新型コロナ感染の新たな波の可能性が高まっている中、菅義偉政権はあくまでも東京五輪を強行しようとしていますが、その背景には、スポンサー企業への配慮、スポンサー企業本位があります。
菅政権はたんに開催するだけでなく、感染拡大必至の「有観客」に決めました。
「専門家からの提言を退け「観客ありき」に固執した背景には、次期衆院選を見据えて観客の応援で五輪成功を演出したい菅義偉首相の思惑と、多額の協賛金を出すスポンサーへの配慮がのぞく」(6月22日付琉球新報=共同)
4月段階では、組織委員会内にも「無観客の覚悟」があったといいます。
「しかし、組織委がスポンサーを対象に開いた説明会で企業側からは異論や不満が噴出。「このタイミングで無観客の可能性を認めた意味が分からない」…厳しい言葉に、組織委側は釈明に追われた」「スポンサーの強い反発を受けた組織委も、5月の連休明け以降、急速に「観客ありき」へとかじを切っていく」(同)
さらに組織委は6月21日、会場で酒類を販売するという驚くべき方針を決定しました。これは当然世論の厳しい批判をあび、翌22日には撤回しました。
「アルコール飲料会社「アサヒビール」とスポンサー契約を結んでいる組織委は22日「スポンサー等の意向で販売方針を決めることはない」との見解を発表」(23日付中国新聞=共同)しました。
こうした「見解」をわざわざ発表したのは逆に、「酒類販売」の当初の方針がアサヒビール(写真中)の意向あるいはその忖度であったことを示しています。すぐ撤回したのも企業イメージの悪化を恐れた同社の意向に沿うものであることは明らかです。
スポンサー企業の傍若無人な振る舞いが表面化した例はまだあります。
「岩手県北上市で18日に行われた東京五輪の聖火リレーで、岩手県警の警察官が、スポンサーである日本コカ・コーラ社の関係者から東京五輪特製グッズを受け取った後、関係者をリレーを先導するパトカーの運転席に座らせ、写真撮影させていた。朝日新聞記者が現場で目撃し、動画を撮影した」(22日の朝日新聞デジタル、写真右も)
NHKが連日キャンペーンしている聖火リレーは、密集による感染拡大の温床であるだけでなく、スポンサー企業の宣伝の場になっているのです。
現場を取材した記者はこう伝えています。
「5月21、22日に鳥取入りした東京五輪聖火リレー…時折密集は生まれ、大声で応援する人も絶えなかった。…障害者や中高生のランナーたちには心打たれた。ただコースで存在感を示したのは、自社グッズを配り歩くスポンサーの集団だった」(6月18日付中国新聞)
「聖火出発式」(3月25日)でもスポンサー企業への配慮が目につきましたが(写真左、3月30日のブログ参照)、東京五輪を陰に陽に操っているのがスポンサー企業であることは明白です。スポンサー企業関係者は入場者上限の制限を受けない特権も与えられています。感染拡大に直結する特権です。
また、スポンサーの中には、読売新聞、朝日新聞、日経新聞、毎日新聞、産経新聞、北海道新聞の6紙が入っています。朝日新聞以外は「五輪中止」を主張することもなくメディアとしての役割を果たしていないことも銘記される必要があります。
近年のオリンピックは、国家主義とともに商業主義にまみれていますが、スポンサー企業本位の実態はその表れにほかなりません。
スポンサー企業は、ランク上位から、「ワールドワイドオリンピックパートナー」:コカ・コーラ、トヨタ、パナソニック、ブリヂストンなど14社、「JOCゴールドパートナー」:アサヒビール、日本生命、キャノン、NEC、NTTなど15社、「JOCオフィシャルパートナー」:全日空、日本航空、JTB、日本郵便、JR東日本、読売新聞、朝日新聞、日経新聞、毎日新聞など32社、「JOCオフィシャルサポーター」:清水建設、ヤフー、産経新聞、北海道新聞など20社、合計81社(JOC公式サイトより)。