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アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

新型コロナと生態系、そして軍事基地

2020年05月28日 | 生態系・自然環境

   
 「コロナ後」の社会・世界のあり方を考える上で、たいへん示唆的な論考がありました。国際自然保護連合副会長などを歴任し霊長類学の世界的権威とされるラッセル・ミッターマイヤー氏(以下M氏)の「新型コロナと人間 生態系破壊まず止めよ」と題した論考(5月8日付中国新聞=共同配信)です。

 M氏はコロナ禍の背景には、「人類が地球上で1種の生物として極めて多くの個体数を誇るようになった事実」があり、「ある種が大量に増えることは、それに寄生する細菌、寄生虫、ウイルスにとっても非常に好都合」であること、ウイルスは「自然を破壊して数を大幅に増やした人類にとって強敵になりつつある」と考える視点が重要だと指摘します。

 「では、われわれは今、何をするべきだろうか」として、M氏は3点提唱します。

 「第一に、地球上の豊かな生物多様性を守る必要がある。多様性に富む生態系は、われわれの健康を守ってくれる

 「第二に、自然破壊を防ぎ、陸上の野生生物を生息地から捕獲して食べ物や薬、ペットなどとして利用する行為をやめること。野生生物の消費が、病原体に人間が直接、接触する機会を増やす

 「第三に、大量の肉の消費を減らし、植物ベースの食品への転換を図ること。哺乳類の生物重量の60%を占める家畜は病原体にとって好条件となる 」

 「新型コロナウイルスのまん延は、われわれへの警鐘である。当面の対策だけでなく、コロナ後の世界を展望する上で、病原体が将来、さらにたやすく宿主となるものを見つけることがないように、根本原因をなくする対策が求められている。
 良好な地球環境と、そこに暮らす人間の健康を守るためには、冷淡さと無自覚によって生態系を破壊する人々の行為を止めることは何よりも大切だ

 この指摘ですぐに想起されるのは、沖縄の辺野古(写真左)や高江、八重山諸島の基地建設です。
 日本で初めて「ホープスポット(希望の海)」(米国の環境NGO制定)に認定(2019年10月24日)された貴重な自然環境である大浦湾を、巨額の費用を投じて埋め立て、米軍基地(自衛隊との共同使用を想定)を造ろうとする辺野古新基地建設こそ、「冷淡さと無自覚によって生態系を破壊する」愚劣な行為の典型です(写真中は大浦湾に生息するジュゴン)。

 辺野古だけではありません。嘉手納基地や普天間基地(写真右)周辺の水源が有機フッ素化合物(PFAS)で汚染されていることが今大きな問題になっています。宮古島や石垣島の基地建設(自衛隊)は、生態系を破壊し、住民の飲料水の汚染を招きます。

 軍事基地はまさに自然環境・生態系破壊の拠点であす。新基地の建設を許さないことはもちろん、既存の基地を撤去することが環境・生態系保護にとっても中心的課題です。

 その点でも、「軍なき国」(5月18日のブログ参照)コスタリカは貴重な示唆を与えてくれます。コスタリカを訪れた沖縄県民間教育研究所の長堂登志子所長は、同国が「森林法改定」(1996年)や「生物多様性法」(98年)で法的に多様性を保護し、動植物や水、空気などの自然資源は公のものとの考えで、国土の25%以上を国立公園や保護地区に指定してきたことに触れ、こう指摘しています。
 「多様性に富んだ大浦湾、宮古や八重山の自然を破壊し、軍事基地のために膨大な金を使う日本は、子どもたちに豊かな未来が残せるのか」(14日付琉球新報「論壇」)

 ウイルスから人類を守るための生態系の保護と、軍事基地撤去・軍縮・軍備廃止は一体不可分です。


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翁長知事の「高江ヘリパッド容認」は「オール沖縄」の全体責任

2016年12月08日 | 生態系・自然環境

   

 翁長雄志知事が「高江ヘリパッド容認」(11月28日の記者会見、写真左は29日付沖縄タイムス)を「否定」した「釈明会見」(2日)が、逆に「公約違反」を認める結果になったことは先に(5日のブログ)述べました。しかし翁長氏は「容認していない」と言い続けています。折しも6、7両日は沖縄県議会の代表質問。ことの真相を明らかにする絶好の場でした。

 ところが、7日付の琉球新報、沖縄タイムス(写真中)はいずれも、「『決して容認したわけではない』と改めて強調した」(沖縄タイムス)などと一言報じただけで(見出しは大きいですが)、質疑の詳しい報道はなく、翁長氏の”釈明”を追認しただけでした。代表質問2日目(8日付)は両紙ともこの問題にはまったく触れていません。

 いったいどういうことでしょうか。

 翁長氏の「高江ヘリパッド容認」はきわめて重大な「公約違反」であり、その真相を明らかにするのは、県議会と県紙の重要な責務です。しかし、いずれもその役割をまったく果たしていません。
 百歩譲って、「容認していない」という翁長氏の言い分を認めるとしても、では具体的に政府に対してどういう行動をとるのかを明らかにし、直ちに実行させるべきでしょう。しかしそれも行われていません
 
 とりわけ重大ないのは、翁長県政与党の「オール沖縄」陣営の責任です。

 翁長氏の「容認」会見(28日)に対し、連日反対活動を続けている作家の目取真俊氏は、「弱みを突いてきた政府に有効に反撃できなかった。県民に失望を与え、求心力を失った」「本当は反対できたし、反対すれば県民も多数が支持した」(29日付沖縄タイムス)と翁長氏を批判するとともに、こう指摘しました。

 「オール沖縄自体が辺野古反対の一点だけで、他の問題を棚上げしてきた。個人だけの問題ではなく全体の責任だ」(同)

 目取真氏の指摘を裏付けるのは、翁長氏が2日の記者会見でも、「引き続き『建白書の精神に基づき、普天間飛行場の閉鎖・撤去、辺野古新基地の建設・オスプレイの配備に反対』との公約の実現に向けて取り組んでいく」と述べた「建白書」(2013年1月28日)です。
 翁長氏を当選させた「オール沖縄」の代名詞ともいえる「建白書」には、「高江」のタの字も、「ヘリパッド」のへの字もありません。目取真氏が指摘する通り、「高江ヘリパッド」問題を棚上げしてきたのです。
 その結果、翁長氏の「公約文書」には「高江」は盛り込まれませんでした。ここに翁長氏が「公約違反」の言い逃れを図る余地があります。

 しかし翁長氏は2日の記者会見で、「高江のヘリパッドは当然反対していく」と言明した政策発表会見(2014年10月21日、写真右)も、「その時点の私の認識という意味で間違いない」と、「公約」であることを自ら認めたのですから、言い逃れはできません。

 目取真氏の指摘をまつまでもなく、「オール沖縄」の翁長与党(日本共産党、社民党、自由党、社大党など)はこの2年の間に、「公約文書」には盛り込まなかったけれど記者会見で言明した「高江ヘリパッド反対」のための具体的な行動を翁長氏にとらせるべきでした。

 しかし「オール沖縄」陣営はそれを行ってきませんでした。その上、今回の「容認」会見に対しても県議会などで翁長氏の姿勢をただそうとしないのは、二重の責任放棄と言わねばなりません。

 選挙で推した知事でも、いいえ、選挙で推した知事だからこそ、裏切り行為(公約違反)は厳しく追及し、県民のための具体的な行動をとらせねばなりません。それが翁長氏を当選させた「オール沖縄」の責任ではないでしょうか。


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墓穴を掘った翁長知事の〝釈明会見”

2016年12月05日 | 生態系・自然環境

        

 11月28日の翁長知事の記者会見を琉球新報、沖縄タイムスはいずれも1面トップ(関連、2、3、社会面)で「知事、ヘリパッド容認」と報じました(29日付、写真左)。これに対し翁長氏は、2日急きょ記者会見し、「決して容認したわけではない」と〝釈明”しました(写真右は3日付沖縄タイムス)。
 「ヘリパッド容認」が露呈し、「公約違反」が明白になったことで、県民の批判が噴出したことが翁長氏にはよほどこたえたのでしょう。

 しかし、2日の〝釈明会見”はつじつまの合わないごまかしに満ちており、翁長氏の「高江ヘリパッド容認」「公約違反」は打ち消されるどころか逆にあらためて明白になったと言わざるをえません。

 ①「苦渋の選択」のごまかし

 28日の記者会見をもう一度見てみましょう。
 「北部訓練場なども苦渋の選択の最たるものだ。約4千㌶が返ってくることに異議を唱えるのはなかなか難しい。現実には高江に、新しいヘリパッドが6カ所も造られ、環境影響評価などもされないままオスプレイが飛び交って、状況は大変厳しい」(29日付琉球新報「一問一答」、以下同じ)
 北部訓練場の「一部返還」は、高江に6つのヘリパッドを造ることが前提であり、両者は一体です。「返還」と「ヘリパッド反対」は二律背反で、両方取ることはできません。これは翁長氏も否定できません。
 その上で翁長氏は「返還」を取ると改めて表明したのです。それはすなわち「ヘリパッドは容認」することにほかなりません。だから「苦渋の選択」だというのです。この限りで29日の新報、タイムスの報道は間違っていません。

 ところが2日の記者会見で翁長氏は、「苦渋の選択」についてこう述べました。
 「返ってくるものに異議を申し上げることはできないが、ヘリパッド建設は容認できないということは…一つを選ぶということでなく二つを考えなくてはいかんということで苦渋の選択と申し上げた」(3日付琉球新報、以下同じ)
 「二つを考える」ことが「苦渋の選択」…。支離滅裂です。日本語になっていません。なぜこんな誰でもわかるような無茶な言い訳をするのか。ヘリパッド建設を「容認」している事実を無理やり「容認できない」にすりかえようとするからです。

 ②「オスプレイ配備撤回で収れん」のごまかし

 翁長氏は28日、ヘリパッド容認と知事選の公約の関係について、「オスプレイの配備撤回で物事は収れんされるのではないか」と述べました。2日も「オスプレイが飛び交うヘリパッドは容認できないと言っている。配備撤回の中で収れんされていくとずっと申し上げている」と繰り返し、公約違反ではないと強弁しました。ここには二重のごまかしがあります。

 第1に、「オスプレイが飛び交うヘリパッドは容認できない」というなら、現にオスプレイは飛び交っているのですから、「ヘリパッド建設は直ちに中止せよ」と政府(防衛局)に抗議・申し入れを行ってしかるべきでしょう。ところが翁長氏はオスプレイが飛び交っているヘリパッドの建設中止を求めたことはただの1度もありません。何が「収れんされる」というのでしょうか。

 第2に、確かに「建白書」には「オスプレイの配備撤回」が明記されています。しかし、翁長氏自身は知事になって、これまで安倍首相や菅官房長官らと何回も会談した中で、あの時間稼ぎの「集中協議」も含め、政府に面と向かって「オスプレイ配備を撤回せよ」と言ったことはただの1度もありません。
 翁長氏の「オスプレイ配備撤回」は県民向けのリップサービスの域を出ていないのです。

 ③「容認ではない」といいながら、決して「反対」とは言わないごまかし

 2日の記者会見で「『オスプレイが使う限りヘリパッド建設は反対だ』とはっきり言うと分かりやすいかと思うがどうか」と記者が質問しました。それに対し翁長氏は、「苦渋の選択をするということがそういう意味だ」などと言いながら、けっして「反対」とは言いませんでした。2回の記者会見をはじめ、翁長氏が「ヘリパッド建設反対」と言ったことは一度もありません。
 「容認ではない」といいながらけっして「反対」とは言わない。常識では考えられない二枚舌ですが、これが「対県民」と「対政府」を使い分ける翁長流のごまかしです。

 ④口先だけで実際の行動は何もしないごまかし

 翁長氏はいずれの会見でも「オスプレイが環境影響評価を行うこともなく飛び交っている」ことを「到底容認できるものではない」と言いました。ではそのことを政府・防衛局に申し入れたでしょうか。アセスをやるつもりはないと公言している政府・防衛局に対し、「環境影響評価をしないなら直ちにヘリパッド工事は中止せよ」と言ったでしょうか。言っていません。
 
 2日の記者会見で「ヘリパッドを容認していないと言うのであれば、建設を進める政府に具体的なアクションはないか」というまっとうな質問がされました。翁長氏はなんと答えたか。
 「私が手で捕まえて止められるのであれば別だが、私自身は大きな公約の中に、新辺野古基地は絶対に造らせない、オスプレイの配備撤回を挙げており…」。
 だれも「手で捕まえ」ろとは言っていません。政府に対し「オスプレイ配備を撤回せよ」「ヘリパッド建設は直ちに中止せよ」と直接申し入れる行動を起こすべきではないかと聞いているのです。質問をはぐらかしてまともに答えようとしない翁長氏には誠意のかけらも感じられません。

 ⑤「ヘリパッドに当然反対していく」を「公約」と認めつつ、それを薄めようとするごまかし

 翁長氏が知事選の政策発表記者会見(2014年10月21日)で「高江のヘリパッドは当然反対していく」と述べたことについて、2日の記者会見で、「自分の公約だと考えるか」という質問がありました。翁長氏はこう答えました。
 「文章として残っている公約はオール沖縄の考え方を取りまとめたものだ。その後、インタビューの中で反対という言葉も、その時点の私の認識という意味で間違いない
 「文章」にはしていないが「公約ではない」とはさすがに言えず、「ヘリパッド反対」が「公約」だと認めたのです。

 しかしさらに続けてこう言いました。
 「『政治家の言葉は生命線だ』とどこかの報道であったが、私も気を付けているつもりだが、実情に応じながら、姿勢を明確にすることが大切ではないかと思っている」
 これを解説すると、気を付けているつもりだったがつい「反対していく」と言ってしまった。その場その場に応じたことを言うのが「政治家」だ、ということでしょう。これが翁長氏のあきれた「公約」観ですが、政策発表時の言明を「私の認識という意味で間違いない」と「公約」であることを否定できなかったことは重要です。

 以上見たように、28日と2日の両記者会見を検証しても、翁長がヘリパッド建設を「容認」していること、そしてそれが翁長氏の知事選の「公約違反」であることは明白です。

 翁長氏は2日、「一部のマスコミにおいてヘリパッド容認、公約違反であるとの報道がされた。このことは、私の真意とは大きくかけ離れており、本意ではない」(2日)と、新報、タイムスが「誤報」をしたかのように言いましたが、両紙の29日の報道はけっして間違ってはいません。

 ところが、3日以降の両紙の紙面は、翁長氏の発言を追認するのが主で、〝釈明”に対して明確な反論はなされていません。これはいったいどうしたことでしょうか。
 新報、タイムスは事実に照らし自信をもって翁長氏の「誤報」よばわりに反論し、翁長氏の「公約違反」を追及すべきです。それが読者に対するメディアの責任ではないでしょうか。


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高江ヘリパッドー遂に「公約違反」をあらわにした翁長知事

2016年11月29日 | 生態系・自然環境

    

 ついに翁長知事の公約違反があらわになりました。
 29日の琉球新報、沖縄タイムスは、いずれも1面トップに「知事、ヘリパッド容認」の大見出しで、翁長氏が高江のヘリパッド建設容認を表明(28日の記者会見)したことを大きく報じました(写真左)。
 社会面では現地・高江で反対運動を続けている住民たちの、「公約違反だ」「心が折れそう」「怒りが収まらない」などの声を伝えています。

 ヘリパッド建設をめぐる翁長氏の公約違反については、このブログでは再三指摘してきましたが(例えば今月17日参照)、記者会見でそれが露呈し、県紙が大きく報じたことの意味は重く、翁長氏と県政与党(「オール沖縄」陣営)の責任があらためて問われることになります。

 28日の記者会見の該当部分を抜粋します。(29日付琉球新報「一問一答」より)

 翁長 「北部訓練場は過半返還が予定されている」
 記者 「北部訓練場は地元が求める形での返還の進め方ではない」
 翁長 「北部訓練場なども苦渋の選択の最たるものだ。…現実には高江に、新しいヘリパッドが6カ所も造られ、環境影響評価などもされないままオスプレイが飛び交って、状況は大変厳しい
 記者 「知事選の公約会見では高江のヘリパッド建設に反対した。『苦渋の選択』は後退では」
 翁長 「オスプレイの全面撤回があればヘリパッドも運用しにくいのではないか。…オスプレイの配備撤回で物事は収れんされるのではないか

 この期に及んでもなお「オスプレイの配備撤回」を隠れ蓑にしようというわけですが、自身認めているように、オスプレイはすでに連日高江の上空を飛び交い騒音被害をまき散らしています。その現実を放置したまま、口で「配備撤回」と言ったからといってそれで物事が「収れん」するはずがないことは誰でもわかることです。「苦渋の選択」(保守政治家の言い訳の決まり文句)などという修辞でことを重大さを隠蔽することはできません。

 はっきりさせておかねばならないことは、「苦渋の選択」であろうとなんであろうと、ヘリパッド(新基地)建設を容認することは、翁長氏の重大な公約違反だということです。
 翁長氏は2年前の知事選でこう公約したのです。

 「オスプレイの配備撤回を求めているなかで、連動しており、高江のヘリパッドは当然反対していく」(2014年10月21日、知事選の政策発表記者会見)

 仲井真前知事が「やらない」と言った「辺野古埋立承認」をやったのが公約違反だったように、「当然反対していく」と言った高江のヘリパッド建設を翁長氏が「容認」したことも紛れもない公約違反であり、県民に対する重大な裏切り行為です。絶対に許されるものではありません。

 29日の県紙には数人の「識者談話」が掲載されましたが、その中から屋富祖昌子さん(元琉大助教授=昆虫分類学)の談話を琉球新報から全文転載して紹介します(太字は引用者)。

 <湿潤な環境に恵まれた亜熱帯照葉樹林は、地球上どこを探してもやんばる以外にない。国は環境保全に最大限配慮すると声高に叫ぶが、一度切り開いた森は二度と元には戻れず、後は少しずつ環境が蝕まれていく姿を見届けるしかない。世界に誇るべきこの貴重な森を、翁長雄志知事は軍事・戦争のために放棄したのだ。問われるべき責任はあまりにも大きい
 ヘリパッド建設に先駆け、県は辺野古の陸上工事も容認した。年末の完成に向け、工事は急ピッチで進められることになり、環境への負荷も想像を絶する。北部はこうして軍事拠点となってしまうのではないか。
 知事は前知事と同じように「いい正月」を迎えるのだろう。2013年の年末に県民が見た悪夢が再びよみがえった。これで知事は「自ら進んで米軍に基地を差し出した沖縄県知事」として歴史に刻まれることになる。知事を信じて闘ってきた人々への裏切り行為は断じて許されない。

 (次回ー12月1日予定ー翁長会見の問題点をさらに指摘します)


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「オール沖縄」は高江を見捨てた翁長氏を見逃すのか

2016年11月24日 | 生態系・自然環境

    

 23日の沖縄タイムスの記事には、一瞬目を疑いました。「知事、普天間と嘉手納視察」の大見出しの横に「就任後、公務で初」。(写真左)
 なんと、米軍普天間基地や嘉手納基地を「知事が公務で視察するのは、2014年12月の就任後初めて」だというのです。

 焦点中の焦点の普天間基地。沖縄のみならず東アジアで最大の米軍基地・嘉手納。いやしくも「基地負担の軽減」を1枚看板にして当選した翁長氏が、就任して2年にもなるのに普天間、嘉手納を1度も視察していなかったとは。ありえないことです。

 タイムスの記事によれば、「知事は視察後、…県外の人に沖縄の基地の実情を理解してもらうために『現場を見てもらうのは有効な方法で、ぜひ足を運んでもらいたい』と言及した」とか。よくも言えたものです。真っ先に行かねばならない自分は2年間も行かないでおいて、県外の人に「ぜひ足を運んでもらいたい」とは。

 琉球新報や沖縄タイムスが問題にしないことをいいことに、翁長氏にはほかにも〝ありえないこと”があるのではないか、と考えてみると、やはりありました。
 翁長氏は就任以来、東村高江のヘリパッド建設現場にただの1度も「足を運んで」いないのです。
 普天間と嘉手納には就任2年でやっと行きましたが、高江にはまだ行っていません。行こうともしていません。あれほど反対住民と機動隊がせめぎあい、「土人・シナ人」発言が全国で問題になっているにもかかわらず、肝心の沖縄県知事は1度も現場を見てもいないのです。

 翁長氏は21日に稲田防衛相をたずね、「オスプレイの配備撤回を要請」(22日付琉球新報)すると同時に、「(高江のー引用者)4カ所のヘリパッドについて『本格的な運用開始前にオスプレイを対象としたアセスの再実施をしてもらいたい』」(同)と要請しました。

 おかしいではないですか。オスプレイの「配備撤回」と「オスプレイを対象としたアセスの再実施」がどうして両立するのですか。本気で「配備撤回」を求めるなら、「オスプレイを対象としたアセス」など論外ではありませんか。

 翁長氏には本気で「オスプレイ配備撤回」を求める気などないのです。「アセスの再実施要求」は、いかにも反対しているかのようなポーズを示すためのスタンドプレイに他なりません。

 「今さら何をアセスか。既に児童が学校に行けないなどの被害が出ている。お茶を濁している暇があれば、ヘリパッド反対の態度を表明すべきだ」「知事は高江を実質的に見捨てているのと一緒だ」(12日付琉球新報)

 現地で反対行動を続けている作家の目取真俊さんのこの言葉が、翁長氏の実体を射抜いています。

 「1999年から(ヘリパッド建設にー引用者)反対してきた東村高江に住む住民からは『高江は見捨てられたのか』…『高江は捨て石なのかな。なんでこんなに県は動かないんだろう』」(24日付琉球新報)という「不満の声」が上がっているといいます。当然です。

 翁長氏は高江に行こうとしない一方、菅官房長官とは笑顔で会い(10月8日、写真右)、ヘリパッド完成を前提にした北部訓練場の「年内一部返還」を「大歓迎」(10月9日付琉球新報)し、菅氏を安心させました。翁長氏が高江を「見捨てている」ことは歴然としています。

 「『オール沖縄とは一体何なのか』との批判も地元では渦巻く」(24日付琉球新報)といいます。
 高江を「捨て石」にしている翁長氏をこのまま許すのか。見て見ぬ振りをするのか。「オール沖縄」(県政与党、市民)が問われています。

 ※今回が前身の「私の沖縄日記」から通算して900回になります。今後ともよろしくお願いいたします。


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翁長知事・県政与党は「機動隊撤退」を求めよ

2016年11月03日 | 生態系・自然環境

    

 沖縄・高江に派遣された機動隊員による「土人」「シナ人」発言は、「単なる差別意識の表れではない。これは、沖縄を軍事植民地とみなす日米両政府の統治者意識の発露であり、植民地的な支配・被支配の関係性が露呈したもの」(1日付沖縄タイムス・平安名純代記者「想い風」)です。とりわけ「本土」の私たちはこの点をよく考える必要があります。

 同時に、実際に高江で展開されているこの「軍事植民地化」を許さないために、その象徴ともいえる「本土」からの機動隊派遣をやめさせ、機動隊を撤退させる必要があります。

 その点で、沖縄県知事である翁長雄志氏、および共産党、社民党、自由党、社大党など翁長県政与党の役割は重大です。ところが、翁長氏や県政与党から「機動隊撤退」の要求は行われていません。

 翁長氏は池田克史沖縄県警本部長との会談(10月20日、写真中)で、暴言に対しては「言語道断」「到底許されるものではない」と抗議しましたが、機動隊の撤退については一言も触れませんでした。逆に、「ぜひしっかりと対応してほしい」(10月21日付琉球新報)と、機動隊派遣の継続を前提にした発言でしめくくりました。

 「土人」「シナ人」発言は糾弾するけれど、機動隊の撤退には触れないというのは、県政与党と中間派の賛成多数で採択された「機動隊員差別発言抗議決議」(10月28日、写真右)も同様です。

 県政与党は10月21日、「発言に抗議すると同時に高江からの機動隊撤退を求める決議案を提案する方針を確認」(22日付沖縄タイムス)していました。
 ところが、「『撤退』にまで踏み込むことで中立会派や野党(自民党ー引用者)が難色を示し審議が決裂することも予想されることから、全会一致を優先し、発言に対する抗議絞っ(た)」(10月25日付琉球新報)、つまり「機動隊の撤退」を落としたのです。

 しかし与党と野党(自民党)の協議は決裂。自民党は「喧嘩両成敗」的なとんでもない「決議案」を提案(否決)し、与党は単独で決議案を提出しました。

 自民党との協議が決裂して「全会一致」が不可能になった時点で、与党が提出する決議案には当然、当初確認した「機動隊の撤退」が復活するものと思われました。ところが、与党の決議案は「撤退」を落としたままのものでした。中立会派(公明、維新)に配慮したためといわれています。

 この「骨抜き決議」に対しては与党議員の中からも、「侮辱発言の背景には機動隊の大量動員がある。われわれは市民、非権力側の代表。与党単独の可決でも、撤退を突き付けるべきだった」(10月27日付沖縄タイムス)という声が出ているのは当然でしょう。

 再三述べてきたように、他府県からの機動隊派遣は、沖縄県公安委員会の要請によるものです。その公安委員会の任免権は知事にあり、承認するのは県議会です。
 翁長氏は県議会で、もしくは記者会見で、「他府県からの機動隊派遣を拒否する。公安委員会は派遣要請を取り下げよ」と言明すべきです。県政与党は翁長氏にそれを求めるべきです。

 暴言を吐いた大阪府警の機動隊員を松井大阪府知事がねぎらい、擁護したことについて、ルポライターの鎌田慧氏は「府警の責任者である松井一郎知事は…ある種の称賛をした。自治体の長が命令実施のため、公然と差別を擁護したのは暴力行為の容認である。知事は辞任に値する」(10月26日付沖縄タイムス)と指摘しました。
 「府警の責任者」が府知事であるように、「県警の責任者」は県知事です。沖縄県警の責任者としての翁長氏の責任があらためて問われています。


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