アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

小池氏の「排除」発言を批判するのはお門違い

2017年10月26日 | 政治・選挙

     

 小池百合子氏が「右翼政治家」であり、今回の総選挙でも「自民党圧勝」の陰の立役者であることは、このブログでも再三指摘してきました。したがって小池氏を擁護するつもりは、さらさらありません。しかし、希望の党の連中が選挙結果の責任を小池氏に押し付けている姿は、あまりにも醜悪だと言わざるをえません。

 選挙前は「小池人気」にあやかって、主義主張などお構え無しに「希望」になびき、それが思い通りにならなかったら今度は小池氏をこきおろす。彼らには政治家としての、いや人間としての矜持などかけらも見られません。

 なかでも見過ごせないのは、小池氏の「排除します」発言(9月28日)があたかも「希望」敗北の元凶であるように言われていることです。
 これは「希望」の議員・候補者だけでなく、「小池氏は衆院選直前、民進党出身者の公認申請を巡り、一部を「排除する」と発言して党勢は一気に失速」(26日付共同配信)など、メディアにも広く流布しています。

 「希望」失速の原因を「排除」発言に求めるのは全くのお門違いです。
 それは2つの意味で間違っています。

 第1に、「希望」の候補者に対して有権者から集中した批判は、「排除」ではなく「変節」「無節操」です。安保法制(戦争法)について、民進党にいたときは「憲法違反」と言って反対しておきながら、賛成・推進の「希望」に行くとは何事か、というきわめて当然の批判です。

 安保法制や改憲をめぐって、「希望」が自民党の補完勢力でしかないことが露呈した。それが「希望」失速の主な原因です。それを「排除」発言のせいにするのは事態の本質を見誤らせます。

 第2に、「排除」発言自体は、なんの問題もありません。
 排除とはふるい落とし、選別です。小池氏は「政策協定書」(写真右)を示し、これに同意できない者は「排除」する、すなわち公認できないと言ったのです。「政策」の内容はともかく(自民党政治の補完そのものですが)、政党が「政策協定」を基準に公認のふるいにかけるのはきわめて当然であり、なんら批判されるべきことではありません。

 にもかかわらず「排除」発言がこれほどやり玉に挙げられるのはなぜでしょうか。
 そこには、「排除」という言葉が意味する内容に対する批判ではなく、語感、さらには小池氏のものの言い方、態度に対する反発があるのではないでしょうか。いわば一種の個人攻撃とも言えます。
 
 乗松聡子氏(「アジア太平洋ジャーナル・ジャパンフォーカス」エディター)は、ネットや新聞紙上で「小池氏をその政策で批判するのではなく「〇〇婆あ」とか、女性であることを標的にした攻撃が氾濫している」と指摘したうえで、こう強調しています。
 「私は小池知事の防衛政策やマイノリティーに対する差別的姿勢を批判する立場だ。しかしこのような個人攻撃やセクハラは誰に対するものでも容認できない」(9日付琉球新報)。政治家に対する「個人攻撃」の問題点を指摘した重要な指摘です。

 「排除」発言の取り上げ方とセクハラは同一ではありませんが、通じるものがあります。それは、本来政治家や政党を判断する基準であるべき政策や政治理念は棚上げし、本質から外れたところで批判・攻撃がされていることです。

 政治家・政党を判断する基準は、政策・政治理念である。この基本が定着しない限り、選挙は何度やってもブームに漂うただの「人気投票」に終わってしまうでしょう。

 ※28日、30日、31日はお休みし、次回は11月1日に書きます。


「33%の得票で74%の議席」―今こそ小選挙区制の廃止を

2017年10月24日 | 政治・選挙

     

 「自民党の圧勝」で終わった総選挙。しかし、安倍・自民党を支持する国民は決して多数派ではありません。にもかかわらず「圧勝」。そのカラクリは小選挙区制にあります。
 今回の総選挙から小選挙区制の弊害(害悪)をあらためて検証します。

 ★「33%の得票で74%の議席」=民意からの大幅な乖離

 今回自民党の比例代表選挙での得票率は33・27%。これが自民党に対する有権者の支持率とみることができます。
 これに対し、小選挙区での議席獲得は289議席中215議席、その率はなんと74・39%。比例区は176議席中66議席、37・5%ですから、ほぼ得票率に見合っています。
 小選挙区ではいかに得票率と議席獲得率が乖離しているか、有権者の意思が議席(国会の勢力図)に正しくい反映されていないか明白です。

 朝日新聞の直近の世論調査では、「安倍首相の続投」を望むが34%、望まないが51%。「自民党だけが強い勢力を持つ状況」が「よい」というのは15%、「よくない」が73%だったという世論状況からも、今回の選挙結果が「民意」から大きくかけ離れていることは明らかです。

 自民党が33%の得票率で74%の議席を得たということは、自民党以外に投票した67%の有権者の意思は26%しか小選挙区の議席に反映しなかったということ、すなわちそれだけ大量の死票が生じたということです。

 ★戦後2番目の投票率の低さ―小選挙区制導入で続落

 今回の確定投票率は、53・68%。戦後最低だった前回(2014年衆院選)の52・66%に続く戦後2番目の低さでした。
 小選挙区比例代表制が導入されて1回目の衆院選(1996年)は投票率は59・65%。その前の93年選挙は67・26%、そのまた前の90年は73・31%。民主党が政権をとった09年の69・28%を例外として、小選挙区制導入によって投票率が続落していることは否定しようがありません(写真中)。
 それが小選挙区制の特性です。

 「はじめから当選を競い合うような政党が二つくらいしかなく、出てくる候補者が毎度おなじみで、しかもその当落がほぼ予想できるということになれば、人びとの選挙への興味と関心は大幅に減退するでしょう。中小政党が排除され、自分の願いを託せる候補者いず、二大政党が競い合っていてもそのどちらも支持できないという人の場合、はじめから「投票するな」といわれているようなものだからです。当然、投票率は下がります」(五十嵐仁法政大教授『一目でわかる小選挙区比例代表並立制』労働旬報社)

 ★対米従属・大企業本位の「保守二大政党制」への道

 民進党の希望の党への合流は、「保守二大政党制」を目指したものでした。それを選挙制度から促進するのが小選挙区制です。
 そしてそれは、自民党のスポンサーである財界の悲願でした。

 「日本の財界は1980年代後半から小選挙区制の導入に向けて周到な政治工作を行いました。財界幹部が中心になって『民間政治臨調』をつくり、小選挙区制を導入すれば『政治腐敗はなくなる』『政権交代ができる』との『政治改革』キャンペーンをはって導入を推進しました。…財界の本当の目的は、小選挙区制導入による保守二大政党制へと誘導し、保守二大政党制によって憲法改悪と新自由主義的政策をアメリカ言いなりに実行することにありました」(志田なや子弁護士『ここがヘンだよ日本の選挙』学習の友社収録)

 ★そもそも憲法原則(主権在民、代表制)に反する

 そもそも小選挙区制は憲法の原則に反します。
 これまでも違憲訴訟が起こされましたが、最高裁は「立法裁量権」から違憲の主張を退けました(1976年4月)。学説もさまざまあります。そうしたものを踏まえた上で、辻村みよ子東北大教授はこ指摘します。

 「選挙を主権者人民(市民)の主権行使の場として捉えるならば、選挙による主権者の主権行使が十分に実現されるために、選挙制度自体が選挙民の意思を正確に反映するものでなければならない。…選挙制度は民意を可能な限り忠実に議会に反映させるのに相応しいものでなければならない
 「現行の衆参両院の選挙制度は、選挙区制(小選挙区制ー引用者)の点で投票価値平等を実現しえず、選挙活動上の不平等や自由の過度な制約を伴うことによって、一層民意を歪曲し選挙権の権利性を弱める結果を導くものといえる」(辻村みよ子『日本国憲法解釈の再検討』有斐閣収録)

 日本のメディアは今回の選挙の論評で、「なぜ、衆院選で自民党は多数を得たのか。死票の多い小選挙区制の特性もあるが…」(23日付朝日新聞社説)、「政権批判票の分散が、小選挙区制の下で自民を利した」(同毎日新聞社説)、「安倍首相の続投を支持しない人が多いにもかかわらず、自公両党が過半数の議席を得るのは、一選挙区で一人しか当選しない小選挙区制を軸とした現行の選挙制度が影響していることは否めない」(同東京新聞社説)など、一様に小選挙区制の弊害を指摘しています。

 にもかかわらず、「小選挙区制の廃止」を主張している論説は皆無です。きわめて奇異な現象と言わねばなりません。

 憲法原則に照らし、主権者・国民の意思をより正確に政治(国会の議席)に反映させ、対米従属・財界本位の自民党(安倍)独裁、「保守二大政党制」を許さないために、いまこそ小選挙区制を廃止すべきです。そして、全国一区比例代表制を実現すべきです。

 


立憲民主党は「期待」できる政党なのか

2017年10月23日 | 政治・選挙

     

 総選挙の結果は、事前の「世論調査」通り、「自民圧勝」に終わりました。公明、維新、希望を含め改憲勢力が3分の2を超え、いよいよ憲法「改正」が問われることになります。

 そんな中、「野党」で唯一「躍進」した立憲民主党に対し、「民進党の理念・政策や野党共闘を重んじる筋の通し方への共感もあった」(23日付朝日新聞社説)などと賛辞が送られ、「野党共闘」を望む人たちからも「期待」が高まっているようです。自党は議席を半減させた日本共産党の志位和夫委員長も、「立憲民主党が躍進して嬉しい」(22日夜各社のインタビュー)と述べています。

 しかし、果たして立憲民主党はそうした「期待」に応えられる政党でしょうか。
 立憲民主党の実態を3つの視点から検証します。

<生い立ち>

 ●民主党政権の責任…枝野幸男代表をはじめ主要メンバーは民主党政権時代に中枢にいた人たちです。民主党政権は市民の期待を数々裏切りました。辺野古新基地を推進したのも、朝鮮学校の無償化にストップをかけたのも、尖閣諸島を「国有化」して緊張を高めたのも、民主党政権です。枝野氏自身、菅直人政権の官房長官として、「3・11」で「ただちに人に影響はない」という無責任な会見を繰り返した本人です。
 こうした民主党政権の汚点を枝野氏らはどう考えているのか。責任ある総括はいまだになされていません。

 ●民進党と希望の合流の責任…前原誠司氏の希望の党への合流が、「野党共闘への背信行為」(共産党・志位委員長)であることは論を待ちません。小池百合子氏とともに前原氏は「自民圧勝」の陰の立役者です。
 しかし、その責任は前原氏だけにあるのではありません。民進党が希望の党への合流を正式に決めたのは、9月28日の両院議員総会です。ここで希望との合流が、「満場一致」で決まったのです。つまり枝野氏(当時代表代行)はじめ立憲民主党のメンバーも全員、希望との合流に賛成したのです。
 その後、小池氏による「排除」が始まり、排除されそうになったので枝野氏は立憲民主党を立ち上げました(10月2日)。もし小池氏がもっと巧妙にやっていれば、枝野氏らはあのまま希望の党にとどまっていた可能性は小さくありません。
 野党共闘に対する「背信行為」である希望の党への合流には、枝野氏らにも責任があります。この点を不問にすることはできません。

<政策>(以下、政策の引用は21日付中国新聞=共同配信の各党一覧表から)
 立憲民主党の政策は、果たして安倍・自民党との「対抗軸」になるでしょうか。

 ●「安保法制反対」の次は…同党が安保法制に反対するのは、集団的自衛権の行使にあたるという理由です。そこで安保法制を廃止したあとは、「領域警備法の制定と憲法の枠内での周辺事態法強化で…専守防衛を軸とする現実的な安保政策を推進」するとしています。
 しかし、集団的自衛権と個別的自衛権の境目はあいまいです。共産党は周辺事態法にも反対しています。「現実的な安保政策」とは何でしょうか。

 ●「9条改悪反対」も条件付き…憲法9条の改悪については、「安保法制を前提にした憲法9条の改悪に反対」としています。ということは「安保法制を前提」にしなければ9条の改定も否定しないということになります。

 ●辺野古新基地に反対せず…もともと辺野古新基地を推進してきた同党のメンバーたち。今回の選挙でも「辺野古移設については再検証する」というだけで、「反対」とは明言しませんでした。

 ●北朝鮮への圧力強化では自民と同一…「北朝鮮を対話のテーブルにつかせるため圧力を強める」というのは、安倍首相と変わりません。「平和的解決に向け」とは言っていますが、軍事的圧力も否定していません。経済的圧力の強化も市民を苦しめるだけで、人道に反します。

 ●あいまいな「原発ゼロ」…「一日も早く原発ゼロへ」としながら、「再稼働は現状では認められない」とし、状況が変われば「再稼働」を認めることを示唆しています。

 ●「消費税10%」も基本的に容認…「将来的な国民負担の議論は必要」としながら、「直ちに消費税率10%へ引き上げることはできない」と、今後の「10%へ引き上げ」容認に含みを持たせています。

<連合との親密な関係>

 立憲民主党の性格を見るうえで重要なのは、連合(神津里季会長)との親密な関係です。
 枝野氏ら幹部は党を立ち上げた直後(10月6日)に、そろって連合本部を訪れ、支援を要請しました。そして選挙が終わった翌日の23日にも、連合を訪れて神津会長と会談し、「連携」を確認しました(写真中)。

 連合は労働組合の本旨に反し、大企業との協調をすすめる一方、組合員に対し「特定政党支持」という反民主的な締め付けを行って政治に関与しています。連合が共産党との共闘を強く嫌っていることは周知の事実です。同党が「原発ゼロ」の立場にきっぱり立てないのも、連合との関係があるからです。

 そのような連合に再三支援を要請し、連携するのは、立憲民主党自身の民主性に大きな疑問符を付けるものです。だいいち、連合との親密な連携と、共産党との共闘をどうやって両立させるつもりでしょうか。

 以上、立憲民主党の実態を3つの視点から見ましたが、根底にあるのは、同党が日米軍事同盟(安保条約体制)を容認・推進する政党だということです。
 自民党政治のほんとうの対抗軸になるには、安保・外交の面はもちろん、経済の面からも、日米軍事同盟に反対することが不可欠です。
 日米軍事同盟(安保条約)に反対する世論は現時点では多数派ではありませんが、その旗を掲げ続け、地道に支持を増やしていく以外にありません。
 日米軍事同盟を容認する限り、自民党の補完勢力にはなっても、真の対抗軸にはなりえません。


総選挙で置き去りにされた沖縄(辺野古・高江)

2017年10月21日 | 沖縄・選挙

     

 安倍首相の党利党略解散で始まった総選挙は、まともな政策論争のないまま、あす22日投開票を迎えます。
 なかでも、沖縄の基地問題(辺野古、高江など)が、まったくと言っていいほど焦点にならなかったことはきわめて重大です。「沖縄」は総選挙で置き去りにされたのです。日本の政治・政党の劣化を象徴的に示すものと言わねばなりません。

 「5年間の安倍政権を問う」というなら、戦争法(安保法制)、共謀罪、機密保護法と並んで、民意を踏みにじって強行された辺野古埋め立て工事着工・高江ヘリパッド建設への審判は当然大きな争点になるべきです。
 しかも、これでもかとばかりに、公示の翌日(11日)に高江で米軍ヘリが事実上墜落し炎上したのですから(写真中)。

 にもかかわらず、なぜ「沖縄」は争点にならなかったのでしょうか。

 その根底に、沖縄に基地を押し付けて恥じない「本土」(ヤマト)の沖縄差別があることは言うまでもありません。

 加えて、沖縄では「辺野古新基地阻止」を前面に掲げている日本共産党や社民党がなぜ「本土」ではそうしなかったのか。
 その原因は、3党(共産・立憲・社民)の「共闘」が政策協定なき「共闘」になったことにあります。

 共産党の志位和夫委員長は、20日夜BSフジのプライムニュースに生出演し、「今回は3党で政策協定を結ぶ時間がなかった」と認めました。そして、「市民連合」(山口二郎法政大教授ら)が3党に要請した「7項目」がそれに代わるものだと述べました。ところがこの「7項目」には「沖縄」はまったく含まれていないのです(9日のブログ参照)。

 「時間」の問題ではありません。その気があれば政策協定は1日でもできます。それをしなかった。「政策協定なき共闘」の弊害が「沖縄」に端的に表れたと言わねばなりません。

 こうして、軍事植民地としての沖縄の実態が公示直後に眼前に突きつけられたにもかかわらず、どの政党もそれを正面から問おうとしないという、きわめて奇異で醜悪な選挙戦が展開したわけです。

 ところが、総選挙で「辺野古」を棚上げしようとする動きは「本土」だけではありません。驚いたことに「オール沖縄」にもその兆候が見られるのです。

 「オール沖縄」は今月17日と20日、琉球新報、沖縄タイムスに全面広告を出しました。いずれも翁長知事の写真を大きく出し、「オール沖縄代表へ」と投票を呼び掛けるものです。そこには、「オスプレイ・新基地ノー、普天間基地の閉鎖・撤去」のスローガンはあります。ところが2回とも、どこを探しても「辺野古」の文字が見当たらないのです。明らかに意図的に「辺野古」を消したと思わざるをえません。

 これはきわめて不可解です。「辺野古」のない「新基地ノー」とはどこのことなのでしょうか。なぜあえて「辺野古」を消したのでしょうか。知事選での「翁長再選」を念頭に置いたものなのでしょうか。

 総選挙で正面から問われることがなかったからこそ、「辺野古新基地阻止」「高江ヘリパッド撤去」の世論をいっそう大きくしていく必要があります。


翁長知事は「ヘリパッド撤去」を直接日米両政府に要求せよ

2017年10月19日 | 沖縄・翁長知事

    

 アメリカ(在沖縄米軍)は18日、高江で炎上した(11日)普天間基地所属の大型輸送ヘリCH53の飛行再開を強行しました。「事故原因」の説明もないまま、日本政府の要求すら無視して。アメリカが日本をいかに属国扱いしているかが端的に表れています。

 これに対し、沖縄県紙2紙は19日付1面トップで、「知事「着陸帯撤去を」」(琉球新報)、「知事 着陸帯撤去求める」(沖縄タイムス)と、翁長知事が「米軍北部訓練場の六つのヘリコプター着陸帯(ヘリパッド)の撤去を求める意向を初めて示した」(琉球新報)と報じました。

 翁長氏はこれまで高江のヘリパッド建設を容認してきました(16日のブログ参照)。それが「撤去」を求める姿勢に本当に転換したのなら、評価すべきことです。
 それが総選挙前のリップサービスでないなら、具体的な行動をとる必要があります。すなわち、翁長氏は直ちに、日米両政府・在沖縄米軍に直接会って、「高江のヘリパッドを撤去せよ」と要求すべきです。

 2紙の報道によれば、18日の翁長氏の「撤去」発言は次の通りです。

 「翁長知事は「私たちの気持ちからすると使用禁止だ。切なる思いは撤去だ」と記者団に述べた」(19日付琉球新報)

 「知事は今回の事故を受け、高江区が改めて6ヵ所の使用禁止を求めたことを念頭に「私たちの切実な思いは使用禁止、むしろ撤去だ」と踏み込んだ」(19日付沖縄タイムス)

 「「何でもやるなら、ヘリパッドこそ撤収してもらいたい」。知事は18日、菅氏の言葉を持ち出し(菅官房長官は事故直後に高江の仲嶺久美子区長に電話で「何でもやる」と述べた―引用者)、危険性の”元凶”を取り除くべきだと主張した」(同)

 この「撤去」発言を額面通り受け取ることができるかは疑問です。

 「事故後、県が態度を明確にしたのは、より住宅に近いN4とH地区と呼ばれる計3カ所のヘリパッドの使用中止まで。県首脳は知事が副知事や事務方との事前調整を経ずに発言した意味を「知事の思いだ」と語る」(同沖縄タイムス)

 「知事も「撤去」と口にしたものの、同時に「撤去までいきたいが、現実の壁の中で一歩ずつしか前に進んでいけない」とも付け加えた。県がどれほどの本気度と緊急性を持って国に迫るかは現時点では不透明だ」(同琉球新報)

 曖昧な言葉で追及をかわし、「オール沖縄」の支持を繋ぎ止めようとするのが翁長氏の常とう手段です。辺野古新基地を阻止する決定打である埋め立て承認の「撤回」について、「撤回も視野に入れて…」と数年来言い続けて、いまだに「撤回」していないのがその端的な例です。

 今回の「ヘリパッド撤去」もその類である可能性は小さくありません。そうでないというなら、「思い」を口にしただけではないというなら、直ちに行動に移し、日米両政府・在沖米軍に直接「撤去」を申し入れるべきです。


朝鮮半島緊迫の元凶は米韓合同軍事演習

2017年10月17日 | 朝鮮と日本

       

 アメリカは16日、朝鮮半島周辺で米韓合同軍事演習を強行しました(20日まで)。原子力空母ロナルド・レーガン(写真左)、原子力潜水艦ミシガン、韓国海軍イージス艦、「死の白鳥」の異名をとるB1B戦略爆撃機、F15戦闘機、「斬首作戦」の特殊部隊などが参加します。

 演習開始にあたってティラーソン米国務長官は「最初の爆弾が落ちるまで、外交努力は続ける」(日本時間16日)とあらためて武力行使を示唆しました。
 合同演習は、「米韓の結束を誇示し、北朝鮮をけん制する狙い」で、北朝鮮は、「『われわれに対する公然の威嚇』(16日付労働新聞)と反発」(17日付共同配信)しています。

 この経過から明らかなことは、「挑発」しているのは北朝鮮ではなくアメリカだということです。米韓合同軍事演習に対抗して仮に北朝鮮が「ミサイル」を発射したとしても、それは「挑発」ではなく、アメリカの「挑発」に対する「反発」です。

 「核実験やミサイル発射を『挑発』というが、あれは締め付けに対する『反発』だ。…制裁を強化すれば、ますます水爆に執着する。…好き嫌いを先に立てず、徹底的に話し合うしか道はない」(金時鐘氏・詩人、9月16日付朝日新聞)

 日本のメディアは相変わらず「北朝鮮が挑発…」と繰り返していますが、どちらが「挑発」しているかを見ない思考停止報道だと言わねばなりません。

 総選挙のさ中、もし北朝鮮が「ミサイル発射」していたら、安倍首相やメディアを先頭に大騒ぎするでしょう。ところが米韓合同軍事演習ではそうはならない。これは明らかに不公平・不公正です。
 むしろ、米韓合同軍事演習こそ朝鮮半島情勢を緊迫化させている元凶であることを銘記する必要があります。

 そもそもアメリカが最初に米韓合同軍事演習を開始したのは1975年(乙支フリーダムガーデン=指揮所演習)。大規模な野外演習(フォールイーグル)を始めたのが1985年。この年に北朝鮮は「挑発」どころかNPT(核拡散防止条約)に加入しています。

 重要なのは、米韓合同軍事演習が朝鮮戦争の「休戦協定」(1953年7月27日調印)に明白に違反していることです。

 「ジョージ・W・ブッシュ政権の対北朝鮮政策を検討したジョン・フェッファーは、米軍が韓国軍を巻き込んで実施する米韓合同軍事演習が、軍事演習の範疇で捉えきれないものであって、事実上”演習”という名の戦争である、とした。1953年7月27日に調印された朝鮮軍事休戦協定は、その意味で事実上全く機能していないことになる」(纐纈厚山口大名誉教授、9月16日文京区での講演=朝鮮新報より)

 「北朝鮮問題の根源は、1953年7月に結ばれた休戦協定を、米韓が破ってきたことにある。休戦協定では3カ月後に朝鮮半島から他国の軍隊は全て引き揚げると約束して署名したのに、アメリカと韓国は同時に(2カ月後に)米韓相互防衛条約(米韓軍事同盟)を締結して、「米軍は韓国に(無期限に)駐留する」という、完全に相反する条約にも署名した。…日本人には見たくない事実だろうが、これは客観的事実なので、直視するしかない。着地点の模索は、この「客観的事実を正視する勇気を持つこと」からしか始まらないだろう」(遠藤誉東京福祉大学国際交流センター長、「ニューズウィーク日本版」7月10日)

 「北朝鮮問題」でいま日本人に求められているのは、まさに「客観的事実を正視する勇気」、そしてメディアに流されず思考停止に陥らず、正義はどこにあるのかを自分の頭で考えることではないでしょうか。


高江ヘリ炎上ーヘリパッド容認した翁長知事の責任を問う

2017年10月16日 | 沖縄・翁長知事

     

 米軍ヘリコプターCH53Eが東村・高江の民有地に墜ちて炎上した事故に対し、15日、現場近くで緊急抗議集会が行われ、県内各地から約200人が集まりました。

 集会では、「原因究明」とか「それまでの飛行中止」などという弥縫策ではなく、「基地があるゆえの事故。北部訓練場を全面返還させよう」(16日付琉球新報)という訴えが相次ぎました(写真左)。

 集会参加者の訴え通り、相次ぐ米軍機事故から住民の生命・健康・暮らしを守るためには、米軍基地を撤去するしかありません。

 そこで問われるのは、翁長雄志知事の姿勢・責任です。

 翁長氏は今回のヘリ炎上に対し、「ヘリコプターが訓練する高江で起きてしまった。沖縄の置かれている環境にただただ悔しくもあり、怒りもある」(12日付沖縄タイムス「一問一答」)と述べ、まるで高江のヘリパッド建設に反対してきたかのようにいいました。

 事実はまったく逆です。翁長氏は知事選時の公約も投げ捨て、高江のヘリパッド建設を容認しました。それは基地反対住民を失望させ、逆に、建設工事を促進しました。(写真右)

 2016年11月28日、翁長氏は記者会見でこう言いました。

 翁長 「北部訓練場は過半返還が予定されている」
 記者 「北部訓練場は地元が求める形での返還の進め方ではない」
 翁長 「北部訓練場なども苦渋の選択の最たるものだ。…現実には高江に、新しいヘリパッドが6カ所も造られ、環境影響評価などもされないままオスプレイが飛び交って、状況は大変厳しい
 記者 「知事選の公約会見では高江のヘリパッド建設に反対した。『苦渋の選択』は後退では」
 翁長 「オスプレイの全面撤回があればヘリパッドも運用しにくいのではないか。…オスプレイの配備撤回で物事は収れんされるのではないか」(11月29日付琉球新報「一問一答」)

 翁長氏は「苦渋の選択」「オスプレイ配備撤回で収れんされる」などの言い訳で、新たなヘリパッド建設を容認したのです。

 これに対し県民からは厳しい批判が相次ぎました。たとえばー。

 「世界に誇るべきこの貴重な森を、翁長雄志知事は軍事・戦争のために放棄したのだ。問われるべき責任はあまりにも大きい。…工事は急ピッチで進められることになり、環境への負荷も想像を絶する。北部はこうして軍事拠点となってしまうのではないか。…知事を信じて闘ってきた人々への裏切り行為は断じて許されない」(屋冨祖昌子元琉球大助教授・昆虫分類学、2016年11月29日付琉球新報)

 批判の大きさに驚いた翁長氏は12月2日急きょ記者会見し、「決して容認したわけではない」(12月3日付沖縄タイムス)と”釈明”しました。
 ところがその記者会見でも、記者が「『オスプレイが使う限りヘリパッド建設は反対だ』とはっきり言うと分かりやすいかと思うがどうか」と質問したのに対し、翁長氏は、「苦渋の選択をするということがそういう意味だ」(12月3日付琉球新報)と再び「苦渋の選択」を繰り返すだけで、けっして「ヘリパッド建設反対」とは言いませんでした。なんの”釈明”にもなっていません。

 翁長氏は今回のヘリ炎上に対しても、「事故原因の徹底的な究明と早急な広報、今回の事故原因究明がなされるまでの同型機の飛行を中止するよう強く要請する」(12日付沖縄タイムス)と言いましたが、住民が望む「北部訓練場(ヘリパッド)の全面返還」には一言も触れませんでした。

 こうした知事の姿勢を変えない限り、米軍事故から県民を守ることはできません。翁長氏を支える「オール沖縄」の責任はとりわけ重大です。
 


米軍機傍若無人ー炎上ヘリに放射性物質、広島上空に”火の玉”

2017年10月14日 | 日米同盟・日米安保

       

 11日夕、高江の民有地で炎上した米軍大型ヘリCH53Eは「不時着」とされていますが、元運輸安全委員会航空事故調査官の楠原利行第一工業大教授は、「機体の壊れ方をみると、不時着以上の、墜落に近い『ハードランディング』だったのではないか。…米軍が『墜落』と言わないのは、沖縄の県民感情を考慮しているのだろう」(13日付中国新聞)と指摘しています。

 沖縄県民の不安・怒りをさらにかきたてているのが、炎上したヘリの機材に放射性物質が使われていたことです。

 「在沖米海兵隊は13日、本紙取材に『CH53Eのインジゲーター(指示器)の一つに放射性の材料が使われている』と認めた」(14日付琉球新報)
 「炎上事故があった東村高江では放射能測定器とみられる機器を持った米兵が現場に入った」(同)(写真左はそのもようと思われます)

 2004年8月13日にも同じCH53Eが沖縄国際大学に墜落しましたが、その時米軍は機体に放射性物質「ストロンチウム90」が含まれていたと発表しました。

 放射性物質に詳しい矢ケ崎克馬琉球大学名誉教授は、ストロンチウム90はプロペラローターにダメージが入った時にいち早く感知するためのものだとしたうえで、「一番激しく燃えたところにストロンチウム90の装置が搭載されている可能性が非常に大きい。沖縄国際大に墜落したときは6本のローターの1本だけが燃え上がったが、今回は6本全部燃え上がっている可能性が大きく、大変危惧している」(13日の報道ステーション)と警鐘を鳴らしています。

 米軍は放射性物質は「健康を害するのに十分な量ではない」(14日付琉球新報)としていますが、沖縄国際大に墜落した時は、消火活動にあたった米軍の消防隊員は消火活動の直後に放射能検査を行っています(日本の消防隊員には行われませんでした)。

 ストロンチウム90は、「骨の中に入ると内部被ばくとしてベータ線を浴び続ける危険性がある」(勝田忠広明治大学准教授・原子力規制委員会審査会委員、13日報道ステーション)という恐ろしい物質です。

 米軍機には放射性物質が使われており、事故で炎上すればそれが飛散し、住民が内部被ばくする危険性がある。それが現実のものとなりました。
 これはもちろん沖縄だけの問題ではありません。米軍機が傍若無人に飛び回る日本全土が直面している恐怖です(日米安保条約の「全土基地方式」)。

 時を同じくして、13日夕、RCC(中国放送)が重大なニュースを流しました。広島県北広島町の複数の視聴者から、11日、米軍機(F18か)から〝火の玉”がいくつも落ちてきた、という情報が寄せられたというのです(写真右)。

 軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏によれば、この”火の玉”は「フレア」というもので、ミサイルを回避するためのおとりの熱源。黒井氏は、「フレアは通常海上の訓練空域で発射される。民家の上空で発射されたことは聞いた記憶がない」(13日RCCニュース)と驚きを隠しませんでした。

 「ストロンチウム90」も「フレア」も、住民が暮らしている地域(上空)に、米軍がばらまいたものです。日本の領土領空をわがもの顔で飛び回り、住民を危険にさらす。
 これが在日米軍の姿、それを許している日米安保条約の実態です。


高江米軍ヘリ炎上と総選挙の「日米安保タブー」

2017年10月12日 | 沖縄・選挙

       

 ついに起こるべくして起こった!米軍CH53ヘリが11日夕、沖縄・東村高江の居住区域に「不時着・炎上」(機内で火災が発生して不時着したのですから限りなく墜落に近い)したことは、米軍基地が集中している沖縄の軍事植民地の実態をまざまざと示しました。

 高江はヘリパッド建設に反対する住民が永年非暴力の闘争を続けているあの高江。現場は民家から約300㍍の地点で、当時100㍍先では養豚作業が行われていた(12日付沖縄タイムス)のですから、人的被害が出なかったのが不思議なくらいです。ヘリパッドに反対する住民の不安・危機感が現実のものとなりました。

 炎上したCH53ヘリは、13年前の2004年8月13日に沖縄国際大学に墜落したヘリと同型機です。ここにも沖縄が永年にわたって置かれている実態が象徴的に表れています。

 翁長雄志知事は、「悔しくもあり、怒りもある」(12日付沖縄タイムス)と述べ、「原因究明がなされるまでの同型機の飛行中止」(同)を求めました。知事として当然です。
 しかし、翁長氏は、住民の反対運動をよそに、高江ヘリパッド建設には反対してきませんでした。結果、ヘリパッド建設が強行されました。この事実を忘れることはできません。

 ところで、今回の「米軍へり炎上」が、総選挙公示の翌日に起こったことは、きわめて象徴的ではないでしょうか。まるで、日本の政治(政党)をあざ笑っているようです。なぜなら、総選挙の各党の政策あるいは党首の演説・論戦で、沖縄からの米軍基地を撤去する有効策を打ち出している政党はただの1つもないからです。

 事故が起こって数時間後に、テレビ朝日の「報道ステーション」で党首討論会の録画撮りが行われました(写真右)。冒頭、司会者が安倍首相にヘリ炎上についてのコメントを求めました。安倍氏は相変わらず木で鼻をくくったことしか言いませんでした。
 驚いたのは、その後の討論の中で、ヘリ炎上・沖縄の基地問題について発言した党首が1人もいなかったことです。これが「本土」の政界の実態です。

 沖縄で米軍の事件・事故がなくならないのはなぜなのか。その元凶が日米同盟=日米軍事同盟=日米安保条約にあることは言うまでもありません。

 「日米同盟推進」の自民、公明、希望、維新、こころ各党が、米軍の事件・事故に対してまったく無力・無気力なのは当然でしょう。立憲民主、社民も大同小異です。

 問題は日本共産党です。共産党は今回の総選挙政策で、10項目の「重点政策」の7番目に、「米軍の新基地建設を中止し、基地のない平和で豊かな沖縄をつくります」と掲げています。
 スローガンは結構です。では、「基地のない沖縄」をどうやってつくるのですか?日米軍事同盟の解消=安保条約廃棄なくして「基地のない沖縄」が実現するとでも言うのでしょうか。

 「基地のない沖縄」というなら、当然、「日米軍事同盟反対」「日米安保条約廃棄」を明記しなければなりません。ところが、共産党の政策には「日本国民の安全よりも「日米同盟」を優先する」などと安倍政権を批判する部分で「日米同盟」という言葉は出てきますが、「日米同盟反対」とは言っていません。「日米安保条約」に至っては安保条約のアの字もありません。

 共産党はいつから国政選挙の政策から「日米軍事同盟反対」「日米安保条約廃棄」の文字を消すようになったのですか?

 それどころか、志位和夫委員長は日本記者クラブでの党首討論(8日)で、「国民の圧倒的多数により『自衛隊は解消しよう』との合意が成熟するまで、政府は一定期間、合憲の措置を引き継ぐ」(9日付共同配信)と述べ、「共産党が参加する連立政権が誕生した場合、一定期間は自衛隊を「合憲」とする立場を取るとの考えを示した」(同)のです。「自衛隊合憲」へ向けた大きな右足の一歩と言わねばなりません。

 共産党が「日米軍事同盟反対」「日米安保条約廃棄」「自衛隊は憲法9条違反」と国政選挙で声を大にして主張しなければ、日本の政界・政治からその声は消えてなくなることを、共産党・支持者は銘記すべきです。 


スペイン国王の政治発言と象徴天皇制の危険

2017年10月10日 | 天皇制と憲法

       

 スペイン北東部カタルーニャ自治州の独立について、プチデモン州首相はきょう10日にも議会で「独立宣言」を行う可能性があるといわれています。情勢は予断を許しませんが、見過ごすことができないのは、この問題についてのスペイン国王フェリペ6世の政治発言です。

 フェリペス国王は3日夜、テレビで演説し、「憲法と民主主義に背く無責任な行動により、カタルーニャと国家の安定を危機にさらした」(5日付共同配信)と住民投票を行った自治州政府を強く非難し、「(州政府は)国家に対して許し難い不誠実さを示し社会を分断した」(同)と独立に反対しました。

 住民投票の結果は、独立賛成が90・18%、独立反対は7・83%。フェリペス国王の発言は、この住民の大多数の意思、そして自治に反して「国家」を守ろうとするきわめて重大な政治発言でした。まさに異例・異常な事態と言わねばなりません。

 今回のフェリペス国王の政治発言であらためて明らかになったことは、王制の国では国王は時として公然と国家権力の側に立ち、国民を抑える政治的発言を行うということです。
 それはもちろんスペインだけではありません。

 2014年9月、スコットランドで同じく独立についての住民投票がおこなわれました(結果は「NO」が過半数)。この時、政治的発言は行わないはずのエリザベス女王が、「(独立は)慎重に考えてほしい」と公言し、「独立」に釘を刺したのです(2014年9月18日NHKニュース)。

 こうした王制国家の姿と、日本の象徴天皇制が果たして無関係といえるでしょうか。

 いうまでもなく日本国憲法は天皇に「国政に関する権能」はないと明記しています(第4条)。しかし、実際にはこれを無視した天皇の政治的言動や天皇の政治利用が頻繁に行われています。

 それが端的に表れた最近の例が、「生前退位」についての明仁天皇の「ビデオメッセージ」(2016年8月8日、写真右)です。
 「メッセージ」は「実質上「皇室典範を変えろ」という要求になっている」もので、「明らかに政治的な発言です」(吉田裕一橋大教授、『平成の天皇制とは何か』岩波書店)。

 「ビデオメッセージ」は明仁天皇が自分の意思で行ったものですが(もちろんそれ自体が重大問題)、憲法上天皇の「国事行為」は「内閣の助言と承認」によって行われることになっています(第3条、7条)。それが「公的行為」にも拡大解釈されています。ということは、時の内閣は「公的行為」と称して、「助言と承認」を与えることにより、天皇を政治利用する危険性があるということです。それは実際に、きわめて政治的な「皇室外交」などに具体化されています。

 天皇制(象徴天皇制)にはそうした政治的危険性があることを、今回のスペイン国王の発言は私たちに示しています。

 実は今回のスペイン国王の発言をめぐっては、もう1つきわめて注目される事実があります。
 それは、国王から非難されたプチデモン州首相が、「国王フェリペ6世に対して「カタルーニャを失望させた」と敵意をむき出しにした」(6日付共同配信)ことです。

 国王の理不尽な政治発言に対し、州首相が公然と反発(国王批判)したのです。住民自治の立場に立てば当然でしょう。
 しかし、この当然のことが、はたして日本で行われるでしょうか。