アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

絶えない沖縄米兵による性暴力の根源は何か

2024年08月26日 | 沖縄と日米安保・米軍・自衛隊
   

 昨年12月に発生していながら今年6月の報道まで日本政府から沖縄県に連絡さえなかった米空軍兵(嘉手納基地所属)による少女誘拐暴行事件。第2回公判が23日那覇地裁であり、被害者少女が渾身の証言をしました。

 絶えることのない沖縄米軍による性暴力事件。問題の根源は何なのか。2人の識者のインタビューであらためて考えます。

 1人は一橋大学客員研究員の平井和子さん(女性史・ジェンダー史)です(以下抜粋)。

<いま沖縄で起きている問題は、日米合作による加害行為だと思います。日本政府は住民を守ることよりも、日米軍事同盟を優先し、性暴力加害に加担しているのではないでしょうか。

 2006年、全国女性史研究の集いで、占領期の軍隊と性暴力について報告した時のことです。終了後、沖縄から参加されていた女性が手をあげて「本土の女性はいいですね。歴史として語れるから。沖縄では今でも日常風景です」と感想を述べられた。今もその言葉が胸に突き刺さっています。沖縄では歴史になっていない。今回の問題を通じ、今も沖縄は米国の「占領下」にあるのだと感じました。

 軍事組織は性暴力と切っても切れない存在です。

 なぜ沖縄では女性への性暴力が相次ぎ、そうした状況が放置されているのか。今も日本の「安全保障」が女性の犠牲の上に成り立っているのだとすれば、何のための安全保障なのでしょうか。それをいま日本人全員が突きつけられているのだと思います。>(23日付朝日新聞デジタル)

 もう1人は、琉球大学教授の阿部小涼さん(社会運動論・国際社会学)です(以下抜粋)。

<今回の事態を受けて国際人権法研究者の阿部藹(あい)さんがいち早く類比したのが、「フェミサイド」の事例でした。殺害の動機に女性性への嫌悪があることを言い当てたこの概念は、ラテンアメリカの女性たちの抗議運動のなかで精緻化されたものです。レイシズム(人種差別)と植民地主義とが重層化したグローバルサウス(新興国・途上国)で、もっとも弱い立場におかれた先住人民女性の身に起こる出来事として受けとめ、戦いとってきた概念なのです。

 日米合作の軍事植民地主義の発露は、2016年の米軍ヘリパッド建設で反対する沖縄の住民を制圧するため全国から警察を大量動員した前例がすでにあります。このとき大阪府警の機動隊員が住民に向けて発した「土人」という暴言とともに想起しなければなりません。米兵による性犯罪を放置するのも、このような日本政府の行為の延長線上にある、入植者による先住人民への抑圧そのものです。繰り返される性暴力はそうした状況下で起きる「フェミサイド」の形態だと受けとめています。

 性暴力として極限化されるミソジニー(女性性への嫌悪)が軍事技術として作戦に用いられることは、戦時性暴力の用語で国際的に了解されています。それが戦場ではなくむしろ平時に浸潤する軍事主義の問題であるとの踏み込んだ理解は、沖縄の女性運動が国際社会に対して明らかにしてきたことです。

 外務省がどんなにふたをしようとも、グローバルサウスの女性たちに連帯する沖縄は、軍隊が主催する「フォーラム」や住民との意見交換会の演出ではなく、在日米軍の撤去・軍事主義の廃絶を求めています。>(23日付朝日新聞デジタル)

 沖縄では「占領期の軍隊と性暴力」が「平時に浸潤」している、沖縄は今も「占領下」なのです。その根源は、「住民を守ることよりも日米軍事同盟を優先し性暴力加害に加担」している「日米合作の軍事植民地主義」です。

 「在日米軍の撤去・軍事主義の廃絶」でこの「日米合作の軍事植民地主義」を打ち破らなければなりません。そのためには日米軍事同盟=安保条約の廃棄が絶対不可欠です。(写真左は24日付琉球新報、写真中・右は8月10日の沖縄県民集会)

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少女誘拐暴行事件・玉城知事はなぜ米司令官に会わなかったのか

2024年06月29日 | 沖縄と日米安保・米軍・自衛隊
   

 沖縄嘉手納基地所属の米空軍兵長の男が昨年12月24日、16歳未満の少女を誘拐し、性暴力をはたらいた事件。県は27日、県庁を訪れた嘉手納基地のニコラス・エバンス司令官に抗議しました(写真右=沖縄タイムスより)。

 きわめて卑劣・重大な事件で、被害者のケアとともに、加害者への厳正な処罰、そして、米軍・米政府、日本政府の徹底追及が必要なことは言うまでもありません。

 ところが、県紙が報じた27日の県庁での抗議のもように疑問を禁じ得ませんでした。エバンス司令官に抗議したのが玉城デニー知事ではなく池田竹州副知事だったからです。

 玉城知事はなぜその場にいなかったのでしょうか。なぜ直接エバンス司令官に抗議しないのでしょうか。

 この日の知事の日程は、琉球新報、沖縄タイムスともに「終日事務調整」としています。終日県庁にいたわけです。それなのになぜエバンス氏に会わなかったのか。

 この日のエバンス氏との面会は、「米側からの申し出を受けて設定された」(28日付沖縄タイムス)ものです。エバンス氏が26日にその意向を電話で県に伝えました(同)。
 そして、池田副知事が読み上げた抗議文は、「玉城デニー知事名」(28日付琉球新報)でした。

 エバンス氏の来訪を事前に知っており、自らの名前による抗議文も用意しながら、なぜそれを自らエバンス氏に突きつけなかったのか。きわめて不可解です。

 私が読んだ限りでは、新報にもタイムスにもその理由は載っていません。両紙とも知事の不在を疑問に思わなかったのでしょうか。

 今回の事件では、逮捕(昨年12月24日)から6カ月、起訴(3月27日)からでも3カ月、県にまったく連絡がなかったことが、「信頼関係において、著しく不信を招く」(玉城知事、25日)と問題視されています。確かにそれも問題ですが、それは事件の本質ではありません。

 絶えることがない米兵による性暴力事件の本質は、「軍隊とは力による鎮圧や支配を前提とした組織」(28日付沖縄タイムス社説)であり、性暴力事件は「基地あるが故に繰り返される犯罪」(同)であるというところにあります。

 したがって、米兵による性暴力を根絶するためには、全ての米軍基地を撤去する以外にありません。
 27日県庁で記者会見した「基地・軍隊を許さない行動する女たちの会」など県内6団体が、「在沖米軍基地の撤去」を要求し(28日付琉球新報、写真中)、名護市では抗議する市民が「米軍よ沖縄から去れ」と書いたブラカードを掲げた(写真左=27日付沖縄タイムス)のはそのためです。

 しかし、玉城氏は米軍基地の存在を容認しています。朝日新聞のインタビューで、「当面50%の米軍基地は認めざるを得ない」(2月2日付朝日新聞デジタル)と公言しているのです(2月5日のブログ参照)。

 米軍基地の存在を容認する玉城氏が、米軍の性暴力根絶の立場に立てないことは明白です。27日の不可解な欠席(雲隠れ)はそれと無関係ではないと思います。

 さらに重要なのは、「在沖米軍基地の撤去」のためには、日米安保条約の廃棄が必要不可欠だということです。
 今回の問題で県紙2紙や朝日新聞、東京新聞などの社説は「日米地位協定の改定」を主張していますが、それでは基地はなくなりません。地位協定は安保条約による米軍基地の存在を前提に、その運用を定めたものにすぎないからです。

 米兵の性暴力根絶のためには、すべての米軍基地を撤去すること、そのためには日米安保条約を廃棄しなければならないことを幅広い世論にしていく必要があります。

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沖縄・ハーリーへの自衛隊参加は容認できない

2024年06月08日 | 沖縄と日米安保・米軍・自衛隊
   

 沖縄の伝統行事であるハーリー(爬龍船競争)(9日)に陸上自衛隊が参加しようとしていることが問題になっています(写真右は名護漁港のハーリー=琉球新報より)。

「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会は6日、宮古島市内で記者会見を開き、9日に宮古島平良漁港で開かれる久松海神祭のハーリーに陸上自衛隊宮古島駐屯地の自衛隊員が参加することに抗議した(写真左)。

 同連絡会は「沖縄の伝統文化である行事に軍事組織の構成員が参加することは適当だとは思えない」とした。

 同連絡会メンバーは、「自衛隊がかつての日本軍と同化・一体化するような風潮、戦前の総動員体制を想像させるような空気を、住民生活の中に持ち込ませることに反対する」との見解を読み上げた」(7日付琉球新報)

 同様の事態が石垣島でも起こっています。

「陸上自衛隊石垣駐屯地が、舟の操作技術向上のための「漕舟訓練」で9日に石垣市と竹富町西表島のハーリー大会に公務として出場する件で、石垣島の平和と自然を守る市民連絡会は5日、駐屯地に公務参加を中止するよう求める申し入れ書を手渡した(写真中)。

 市民連絡会は「神聖な地域行事、伝統行事」である各種ハーリーに「軍事訓練として参加することは到底容認されるものではない」と訴えた」(7日付琉球新報)

 ハーリー(糸満や港川では「ハーレー」)は、沖縄各地の漁港で航海安全と大漁を祈願する海神祭として行われます。5月5日の端午の節句を祝う風習のない沖縄では、旧暦の5月4日に行われるハーリーが「男の子の節句」でした。ハーリーの日には、舟こぎ競争の前に、村の神役と選手はウタキ(御嶽)などの聖地でお祈りします。(以上は高良勉著『沖縄生活誌』岩波新書2005年より)

 このハーリーに自衛隊が参加することはきわめて重大です。

 第1に、大漁と航海安全を祈願する神聖な伝統行事であるハーリーに、軍隊(兵士・部隊)が参加することは、「非武の島」(沖縄)の平和的伝統・文化を軍靴で汚すことにほかなりません。それは、ヤマトが琉球を武力侵略し伝統・文化を踏みにじった歴史に通じます。

 第2に、日米安保条約(軍事同盟)の深化による八重山諸島の自衛隊増強に対して住民の反対が巻き起こっているまさにその渦中でのハーリー参加は、自衛隊に対する反感・反発を抑え、ミサイル基地化を強行する宥和政策にほかなりません。

 宮古島では4月に開催された全日本トライアスロン宮古島大会にも自衛隊が関与していました。これについてミサイル基地いらない宮古島住民連絡会の上里清美共同代表は、「軍事的なものをにおわせるような自衛隊員が(運営に)関わっていたことに大きな違和感があった」と訴えています(7日付琉球新報)。

 以上の2点は、「私的参加」であろうと「公務参加」であろうとその本質になんら変わりはありません。自衛隊のハーリー参加は絶対に容認できません。

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先島陸自基地・駐日米大使視察直後に「撮影禁止」看板

2024年05月22日 | 沖縄と日米安保・米軍・自衛隊
   


 沖縄タイムス(20日付)によると、19日、陸上自衛隊石垣駐屯地と宮古島駐屯地に、基地「撮影禁止」の看板が設置されました。「撮影」だけではなく、「宣伝ビラ、プラカード、拡声器等の使用」「座り込み」なども「固く禁止」するとしています(写真左・中)。

 基地内にはもちろん許可なく立ち入れないので、看板が「禁止」するとしているのは、施設の周辺の公道における行為であることは明らかです。防衛省・自衛隊に公道における住民の行動を「禁止」する権限などないことは言うまでもありません。「禁止」掲示の不当性・不法性は明白です。

 この掲示は私が宮古島駐屯地周辺を見た16日にはありませんでした。私も公道から基地内を撮影しました。それがなぜ19日に急に「禁止」が掲示されたのか。

 17日のエマニュエル駐日米大使の与那国島、石垣島訪問(写真右=琉球新報より)、そして両島の陸自駐屯地視察が契機になったと考えざるをえません。

 同大使は、沖縄県が再三自粛するよう申し入れていたにもかかわらず、米軍機で両島を訪れました。これには在沖米軍トップの四軍調整官と陸自幹部が同行しました。

 与那国では記者団に対し、「「中国」と何度も口にしてけん制…さらなる防衛力強化を訴えた」(18日付琉球新報)のです。

「地元の要請を無視し、戦争に巻き込まれるのではないかと不安を覚える住民感情を逆なでする訪問の仕方は、外交官にあるまじき横暴な振る舞いだ。…米軍による空港使用の先例をつくり、平時からのインフラ使用をなし崩しに実施していく狙いがあるとしか考えられない。…今回の大使による陸自駐屯地の視察は、米軍の指揮の下に自衛隊が「台湾有事」の前面に出ていく想定で一体化が進んでいることを米国が見せつけたと言えよう」(19日付琉球新報社説)

 同大使の先島訪問・陸自視察について林芳正官房長官は、「南西地域の防衛体制強化の取り組みについて米大使が理解を深めるのは有益なことだ」(17日の記者会見)と歓迎しました。

 「外交官にあるまじき横暴な振る舞い」をしたエマニュエル氏はバイデン大統領の盟友。シカゴ市長時代(2014年)、市警察が黒人少年を射殺した事件に対するエマニュエル氏の態度が問題になり、民主党支持団体からも駐日大使への起用に反対する声が上がっていました。

 また、先日のトランプ前大統領の不倫口止め裁判では、メディア企業の社長が「トランプ氏への協力と同様に、エマニュエル駐日米大使のスキャンダルを過去にもみ消したことがあると証言」(4月27日付京都新聞=共同)しました。

 エマニュエル氏の先島訪問・陸自視察は、米軍と自衛隊の一体化、沖縄の民間空港・施設の軍事(米軍・自衛隊)使用拡大へ先鞭をつけることを図ったものです。
 与那国、宮古島の陸自駐屯地が基地周辺の住民の抗議行動を抑圧する「禁止掲示板」を設置したのは、米軍との一体化を強める自衛隊の横暴がますますエスカレートしていることを示しています。

 日米安保条約の下で沖縄の危険性がいっそう強まっている現実を、「本土」の私たちは直視し、沖縄の人たちとともに反対の声を上げていかねばなりません。


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宮古島自衛隊基地反対闘争から学ぶもの

2024年05月20日 | 沖縄と日米安保・米軍・自衛隊
      

 陸上自衛隊宮古島駐屯地(野原地区)から車で20分ほどの保良(ぼら)地区に、弾薬庫・射撃訓練場があります(写真1)。

 ゲート前で5年間抗議の座り込みを続けている下地博盛さん(ミサイル・弾薬庫配備反対!住民の会共同代表)と妻・薫さんの姿が今日(17日)もありました(写真5。右から下地博盛さん、薫さん、共にたたかっている砂川さん)

 弾薬庫はすでに第1棟、第2棟が完成し(写真2の左が第1、第2棟)、現在第3棟を建設中(写真3)。緑の防風林がそれに接し、その向こうはもう民家です(写真4)。下地さんの自宅は「自衛隊基地のフェンスから100歩の所」(薫さん)。まさに陸自弾薬庫は民家の目と鼻の先にあるのです。

 そんな重大な基地建設にもかかわらず、政府・防衛省が行った住民説明会は2019年の1回だけ。予備情報も乏しく、防衛省の一方的な「説明」でした。その後はいくら説明を求めても、追及しても、まともに答えることはありません。

 そんな防衛省・自衛隊を相手に、下地さんたちは1つひとつ自分たちで調べ、知識を広げてきました。薫さんの説明には専門用語がいくつも出てきます。知識はたたかいの“武器”、人はたたかいの中で鍛えられ成長するものと痛感します(写真6は、資材を搬入するトラックの特徴をメモする薫さん)。

「でも、(調査が)間に合わないんです。(基地建設をめぐる)動きが速くて」(薫さん)

 もう1つ、下地さんたちには大きな“強み“があります。それは「私らはここに住んでいる住民だ」ということです。

 高圧的な自衛隊も下地さんたち住民を無視することはできません。だからこそ事実を隠そうとし、地域のイベントに参加して融和を図ろうとするのです。

 この日、下地さんたちの座り込みの場にはカセットから音楽が流れていました。下地さんは「ゲート前でなにがしか楽しめるものを」と呼び掛けています。「ここは私たちが楽しんでいい私たちの生活の場だ」ということを示すためです。

 「ここは私らが住んでいる土地。その土地を守る」―そんな生活者・主権者としての権利意識が、宮古島の基地反対闘争を支えている強い思想です。

 逃げ場のない島に基地が集中しているという先島(沖縄)の特殊な(差別的な)要素もあります。しかし、生活の場に軍隊(米軍・自衛隊)の基地が入り込んでくる(きている)のは「本土」も同じです。「本土」に住む私たちに、どれほど「生活者・主権者」としての権利意識があるでしょうか。

 ベールに包む防衛省・自衛隊に対し、自分たちで1から調べ、知識を広げていくことは確かに素晴らしいことです。しかし、それは本来、メディアや学者・研究者・識者がすべきことです。彼らがその責任を果たしていないから、住民が調べなければならないのです。それではどうしても「間に合わない」ということになります。

 たたかう宮古島(先島)の人びとから「本土」の私たちが学ぶべきものはたくさんあります。学んで自分の生き方に生かさなければなりません。先島の、沖縄のたたかう人びとを孤立させてはいけない、と痛感します。

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住民に知らせずベールに包む陸自とたたかう宮古島の人びと

2024年05月18日 | 沖縄と日米安保・米軍・自衛隊
       
   
 16日、宮古島を訪れました。陸上自衛隊宮古島駐屯地(宮古警備隊・第七高射特科群=ミサイル部隊)は、野原地区の畑の中にありました(写真2)。11年前に来島した時にはない風景でした(同駐屯地が開設されたのは5年前の2019年。ミサイル部隊は今年4月)。

 道を隔てて、「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」の横断幕が強い日差しの中で鮮やかな色彩を放っていました。
<琉球弧の島々に ミサイル基地いらない!自衛隊も米軍も>(写真1)
 この横断幕を背に、毎週木曜日朝、駐屯地に向かって抗議活動が行われています。

 横断幕の向こうでは、野原住民の仲里千代子さんが、「基地はいらない」と、駐屯地前の畑で花を植えています。「花は人をやさしくする。自衛隊員が武器を持って戦う気力をなくするように」

 宮古島にはもともと、1972年5月15日の「祖国復帰」によって米軍から引き継いだ航空自衛隊のレーザー基地があります(写真3)。
 それに約800人の陸自隊員が加わりました。役人の数が約600人の島に。それは島の人口構成を激変させただけではありません。
 
「陸自駐屯地が出来てから、空自隊員の態度まで横柄になりました。陸自は私たちの疑念や不安になに1つまともに答えようとしません、すべてはベールの中です」

 上里清美さんは語気を強めます(写真4の左が上里さん、右が仲里さん)。例えば―。

「基地内には約200台の軍用車両があります。そんな大量の車両がなぜ必要なのか?どんな部隊が出入りし、何をしているのか?」

「ジェット燃料の給油施設(写真5)は軟弱な断層の上にあります。宮古島は地震が多いにもかかわらず。地下水の汚染対策はどうなっているのか。問いただしても「処理施設・浄化槽で処理しています」と言うだけ」(川のない宮古島では地下水が住民の生命線)

「弾薬は持ち込まない、という約束だったにもかかわらず、あの台形に盛られた土の中は弾薬庫です。陸自は否定しますが、「最も危険な弾薬」を示す「1」の標識が立てられています(写真6)」

 のどかだった島に軍隊(自衛隊)が基地を造り、戦争準備を着々と進める。戦争となれば島民に逃げ場はありません。にもかかわらず住民にはなにも知らされない―それが宮古島の現実です。

「宮古・八重山の島々が戦場になる。その具体的な準備が整えられている。マスメディアはこのような情報をほとんど報道しない。国民の多くは、沖縄県民の多くでさえ、こんな事実を知らず、関心を持たず、日々の暮らしに追われている。
 先の大戦でも、「気がついたら戦争が始まっていた」という声を私たちは親の世代から何度も聞いてきた。繰り返すわけにはいかない」(清水早子・ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会「戦争の姿が見えてきた!」季刊「けーし風」2023年11月号所収)

 ゲート前で毎週、銃を携帯する警備兵と対峙する人々、花で非戦の精神を伝えようとする人、すべてをベールに包む軍隊にネットを駆使して対峙する人々-そんな人々が今日もこの島でたたかっています。



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「沖縄米軍基地に第三国軍」常態化の根源

2024年05月09日 | 沖縄と日米安保・米軍・自衛隊
  

<オランダ軍 県内で訓練 北部訓練場 米軍の日程に参加>

 4月28日付の沖縄タイムスによれば、「米軍の第4海兵連隊とオランダ軍の海兵隊員が3月10日から2週間、北部訓練場でジャングルリーダーコースに参加したことを第3海兵師団の「X」やフェイスブックなどが紹介」しました(写真右は米軍サイトが載せたオランダ兵=5月4日付琉球新報)。

 日本と地位協定を結んでいない外国の軍隊が日本で訓練を行うのはもちろん認められていません。しかし自民党政権は「訓練」でなく「視察」ならいいという詭弁で容認してきました。

 そこで今回も、「米軍はウェブサイトの説明文のうち「訓練する」の主語に「オランダ海兵隊員」とあったのを削除。オランダ兵参加自体は伏せておらず、訓練目的と取られる表現を避けたかったとみられる」(4日付琉球新報)。見え透いたごまかしです。

 沖縄の米軍基地に「第三国」軍が参加したのは、今回のオランダ軍が初めてではありません。表面化したものだけでも以下の通りです(沖縄タイムス、琉球新報の報道から)。

・1983年 嘉手納基地で、弾薬装着競技会に韓国軍が参加
・2015年 キャンプ・シュワブ、ハンセンで、英国海兵隊将校らが訓練に参加
・2017年 キャンプ・シュワブで、フィリピン海兵隊が訓練に参加

 東京工業大の川名晋史教授はこう指摘します。

「訓練ではなくて部隊訪問や視察なら許容できるとしたとしても、その法的根拠を示すことは難しい。なのに、SNSで堂々と公開していることに驚く。常態化している一端が垣間見えたのではないか」(4月28日付沖縄タイムス)

 防衛ジャーナリストの半田滋氏も、「政府が必要とする手続きを経ることなく不法な段取りで訓練参加した疑いがある。そうだとすれば重大な主権侵害」(4月28日付沖縄タイムスデジタル)だと指摘します。

 米軍の傍若無人ぶりは目に余ります。明らかな主権侵害です。
 問題は、こうした事態が常態化している元凶は何なのか、どうすればこの主権侵害を食い止めることができるかです。

 「訓練」はだめだが「視察」ならいいという詭弁を自民党政権が使い始めたのは、安倍晋三政権からです。上記、2015年の英国兵参加を沖縄タイムスが報じたのが翌16年。追及された安倍政権はつじつま合わせのため答弁書を閣議決定しました(2016年8月8日)。

 その閣議決定は、「在日米軍の施設・区域内における米軍の活動に米国以外の外国の軍隊や軍人が参加すること(は)…いかなる態様であっても日米安保条約上禁じられているというものではない。…個々の事案に即して判断されるべきものと考える」というものです。

 「(第三国軍が)米軍基地に訓練で参加することは、日米安保条約上認められていない」(川名教授、前掲)にもかかわらず、安保条約は必ずしも禁じていない、個々のケースで判断すべきだ、「訓練」でなければいい、としたのが安倍政権の閣議決定です。その「個々の事案」の説明・判断は安保条約(地位協定)上、米軍まかせなのですから、結局、米軍のやりたい放題です。

 問題の根源は明らかです。日米安保条約がある限りこうした主権侵害、米軍の勝手放題はなくなりません。「安保条約違反が常態化している」と嘆くだけでは解決しません。元凶の安保条約を廃棄する以外にないのです。

 安保条約第10条は、「いずれの締約国も、この条約を終了させる意思を通告することができ、その場合には、そのような通告が行われた後一年で終了する」と明記しています。

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自衛隊増強に対する玉城沖縄県知事の二枚舌

2024年04月27日 | 沖縄と日米安保・米軍・自衛隊
  
 

 24日、石垣島の市街地に迷彩服に背嚢を背負った約30人の陸上自衛隊の軍靴が響きました。「災害出動」を名目にした軍事訓練です。「2023年3月16日の(石垣)駐屯地開設後、公道を使った訓練は初めて」(25日付琉球新報)です。

 沿道では「歓迎」する市民もいる一方、「公道で 防災口実の 軍事訓練するな!」の横断幕を掲げた市民たちの反対運動が行われました(写真右=琉球新報より)。

「交差点では約30人が抗議のスタンディングをした。「いのちと暮らしを守るオバーたちの会」の山里節子さん(86)は隊列に「私たちの公道だ。軍用道路ではない」と声を荒げた」(25日付沖縄タイムス)

 同じ24日、玉城デニー知事は行政視察でその石垣市を訪れていました。取材陣への対応がこう報じられています(見出しと記事抜粋)。

 自衛隊増強、賛否示さず 知事、石垣行政視察で

 玉城デニー知事は24日、報道陣から先島での自衛隊増強に反対するか問われ、賛否の立場を示さなかった。14日に名護市であった県民大集会で、知事が自衛隊増強に反対の意思を示したことに関連し問われた。

 知事は「自衛隊に関しては市民の中にさまざまな意見がある。急患搬送や災害対応で自衛隊の力を借りている現状もある」とし「防衛省は住民と真摯に意見交換すべきだ」と述べるにとどめた。>(26日付琉球新報=写真左)

 14日の県民大集会についてはこう報じられていました(見出しと記事抜粋)。

< 現状での自衛隊増強反対 県民大集会 知事「理解得られず」

 玉城知事は、集会後、報道陣の取材に応じ「米軍の問題を政府が解決しないまま、自衛隊だけを増強させようとする姿勢は、県知事として賛成できない」と、現状での自衛隊増強に反対の意思を示した。>(15日付琉球新報=写真中)

 14日には「賛成できない」。10日後の24日には「さまざまな意見がある」として賛否を示さない。明らかな二枚舌です。

 また、玉城氏は今月9日、就任あいさつで県庁を訪れた陸上自衛隊第15旅団の上野和士旅団長と会談し、こう述べていました。
自衛隊に対する信頼も広がってきている」(10日付沖縄タイムス)
 どこに目を向ければこんなコメントができるのでしょうか。自衛隊の増強や相次ぐ「事故」に不安を募らせている県民の感覚とは大きく乖離しています。

 玉城氏は知事選出馬直前まで沖縄防衛協会の顧問を務めており、自衛隊も日米安保条約も支持すると公言しています。その玉城氏でさえ、14日の県民大集会では「増強に賛成できない」と表明せざるをえませんでした。それほど自衛隊の傍若無人、岸田自民党政権の軍拡・戦争国家化は目に余っています。

 沖縄のミサイル基地化を阻止するうえで知事の姿勢が決定的に重要なことは言うまでもありません。自衛隊支持の持論と危険な軍拡の現実の間で動揺する玉城氏を「自衛隊増強反対・ミサイル基地化阻止」の立場に立たせるのは県内外の市民の声と運動以外にありません。
 玉城氏の支持母体である「オール沖縄会議」の責任があらためて厳しく問われます。

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「沖縄にフィリピン軍駐留も」軍事協力で学者が見通し

2024年04月15日 | 沖縄と日米安保・米軍・自衛隊
  

 初の日米比3カ国首脳会談が11日(日本時間12日)ワシントンで行われ、共同声明で「自衛隊と米比両軍の海上共同訓練の拡充」が明記されました。日米安保条約(軍事同盟)をフィリピンとの関係にまで広げようとするものですが、フィリピンの専門家は今後の方向として、「沖縄にフィリピン軍を駐留させても良い」と述べました。

 フィリピン・デラサール大のレナート・デカストロ教授(国際政治)(写真右)が朝日新聞のインタビューに答えました。

「(日本とフィリピンの防衛協力の未来についてどう展望しますか?との質問に)どんどん接近するでしょう。米国は戦略的なバランサーですが、この地域に常にいるとは限りませんから、私たちはもっと協力しなければなりません。
 日本とフィリピンは、この地域が中国に支配されることを望まず、共通の利益や海洋関係があります。日本でも、沖縄にフィリピン軍を駐留させるようになれば、日本の利益にもなるでしょう」(12付朝日新聞デジタル)

 軍事同盟関係にない軍の駐留は本来ありえませんが、ただの妄想として見過ごすことはできません。

 日米比3カ国首脳会談の冒頭、岸田首相は「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序の維持、強化に向けて同盟国、同志国との重層な協力が重要だ」と述べました(12日付京都新聞夕刊=共同)。

 フィリピンのマナロ外相は2月、朝日新聞などのインタビューで、「自衛隊とフィリピン軍の相互往来を促進する円滑化協定について早期締結に意欲」(13日付朝日新聞デジタル)を示しました。「日本との安全保障協力をさらに深める構え」(同)です。「相互往来を促進する円滑化協定」なるもので何を目論んでいるのか。

 日本政府も「「いまがフィリピンを引き寄せる好機」(外交筋)と捉える。安全保障や防衛、経済など幅広い分野で協力を一層深める構え」(13日付京都新聞=共同)です。

 そもそも今回の岸田首相の訪米による日米首脳会談について、琉球新報は「沖縄無視の同盟強化だ」と題した社説でこう指摘しました。

「「南西シフト」を軸に自衛隊と米軍の一体化運用を強く打ち出した日米首脳会談や共同声明は基地負担の軽減を求める県民の願いと逆行するものだ。沖縄を無視した同盟強化だと言わざるを得ない」(13日付琉球新報)

 このうえ、日米比首脳会談が「沖縄にフィリピン軍駐留」へ向けた契機になるとすれば、基地負担の一層の強化・戦争最前線地化の危険がさらに強まることになります。「沖縄無視」どころか、“第2の沖縄捨て石”化と言わざるをえません。

 今回、「日米比首脳会談の開催を水面下で主導したのは米国」(13日付朝日新聞デジタル)であり、それは「米国が日比の間に入り提携強化を促す動きは、バイデン政権が進める包括的な対中抑止戦略の一環」(同)です。

 すべての根源は日米安保条約(軍事同盟)です。同条約廃棄への世論を広げなければ、日本は本当に大変な事態になります。その危険の最前線に立たされているのが沖縄(琉球)です。

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玉城知事が元自衛官を「危機管理補佐官」に起用した意味

2024年04月08日 | 沖縄と日米安保・米軍・自衛隊
   

 沖縄の玉城デニー知事は1日、元陸上自衛隊自衛官の吉田英紀氏(65)(退任時は1等陸佐)に「危機管理補佐官」の辞令を交付しました(写真左。写真はいずれも琉球新報より)。

 「危機管理補佐官」は「新設」(2日付沖縄タイムス)されたポスト。「危機管理補佐官のような県の役職に元自衛官が就くことに県人事課は「初めてかどうかは分からない」と回答。…一般職で任期は2年。最大5年まで延長が可能で、知事部局に統括監級で配属」(同)されました。

 沖縄タイムスも琉球新報も論評なしで「辞令」の事実だけを2面で報じましたが、これはけっして見過ごすことができない重大な問題です。

 玉城氏が「危機管理補佐官」を「新設」した意図は報じられていませんが、岸田自民党政権が「中国脅威」論をあおって沖縄のミサイル(前線)基地化を図っている情勢と無関係でないことは明らかでしょう。

 事実、玉城氏は辞令にあたり「豊富な知識と経験を生かし、県内の災害や危機事象へ取り組んでほしい」(2日付沖縄タイムス)と述べ、吉田氏に災害だけではない「危機事象」すなわち有事への対応も「期待」していることを示唆しました。

 沖縄では離島の自衛隊ミサイル基地強化はじめ、本島・うるま市勝連分屯地のミサイル連隊発足(写真中)、陸自訓練場設置など自衛隊基地拡大・強化の動きが相次いでいます。

 さらに、「軍拡(安保)3文書」に基づき、那覇空港などを「特定利用」に指定し、空港・港湾などの「軍(米軍・自衛隊)民共同使用」を推進しようとしています。

 こうした動きに対し県民の不安と批判が広がっています(写真右はうるま市)。その最中での元自衛隊幹部の起用は、玉城氏と自衛隊の親和性をいっそう強め、自衛隊基地の拡大・強化に反対する県民の意思に逆行し、その声に冷水を浴びせるものと言わねばなりません。

 さらに留意する必要があるのは、県知事は自衛隊との関係で重要な権限を持っていることです。それは基地の新設・拡大に対する許認可権だけではありません。
 自衛隊法第83条は、都道府県知事は「天災地変その他の災害に際して…部隊等の派遣を…要請することができる」と規定しています。「災害に際して」とはいうものの、知事には自衛隊派遣を要請する権限があるのです。その知事の「危機管理補佐官」に元自衛官という“自衛隊の身内”を起用した意味はけっして小さくありません。

 10日の日米首脳会談では、米軍と自衛隊の指揮系統の統一はじめ、両軍の一体化がさらに強化されようとしています。日米安保条約=軍事同盟・自衛隊をめぐる情勢はかつてなく危険な段階に入っています。

 その戦争国家化の前面に立たされている沖縄での今回の元自衛官起用は、けっして沖縄だけの問題ではありません。
 琉球新報、沖縄タイムス、さらに日本共産党を含む「オール沖縄会議」がこの問題で沈黙していること、さらに「本土」メディアに至っては報道すらしていないことは、事態のいっそうの深刻さを示すものです。

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