アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「北朝鮮の挑発」という「報道」の不当性・危険性

2017年04月29日 | 日米関係とメディア

     

 「北朝鮮による度重なる挑発行為は断固容認できない」。菅官房長官は29日の会見で、北朝鮮の「ミサイル発射」に対しこう述べました。
 「北朝鮮の挑発」。それは日本政府の常とう句であり、同時に、日本のメディアが1社の例外もなく繰り返し使っている言葉です。

 それは果たして事実に基づいた「報道」でしょうか。

 「挑発」とは、「相手を刺激して事件などが起こるようにしかけること」(『広辞苑』)です。
 朝鮮半島の緊張を高めているこの間のアメリカ(トランプ政権)と日本(安倍政権)、そして北朝鮮の主な動きを振り返ってみましょう(日時は日本時間)。

★3・1 米韓合同軍事演習開始(過去最大規模。金正恩委員長の「斬首作戦」を含む)。
★4・7 トランプ大統領、シリアをミサイル攻撃(「アサド政権による化学兵器使用」の証拠示さず)。
★ 同 トランプ大統領、安倍首相との電話会談で「全ての選択肢がテーブルの上にある」。安倍氏「高く評価する」。
★4・9 トランプ大統領、原子力空母カール・ビンソンの朝鮮半島近海への展開を指示。
★4・10 米ティラーソン国務長官、シリア攻撃は北朝鮮をけん制したものと示唆。
★4・11 トランプ大統領「北朝鮮へ無敵艦隊を送っている」。
☆ 同  北朝鮮、最高人民会議(国会)で「外交委員会」を復活。
★4・13 トランプ大統領「(北朝鮮制裁を)中国がやらないなら、米国と同盟国でやる」。
★ 同  安倍首相「(北朝鮮は)サリンを(ミサイルの)弾頭に付けて着弾させる能力をすでに保有している可能性がある」(参院外交防衛委員会)。
★4・14 米、アフガニスタンで「大規模爆風爆弾(最強の爆弾)」を初使用。トランプ大統領「北朝鮮は問題だ。問題は対処される」。
★ 同 米NBCが「北朝鮮に核実験の兆候があればアメリカは先制攻撃する」と報道。
☆4・15 北朝鮮、「故金日成主席生誕記念日」で軍事パレード。「新型ミサイル」初公開。
☆4・16 北朝鮮、「ミサイル発射」(失敗)
★4・17、18 米ペンス副大統領、韓国と日本を相次いで訪れ、「平和は力によってもたらされる」。安倍氏「支持する」。
★4・23、24 カール・ビンソンと海上・航空自衛隊が共同「訓練」(写真右)。
☆4・25 北朝鮮、「朝鮮人民軍創建記念日」で砲撃訓練。
★4・26 米、最新鋭迎撃システム(THAAD)の発射台やレーダーを韓国に搬入。
★4・27 トランプ大統領、「北朝鮮政策」を上下両院の全議員に異例の説明。
★4・28 米、国連安保理で北朝鮮に対する「国際的包囲網」構築を訴え。
☆4・29 北朝鮮、「ミサイル発射」(失敗)。
★ 同  カール・ビンソン、日本海へ。日本海で日米・米韓共同「訓練」(予定)。

 以上の事実経過を先入観抜きで見れば、どちらが「挑発」しているかは明白ではないでしょうか。圧倒的軍事力で「相手を刺激して事件などが起こるようにしかけ」ているのは、アメリカ=トランプ大統領であり、それに忠実に追随している日本政府=安倍首相です。

 問題は北朝鮮の「核開発・保有」だ、と言うかもしれません。もちろん核開発・保有は許されるものではありません。しかし、その背景には、いまだに朝鮮戦争が終結していない(休戦中)状況で、北朝鮮が「平和協定」へ向けた対話を望んでいるにもかかわらず、アメリカがそれに耳を貸さず、韓国と一体となって北朝鮮に軍事圧力をかけ続けている(合同軍事演習の定例化など)実態があることを見落とすことはできません。

 「核」についても、アメリカが自国の膨大な核兵器保有は棚上げし、またインドなどの「核保有」は容認しながら、北朝鮮にだけ「放棄」を迫るのは、大国主義以外の何ものでもありません。北朝鮮に「核放棄」を求めるなら、当然アメリカ自身も核兵器を放棄すべきでしょう。そもそも「核兵器禁止条約」に反対するアメリカや日本に北朝鮮を非難する資格があるでしょうか。

 「北朝鮮の挑発」と言い続ける「報道」に正当性がないことは明らかです。自ら事実を検証することなく、政府の言い分(用語)を引き写しするのではメディアとしての基本的資格が問われます。

 重大なのは、「北朝鮮の挑発」と繰り返すことは、正当性がないだけでなく、日米両政府の「北朝鮮敵視」に加担することになり、アメリカによって軍事衝突(戦争)が引き起こされた時には、米・日の責任を棚上げし北朝鮮を敵視することにつながることです。
 それはかつて帝国日本の朝鮮・中国侵略・植民地化を新聞が賛美したことの二の舞いと言わねばなりません。

 


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今村復興相発言と「土人」発言

2017年04月27日 | 安倍政権と民主主義

    

 「まだ東北で良かった」。今村雅弘前復興相の暴言は、「失言」でも「ゆるみ」でもありません。本音です。しかも、今村氏だけではなく、安倍首相をはじめとする政府・自民党の本音です。それはたんに「被災者を傷つけた」だけでなく、国家権力の本質にかかわる問題です。

 今村氏の発言はこうでした。
 「(東日本大震災による)社会資本などの毀損もいろんな勘定の仕方があるが、25兆円という数字もある。これが東北で、あっちの方だったから良かったけど、これがもっと首都圏に近かったりすると莫大な、甚大な被害があったと思っている」(25日、自民党・二階派のパーティーで。26日付中国新聞=共同配信)

 発言のポイントは、「東北」と「首都圏」を対比させ、「東北」が「あっちの方」、つまり「首都圏」から遠かったから、「社会資本」が「甚大な被害」に遭わずにすんだ、というところにあります。

 すなわち、「首都圏」(皇居が存在する地域)を「国」の中心と考え、「東北」を「あっちの方」=「辺境」とみなし、被害が「国」の中心でなく「辺境」で「良かった」ということであり、「東北」だけでなく「首都圏」以外の「地方」に対する露骨な差別発言にほかなりません。

 これは「首都圏」が使う電力のための危険な原子力発電所を、「首都圏」から「あっち」の「東北」「地方」に建設する、「首都圏」本位の「原発立地論理」とまったく同じです。

 かつて第2次安倍内閣で環境相だった石原伸晃現経済財政担当相が、核廃棄物の中間貯蔵に関連して「最後は金目でしょ」(2014年6月16日)と本音を漏らし不信任案を突きつけられたことがありましたが、これも同根です。

 今村氏や石原氏のように露骨に本音を漏らすのではなくより巧妙にこの差別政策を実行しているのが安倍首相自身です。
 「東京五輪招致」のために汚染水は「アンダー・コントロール」だと国際的な大ウソをつき、今また「五輪」のために被災者を半ば強制的に被災地に「帰還」させようとしています。被災者・避難者のことなど眼中になく、「五輪」へ向けた公共事業という「社会資本(経済効果)」のために、東北・被災地を犠牲にする安倍首相。今村氏とどこが違うのでしょうか。

 ここで思い起こされるのが沖縄・高江での「土人」発言です。

 2016年10月18日、高江で安倍政権のヘリパッド建設強行に抗議していた作家の目取真俊氏に対し、大阪府警の機動隊員が言い放ちました。「どこつかんどるんじゃ、こら、土人が
 目取真氏は振り返ってこう述べています。
 「ネットでは前からああいう言葉が飛び交っていたが、機動隊は公務員でしかも職務中。これまでとは違う次元で沖縄差別が口にされるようになった怖さがある」(16日付共同配信の辺見庸氏との対談)

 重要なのは、「土人」発言を鶴保庸介沖縄北方担当相が「差別と断定できない」と言い放ち、安倍政権が閣議決定の「答弁書」でそれを追認したことです。「土人」発言はいち機動隊員のものではなく、安倍政権自体のものです(ちなみに鶴保氏は今村氏と同じ自民党・二階派)。

 目取真氏との対談で辺見庸氏は、「『土人』にはこだわらなければならない。(19世紀末の)琉球併合後、日本の権力の基層部でひそかに語り継がれ、伝承されてきた差別意識、基本的な感情ではないか」と指摘しています。
 「土人」発言で露呈した「沖縄」に対する差別意識の上に立って、「日本の権力」と「本土」の「国民」は、「沖縄」に米軍基地を集中させ日米安保条約の犠牲を集中的に押し付けています。

 「東北・地方」に対する差別の上に立った「原発・災害」。「沖縄」に対する差別の上に立った「軍事基地」。その相似形が、「今村発言」と「土人」発言であらためて浮き彫りになっています。

 安倍政権が県民の意思を無視して辺野古の埋め立てを強行し、トランプ政権の対北朝鮮軍事圧力強化によって、沖縄がまたしても戦争の前線基地にされる危険性が高まっているまさにその時に、「今村発言」が飛び出したのは、けっして偶然とは思えません。


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「沖縄」「朝鮮半島」―「当事者」はだれか?

2017年04月25日 | 沖縄と基地

     

 安倍政権は今日(25日)、ついに辺野古埋立の護岸工事を強行しました。また、今日は北朝鮮の「朝鮮人民軍創建記念日」で、朝鮮半島の情勢も一触即発です。
 「沖縄」や「朝鮮半島」のこうした事態の、「当事者」はいったいだれでしょうか?

 21日付の沖縄タイムスで、平安名純代・米国特約記者は「沖縄基地、日米国民の問題 当事者意識持ち行動必要」の見出しのコラム(「想い風」)で、こう指摘しています。
 「在沖米軍基地を巡る問題は『沖縄の問題』ではなく、『沖縄が押しつけられてきた問題』だ。これを解決するには、沖縄に基地を押しつけてきた日本国民と米国民が『われわれの問題』と認識し、行動する必要がある

 平安名記者の指摘から、16日付の沖縄タイムス、琉球新報の両紙に載った(共同配信)、作家の辺見庸、目取真俊両氏の対談が想起されました。「沖縄の基地問題の根底に潜むものは何なのか」がテーマです。全文が一読に値しますが、特に印象深かった個所を抜き出します。

 目取真 沖縄の経済は基地で成り立っていると思いたい意識構造がヤマトゥにある。県民は基地で食べていると思えば、基地を押し付けているやましさを解消できるから。

 辺見 状況は基底部から変わってきていて、憲法9条を擁護する人も、それを行動化しない。9条賛成で日米安全保障条約容認も「あり」になった。ホンド(「本土」-引用者)の立ち回りは論理の破綻であるとともに、倫理の根源にも触れる。端的に言うと、ホンドの視線には卑劣なものがある。沖縄からみたらもっと卑怯さを感じると思う。

 目取真 「九条の会」の組織が全国各地にできているが、日米安保条約には踏み込まない。意図的に平和運動の軸を安保条約反対から9条擁護にずらしていった気がする。沖縄が抱える状況とは乖離している。安保条約の問題を抜きにした9条擁護は欺瞞だと思う。

 辺見 そこですね。安保条約を事実上容認し、かつ反戦平和の側にも立ちたい人びとが多い。あまりに虫がよすぎる。しかし、安保条約肯定は、沖縄の巨大な米軍基地を是認することです。一方、沖縄の基地の県外そして国内移設を訴えている人びともいる。善意は疑わないけれど、県外移設論は安保条約そのものの本質を突いてはいない。

 目取真 (「沖縄の抗議行動には若い世代の参加が少ないとも感じる」という司会者=共同通信編集委員に対し)逆に聞きたいが、たとえば関東近県で若者の抵抗運動、政治運動がどれだけあるのか。…辺野古では、そういう人(「年金生活者」やアルバイトー引用者)が運動を維持し、20年も続いている。今の日本にこれほど長く続いている市民運動がいくつあるのか。辺野古へ来て座り込みすることはできなくても、ヤマトゥでも日米安保条約に反対することはできる。それぞれの場でやればいい。安保条約の上で暮らす全ての人が当事者。責任を負っている。

 「沖縄の基地問題」、いいえ、「沖縄に基地を押しつけている問題」で、私たちヤマト(ホンド)の人間は間違いなく「当事者」です。そのことの意味を、「辺野古」が重大局面を迎えている今こそ、あらためて肝に銘じる必要があります。自戒を込めて痛感します。

 「沖縄」だけではありません。そもそも朝鮮半島の南北分断は、帝国日本の(あるいはもっと昔からの)朝鮮侵略が発端です。現在の緊迫した状況を作り出している直接の原因である朝鮮戦争でも、日本はアメリカと一体となって(後方支援や軍事行動への部分参加など)事実上参戦しました。そしていま、安倍首相のトランプ大統領への賛辞や、空母カールビンソンを中止とする「空母打撃群」と海上自衛隊の共同「訓練」によって、日本は文字通り米軍と一体になって北朝鮮に圧力をかけています。
 「朝鮮半島」の事態に対し、日本は、私たち日本人は、間違いなく「当事者」です。

 こうして「沖縄の基地」や「朝鮮半島の緊張」に対して私たち日本人が「当事者」である根源が、いずれも日米安保条約(日米軍事同盟)であることは言うまでもありません。

 日米安保条約を(事実上)容認した「9条擁護」は、論理と倫理の破綻であり卑劣だという辺見氏の言葉、そして、「安保条約の上で暮らす全ての人が当事者」という目取真氏の言葉を、深く受け止めたいと思います。


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うるま市長選で敗北、翁長知事は直ちに「承認撤回」を

2017年04月24日 | 沖縄・翁長・辺野古

     

 23日投票の沖縄・うるま市長選で、「オール沖縄」の山内末子氏=社民、共産、自由、社大、民進推薦は、現職の島袋俊夫氏=自民、公明推薦に得票率で10㌽差をつけられて敗北しました。この結果をどうみればよいでしょうか。

 注目されるのは、勝敗とともに(あるいはそれ以上に)、投票率が前回(8年前)より1・85㌽低い60・70%と過去最低を記録したことです。昨年の県議選や参院選よりは高いとはいえ、「安倍政権と翁長氏がそれぞれ推す候補の一騎打ちは全国的にも注目を集めた」(24日付沖縄タイムス社説)選挙として、この低投票率は見過ごせません。

 「過去最低の投票率」の大きな原因は、争点の不明確化、端的に言えば山内氏=「オール沖縄」陣営が「辺野古」をあえて争点から外したことにあったと言わざるをえません。

 「『オール沖縄』勢力は…求心力の源泉である『辺野古』問題を積極的に語らない戦略で選挙戦に臨んだ」(24日付琉球新報)のです。結果、山内氏は「教育政策や市政刷新を中心に訴えたが現職との差別化に苦しんだ」(24日付沖縄タイムス)。「その(山内氏の政策のー引用者)内容は島袋氏の政策と重なる部分が多い」(同社説)からです。

 政策に大差のない選挙が現職に有利なのは自明です。なによりそれは、有権者から投票意欲を奪います。その結果が「過去最低の投票率」となったことは明らかでしょう。
 山内氏と島袋氏の政策の大きな違いは、言うまでもなく「辺野古」です。山内氏が新基地に一貫して反対しているのに対し、島袋氏のバックボーンである沖縄自民党は8日の県連大会で「辺野古新基地容認」を明確に打ち出したばかりです。これこそ最大の政策的相違点であり、山内氏の政策の優位点です。
 ところが山内陣営・「オール沖縄」はそれを自ら封印し、争点のない選挙にしてしまったのです。

 選挙結果にはいろいろな要素が反映しますから、仮に山内氏が「辺野古新基地反対」を前面に掲げていても、選挙結果がどうなったかは分かりません。
 しかし、問題は「結果」ではありません。18日のブログで述べたように、「護岸工事」が目前に迫っている中で行われる重要な一騎打ちの選挙で、「辺野古」を前面に掲げないこと自体、新基地阻止のたたかいにおいて許されることではありません。
 ところが「オール沖縄」陣営はそれをやってしまった。いわばたたかわずして敗れたのです。その責任はきびしく問われなければなりません。

 問題は、この選挙結果を受けて今何をすべきかです。

 「オール沖縄」陣営には敗北に打ちひしがれているヒマはないはずです。「護岸工事」はきょう(24日)にも強行されると報じられています。うるま市長選の誤りを正し、いますぐ「辺野古新基地阻止」に向けたたたかいを再構築しなければなりません。その具体的な方策は言うまでもなく、翁長氏に直ちに埋立承認を「撤回」させることです。

 選挙結果を受けて、琉球新報は「『オール沖縄』勢力は…手詰まり感も漂う中、基地問題以外の分野での訴求力をいかに高めるかが今後の問題となる」(24日付)とし、沖縄タイムスは「翁長知事を支える層からは知事の埋め立て承認撤回や県民投票などの新たな動きを求める声があり…」(24日付)、「辺野古ノーの取り組みは再構築を迫られている」(同社説)と論評しています。

 驚くべき論調です。いま「基地問題以外の分野」や「県民投票」に視点を移したり「再構築」などと言っている場合でしょうか。今日にも「護岸工事」は強行され、事態は取返しがつかないことになってしまうのです。
 新報、タイムスが「辺野古新基地反対」なら、「辺野古の環境破壊反対」なら、なぜ「翁長氏は直ちに承認撤回を」と主張しないのでしょうか。
 県内に絶大な影響力を持つ新報、タイムスが、これまで翁長氏に「承認撤回」を強く迫って来なかったことが翁長氏の撤回棚上げを許してきた大きな要因であることを両紙は銘記すべきです。
 
 宜野湾、宮古、浦添に続くうるまでの「オール沖縄」陣営の市長選4連敗。その根底には、翁長氏が「承認撤回」を知事選で公約しておきながら、いつまでたっても実行しようとしないことに対する有権者の批判があることは明白です。
 
 翁長氏は今すぐ「承認撤回」すべきであり、「オール沖縄」陣営は翁長氏にそれを実行させねばなりません。それが知事選で翁長氏を担いだ責任ではないでしょうか。


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辺野古護岸工事目前、「承認撤回」は゛ラストチャンス”

2017年04月22日 | 沖縄・翁長知事

     

 辺野古新基地を阻止するために、翁長雄志知事は直ちに埋立承認を撤回すべきだ、とこれまで何度も言ってきましたが、ほんとうにもう一刻の猶予もなくなりました。あえて言いますが、「承認撤回」は今が゛ラストチャンス”です。

 「政府は…今週後半以降に着手を延期していた護岸工事について、来週にも始める方針を固めた。反対運動の活発化をにらみ、警備態勢の再確認を進めていたが、近く準備が整う見通しになった。政府関係者が20日、明らかにした。
 護岸工事では、海上に張り出す形で建設する施設の外枠を造る。大量の石材や消波ブロックが海底に積み上げられることで原状回復は困難となり、沖縄側が反発してきた辺野古移設問題は大きな節目を迎える」(21日付中国新聞=共同配信)

 今すぐ工事を止めなければ、取返しがつかないことになります。「県民投票」などと言っている場合ではありません。

 「国は…護岸工事に着手するとみられている。取り返しのつかない環境破壊がなされる前に、直ちに撤回を行うべきである。…昨年暮れの最高裁判決は、知事には埋立承認権者として広範な裁量権があることを例示した。…知事は埋立承認権者として承認撤回ができる」(桜井国俊沖縄大名誉教授、4月16日付琉球新報)

 「翁長知事は埋め立て承認の撤回を打ち出し、これ以上の海の破壊を許さない姿勢を明確に示すべきだ。…埋め立て承認の取り消し・撤回は翁長知事の選挙公約であり、だからこそ沖縄の有権者は、公約を裏切った仲井真知事に10万票近い大差をつけて翁長氏を当選させたのだ。撤回に対する支持はそこですでに示されている。改めて県民を試すようなこと(県民投票ー引用者)はすべきではない」(目取真俊氏、4月19日付琉球新報)

 「今、世界に誇る辺野古・大浦湾の生物多様性は風前の灯です。緊急に必要なのは県民投票ではなく、埋め立て承認の撤回です。これまでに投げ込まれたコンクリートブロックは撤去可能ですが、石材や土砂が投げ込まれれば撤去不可能です。取り返しがつかなくなる前に、一刻も早く翁長知事が『撤回』に踏み切ること。それこそが、海の恩恵を知る地元住民、そして大浦湾海上、米軍キャンプ・ジュワブゲート前で、基地建設を何とか止めたいと必死で頑張っている県民の共通の切なる思いです」(浦島悦子さん・名護市、4月22日付琉球新報)

 翁長氏、そして「翁長与党」の共産党、社民党、自由党、社大党などの党会派、「オール沖縄会議」のメンバーは、こうした声をどう聴くのでしょうか。

 あす(23日)投票のうるま市長選で「オール沖縄」候補はあえて「辺野古新基地阻止」を前面に掲げず、何度も応援に行っている翁長氏も「撤回」はおろか「辺野古新基地」自体に触れようとしていません。選挙選を報じている「しんぶん赤旗」も同様です。

 その一方、「翁長与党」はじめ「オール沖縄」陣営は、今月29日にまた「県民集会」を行い、「翁長雄志知事にも参加を求める」(22日付琉球新報)といいます。
 しかし、翁長氏はすでに3月25日の「県民集会」で、「撤回を、力強く、必ずやる」と言明したではありませんか(写真中)。にもかかわらず、この切迫した情勢の中で、「撤回」は1ヶ月近く棚上げされたままです。これが翁長氏の手法であり、本性です。
 
 翁長氏の空約束・アリバイづくりの場となる「県民集会」を繰り返すより、県庁の知事室の押しかけ、その場で翁長氏に「承認撤回」を表明させる行動こそ、いま必要なのではないでしょうか。


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憲法に反する「力による平和」の日米同盟

2017年04月20日 | 日米安保体制と平和・民主主義

     

 アメリカのペンス副大統領は18日の安倍首相との会談で、北朝鮮に対する軍事圧力に関連して、「平和は力によってのみ初めて達成される」と述べました。これに対し安倍首相は、「(アメリカが)全ての選択肢があるとの考えで対処しようとしていることを日本は評価する」と賛辞を送りました。
 日米同盟とは「力による平和」を共通基盤にしたものであることを白日の下にさらした会談でしたが、これを過小評価したり見逃したりすることは絶対にできません。
 なぜなら「力による平和」は、日本国憲法はもちろん、国連憲章の基本理念にさえ反し、大戦の歴史的教訓を踏みにじるものだからです。

 国連憲章は前文でこううたっています。
 「われら連合国の人民は、われらの一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い、基本的人権と人間の尊厳及び価値と男女及び大小各国の同権とに関する信念をあらためて確認し…共同の利益の場合を除く外は武力を用いないことを原則の受諾と方法の設定によって確保(する)」

 そのうえで憲章第2条第3項は、「すべて加盟国は、その国際紛争を平和的手段によって国際の平和及び安全並びに正義を危うくしないように解決しなければならない」と規定しています。

 国連憲章がこう定めているのは、「紛争の平和的解決つまり非軍事的解決こそは、国連憲章の最も基本的な精神である。これは、第二次大戦の苦い教訓の上に立っている」(渡辺洋三氏『憲法と国連憲章』岩波書店)からです。

 さらに、憲章第2条第4項は、「すべて加盟国は、その国際関係において、武力による威嚇又は武力の行使を…慎まなければならない」と規定しています。
 「ここで特に注目されるのは、単に武力行使のみならず、武力による威嚇もまた禁止されていることである。これは、戦争を禁止しても、すでに戦争(武力行使)に入ってからでは手おくれとなるので、戦争になる以前に武力による威嚇そのものを禁止しなければならないという趣旨である」(渡辺洋三氏、前掲書)

 こうした国連憲章の基本理念をさらに徹底させたのが、いうまでもなく日本国憲法です。

 憲法は前文で、「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と宣言しています。

 そして第9条第1項は「日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と、「武力の行使」だけでなく「武力による威嚇」の放棄を明言し、第2項で「前項の目的を達成するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない」と戦力不保持を明記しています。

 日本国憲法の平和主義は、欧米の憲法や国連憲章とくらべても傑出しています。

 「立憲主義を生み出した西欧の文明は、『最終的には力によって擁護される正義』という思想と分かちがたく結びついてきた。…ほかならぬ国際連合憲章も、『戦争』の違法化を前提としながらも、最終的には、軍事力による制裁によって平和を回復するという考え方のうえに組み立てられている。…それに対し、日本国憲法は、九条によって、二一世紀にむけての人類社会に対し、あえて、もうひとつの別の選択を提示したものである」(樋口陽一氏『憲法入門』勁草書房)

 トランプ政権による北朝鮮への軍事圧力が、国連憲章が禁じている「武力による威嚇」にあたり、「力による平和」が日本国憲法の基本原則に反していることは明白です。
 そして実態的にも、米軍と憲法違反の軍隊(戦力)である自衛隊の一体化が急速に進行しています。海自は朝鮮半島沖で米原子力空母カール・ビンソンと共同「訓練」を行う計画です。ペンス副大統領が19日に横須賀の米原子力空母ロナルド・レーガンで行った北朝鮮をけん制する演説には自衛隊も参加していました=写真右。

 これが日米安保条約による憲法違反の「日米同盟」の実態です。

 ところがこの憲法違反の「日米同盟」を擁護しているのが日本のメディアです。
 ペンス副大統領の「力による平和」発言とそれを「評価」した安倍首相を社説で批判した新聞は1つもありません。
 「北朝鮮への圧力は、外交、軍事両面で戦略的に高めるべきだ。…厳しい懲罰行動も辞さない姿勢を示すことが欠かせない」(19日付社説)と「武力による威嚇」をたきつけている読売新聞は論外として、「平和解決へ日米連携を」という東京新聞でも、「対話を呼び掛けるだけで北朝鮮が核、ミサイル開発の断念に応じるようなことはないだろう。残念ながら軍事力の存在がなければ、交渉のテーブルに着けることすらできないというのが、国際政治の現実ではある」(19日付社説)と、「武力による威嚇」を肯定しています。

 憲法違反の「日米同盟」(日米安保体制)を擁護・肯定してはばからないこうした日本のメディアが、「安倍内閣の高支持率」を作り出している要因の1つであることは明らかです。


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沖縄・うるま市長選でなぜ「辺野古・基地」を争点にしないのか

2017年04月18日 | 沖縄・翁長知事

    

 「辺野古新基地」の本格着工となる護岸工事について、沖縄防衛局は「作業の進捗具合や気象状況を踏まえて決定する」(18日付沖縄タイムス)としていつでもGOサインを出す構えで、情勢はきわめて緊迫しています。

 折しも、うるま市長選挙が16日公示(23日投票)されました。新人で前県議の山内末子氏=社民、共産、社大、自由、民進推薦と、現職の島袋俊夫氏=自民、公明推薦の一騎打ちです。
 「名護市辺野古の新基地建設を巡り対立する翁長雄志知事ら『オール沖縄』勢力と自民は、来年1月の名護市長選や11月の知事選に影響する重要選挙と位置づける」(18日付沖縄タイムス)選挙で、このタイミングに「辺野古新基地阻止」の民意をあらためて示す絶好の機会です。

 と思いきや、不思議なことに、この市長選では「辺野古新基地阻止」「基地撤去」が争点になっていないのです。当然争点にすべき「オール沖縄」の山内陣営があえて争点化を避けているからです。いったいどういうことでしょうか。

 告示第一声で山内氏は、「一番の政策として子育てナンバーワンの市をつくりたい」(17日付琉球新報)と述べ、「辺野古」には一言も触れませんでした(琉球新報、沖縄タイムスの報道)。玉城デニー衆院議員(自由)ら応援弁士も「辺野古」は一切言及しませんでした(同)。

 「第一声」だけではありません。山内氏は3月20日に7項目の「選挙政策」を発表しましたが、その中にも「辺野古」はありません(琉球新報の報道)。その後の新聞インタビューでも、「争点は」と聞かれて「辺野古」や「基地」を挙げることはなく、「基地問題は」と質問されても「辺野古」には言及していません(3月23日付琉球新報)

 山内氏だけではありません。翁長知事は応援のため山内氏の事務所開き(2月19日)に出席しましたが、「辺野古」にはまったく触れませんでした(2月20日付琉球新報)。

 山内氏や翁長氏をはじめ「オール沖縄」陣営が、うるま市長選であえて「辺野古」を争点から外していることは明らかです。
 なぜなのか。その背景が沖縄タイムスで報じられています。

 「『辺野古反対』が『オール沖縄』が結束するワードだが、うるまでは「『建白書』の実現」と表現される場面が多い。背景には反辺野古を全面的に打ち出して敗れた宮古と浦添(両市長選ー引用者)の経験がある。政党幹部も「『建白書』で辺野古反対を明確にしつつ、教育や経済など生活に近い政策を打ち出す必要がある」とし、こうした手法が今後の主要選挙での戦い方の試金石にもなるとの考えを示す」(18日付沖縄タイムス)

 驚くべき話です。宮古と浦添で「反辺野古を全面的に打ち出して敗れた」から、うるまでは「反辺野古」を打ち出すのはやめ、「建白書の実現」をその代わりにする。これは今回に限らず「今後の主要選挙」の試金石にする、というのです。

 これは翁長氏の考えと一致するでしょう。「建白書」を掲げることで「オール沖縄」の支持を繋ぎ止めながら、「辺野古」は全面(前面)に出さない。たたかう前から「辺野古」を下ろす敗北主義であり、「新基地建設」を事実上容認しながら「オール沖縄」の票で「知事再選」を目指そうとするものです。

 再三述べているように、翁長氏は今すぐ「承認撤回」すべきなのです。それをしないで、これからは重要な選挙の争点からも外そうというわけです。
 「オール沖縄会議」は「辺野古新基地反対」の民意をあらためて示すために「県民投票」を検討していると報じられていますが、目前の重要選挙で「辺野古」を争点から外しておいて「県民投票」とは支離滅裂です。

 「辺野古」だけではありません。トランプ大統領が北朝鮮への軍事圧力を強める中、17日には嘉手納基地から大気中の放射性物質を観測する米軍機が初めて飛び立ち(写真右)、早期警戒機も飛来しました。朝鮮半島情勢は一触即発であり、沖縄がまた戦争の前線基地にされようとしています。

 こうした情勢の中で行われる「保革一騎打ち」の市長選で、「辺野古新基地阻止」「米軍基地撤去」を争点に掲げない「オール沖縄」とは、いったい何なのでしょうか。


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なぜ日米軍事同盟を問い直さないのか

2017年04月17日 | 日米安保体制と平和・民主主義

     

 トランプ大統領が北朝鮮への軍事圧力を強める中、朝鮮半島・東アジアで軍事衝突(戦争)を回避するために、日本は何をすべきでしょうか。

 朝日新聞は「北朝鮮と日本 軍事より対話の道描け」と題した12日の社説で、「安倍政権が米国の『力の誇示』を評価する姿勢を示していることに疑問を禁じ得ない。大事なのは、対話による危機回避の道筋を描くことだ」と指摘し、「軍事に偏らない選択肢をトランプ政権に説く。それこそが、日本がいま果たすべき喫緊の使命だ」と主張しています。

 また、16日放送の「サンデーモーニング」(TBS、写真右)で、寺島実郎氏は、「アメリカの単独行動を許してはいけない」とし、「問題を国連に持ち込む。その中で日本の役割も出てくる。アメリカの単独行動に日本がついて行くことだけはやってはならない」と強調しました。

 日本政府(安倍政権)に対する批判がきわめて乏しい日本のメディアの中で、いずれも注目される主張ですが、共通した問題を指摘せざるをえません。それは、日米安保=日米軍事同盟について一言も触れていないことです。
 もちろん両者に限ったことではなく、今回の事態に関連して新聞の社説やテレビのコメンテーターで、日米安保・軍事同盟の問題に言及したものは(私が見た限り)皆無です。日本のメディア(社会)にまん延する「安保タブー」が浮き彫りになっています。

 現実はどうでしょうか。
 安倍首相はトランプ大統領のシリア攻撃を真っ先に「理解・支持」した談話の中でこう述べました。
 「東アジアでも…同盟国と世界の平和と安全に対するトランプ米大統領の強いコミットメントを日本は高く評価する」(7日)

 一方、トランプ大統領は米中首脳会談の直後、ツイッターにこう書きました。
 「中国がやらないなら、アメリカと同盟国がやる」(13日)

 安倍首相がトランプ大統領に追随し、米軍と自衛隊の一体化を強めているのは、日米安保条約によって日本がアメリカの従属的軍事同盟国になっているからにほかなりません。この同盟関係を見直さない限り、「軍事に偏らない選択肢をトランプ政権に説く」ことも「アメリカの単独行動について行かない」ことも夢物語です。

 朝鮮半島・東アジアでの武力衝突(戦争)を避けるために、日本は、日本国民は何をすべきか。それが私たちにとっての最大課題であり、日米安保=軍事同盟の見直し・解消を抜きにそれは考えられません。「安保タブー」をいまこそ打ち破るときです。

 


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「皇太子夫人雅子氏の人権」と「象徴天皇制」

2017年04月15日 | 天皇制と差別・人権・民主主義

     

 ◇いまは15日の正午。今日にもトランプ大統領による北朝鮮への武力行使が予想され、情勢は緊迫していますが、今のところ(幸いにも)特別の動きはないようなので、別のテーマで書きます。

 皇太子が13日、マレーシア訪問に出発しました。雅子夫人は今回も同行せず、東宮御所で見送りました(写真左、中)。マレーシア側は夫婦での訪問を招請しましたが、皇太子一人の訪問になりました。このことについて皇太子は、出発前の記者会見でこう述べています。

 「雅子も…できれば訪問したい気持ちでおりましたが…今回は私一人で訪問することとなりました。…雅子は、治療を続ける中で、体調に気を付けながら、努力と工夫を重ね、公私にわたってできる限りの務めを果たそうとしております」(11日、宮内庁HPより)

 雅子氏が病気のため皇太子に同行できないことは少なくありません。「皇位継承」が問題になっている中、天皇制の存続を望んでいる人びと、とりわけ明仁天皇と美智子皇后が最も頭を痛めているのは、実はこの問題、雅子氏は皇后としての活動ができるのか、という問題ではないでしょうか。なぜなら、明仁天皇や美智子皇后は「象徴天皇制」において「皇后」はきわめて重要な役割を果たすものと考えており、実際に皇后美智子はそれを実践してきたからです。

 美智子皇后は2002年の誕生日にあたり記者団から「これからの女性皇族の役割」について聞かれ、文書でこう回答しています。

 「皇后の役割の変化ということが折々に言われますが、私はその都度、明治の開国期に、激しい時代の変化の中で、皇后としての役割をお果たしになった昭憲皇太后(明治天皇夫人ー引用者)のお上を思わずにはいられません。…昭憲皇太后の御時代に、近代の皇后のあり方の基本が定まり、その後、貞明皇后(大正天皇夫人)、香淳皇后(昭和天皇夫人)がそれぞれの時代の要請にこたえ、さらに沢山の新しい役割をお果たしになりました。…先の時代を歩まれた皇后様方のお上を思いつつ、私も時の変化に耐えうる力と、変化の中での判断を誤らぬ力が与えられるよう、いつも祈っています」(宮内庁HPより)

 皇后美智子が明治以降の皇后の活動をふまえ、さらに戦後の「象徴天皇制」という「時の変化」の中で「新しい役割」を果たそうとしてきたことは明白です。その結果、「外国訪問」をはじめ常に天皇に寄り添って同行する「皇后像」をつくってきました。
 明仁天皇と美智子皇后がこうした「皇后像」の継承を雅子氏にも求めていることは明らかで、雅子氏も当然それを痛いほど感じているでしょう。それがさらに病気を悪化させていることは想像に難くありません。

 しかし、皇后美智子が実践してきた「皇后像」はけっして評価されるものではありません。というより、評価され正当化されるべきものではありません。なぜなら、こうした「皇后像」は憲法の「象徴天皇制」を逸脱するものだからです。

 憲法は第1章(第1条~第8条)で「天皇」について規定していますが、それらはあくまでも「天皇」についてであり、憲法に「皇后」の文字は一つもありません。
 皇室典範はどうでしょうか。典範でも皇后は第5条で「皇族」の筆頭に挙げられているだけで、特別な規定は何もありません。
 憲法、皇室典範に基づく限り、皇后が行わなければならない任務(仕事)・義務は何もないのです。

 では皇后美智子が行っている「外国訪問」や「被災地訪問」などはどうなるのか。これらはいずれも憲法が規定する「天皇の国事行為」を逸脱したいわゆる「天皇の公的活動」への同行です。
 天皇明仁は「象徴天皇制」のあり方を自分で判断し「公的活動」を拡大してきました。時の政権はそれを政治的に利用してきました。とりわけ「皇室外交」の政治利用は顕著です。「公的活動」の実行・拡大は、天皇と政権(自民党)が結託した憲法逸脱行為と言わねばなりません。皇后美智子氏の活動はその一環なのです。

 したがって「雅子皇后」が「美智子皇后」を踏襲する必要はまったくありません。いいえ、むしろ踏襲すべきではないのです。
 しかし、天皇制の存続を図る人びと(勢力)からは、「外国訪問」を含め「雅子皇后」にさまざまな活動を要求するでしょう。次期天皇である皇太子も先の会見のように「できる限りの務め」を求めています。周囲のこうした要求が雅子氏にとってきわめて大きな圧力となるのは必至です。

 病気の人にこうした圧力をかけて追い込むことは、人権侵害も甚だしいと言わねばなりません。
 長女の愛子さんに対しても同じです。愛子さんが学校へ行った行かないを宮内庁が発表しメディアで取り上げている光景はきわめて異常です。「不登校」に対するこうした登校刺激・圧力も人権侵害にほかなりません。

 雅子氏や愛子さんに対するこうした人権侵害がなぜまかり通っているか。「象徴天皇制」があるからです。もちろん雅子さんら皇族だけではありません。天皇自身の人権も「象徴天皇制」の名の下に数々侵害されています。天皇の世襲制・終身制のもその1つです。

 憲法の中心は「基本的人権は、侵すことのできない永久の権利」(第11条)という人権尊重です。その憲法の中に、基本的人権を侵害する「象徴天皇制」があっていいのでしょうか。
 私たちがいま考えなければならないのは、「生前退位」の問題ではなく、憲法と「天皇制(象徴天皇制)」の関係そのものではないでしょうか。


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憲法9条が死滅する岐路に立っている

2017年04月13日 | 日米同盟と安倍政権

      

 いま、私たちは、重大は岐路に立っています。

 朝鮮半島をめぐるトランプ大統領と安倍首相のこの間の言動を振り返りましょう。

 ●4月上旬の日米高官協議で、米国務省高官は日本政府に対し、「中国が北朝鮮への圧力を強化するか、米国がストライク(攻撃)するか、二つに一つの選択肢しかない」と明言(12日付共同配信)
 ●安倍首相との電話会談で、トランプ氏は「全ての選択肢がテーブルの上にある」と言明(6日)
 ●トランプ氏は、アサド政権が化学兵器を使用した証拠がないまま、国連安保理も米議会も無視して、シリアをミサイル攻撃(日本時間7日未明
 ●安倍首相はトランプ氏のシリア攻撃に対し、直ちに「支持する」「理解している」「高く評価する」と表明(7日
 ●米中首脳会談でトランプ氏は習近平氏に、「中国の協力が得られなければ米単独行動も辞さない」と言明(7日
 ●米国家安全保障会議(NSC)がトランプ氏に在韓米軍に核兵器を配備するよう提案した、と米NBCテレビが報道(7日
 ●トランプ氏が原子力空母カール・ビンソンを中心とする空母打撃団を朝鮮半島に派遣。沖縄・嘉手納基地にF22ステルス戦闘機配備8日
 ●トランプ氏との電話会談で、安倍首相は「同盟国や世界の平和と安全のために強く関与していることを高く評価する」と改めて表明(9日
 ●北朝鮮外務省は「わが国に対する米の侵略策動が実践段階に入った。米はみずからの横暴な行為が招く破局的な結果の全責任を負うことになる」と表明(10日
 ●海上自衛隊と原子力空母カール・ビンソンの「共同訓練」計画が判明(12日

 以上の経過から明らかなのは、トランプ氏による北朝鮮攻撃は一触即発の段階であり、安倍政権は政治的にも軍事的(自衛隊)にも、トランプ政権との一体化を強めているということです。

 これに対し北朝鮮が対抗手段として、いつ「ミサイル発射」を行っても不思議ではありません。たとえ北朝鮮はデモンストレーションや実験・訓練のつもりでも、トランプ氏はそれを口実に(あるいは「兆候」をねつ造して)北朝鮮攻撃を開始するでしょう。
 まさに「第2の朝鮮戦争」、いいえ、朝鮮戦争はまだ終結していませんから、「朝鮮戦争の再開」にほかなりません。
 これに対し日本は、日米軍事同盟によって米国と運命を共にし、さらに戦争法(安保法)によって直接的に米軍を支援(共同行動)することになります。

 これは日本が明確な戦争当事国になるということです。
 その戦争は、トランプ政権による北朝鮮侵略戦争です。上記の事実経過で明かなように、一方的に戦争をしかけているのはトランプです。安倍政権はトランプ政権とともに、かつて日本が侵略し植民地にした朝鮮をふたたび侵略することになるのです。

 日本のメディアは例外なく常に、「北朝鮮の挑発」という表現を使っていますが、挑発しているのはアメリカの方です。上記の出来事は米韓軍事演習が行われている中で起こっていることです。
 北朝鮮は一貫して朝鮮戦争の平和条約締結と、アメリカとの直接会談を望んでいます。それを拒否し、韓国、日本に基地を置き、共同演習を繰り返して軍事的圧力をかけ続けているのはアメリカです。どちらが挑発しているか明らかではないでしょうか。「核保有」についても、アメリカが核大国であるみずからの核保有は合理化し、さらにインドなどの核保有は容認しながら北朝鮮にだけ放棄を迫るのは道理に合いません。
 事実に基づかず日米両政府がいうままに「北朝鮮の挑発」と繰り返す日本のメディアは、「大本営発表」の戦前・戦中の新聞・ラジオとどれほどの違いがあるでしょうか。
 
 トランプの北朝鮮攻撃と同時に、日本は戦争当事国となり、その瞬間に日本国憲法第9条は死滅します。1931年~45年の侵略戦争の歴史的教訓も吹き飛びます。
 そういう歴史的岐路に、今私たちは立っているのです。

 その「今」を生きている者の責任として、主張します。
 トランプ大統領は北朝鮮に対する挑発・圧力を直ちにやめ、武力攻撃を断念せよ。
 安倍政権はトランプ政権への従属、自衛隊と米軍の一体化をやめよ。
 日米安保条約第10条に基づいて直ちに同条約の廃棄を通告し、日米軍事同盟を解消して、非同盟・中立の日本にしよう。


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