アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

育鵬社教科書の「島田叡沖縄県知事」美化が示すもの

2024年03月25日 | 沖縄・米軍・自衛隊
   

 22日公表された教科書検定結果によって、育鵬社の社会科教科書が沖縄戦時の島田叡県知事(写真中)を美化していることが分かりました(写真左は2021年の育鵬社教科書)。

「育鵬社の歴史分野は「沖縄戦直前に赴任した沖縄県知事・島田叡」と題した記述で、島田氏が県民疎開などを速やかに進め、出会う人に「生きろ」と励まして県民から深い信頼を得たなどと記載した」(23日付沖縄タイムス)

 これに対し沖縄戦研究者の川満彰氏(沖縄国際大非常勤講師)は、「史実とも異なる一面的な評価だけが独り歩きし、戦争責任をうやむやにしている」(同沖縄タイムス)と批判しています。
「出会う人々に『何があっても生きろ』と励ましたという史実はない」「(北部疎開をはじめとする食料問題は)政策的に失敗で、棄民政策とも言える」(島田氏を)武勇伝化し、英雄的に記述することは、沖縄戦の実相をゆがめ、戦争責任をうやむやにするよう仕向けている記述だ」(同)

 島田叡美化の誤りと危険性については、当ブログでも再三書いてきました(たとえば2022年9月3日、同7月22日)。それがついに教科書にまで拡散したことは軽視できません。改めて2点強調したいと思います。

 第1に、メディアの責任です。

 島田美化において、ドキュメント映画「生きろ」(佐古忠彦監督=TBS社員、2021年)、劇映画「島守の塔」(五十嵐匠監督、2022年)が果たした役割はきわめて重大です。いずれも監督が日本人(ヤマトンチュ)であることも見過ごせません。

 さらに問題なのは、琉球新報、沖縄タイムスを含む多くのメディアが「島守の塔」を「後援」したことです。これについては新報、タイムスの編集幹部が個人的見解として誤りを認めていますが、社としてはいずれも、どのメディアも、いまだに公式に誤りを認めていません(22年9月3日のブログ参照)。

 第2に、今日の日本と沖縄をめぐる情勢との関係です。

 「戦争法(安保法制)」「軍拡(安保)3文書」によって戦争国家化が急速に進み、沖縄がその最前線とされようとしていることは周知の事実です。いわば“第2の沖縄戦前夜”と言って過言ではありません。

 その沖縄では、辺野古新基地はじめ、石垣、宮古、与那国などの離島のみならず本島のミサイル基地化、米軍・自衛隊の基地拡大が強行されています。それを阻止する上で沖縄県知事の役割はきわめて重要です。

 育鵬社の源流は「新しい教科書をつくる会」で、フジ・サンケイグループの扶桑社の100%子会社です。安倍晋三元首相らの歴史修正主義に手を貸し、「さながら“安倍晋三ファンブック”」(山口智美米国モンタナ州立大教員、週刊金曜日2015年8月9日号)と言われたほどです。
 その育鵬社の教科書がこの情勢下で、日本軍に協力して多くの住民を死に追いやった島田を美化する意図は明らかでしょう。

 現在の玉城デニー知事(「オール沖縄」)は、もともと日米安保条約・自衛隊の支持者です。21日の在沖米軍トップの四軍調整官・ロジャー・ターナー中将との会談でも、「日米安保体制や在日米軍の必要性には理解を示した」(22日付沖縄タイムス)ばかりです。

 現情勢の下で、玉城知事は揺れています。いま大きな問題になっているうるま市の陸上自衛隊訓練場でも、玉城氏は当初態度を明確にしていませんでしたが、県内で反対運動が広まる中で、ようやく「白紙撤回」を求めるに至りました。

 育鵬社教科書の島田美化を反面教師に、沖縄の地方自治を守り、米軍・自衛隊の基地強化、ミサイル基地化を阻止する声をさらに大きくする必要があります。それは言うまでもなく「本土」の日本人の責任です。
 


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

沖縄平和集会の3日後、副知事・立憲代議士が陸自式典で祝辞

2023年11月28日 | 沖縄・米軍・自衛隊
    

 陸上自衛隊第15旅団の「創隊13周年」と那覇駐屯地「創立51周年」の記念式典が26日、同駐屯地でありました(写真中=27日付沖縄タイムス)。これになんと、玉城デニー県政の池田竹州副知事と立憲民主党の屋良朝博衆院議員が出席して祝辞を述べたのです。

「池田竹州副知事は来賓あいさつで登壇。自衛隊が担う防衛や緊急患者の輸送、災害援助、不発弾処理などの活動に対し「県民の生命財産を守るために多大な貢献をいただいている」と謝意を示した。…「県民の理解と信頼の下、責任を全うされることを願う」と述べた。衆院議員の西銘恒三郎氏と屋良朝博氏も来賓あいさつした」(27日付沖縄タイムス)

 この日、市民団体の有志らが、「陸上自衛隊の記念行事に合わせ、米軍と自衛隊の沖縄からの撤退を訴える抗議行動を陸自駐屯地前で実施」(27日付琉球新報)しました。「参加した與那嶺貞子さんは、23日の県民平和大集会開催など有事への懸念が高まる中の記念行事開催について「沖縄の民意、感情を逆なでする行為だ」と批判した」(同、写真右)

 23日の県民平和大集会(写真左)では、「与那国、石垣、宮古の島々に限らず沖縄島や奄美、馬毛島に至るまで自衛隊基地が相次いで建設されミサイルや弾薬が持ち込まれています。…自衛隊や米軍の車両が白昼市街地を走り回り制服姿の自衛隊員が隊列をなして行軍するようになっており…かつてない軍事的緊張が島々を覆っています。…このままでは本当に戦争が起きかねません」と、自衛隊基地の危険性を強調した「宣言」を採択したばかりです。

 玉城知事や立憲民主党の代表もこの平和集会に参加していました。陸自が記念式典を行ったことはもちろんですが、池田副知事と屋良議員がこれに出席し祝辞を述べたことも「沖縄の民意、感情を逆なでする行為」に他なりません。

 池田氏は自衛隊に対し「多大な貢献」だと謝意を示し、「責任を全うされることを願う」とまで言いました。祝辞の内容は当然玉城知事が承認したもの、あるいは玉城氏の指示によるものでしょう。

 屋良氏は4年前(当時、国民民主党の衆院議員)にも第15旅団の式典に招かれ、陸自に「敬意」を表しています(2019年11月30日のブログ参照)。こういう人物が沖縄立憲民主の中心人物なのです。

 玉城氏はそもそも自衛隊の強い支持者です。知事選に出馬する直前まで沖縄防衛協会の顧問を務めていました。
 玉城氏は23日の集会後、記者団から「自衛隊を認める自身の立場と、自衛隊の配備や増強を否定する集会の趣旨との整合性」(24日付沖縄タイムス)を問われました。玉城氏は「ギャップは感じていない」(同)と答え、自衛隊支持の立場に固執しました。

 問題は、23日の平和集会でも大きな役割を果たした「オール沖縄会議」が玉城氏を知事に押し上げ、玉城県政を支持していることです。

 「オール沖縄会議」に参加している市民・団体・政党は、今回の玉城県政(副知事)の陸自式典出席・祝辞をどう捉えているのでしょうか。
 もしこれを黙認するなら、「オール沖縄会議」も23日の「集会宣言」に背信し、「沖縄の民意、感情を逆なでする」ことになるのではないでしょうか。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ガザと沖縄・軍隊に故郷を追われる人々

2023年11月16日 | 沖縄・米軍・自衛隊
   

 イスラエルのジェノサイドによって日々深刻になるガザの惨状。こうしていう間も。一刻も早く停戦させねばなりません。

 同時に、ガザの現実を目の当たりにして痛感するのは、ガザの市民と同じ状況に追い込まれようとしている人々が身近にいることを見逃してはいけないということです。沖縄の人々です。

 沖縄では宮古島、石垣島、与那国島の自衛隊ミサイル基地化が強行され、宮古島空港、新石垣島空港、那覇空港など民間施設での自衛隊訓練が頻繁に行われています(写真左・海自のミサイル艇に抗議する宮古島市民=9月、中・石垣市民パレードで行進する陸自=今月11日、右・新石垣空港の降り立った陸自オスプレイ=10月24日、いずれも琉球新報より)。

 宮古島市議会議員の下地茜氏(無所属)が11日付沖縄タイムス(「論考」)にこう投稿しています(抜粋)。

<逃げ場のない島々にミサイルを置き、有事の際には車載型ミサイルで戦闘を行うことは、国際人道法上問題があります。国はこういった議論を伏せ、島々への配備を進めています。どう整合性を取るのだろうと疑問に思っていましたが、昨今高まってきた「島外避難」の議論に気付かされるものがありました。仮に私たちが早期に島外避難すれば、国は軍民分離に悩まされずに済むのです。

 昨年9月、与那国町議会で「危機事象対策基金」の創設が可決されました。平時から島外へ避難する住民に、町が支援を行うものです。今年2月、石垣市で行われたシンポジウムでは、元陸上幕僚長が、自衛隊のそばに民間人がいれば、攻撃に巻き込まれても文句は言えないとの趣旨の発言をしました。

 ミサイル部隊の配備とは、初めから住民が島から出ていく前提で、行われてきたものではなかったか。

 イスラエルがガザの約110万人の住民に立ち退くよう通告し、人々が故郷を追われる風景が、わがことのように思えて、報道から目が離せずにいます。

 民間人の強制移住は人道に対する犯罪です。国家が駒を動かすように、人間の生きる土地を奪うことが許されてはならないのです。

 島には歴史や文化があり、暮らしがあります。不可視のように進む(ミサイル)配備強化に、ここは人の住む島なのだと声を上げるべき時が来ています。>(11日付沖縄タイムス)

 国家による戦争で人々は故郷を追われ、犠牲になります。ガザの人々は「天井のない牢獄」に閉じ込められ、逃げ場もありません。有事になれば逃げ場がないのは沖縄の人々も同じです。「島外避難」という名の「強制移住」。そんな戦争準備が着々と、加速しながら、進行しています。

 イスラエル・アメリカに対して「ガザへの攻撃は直ちにやめよ、やめさせよ」と声を上げると同時に、日米両政府に「ミサイル配備はやめよ。沖縄を戦場にするな。ここは人が住む島なのだ」という声を突き付けなければなりません。それは「本土」の日本人の責任です。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

画期的な「自衛隊強化中止」請願・問われる玉城知事

2023年06月15日 | 沖縄・米軍・自衛隊
   

「自衛隊強化中止」初の請願 嘉手納爆音原告
 9日付琉球新報1面に、こんな見出しの記事が載りました。第4次嘉手納爆音訴訟原告団が8日記者会見し、自衛隊基地の機能強化を止めることなどを求める請願書を周辺5市町村に提出したことを明らかにした、というものです。

 同訴訟団は、米軍嘉手納基地の爆音停止・飛行差し止めを要求して第1次(1982年)以降41年間たたかい続けていますが、「原告団として請願書を提出するのは初めて」といいます。

 これは画期的です。請願自体もそうですが、請願の「3つの要求」の第1に、「沖縄の全自衛隊基地の機能強化を止め、対話による平和外交に徹すること」をあげていることです。

 これまでの沖縄の返基地・平和運動は、もっぱら米軍基地に対するものでした。その運動の矛先がようやく自衛隊に向けられるようになったことを示しています。
 また、沖縄本島の反基地運動団体が、先島諸島の自衛隊強化中止を求めたことも特筆すべきです。沖縄の反基地・平和運動の歴史にとって重要な画期といえます。

 原告団の新川秀清団長(写真左の記事写真の中央)は、「戦後80年近くも米軍基地に翻弄されてきた沖縄で今、『新たな戦前』のような状況が引き起こされている。先島を含め要塞化され、基地の沖縄とされている。自治体の責任として止めてほしい」(9日付琉球新報)と訴えました。

 その自治体トップの玉城デニー知事、5月19日に陸上自衛隊西部方面総監の山根寿一陸将と会談しました。

 山根氏が「新隊員の募集がいま非常に難しくなってきている」と窮状を訴えたの対し、玉城知事は「いろいろな形で協力していきたい」と答えました(5月20日付沖縄タイムス、写真中も)

 さらに山根氏は、24年度中に運用開始予定の「県防災危機管理センター(仮称)」の専門家スタッフに「自衛隊OBなどを、ぜひ候補に入れるよう検討してほしい」と要望。玉城氏は「十分な現場経験を有する方に連携の中核を担っていただきたいと考えている」と応じました(同)。

 沖縄の自衛隊トップに対する玉城氏のこうした協力姿勢が、嘉手納爆音訴訟原告団が請願した「自衛隊強化中止」と真逆の方向を向いていることは明らかです。

 玉城氏は知事就任直前まで沖縄県防衛協会の顧問を務めていたほど自衛隊とは親和性があります。しかし、「オール沖縄」を母体に知事に当選した以上、そして自衛隊のミサイル基地化によって沖縄が再び戦場にされようとしている今、自衛隊に対して毅然とした態度をとらねばなりません。隊員募集への協力や自衛隊OBの採用などとんでもないことです。「オール沖縄会議」は玉城氏の「自衛隊協力」姿勢をただすべきです。
 
 嘉手納爆音訴訟団が要求した「自衛隊強化中止」を沖縄全体、日本全体の声にしていかねばなりません。

明日もブログを更新します。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

沖縄・戦場化へ2つの病院建て替え計画

2022年12月06日 | 沖縄・米軍・自衛隊
   

「陸自沖縄部隊を増強 15旅団普通科連隊を増設 有事念頭 中国刺激も」(沖縄タイムス)、「陸自大15旅団格上げ 事実上の師団化 南西防衛強化狙い」(琉球新報)―4日、沖縄県紙がそろって1面トップで大きく報じました。

 このニュースは前日の3日朝、NHKがいち早く報じました(写真左)。同じ日、松野博一官房長官は沖縄を訪れ、知念覚那覇市長と初めて会談しました(写真中=朝日新聞デジタルより)。松野氏は4日には、松本哲治浦添市長、松川正則宜野湾市長と相次いで会談。「基地問題に関わりの深い市トップと関係を強める狙い」(4日付朝日新聞デジタル)です。

 松野氏と知念氏の会談では米軍那覇軍港の浦添移設推進のほか、重要な問題が知念氏の方から提起されました。「那覇市立病院建て替え」です。
 知念氏は、市立病院の建て替えに「防衛予算などを含め政府の財政支援を要望」(4日付琉球新報)しました。市立病院の建て替え(増設)に「防衛予算」からの「支援」を要望するとはどういうことでしょうか。

 そのナゾを解く記事が、11月24日付の琉球新報(独自)にありました。「自衛隊那覇病院建て替えを検討 有事念頭、増床可能に」の見出しで、こう報じています。

「防衛省が2027年に自衛隊那覇病院(那覇市)を建て替えることを検討していることが、複数の関係者への取材で分かった」「自衛隊関係者以外の診療も可能にすることや診療科の追加も検討している」「那覇病院について、防衛省は有事となった場合の南西地域における医療拠点と位置付けており、負傷隊員の主要な搬送先と想定している」(写真右も)

 自衛隊病院が「有事念頭」に「自衛隊関係者以外」の治療にもあたるようにするとは、戦闘によって市民が「負傷」することを想定したものです。
 知念氏が那覇市立病院の建て替え支援を「防衛予算」を含めて要請したことは、市立病院も戦闘による「負傷隊員」の受け入れを念頭においたものではないでしょうか。

 「陸自増強」の報道と符丁を合わせて松野官房長官が沖縄を訪れ、基地に関わりの強い3市長と会談したことは、沖縄の有事(戦時)体制づくりが急速に進んでいることを示しています。那覇市立病院と自衛隊病院の2つの病院建て替え(増設)計画は、それがきわめて危険な段階にきていることを示していると言えるでしょう。
 
 これに対し、先の那覇市長選で自民・公明の支持で当選した知念氏は、今回の松野氏との会談でも明らかなように、急速に政府に接近しています。また、「オール沖縄」の玉城デニー知事も、自衛隊増強を容認する姿勢を強めています。

 たとえば、自衛隊ミサイル基地化が強行されている宮古島の「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」などが、航空自衛隊の「ブルーインパルス」展示飛行(11日)・宮古島空港使用反対を県に申し入れたのに対し、玉城県政は「受理せざるを得ない」と自衛隊の申請を無条件で許可する考えを表明しました(3日付琉球新報)。

 沖縄のミサイル基地化・軍事要塞化は、もちろん沖縄だけの問題ではありません。沖縄を絶対再び戦場にしないために、米軍・自衛隊の基地増強を許さない。元凶の日米軍事同盟(安保条約)を廃棄する。その世論を日本(「本土」)から強めていかねばなりません。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「沖縄にシェルター」切迫するミサイル戦場化の危機

2022年09月23日 | 沖縄・米軍・自衛隊
   

 「先島に避難シェルター 政府検討 有事を想定」(16日付沖縄タイムス1面トップ)
 この記事(共同配信)が沖縄で大きな波紋を広げています。21日には県庁前広場で「避難シェルターいらない! ミサイル基地いらない!緊急集会」が開催され、約100人が参加しました(写真右=沖縄タイムスより)。

 記事の概要はこうでした(抜粋、太字は私)。

< 政府が、台湾海峡や南西諸島での有事を想定し、先島諸島などで住民用の避難シェルターの整備を検討していることが分かった。年末までに改定する「国家安全保障戦略」で国民保護の対応策充実を明記する方向。

 内閣官房は2023年度予算概算要求で、武力攻撃に耐えられるシェルターの仕様に関する調査費を計上。

 シェルター候補地として、石垣市など複数の自治体が浮上。弾道ミサイル攻撃に備え、地上設置型、地下埋設型の防空施設をつくる案が検討されている。

 政府が秘密裏に、日本全国にシェルターを整備した際の総経費を試算したところ、高額化が避けられないと判断。緊迫化する台湾情勢を念頭に、当面は先島諸島を優先させる方向となった。>

 沖縄の市民でつくる「ノーモア沖縄戦 命どぅ宝の会」は20日、県庁で会見し、シェルター設置計画に抗議しました。
 同会は、「沖縄が戦場になることを前提とした計画であり、沖縄が『捨て石』にされた沖縄戦と重なる」と指摘。石原昌家共同代表(沖国大名誉教授)は、「シェルターの装備は軍と行政と住民が『共生共死』を強いられた沖縄戦と同じ流れで、77年前の教訓から何も学んでおらず怒りを感じる」(21日付琉球新報同)と指弾しました。

 沖縄が「捨て石」にされようとしているのは同じですが、77年前と違うのは、米軍と自衛隊のミサイル基地化によってミサイル戦の戦場にされようとしていることです(写真中は自衛隊の12式地対艦ミサイル)。

 小西誠氏(軍事ジャーナリスト)はこう指摘しています。

「自衛隊の長射程の対艦・対地ミサイル配備、米軍の中距離ミサイル配備が、米中露日の激しいミサイル軍拡競争を引き起こすことは不可避だ。
 事態は、東アジア全域を巻き込む、ミサイル戦争の危機になりかねない。しかも重大なことに、このミサイル戦場とされる琉球列島は、台湾有事・対中国戦争の「攻撃的ミサイル発射基地」として位置付けられつつある」(20日付沖縄タイムス)

 ミサイルの戦場でシェルターなど役に立たないことは明らかです。「シェルター設置の検討」は「国民保護」のポーズであり、沖縄そして全国をミサイル戦場にすることの下地づくりに他なりません。

「私たちの喫緊の課題は、今や中国へのミサイル攻撃の拠点―「台湾有事」下の「中国本土攻撃基地」として位置付けられた、琉球列島への各種のミサイル配備を断固拒み、日中の平和外交の推進を強く押し進めるということだ」(小西氏、同)

 これが沖縄だけの課題でないことは言うまでもありません。
 沖縄は常に真っ先に日本による犠牲を被ってきました。琉球併合(1879年)の15年後に日清戦争(1894年)が起こり、「天皇制護持」のための沖縄戦の2か月後に広島・長崎に原爆が投下され、天皇裕仁の「沖縄メッセージ」(1947年)の4年後に日米軍事同盟(安保条約)が締結されました。沖縄の人々のたたかいは、日本の危機への警鐘です。

 沖縄を米軍と自衛隊のミサイル基地にしてはならない。それは日本全体の喫緊の課題です。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

知事選で触れられなかった「辺野古」と「自衛隊」の一体性

2022年09月13日 | 沖縄・米軍・自衛隊
   

 11日投開票の沖縄県知事選で、玉城デニー知事が再選を果たしたことは、辺野古新基地建設に対する県民の怒りの強さを改めて示しました。その意味は重大です。
 同時に、だからこそ、「辺野古新基地反対」が「自衛隊基地増強・ミサイル基地化反対」と結びついていないことに改めて目を向けざるをえません。

 選挙結果を報じた12日付の琉球新報、沖縄タイムスは、社説をはじめ識者談話や解説でいずれも「辺野古」が勝敗を分けたと指摘しながら、「自衛隊」に言及したものはありませんでした。

 改めて確認する必要があるのは、「辺野古」と「自衛隊」は一体不可分だということです。

 軍事ジャーナリストの小西誠氏(元自衛官)は、2017年5月、情報公開請求で政府・防衛省が秘匿していた文書「日米の『動的防衛協力』について」(2012年統合幕僚監部作成)を開示させました。「防衛省・自衛隊が初めての南西シフト態勢を策定した、重大な文書」(小西氏)です。その内容が小西氏の『自衛隊の南西シフト』(社会批評社、2018年)に詳しく載っています。

「統合幕僚監部文書を防衛省が隠蔽したかったもう一つ(「中国封じ込め戦略」とともに―私)の理由がある。…水陸機動団(2018年3月編成)の、新たに編成される1個連隊をキャンプ・ハンセンに、1個中隊をキャンプ・シュワブ(辺野古)に配備することが明記されている。また、この水陸機動団は、在沖米軍の31MEU(海兵遠征部隊)と共同作戦を行うことが図示されている。
 「島嶼奪還」の日本型海兵隊という部隊を新たに沖縄本島に配備するという、とんでもない計画が、この統合幕僚監部文書には明記されているのだ」

「だが、この文書の重大さは、これのみに留まらない。…在沖米軍の全てを自衛隊との共同使用にし、「戦略的メッセージ」「戦略的プレゼンス」(対中国)を高めることが唱えられている」

 そして小西氏は、こう断じます。

「したがって、現在、埋め立て工事が急速に進む辺野古新基地もまた、この自衛隊の拠点基地となることは明らかだ。政府が南西シフト態勢作りと合わせて、辺野古新基地造りを急ぐのも、このような自衛隊基地の確保が最大の目的である」(『自衛隊の南西シフト』)

 辺野古新基地は米軍との共同使用で実質的に自衛隊の基地となるのです。それは沖縄本島への水陸機動団の配備、そして石垣島、宮古島などの自衛隊をミサイル基地化する「南西シフト」戦略の一環です。

 まさに「辺野古」と「自衛隊」は一体であり、「辺野古新基地反対」と「自衛隊増強・ミサイル基地化反対」は一体のものとして取り組まれる必要があります。

 広範な県民が辺野古新基地に反対する理由はさまざまでしょう。しかし、少なくとも政治家やメディア、運動のリーダーは、「辺野古」と「自衛隊」の一体性を指摘する必要があります。
 辺野古新基地を阻止しなければならないのは、たんに「軟弱地盤で不可能」(玉城知事)だからではありません。自衛隊基地増強・ミサイル基地化と一体となって沖縄をまるごと最前線基地にする戦略の一環だから、絶対に阻止しなければならないのです。

 

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「自衛隊」が争点にならない沖縄知事選でいいのか

2022年08月22日 | 沖縄・米軍・自衛隊
   

 25日に沖縄県知事選が告示されます(9月11日投開票)。玉城デニー知事ほか、佐喜真淳・前宜野湾市長、下地幹郎・前衆院議員が有力予定候補とされています。

 自民党・岸田政権が「中国脅威」論を振りまき、日米安保条約=軍事同盟による米軍と自衛隊の一体化を強め、軍事費の大膨張拡を図ろうとして中で行われる沖縄知事選は、日本・東アジアの平和と民主主義にとってきわめて重要です。

 ところがその知事選が、焦眉の重要問題が置き去りにされ、争点化されないまま行われようとしています。石垣、宮古、与那国などの島々および沖縄本島ですすめられている自衛隊配備強化・ミサイル基地化問題です。

 自民党推薦の佐喜真氏や下地氏がこの問題を取り上げないことは自明です。問題は、日本共産党や社民党など国政野党の「オール沖縄」候補である玉城知事も自衛隊問題をスルーしていることです。

 玉城氏は17日に「公約」を発表しましたが、この中に「自衛隊問題」は入っていません。県紙紙上で行われている「クロス討論」などでも、この問題は議論されていません。

 玉城氏だけではありません。日本共産党沖縄県委員長代理の鶴渕賢次氏も知事選インタビューで、「最大の関心事は平和と暮らし」としながら自衛隊問題には一言も触れていません(19日付沖縄タイムス)。

 沖縄の二大県紙、琉球新報、沖縄タイムスも、知事選の社説や予定候補者への質問でも、自衛隊問題は取り上げていません。

 候補者も、政党も、メディアも、それこそ“オール沖縄”で自衛隊問題を知事選の争点から外しているのです。きわめて重大な状況と言わねばなりません。

 しかし、住民・県民は違います。

 17日、琉球新報などの主催で3氏の公開討論会が行われ、事前に有権者から寄せられた質問に3氏が答えました。その内容が21日付同紙に掲載されましたが、その中には「石垣の陸自駐屯地建設の賛否」がありました。住民は切実な問題を問いただしているのです。

 これに対し玉城氏は、「災害救助や急患輸送など、自衛隊の役割が評価されていることは認めている」としながら、「地域住民への十分な説明、住民合意を顧みず、地域に分断を持ち込む計画には反対せざるを得なくなる」(21日付琉球新報)という持論に終始し、「対話」を口にするだけで自衛隊配備強化・ミサイル基地化には基本的に賛成であることを改めて示しました。

 玉城氏の安保・基地問題の本質が表れているのは自衛隊問題だけではありません。玉城氏の公約は、「①県経済・県民生活の再生②子ども・若者・女性支援策のさらなる充実③辺野古新基地建設反対・米軍基地問題」の3本柱ですが、「陣営内では基地問題を前に出す案もあったが、玉城氏本人の意向で…経済対策を筆頭に持ってきた」(18日付琉球新報)経過があります。辺野古新基地反対でも姿勢の後退は明らかです。

 もともと玉城氏は4年前の知事選に出馬する直前まで沖縄防衛協会の顧問を務めていたほどでの自衛隊・基地支持者です。それが自衛隊・基地反対の市民を含む「オール沖縄」が支持母体であるため、あからさまな「自衛隊支持」は控えているだけです。

 逆に、「オール沖縄」陣営内で「自衛隊・日米安保反対」の声が鳴りを潜め、那覇市議会の「自衛隊感謝決議」(4月25日)に共産党も賛成する事態になっています。

「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」は駐屯地開設(2019年3月)以来粘り強く活動を続けていますが、今、新たな困難に直面しています。「現代の治安維持法」といわれる「土地規制法」が9月に全面施行されるのを前に、「反戦・反基地運動を行う私たちの周辺で、個人情報が収集される動きや自衛隊内の住民敵視の事態が起こっている」(住民連絡会・清水早子さん)のです(写真中・右は宮古島の自衛隊と抗議する住民)。

 沖縄の平和・民主勢力は、自衛隊増強・ミサイル基地化反対を前面に掲げる候補者を擁立すべきです。仮にこのまま「自衛隊賛成」の面々で知事選が行われるとしても、「自衛隊問題」が最重要課題であることは変わりありません。

  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

陸上自衛隊の「黎明之塔」参拝中止は何を示すか

2022年06月25日 | 沖縄・米軍・自衛隊
  

 24日付の琉球新報、沖縄タイムスによると、毎年23日(「沖縄慰霊の日」)の未明に沖縄の陸上自衛隊(第15旅団)のトップらが行っていた「黎明之塔」参拝が、今年は見送られました(写真左は沖縄タイムス)。これは何を意味しているでしょうか。

 「黎明之塔」は沖縄戦で多くの住民を死に追いやった帝国陸軍第32軍司令官・牛島満と参謀長・長勇を祀った塔です。
 6月23日は牛島と長が自害した日とされています。この日が「慰霊の日」とされているのはそのためで、そういう由来でこの日を「慰霊の日」とすることには賛成できません。

 牛島・長の自害は午前4時半ごろとされており、旅団長らはこの時間に制服を着て「黎明之塔」に参拝してきました(写真中は2020年)。参拝は1976年から始まりましたが批判を受けていったん頓挫し、2004年から復活しました。「中止」は2004年以来初めてです。

 なぜ「中止」したのか。沖縄タイムスの取材に、15旅団は「プライベートなことで答えられない」(24日付沖縄タイムス)としていますが、今月9日付琉球新報の記事の影響であることは間違いないでしょう。

 自衛隊・防衛省はこれまで「黎明之塔」参拝は「プライベート」なことで自衛隊の組織とは無関係だと言い張ってきました。しかし、琉球新報の記事は、実際は参拝の人数などが逐一自衛隊トップに報告されており、参拝は陸自の組織的な行動であることを証明しました(10日のブログ参照)。

 「プライベートな参拝だ」と言い逃れしてきたものが組織的だったことがバレた。そのとたんに「中止」。これは参拝が陸自の組織的なものであることを自ら認めたことにほかなりません。

 政府・防衛省は、沖縄をミサイル基地化するにあたり、自衛隊への反感・反発が強まることを警戒しています。牛島・長を祀る「黎明之塔」への陸自の参拝は、自衛隊と旧日本軍の一体性を示すもので、それはこの時期、いかにもまずいというのが参拝を中止させた政府・防衛省上層部の判断でしょう。

 ちなみに、23日夜のNHK「時論公論」(NHK解説委員による論評)は、「今問い直したい“沖縄と自衛隊”」と題し、沖縄における自衛隊の「反発の背景」に「旧日本軍との“同一視”」があると言っていました。沖縄の自衛隊を増強するうえで、「旧日本軍との同一視」が障害になるとNHK的に“解説”したものです。

 しかし、いかに隠そうとしても、自衛隊が旧帝国日本軍を深く継承していることは紛れもない事実です。それを端的に示しているのが「旭日旗」です。

 帝国日本軍の侵略戦争・植民地支配の文字通り旗印となった「旭日旗」。自衛隊は1954年の発足以来、陸自がこれを「自衛隊旗」、海自が「自衛艦旗」(写真右)とし、今日に至っています。

 以前(2018年10月)、韓国でおこなわれた国際観閲式に出席する海上自衛隊に対し、韓国政府が侵略戦争・植民地支配の象徴である「旭日旗」の掲揚を自粛するよう求めたことがあります。
 それに対し、自衛隊トップの河野克俊統合幕僚長(当時)は会見でこう言いました。「海上自衛官にとって自衛艦旗(「旭日旗」)は誇りだ。降ろしていくことは絶対にない」(2018年10月6日付朝日新聞)
「旭日旗」、それに象徴される旧帝国日本軍との血脈は、自衛隊の「誇り」でありアイデンティティなのです。

 そしていま、旧帝国日本軍の“伝統”を継承する自衛隊は、第32軍が沖縄住民の4人に1人を死に追いやった歴史を踏襲するかのように、沖縄をミサイル基地化し、島民を巻き込んで、新たな戦争の最前線にしようとしています。それが軍隊・自衛隊の本性です。

 沖縄のミサイル基地化阻止はもちろん、いまこそ「軍隊は住民を死に追いやる。自衛隊は憲法違反の軍隊」という事実を広範な世論にしていくときです。それこそが沖縄戦犠牲者に対するほんとうの「慰霊」ではないでしょうか。



  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

沖縄米軍ゴルフ場・日米安保懐柔に群がる日本人

2022年02月08日 | 沖縄・米軍・自衛隊

    

 5日付琉球新報1面トップに、「米軍ゴルフ場 ほぼ日本人客」の大見出し、社会面トップに「「不公平」国が放置」の関連記事、さらに、6日付社会面トップで「自衛隊員を特別割引 米軍と同等、海保職員も」の追跡記事が相次いで掲載されました。

 一連の記事の要点はこうです。

 沖縄県中部に米軍保養施設「タイヨーゴルフクラブ」があるが、観光客らの利用が常態化し、利用客の8~9割を日本人が占めている。ゴルフ場利用税や消費税は徴収されず、県内の一般ゴルフ場の半額以下でプレーできる。

 同ゴルフ場は日本政府が「思いやり予算」約134憶円を使って2010年に整備した。日本人従業員の給与は日本が負担。プレー料は米軍の収益になる。

 自衛隊員、海上保安庁職員には特別割引があり、米軍関係者と同じ料金設定(18ホール約2千円)になっている。

 県内の業界団体は「民業圧迫」「脱税行為」として是正を求めてきた。

 外務省はこれまでは、日本人客の利用は「想定していない」として米軍に是正を求めたいとしていたが、今回琉球新報の取材に対し、「日本人による使用を認めても日米地位協定上(「米軍との友好親善」)問題があるとは考えていない」と追認する姿勢に転じた。

 以上のような実態を、琉球新報は主に「民業圧迫」「目的外使用」の観点から追及しています。識者も、「日本の税金で整備した米軍の施設が、日本の税金を免れ、さらに収益活動をし、民業を圧迫することはあってはならない」(前泊博盛沖縄国際大教授、5日付琉球新報)と指摘しています。

 それらの問題ももちろんありますが、根はさらに深いと考えます。

 第1に、米軍が軍の施設を低料金で使わせて沖縄県民・日本人に「利益」を与えているのは、県民・国民の米軍基地への抵抗感を和らげ、逆に親密感を持たせるものであり、日米軍事同盟=安保条約に対する懐柔策に他ならないということです。外務省が言う「米軍との友好親善」とはこのことです。

 その日米軍事同盟によって米軍との従属的一体化を強めている自衛隊、海上保安庁の職員がとりわけ優遇されているのは、その思惑を端的に示しています。

 さらに、以前は問題視していた外務省(日本政府)が「見解を変えて開き直るように追認した」(前泊氏、同)のは、日米両政府が対中国戦略で沖縄をミサイル基地化しようとしている最近の日米安保の深化と無縁ではないでしょう。

 第2に、これは日米両政府だけの問題ではないということです。
 同ゴルフ場の利用者は、2020年には年間5万人を超えて過去最高に達しましたが、その8~9割は日本人で、コロナ禍前は日本人の半数近くを観光客が占めていたといいます(5日付琉球新報)。

 同ゴルフ場は、整備から現在の日本人従業員給与などの経費を日米安保条約に基づく「思いやり予算」で賄っています。その財源は言うまでもなく税金です。

 つまり多くの日本人が、米軍への「思いやり予算」という軍事費に寄生し、甘い汁を吸っているわけです。その日本人の「半数近く」は、米軍基地被害にさらされている沖縄県民ではなく、「本土」からの「観光客」です。

 米軍基地(専用施設)の7割を沖縄に押し付けておきながら、米軍に対する「思いやり予算」のおこぼれにあずかって恥じない「本土」の日本人。

 沖縄・日本・東アジアの安全と平和に逆行する日米軍事同盟=安保条約がなぜ多くの日本人から「支持」され存続しているか。「タイヨーゴルフクラブ」問題はその理由の根源を示しているのではないでしょうか。


  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする