思うようになった。かといって、②~⑤から1つ選ぶこともできない。一長一短がある。
そう思っている中で、沖さんの記事を読んだ。
突然の事故で自分も家族はじめ周囲も予期せぬ死を迎えねばならなかった芳国さん。だが、芳国さんが生きた証は確実に受け継がれ、残った人々を励まし続けている。これは「生命」が継承されている、ということではないだろうか。
大切なヒントを与えてくれた記事だった。考え続けたいと思う。
【週間ファイル】
★入管法改悪案が自民、公明、維新、国民4党の賛成で衆院委可決(28日)
★GX脱炭素電源法案(束ね法案)が自民、公明、維新、国民4党の賛成で衆院本会議可決(27日)
★韓国・尹錫悦大統領がワシントンで日韓米の軍事協力を強調(26日)
★防衛省・自衛隊が沖縄・先島諸島に地対空誘導弾パトリオット(PAC3 )配備強行。玉城デニー知事が理解(25日)
…重要な出来事が続いた1週間だった。悪法が与野党一体で十分な審議もせず通るのは、軍事国家・ファシズムの特徴。
【今週のことば】
辛淑玉さん…「ニュース女子」(旧DHCテレビ制作)のヘイト訴訟が、初回口頭弁論から5年を超えて最高裁で勝訴確定(26日付)
「判決は正直とてもうれしい。ただ、長かったし苦しかった。…私に対する名誉毀損で勝っただけで、沖縄差別と基地反対運動に対する弾圧に勝ったわけではない。…自分が払った犠牲に比べれば小さな一歩でも、この結果が勝ち取れたことは差別やレイシズム(人種差別)を食い止める次の一歩につながる。勝って終わりではなく、スタートだ」(28日付沖縄タイムス)
「国家の敵と一度標的にされると、負けたらもっとひどいことになると思っていた。勝たなくてはいけない裁判だった。…誰かが何かをしてくれる国ではない。討ち死にした多くの人もいる。闘い続けるのが私の次の課題」(28日付琉球新報)
…辛さんは闘いつづける。