5日付琉球新報1面トップに、「米軍ゴルフ場 ほぼ日本人客」の大見出し、社会面トップに「「不公平」国が放置」の関連記事、さらに、6日付社会面トップで「自衛隊員を特別割引 米軍と同等、海保職員も」の追跡記事が相次いで掲載されました。
一連の記事の要点はこうです。
沖縄県中部に米軍保養施設「タイヨーゴルフクラブ」があるが、観光客らの利用が常態化し、利用客の8~9割を日本人が占めている。ゴルフ場利用税や消費税は徴収されず、県内の一般ゴルフ場の半額以下でプレーできる。
同ゴルフ場は日本政府が「思いやり予算」約134憶円を使って2010年に整備した。日本人従業員の給与は日本が負担。プレー料は米軍の収益になる。
自衛隊員、海上保安庁職員には特別割引があり、米軍関係者と同じ料金設定(18ホール約2千円)になっている。
県内の業界団体は「民業圧迫」「脱税行為」として是正を求めてきた。
外務省はこれまでは、日本人客の利用は「想定していない」として米軍に是正を求めたいとしていたが、今回琉球新報の取材に対し、「日本人による使用を認めても日米地位協定上(「米軍との友好親善」)問題があるとは考えていない」と追認する姿勢に転じた。
以上のような実態を、琉球新報は主に「民業圧迫」「目的外使用」の観点から追及しています。識者も、「日本の税金で整備した米軍の施設が、日本の税金を免れ、さらに収益活動をし、民業を圧迫することはあってはならない」(前泊博盛沖縄国際大教授、5日付琉球新報)と指摘しています。
それらの問題ももちろんありますが、根はさらに深いと考えます。
第1に、米軍が軍の施設を低料金で使わせて沖縄県民・日本人に「利益」を与えているのは、県民・国民の米軍基地への抵抗感を和らげ、逆に親密感を持たせるものであり、日米軍事同盟=安保条約に対する懐柔策に他ならないということです。外務省が言う「米軍との友好親善」とはこのことです。
その日米軍事同盟によって米軍との従属的一体化を強めている自衛隊、海上保安庁の職員がとりわけ優遇されているのは、その思惑を端的に示しています。
さらに、以前は問題視していた外務省(日本政府)が「見解を変えて開き直るように追認した」(前泊氏、同)のは、日米両政府が対中国戦略で沖縄をミサイル基地化しようとしている最近の日米安保の深化と無縁ではないでしょう。
第2に、これは日米両政府だけの問題ではないということです。
同ゴルフ場の利用者は、2020年には年間5万人を超えて過去最高に達しましたが、その8~9割は日本人で、コロナ禍前は日本人の半数近くを観光客が占めていたといいます(5日付琉球新報)。
同ゴルフ場は、整備から現在の日本人従業員給与などの経費を日米安保条約に基づく「思いやり予算」で賄っています。その財源は言うまでもなく税金です。
つまり多くの日本人が、米軍への「思いやり予算」という軍事費に寄生し、甘い汁を吸っているわけです。その日本人の「半数近く」は、米軍基地被害にさらされている沖縄県民ではなく、「本土」からの「観光客」です。
米軍基地(専用施設)の7割を沖縄に押し付けておきながら、米軍に対する「思いやり予算」のおこぼれにあずかって恥じない「本土」の日本人。
沖縄・日本・東アジアの安全と平和に逆行する日米軍事同盟=安保条約がなぜ多くの日本人から「支持」され存続しているか。「タイヨーゴルフクラブ」問題はその理由の根源を示しているのではないでしょうか。