29日付の琉球新報の「記者席」(コラム)にこんな記事が載りました。
「陸上自衛隊祝賀行事に招かれた屋良朝博衆院議員(国民民主)。出席した国会議員4人の中で、唯一『オール沖縄』陣営だった。あいさつで『駐屯地創設47周年という数字を見ると感慨深い。地元に受け入れられてきた努力に敬意を表する』と評価しつつ、『安全保障環境が厳しいといわれるが、それを緩和するのが政治の役割だ』とけん制。力でなく外交で緊張関係を解消していく考えを示した。バランス感覚で切り抜けたが『オール沖縄』内で緊張が走りそう?」(全文、太字は引用者。写真左)
記者は懸命にフォローしようとしていますが、フォローになっていません。「バランス感覚」どころか、自衛隊賛美は明りょうです。
この記事には、いつのどういう「祝賀行事」なのかが書かれていません。が、「駐屯地創設47周年」ということから今月24日に行われた「第15旅団創隊9周年 那覇駐屯地創立47周年記念行事 陸自祭」(第15旅団公式サイト。写真右)だと思われます。
「陸自蔡」では何が行われたか。25日付琉球新報によれば、「訓練展示では、敵国が沖縄本島内への本格侵攻を目的として一部地域を占領・潜伏していることを想定し、地上と上空から攻撃して奪還する訓練を披露した。訓練には米海兵隊も参加した」。
さらに、「記念式典で中村(裕亮)旅団長は…宮古島市に宮古警備隊を新編したことを紹介し『海上・航空自衛隊と共同し在沖米軍と連携を密にし、南西地域の抑止力の要として役割を果たしたい』とあいさつした」(同琉球新報)
米海兵隊と一体で実践さながらの訓練を披露し、宮古島への自衛隊配備を「抑止力の要」とし「在沖米軍との連携」を誇示したのです。屋良氏はその自衛隊に対し、「地元に受け入れられてきた努力に敬意を表する」と賛辞を送りました。宮古島、石垣島などで自衛隊ミサイル基地建設に粘り強く反対している島民・市民に対する敵対行為と言わねばなりません。
問題は、屋良氏の「陸自祝賀行事」出席・賛辞が、屋良氏個人の問題ではすまされないことです。
第1に、屋良氏は玉城知事の議員辞職に伴う補欠選挙(7月16日、衆院沖縄3区)で、「オール沖縄」陣営の全面的支援によって当選した、紛れもない「オール沖縄」の衆院議員です。その議員活動には当選させた「オール沖縄」陣営にも当然責任があります。日本共産党、社民党はじめ「オール沖縄」陣営は、今回の屋良氏の行為をどうとらえているのでしょうか。このまま不問に付すつもりでしょうか。
第2に、屋良氏は議員になる前から現在に至るまで「新外交イニシアチブ(ND、猿田佐世代表)」の中心メンバー(評議員)です。屋良氏の今回の陸自祝賀出席・賛辞が、NDの政策と無関係といえるでしょうか。屋良氏は玉城知事と親しく、NDは玉城県政とつながりがあるだけに不問にできません。
NDには、玉城知事の「万国津梁会議」をめぐる「入札談合」の疑惑もあります(この問題の真相究明・追及はどうなっているのでしょうか)。
第3に、25日の琉球新報、沖縄タイムスは「陸自祭」について報じながら、屋良氏の出席には一言も触れていません。冒頭の琉球新報のコラムで初めて明るみに出ました。それも正面から取り上げるのではなく、「記者席」という小さなコラムです。沖縄タイムスにはそれさえありません。
「オール沖縄」で当選したばかりの衆院議員が陸自の祝賀会に出席し賛辞を送ったことは、沖縄への自衛隊配備、反対運動の帰趨の上でも、「オール沖縄」の責任という点でも、けっして見過ごすことはできません。それを報じないのは、自衛隊問題に対する軽視以外のなにものでもありません。
こうした報道姿勢が、安倍政権の自衛隊増強、自衛隊と米軍の一体化、沖縄の前線基地化に対する世論・市民運動に大きな影響を及ぼしていることを、両紙は銘記すべきです。