「新沖縄フォーラム」(代表・新崎盛暉沖縄大名誉教授)が発行している季刊誌「けーし風」(「返し風」の意)の最新号(2016年4月号)に、「宜野湾市長選挙をふり返ってー『オール沖縄』再構築の課題」と題する座談会が掲載されています(出席は新崎氏のほか宜野湾市長選をたたかった人びと)。
この中で、「オール沖縄」で敗北した宜野湾市長選挙(1月24日)を分析した上で、きたる参院選(場合によっては衆参同日選)を引き続き「オール沖縄」でたたかうため、態勢の立て直しが急務だと強調されています。
しかし、参院選(同日選を含む。以下同じ)を「オール沖縄」でたたかうことは、はたして正しいでしょうか。
私は参院選を「オール沖縄」でたたかうのは無理だし、またすべきではないと考えます。その理由は以下の通りです。
そもそも「オール沖縄」とは何でしょうか。前記の「座談会」で新崎氏はこう指摘しています。
「『オール沖縄』とは、小異を残して大同についているということ。この場合の『大同』とは、辺野古新基地建設阻止であり、普天間の即時返還、そういうことを通じて現在の社会を変えて行こう、その一点だけが『大同』なんですよね」
より正確に言えば、「大同」とは沖縄41全市町村長が署名して安倍首相に手渡した「建白書」(2013年1月28日)の内容にほかなりません。この点に異論はないでしょう。その「建白書」の具体的な内容は2点です。全文転記します。
<1、オスプレイの配備を直ちに撤回すること。及び今年7月までに配備されるとしている12機の配備を中止すること。また嘉手納基地への特殊作戦用垂直離着陸輸送機CV22オスプレイの配備計画を直ちに撤回すること。
2、米軍普天間基地を閉鎖・撤去し、県内移設を断念すること。>
これが「オール沖縄」の一致点であり「大同」です。
ところが「オール沖縄」で当選した翁長知事やその周辺は、今やなんのためらいもなく普天間基地の「県外移設」を繰り返し主張しています。
これまでも再三指摘してきたように、「県内移設を断念すること」と「県外移設」は違います。政治的には極めて大きな違いです。「オール沖縄」の中にも「県外移設」(「日本本土への移設」)に反対の人は少なくありません。
「県内移設断念(反対)」の中には「県外移設」も含まれます。したがって「オール沖縄」を支持する人が個人的見解として「県外移設」を主張することは当然ありうることで、問題はありません。
しかし、「建白書」を一致点とする「オール沖縄」で当選した翁長氏が、公式な知事見解(方針)として「県外移設」を主張することは、「オール沖縄」の「大同」からの逸脱であり、けっして許されません。
「オール沖縄」で参院選をたたかうというなら、少なくとも、翁長氏にこの逸脱行為の誤りを認めさせ、以後公的な場(記者会見などを含む)で「県外移設」を口にしないよう確認する必要があります。
しかし、「オール沖縄」内にその動きは見られません。おそらく今後もないでしょう。それだけ「翁長翼賛体制」が広がっているからです。翁長氏が「県外移設」を主張したままの「オール沖縄」選挙など幻想にすぎません。
仮に翁長氏が「県外移設」を封印したとしても、はやり「オール沖縄」で参院選をたたかうことは妥当とはいえません。なぜなら、「オスプレイ、普天間・辺野古」以外の重要諸課題が、ことごとく「小異」として捨象されるからです。
例えば、「戦争(安保)法制廃止」「集団的自衛権行使反対」「高江ヘリパッド反対」「八重山諸島はじめ自衛隊配備強化反対」「嘉手納基地はじめ沖縄の全基地撤去」「浦添軍港反対」「泡瀬干潟埋め立て反対」。
どれをとっても喫緊の重要課題ですが、「オール沖縄」の候補がこれらを政策に掲げることは考えられません。「建白書」に入っていないように。なぜなら一致点にならないからです。翁長氏やその周辺(旧自民党や経済界)はこれらにことごとく「反対」ではないからです。
先の座談会でも、「(浦添軍港問題で)翁長さんの曖昧さは残っているので、まさに『オール沖縄』ではどういうスタンスで解決策へ導いていくのかとか、知事の判断をみんなで議論したことがあるのか、と問われなければならない部分はあります」(渡瀬夏彦氏)、「自衛隊の問題は具体的にこう思うと言って、『オール沖縄』の中でどこが違うかということをもっと風通しのいい議論を始めなければいけないと思う」(新崎盛暉氏)という意見が出されています。
もっともな意見です。しかし、「風通しのいい議論」が必要なのは当然で、そういう指摘が今の段階でなされねばならないこと自体に「オール沖縄」の問題が表れています。
そして、上記の諸課題は、すでに「議論」の段階ではありません。参院選の中では具体的に問われる課題ばかりです。これらはいずれも「小異」として切り捨てていい問題ではありません。こうした重要諸課題で明確な政策・主張が打ち出せない参院選とはいったい何でしょうか。
以上が「オール沖縄」で参院選をたたかうべきではないと考える理由です。
これに対しては、直ちに「『オール沖縄』で一本化しない限り、自民党(島尻氏)には勝てない」という反論が出るでしょう。
その点をどう考えるか。どうたたかうか。次回(あさって)書きます。