アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

日本学術会議への攻撃は軍事国家路線の一環

2020年10月08日 | 日米同盟と安倍政権

   
 菅義偉首相が日本学術会議の推薦した会員候補6人を任命しなかった問題は、たんなる「学問・表現の自由侵害」あるいは「学術会議への介入」ではありません。それは「介入」というより抜本的変質を狙った「攻撃」であり、日米軍事同盟(安保条約)によって安倍政権がすすめてきた対米従属の軍備強化・軍事国家化路線の一環です。

 今回の問題の出発点は、5年前の戦争法(安保関連法)といえるでしょう。任命が拒否された6人は、戦争法、あるいは関連の「機密保護法」「共謀罪」への反対を表明してきた学者たちばかりです。

 2012年12月政権に返り咲いた安倍晋三氏は、翌13年12月「機密保護法」14年4月「防衛装備移転(武器輸出)3原則」閣議決定、7月「集団的自衛権容認」閣議決定と軍事国家路線を突き進み、15年9月戦争法へ行きつきました。

 これと並行して、安倍政権は学問・研究の軍事化を図ってきました。
 2013年12月「国家安全保障戦略」を閣議決定し、「安全保障分野における産官学の結集」を強調。2015年10月防衛整備庁を設置し、その管轄下に軍事関連の研究助成制度を開始しました。

 安倍政権の学術会議攻撃が表面化したのは、防衛整備庁設置の翌年、2016年でした。
 「70歳の定年を迎える会員の補充を決める際に、選考段階で名前が挙がっていた2人に官邸側が難色を示した」(4日付共同配信)のです。「このころの学術会議は、軍事研究につながるとの懸念が強かった防衛省の研究助成制度をめぐり活発な議論を行っていた真っ最中」(同)だったからです。

 東京大学が戦後タブーとしてきた軍事研究の「一部解禁」を決めた(2015年1月)こともあり、学術会議は激しい議論の末、「軍事的安全保障研究に関する声明」(2017年3月24日、写真左)を発表しました。それはこういう内容でした。

 「日本学術会議が1949年に創設され、1950年に「戦争を目的とする科学の研究は絶対にこれを行わない」旨の声明を、また1967年には同じ文言を含む「軍事目的のための科学研究を行わない声明」を発した背景には、科学者コミュニティの戦争協力への反省と、再び同様の事態が生じることへの懸念があった。

 近年、再び学術と軍事が接近しつつある中、われわれは、大学等の研究機関における軍事的安全保障研究、すなわち、軍事的な手段による国家の安全保障にかかわる研究が、学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にあることをここに確認し、上記2つの声明を継承する。

 科学者コミュニティが追求すべきは、何よりも学術の健全な発展であり、それを通じて社会からの負託に応えることである。学術研究がとりわけ政治権力によって制約されたり動員されたりすることがあるという歴史的な経験をふまえて、研究の自主性・自律性、そして特に研究成果の公開性が担保されなければならない

 しかるに、軍事的安全保障研究では、研究の期間内及び期間後に、研究の方向性や秘密性の保持をめぐって、政府による研究者の活動への介入が強まる懸念がある。(中略)
 むしろ必要なのは、科学者の研究の自主性・自律性、研究成果の公開性が尊重される民生分野の研究資金の一層の充実である(後略)」(改行は引用者)

 安倍軍事国家路線に対する明確な批判・対峙です。学者・研究者の良心、責任感が軍事研究を拒否し、日本学術会議の変質・形骸化を食い止めたといえるでしょう。

 安倍政権が日本学術会議法第7条第2項の「総理大臣の任命」を形式的任命から実質的任命に勝手に政府見解を変えたのは、この声明が出された翌年、2018年11月のことです。

 かつて、滝沢幸辰京大教授弾圧事件(滝川事件、1933年3月)、美濃部達吉東大教授の「天皇機関説」批判(1935年)が、本格的中国侵略(1937年)の予兆であったように、今回の安倍・菅政権による日本学術会議攻撃は、日本が日米軍事同盟(安保条約)によって本格的な軍事国家に突き進んでいく象徴的事件です。絶対に阻止しなければなりません。


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コロナ禍で日米同盟・トランプ追従あらわにした安倍会見

2020年05月26日 | 日米同盟と安倍政権

    
 安倍晋三首相の無責任・厚顔無恥はもはやニュースではありませんが、25日の「緊急事態宣言全面解除」会見には、これまでのコロナ関連会見にない特徴がありました。

 午後6時から23分にわたる冒頭発言の最後に、安倍首相はこう言いました。
 「内向きであってはならない。こういうときこそ、自由・民主主義・基本的人権・法の支配といった普遍的価値を堅持し、こうした価値を共有する国々と手を携え世界の感染症対策に強いリーダーシップを発揮していくのが日本の責任だ」

 黒川東京高検検事長の「訓告処分」についてはあくまでも法務省に責任を転嫁し、世論調査の支持率が軒並み急落している政権末期症状の中で、「世界にリーダーシップ」とは噴飯ものですが、さらに問題はその前段です。

 唐突に持ち出した「自由・民主主義・基本的人権・法の支配」。抽象的な言葉を並べていますが、明らかに中国をけん制したものです。それをいち早く察知して(まるで会見前から知っていたかのように)、NHKはまだ会見が終わらない午後7時のニュースの冒頭で、「香港、台湾問題をかかえる中国に対し…」とコメントしました。

 NHKの会見中継は6時43分に打ち切られましたが、ユーチューブでそのあとを確認すると、会見終了間際に、ウォールストリートジャーナルの記者が冒頭発言のこの部分をとらえて質問しました。「アメリカと中国が対立しているが、日本はどっちにつくのか?」(こうした的を射た質問をするのはたいがい外国人記者です)。

 これに対し安倍氏はこう答えました。
 「コロナウイルスが中国から世界に広がったのは事実」「アメリカは日本の唯一の同盟国だ。アメリカと協力して国際的問題に取り組んでいく」「中国には責任ある対応を期待したい」

 コロナ感染に関してトランプ大統領が根拠を示さないまま中国を批判し、WHOへの拠出金を大幅に削減する挙に出たことは、ウイルスの世界的感染を防ぐために求められている国際連帯に逆行するものとして世界から顰蹙をかっています。安倍氏はこの日の会見で、そのトランプ氏を支持し追従していくことを明確に表明したのです。日本の不見識を世界にさらしたものと言わねばなりません。

 元凶は安倍氏自身が述べたように、日米同盟すなわち安保条約によるに日米軍事同盟です。
 「コロナ後」の政治・社会のあり方を考えるとき、重要な目標になるのは真の国際協力・国際連帯です。それを阻んでいるのがトランプ氏に代表される「自国中心主義」であり、武力で対立し軍備増強を競い合う軍事同盟体制です。軍事同盟体制の解消こそは、「コロナ後」の世界が目指すべき重要な目標です。
 安倍首相の会見を反面教師に、いまこそ日米軍事同盟・安保条約体制の解消へ向かって進まねばなりません。

 


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コロナ対策・軍事費削らず赤字国債乱発する危険

2020年05月07日 | 日米同盟と安倍政権

   

 労働者、中小業者への休業補償などコロナ対策で財政出動の拡充が求められるのは当然ですが、その財源にも無関心ではいられません。
 与党と「主要野党」の賛成で成立(4月30日)した補正予算の規模は25兆6914億円。財源は全額赤字国債です。赤字国債は言うまでもなく国の借金。そのツケは子や孫の世代に回ってきます。これまで赤字国債発行を含む政府予算案に反対してきた日本共産党が今回賛成に回ったのは特筆すべきことです。

 コロナ対策のための赤字国債発行をいちがいに否定するものではありませんが、それには前提条件があります。それは歳出を見直し、無駄な経費を徹底的にカットすることです。その筆頭は軍事費です。

 来年度予算の軍事費(「防衛費」)は、過去最高の5兆3133億円(対前年比559億円増、8年連続増額)。この軍事費を削減してコロナ対策に回すべきだという議論が国会やメディアでまったく行われていないのは異常です。

 軍事費の大幅削減(全廃へ向けて)はたんに財源確保のためだけではなく、コロナ禍を機に今後どのような社会をつくっていくかという問題にかかわってきます。

 例えば韓国では、4月28日に労働組合や市民団体など535団体によって、「コロナ19・社会経済危機対応・市民社会対策委員会」が発足しました。対策委は記者会見でこう強調しました。

 「『感染病による災難や経済危機の中で、女性や老人、労働者や中小商工人、障害者などの社会的弱者や少数者がとくに苦痛を受けている』とし、…安全な社会を作るための政府の公的機能を整備し、社会の公共性を拡大するためにも『財政支出の優先順位を国家安保や軍事安保から、市民の安全へと転換しなければならない』とし、『この災難を通じて人々の生命が尊重される社会、平等で持続可能な社会経済秩序を構築するために、市民が意志と知恵を集めるべきだ』と呼びかけた」(4月30日付朝鮮新報・日本語電子版。写真右も。プラカードには、「差別のない直接支援」「公共医療拡大」「解雇禁止・雇用維持」「持続可能な経済産業・構造転換」などと書かれています)

 同対策委が「今後の課題」として挙げた具体的な項目の中には、「経済危機克服のための国際連帯と南北協力の強化」も含まれています。

 ここでは「国家安保・軍事安保からの転換」が「生命が尊重される平等で持続可能な社会経済秩序の構築」にしっかり結び付けられています。

 赤字国債増発と軍事費膨張は表裏一体の関係です。

 日本の財政で国債が急増したのは、1932年、満州事変の翌年からです(31年度2・1億円から32年度8・3億円へ)。同じ予算で軍事費も4・5億円から6・9億円(1・5倍化)に拡大しています。
 以後、軍事費は1933年度=8・7億円、34年度=9・4億円、35年度=10・3億円、36年度=10・8億円と膨張を続け、それに伴って国債も、33年度=8・8億円、34年度=8・7億円、35年度=7・9億円、36年度=7・2億円と高水準を続けました(中村隆英著『昭和経済史』岩波現代文庫より)。

 膨張する軍事費を聖域にして手をつけず、コロナ対策に必要な財源を赤字国債で賄うのは、形を変えた戦前戦中型予算の再現と言えるのではないでしょうか。


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軍隊を派遣してなにが「平和外交」か

2020年01月13日 | 日米同盟と安倍政権

    

 安倍晋三首相は11日、中東へ出発する際、「日本ならではの平和外交を粘り強く展開していく」と述べました。
 一方同日、海上自衛隊のP3C哨戒機2機が那覇空港から中東へ飛び立ちました(写真右)。防衛省設置法の「調査・研究「に基づく初の海外長期派遣です。

 自衛隊は言うまでもなく軍隊です。そして、「調査・情報収集」はれっきとした軍事行動です。安倍政権はこの日、軍事行動のために軍隊を中東地域に派遣したのです。軍隊を派兵しながら「平和外交」を口にする。これは、片手で刃物を振り上げながら、片手で握手を求めるに等しい欺瞞と言わねばなりません。

 自衛隊という名の軍隊の中東派遣は、明白な憲法(前文、9条)違反であるとともに、中東情勢の平和的転換に逆行する暴挙です。この根底に、日米軍事同盟(日米安保条約)があることを改めて銘記する必要があります。

 安倍氏は訪問先の国々で、「今回の自衛隊派遣の目的」について説明しましたが、それは、これが中東諸国から見れば明らかに「日本軍」の派遣であることを自覚しているからではありませんか。

 今回海自が活動する海域は、「多くのタンカーが行き来するペルシャ湾やホルムズ海峡を除外」(11日付共同配信)しています。それは、「沿岸に位置するイランの警戒を招かないための措置」(同)だといいます。「自衛隊派遣は原油輸入の国益を守るため」というなら、ペルシャ湾やホルムズ海峡の情報こそ収集しなければならないはずです。
 にもかかわらずその海域を避けているのは、「原油輸入の情報収集」など口実にすぎず、実は自衛隊を中東地域に派遣すること自体が目的であることを示しています。それが日米軍事同盟(安保条約)によるアメリカへの追従、盟主アメリカへのアピールであることは明白です。今日版「ショウ・ザ・フラッグ」です。

 「平和外交」というなら、自衛隊という憲法違反の軍隊を解散(災害対策組織に改組)し、日米安保条約・軍事同盟を解消して真の中立国家になることです。それなくして「平和外交」はありえません。

 ところで、今回の安倍氏の中東訪問にはまたしても昭恵夫人が同行しています(写真中)。テレビ映像では昭恵氏はサウジアラビアとの会談の場にも同席しています。
 昭恵氏は「私人」であると閣議で確認したはずです。その「私人」がなんの権限で首相の外遊に同行し、会談の場にまで顔を出しているのでしょうか。昭恵氏の旅費はいったい誰が出しているのでしょうか。
 天皇の行幸に追従する皇后を模したような、「首相夫人同伴」はきっぱりやめるべきです。


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アメリカが「中止する」というのに日本が「中止するな」という倒錯

2018年06月16日 | 日米同盟と安倍政権

      

  12日の朝米会談の「拡大会談」で、金正恩委員長の提起を受けて、トランプ大統領は「協議が続けられている間は米韓合同軍事演習は中止する」と述べ、会談後の記者会見でも、「費用のかかるWAR GAME(軍事演習)は中止する」と言明しました。「在韓米軍」の撤退にも言及しました(写真左)。

  次の駐韓大使に指名されたハリス前太平洋軍司令官も米議会公聴会で、「北朝鮮が一息つけるようにする必要がある。演習中止はそれにつながる。主要な演習は中止すべきだ」と述べました(日本時間15日、写真中)。

  韓国のソン国防相も15日、マティス米国防長官との電話会談で、「北への軍事的圧迫を柔軟に変化させる必要がある。合同軍事演習についても慎重に検討すべきだ」とする文在寅大統領の言葉を伝えました。

 米韓合同演習は中止へ向かって大きく動き出しています。画期的なことです。

 ところがこれに異を唱えている国があります。日本の安倍政権です。

 小野寺防衛相は15日の記者会見で、「米韓の合同演習、日米韓の共同訓練を含む日米韓3か国の安全保障・防衛協力が地域の平和と安定を確保する上で重要な柱となるという認識に変わりはない」と、「抑止力」論の立場から米韓・日米韓合同軍事演習の必要性を強調しました(写真右)。

 当事者のアメリカと韓国が「中止する」「再検討する」と言っているのに、日本が“止めるな”と言う。なんという倒錯でしょうか。

 安倍政権が米韓合同演習の中止に反対するのは、米軍と一体化して合同演習に加わっている自衛隊の出番がなくなるからでしょう。朝鮮半島の緊張が緩和すれば、「北朝鮮の脅威」を口実に毎年5兆円を超える巨額の軍事費で軍需産業を潤してきた軍拡路線が破たんするからにほかなりません。

 安倍政権の異端ぶりは「米韓合同演習」だけではありません。

 安倍首相は朝米会談の直前にアメリカに飛び、トランプ大統領に必ず「拉致問題」を取り上げるよう念を押しました。朝鮮が「拉致問題」は解決済みとしている中で、この問題を会談で持ち出せば朝米の融和に水を差すことは明らかです。安倍氏は「拉致問題」を持ち出すことによって朝米会談の妨害を図ったと言わざるをえません。

 歴史の流れが朝鮮半島・東アジアの平和と安定、友好へ向かって大きく歩み出そうとしているとき、その流れを必死に食い止めようとしているのが日本の安倍政権です。

 安倍首相は「拉致問題」で朝鮮との「直接対話」を口にし始めましたが、一方で「拉致被害者全員」が生存しているとの前提でその帰国が必要条件だと言い続け、一方で「直接対話」といっても、それは政治的プロパガンダにすぎません。

 朝鮮との「直接対話」というなら、まず米韓合同軍事演習の中止に反対することをやめ、「拉致被害者全員の帰国」という前提条件を取り下げることです。

 安倍首相も認めざるをえない「日朝平壌宣言」(2002年9月17日)は、「日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め(る)」(外務省HP)と明記しています。
 そして、「双方は、相互の信頼関係に基づき、国交正常化の実現に至る経過においても、日朝間に存在する諸問題に誠意をもって取り組む強い決意を表明」(同)したとしています。
 この「日朝平壌宣言」の基本的立場に立ち返ることが、日本の、安倍首相の責務です。


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<速報>「日本国民」に問われる「拉致問題の解決」とは?

2018年06月08日 | 日米同盟と安倍政権

     

 会談の多くの時間を政権の“命綱”である「拉致問題」にあて、トランプ大統領に協力を懇願した安倍首相。辟易したように、そこまで言うなら米朝会談でも取り上げるから、その代わりにアメリカ製の兵器をもっと買い、投資も行え、と代償を求めたトランプ大統領。

  8日午前3時前(日本時間)に終了した7回目の日米首脳会談は、そんな状況だったことが、会談直後の共同記者会見でうかかえました。

  トランプ氏が会見でかなりの時間を「日米貿易問題」にあて、対日貿易赤字を強調した上で、「ボーイング社などの数十億㌦の製品を日本に購入してもらうことになる」「ミシガンやオハイオに日本から投資してもらう」とし、「安倍首相はやると言った」と強調しました。これが今回の会談のトランプ氏の最大の目的だったことをうかがわせました。

  ところが安倍首相は、このボーイング製兵器購入を含むと思われる「約束」について、会見では一言も触れませんでした。

  安倍氏が繰り返したのは「拉致問題の解決」でした。「新潟の13歳の少女…」と2回も口にする異様な会見でした。

  問題は、「拉致問題の解決」とは何か、ということです。

  安倍氏は会見で、「横田めぐみさんをはじめすべての拉致被害者が日本に帰ってくること」だとあらためて強調しました。そして、「すべての日本国民はそれを願っている」と言いました。

  これは絶対に聞き流すことができない発言です。

  先のブログ(5月31日)でも述べたように、「すべての拉致被害者」が生存しているという前提に立ち、その帰国が「拉致問題の解決」であり日朝協議の前提だと日本政府(安倍政権)が主張し続ける限り、朝鮮民主主義人民共和国(朝鮮)との協議・国交正常化交渉の可能性はありません。したがって「拉致問題」も一歩も前進しません。

  それを承知で安倍氏が同じ主張を繰り返しているのは、安倍氏が本気で朝鮮との協議・国交正常化へ向かうつもりがないからであり、「拉致問題」を前進させるつもりもないからです。
 「拉致問題」を政治利用し、「北朝鮮の脅威」を吹聴して、軍備(自衛隊)増強を図り、政権を維持・浮揚させようとする政治的思惑以外の何ものでもありません。

  「すべての拉致被害者の生存・帰国」を前提にすることなく、「拉致の真相・実態・責任」を明らかにする。それしか「解決」の道はありません。

  問われているのは「日本国民」です。

 安倍首相は自分の政治的思惑をカムフラージュするために「すべての日本国民がそれを願っている」という策術を弄しました。この虚偽発言をそのままにしておけば、ほんとうに「すべての日本国民」は安倍氏と同じ考えだという重大な誤謬を世界に発信することになります。それが朝鮮との協議・国交正常化交渉の大きな障害になることも明らかです。

 「拉致問題(の解決)」についての安倍首相の主張は特異な政治的思惑であり、われわれはそうは考えていないという声を、「日本国民」は自ら発する必要があります。メディアの責任もあらためて重大です。


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無謀な米シリア攻撃に加担する日米軍事同盟

2018年04月16日 | 日米同盟と安倍政権

     

 アメリカ・トランプ政権と英仏のシリア攻撃(14日、巡航ミサイル「トマホーク」など100発以上発射)は、シリアが化学兵器を使ったという「証拠」がなんら示されない中で強行された、まさに「無責任な武力行使」(15日付朝日新聞社説)にほかなりません。絶対に容認できません。

 化学兵器使用については、国際機関(OPCW化学兵器禁止機構)が14日にシリア入りし、今後の調査についてシリア政府と打ち合わせをしている状況です(写真右)。

  仮にシリアが化学兵器を使ったとしても、空爆という武力行使が事態解決に沿うどころか逆に内戦・混迷を深めることは明白です。

 まして、トランプ氏の「国内世論を意識した場当たり的な対応が、混乱を拡大させると言わざるを得ない」(「15日付日経新聞社説」)事態は言語道断です。

  認定NPO法人・難民支援協会(東京)の石川えり代表理事が、米国のシリア攻撃によって「(内戦が)泥沼化、長期化して『平和な故郷に帰りたい』という難民たちの切実な願いが遠のくことを心配している」(15日付琉球新報)と危惧するのは当然です。

  銘記しなければならないのは、この無謀な米国のシリア攻撃と日本が無関係ではないことです。

  安倍首相はいつものように即座に、「米英仏の決意を支持する」(15日)と表明し、対米追従ぶりを露わにしました。

 しかし、日本の関与はこれだけではありません。

  「米英仏3カ国がシリアへの攻撃を開始したことを受け、米軍嘉手納基地では14日午後、弾道ミサイル観測能力を持つ電子偵察機RC135Sコブラボールの離陸が確認されるなど、緊張感が高まりつつある。嘉手納基地内の警戒レベルは…シリア情勢の緊迫化が進むに連れて、引き上げられる可能性もある」(15日付琉球新報)

  アメリカの武力行使が世界のどこで行われようと、日本は無関係ではいられません。というより、米国の武力行使との共犯性は否定できません。なぜなら、在日米軍基地が武力行使に直接かかわるからです。

 その実態は「本土」では可視化されにくいですが、米軍基地が集中し軍事植民地状態になっている沖縄ではそれが目に見えるのです。

  こうしてアメリカの武力行使に日本が巻き込まれる(加担する)元凶が、日米軍事同盟(安保条約)であることは言うまでもありません。

  同じく米軍基地がある国でも、今回日本政府(安倍首相)と対照的な態度をとったのがイタリアでした。

  「イタリアのジェンティローニ首相は14日、米英仏のシリア攻撃を受け受けて声明を出し、『イタリア国内からシリア攻撃は行われるべきではない』と述べ、今回の作戦に関しイタリア国内の米軍基地の使用を認めない方針を明らかにした。…ジェンティローニ氏はイタリアは米国のパートナーであるとしつつ、今回の軍事作戦には参加しないと強調。シリア問題は外交努力で解決すべきだとの立場を改めて示した」(15日付琉球新報=共同電)

  アジア・太平洋戦争で同じ「三国同盟」のメンバーでありながら、日本とイタリアの姿勢の違いは歴然です。ちなみに、イタリアは敗戦の教訓から、戦後、王制を廃止しました。この点でも日本との違いが際立っています。

  シリア攻撃は来月の朝鮮民主主義人民共和国とアメリカの「首脳会談」とも無関係ではありません。

 日本は一日も早く、日米軍事同盟を解消(日米安保条約を廃棄)して、自主的な平和外交へ舵を切らねばなりません。東アジアの平和・安定のためにもそれは急務です。


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天皇明仁とトランプ大統領の危険な会話

2017年11月09日 | 日米同盟と安倍政権

    

 トランプ大統領は訪日2日目の6日午前、皇居・御所で明仁天皇と約20分間会談しました。
 その内容は宮内庁のHPには掲載されておらず、メディアの報道もきわめて不十分です。
 しかし、その不十分な断片的報道の限りでも、二人の会話の内容は、けっして見過ごすことができない重大なものでした。

 「宮内庁によると、大統領は今回の訪問について「すべてうまくいっています。安倍晋三首相とは北朝鮮問題、防衛協力、通商問題など様々な問題について充実した意見交換を行っています。現在日米関係はかつてなく良好です」と話し、陛下は「それを聞いて喜ばしく思います。両国はかつて戦争した歴史がありますが、その後の友好関係、米国からの支援により今日の日本があるのだと思います」と話したという」(7日付朝日新聞)

 この明仁天皇の発言は、2つの点で看過できません。

 第1に、「北朝鮮問題、防衛協力、通商問題など様々な問題」をめぐるトランプ・安倍会談が「充実した意見交換」で「現在日米関係はかつてなく良好」だと聞かされて、「それを聞いて喜ばし」いと賛辞を送ったことです。

 トランプ・安倍会談は、「北朝鮮問題」では、「日本は「全ての選択肢がテーブルの上にある」とのトランプ氏の立場を一貫して支持している」(安倍首相、6日の共同記者会見。7日付共同配信)と、武力行使を含め「(北朝鮮への)圧力を最大限にまで高めていくことで完全に一致した」(安倍氏、同)ものでした。

 また、「防衛協力」については、「首相は大量の(米国製)軍事装備を購入するようになるだろう」(トランプ氏、同)、「米国からさらに(防衛装備品を)購入していくことになるだろう」(安倍氏、同)というものでした。

 トランプ氏がどこまで具体的な内容を話したかは明らかにされていませんが、こうした日米会談の内容を天皇が全体として「喜ばしい」と評価したことは事実です。少なくともトランプ氏はそう受け取ったでしょう。これは外交辞令の枠を超えています。

 こうした現政権の重要政策(外交政策)に対する肯定・賛美が、天皇による政治発言であることは明らかです。

 第2に、天皇が「(戦後の日米の)友好関係、米国からの支援により今日の日本がある」と述べたことです。戦後の日米の「友好関係」といえば、サンフランシスコ体制・日米安保条約(1951年)による日米同盟(軍事同盟)を指すとみるのがふつうでしょう。「米国からの支援」とは何を言っているのか不明ですが、文脈から、安保条約による軍事的「支援」が天皇の念頭にあったと考えられます。

 日米軍事同盟・安保体制の肯定・賛美が、重大な政治発言であることも言うまでもありません。

 明仁天皇の実父・裕仁天皇は、憲法の規定を無視して、アメリカに「米国が沖縄及び他の琉球諸国の軍事占領を継続することを希望」するというメッセージ(「天皇の沖縄メッセージ」1947年9月22日付書簡)を送り、「国体」(天皇制)維持のために沖縄を売り渡したことは歴史的事実です。その結果、サンフランシスコ講和条約第3条に、沖縄に対するアメリカの「信託統治」が規定され、安保条約によって米軍基地が日本に駐留し、沖縄に集中しています。

 明仁天皇の日米安保体制の事実上の賛美発言は、昭和天皇が敷いた日米軍事同盟・安保体制の軌道を進むものと言えるでしょう。

 憲法は第4条で天皇の政治的権能(政治的言動)を厳に禁じています。今回のトランプ氏に対する天皇の発言がこれに反することは明らかです。
 しかもその内容は、朝鮮半島・東アジア・日本の平和を脅かし、経済的にも国民生活を圧迫する元凶である日米軍事同盟・安保体制を肯定・賛美するというきわめて重大なものです。

 これは明仁天皇だけの問題ではなく、天皇を外交(大統領との会談)に巻き込んで重要政策(軍事同盟)の肯定・賛美を図る安倍政権の天皇政治利用の問題です。
 「象徴天皇制」がもつ根源的な問題があらためて露呈しています。


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憲法9条が死滅する岐路に立っている

2017年04月13日 | 日米同盟と安倍政権

      

 いま、私たちは、重大は岐路に立っています。

 朝鮮半島をめぐるトランプ大統領と安倍首相のこの間の言動を振り返りましょう。

 ●4月上旬の日米高官協議で、米国務省高官は日本政府に対し、「中国が北朝鮮への圧力を強化するか、米国がストライク(攻撃)するか、二つに一つの選択肢しかない」と明言(12日付共同配信)
 ●安倍首相との電話会談で、トランプ氏は「全ての選択肢がテーブルの上にある」と言明(6日)
 ●トランプ氏は、アサド政権が化学兵器を使用した証拠がないまま、国連安保理も米議会も無視して、シリアをミサイル攻撃(日本時間7日未明
 ●安倍首相はトランプ氏のシリア攻撃に対し、直ちに「支持する」「理解している」「高く評価する」と表明(7日
 ●米中首脳会談でトランプ氏は習近平氏に、「中国の協力が得られなければ米単独行動も辞さない」と言明(7日
 ●米国家安全保障会議(NSC)がトランプ氏に在韓米軍に核兵器を配備するよう提案した、と米NBCテレビが報道(7日
 ●トランプ氏が原子力空母カール・ビンソンを中心とする空母打撃団を朝鮮半島に派遣。沖縄・嘉手納基地にF22ステルス戦闘機配備8日
 ●トランプ氏との電話会談で、安倍首相は「同盟国や世界の平和と安全のために強く関与していることを高く評価する」と改めて表明(9日
 ●北朝鮮外務省は「わが国に対する米の侵略策動が実践段階に入った。米はみずからの横暴な行為が招く破局的な結果の全責任を負うことになる」と表明(10日
 ●海上自衛隊と原子力空母カール・ビンソンの「共同訓練」計画が判明(12日

 以上の経過から明らかなのは、トランプ氏による北朝鮮攻撃は一触即発の段階であり、安倍政権は政治的にも軍事的(自衛隊)にも、トランプ政権との一体化を強めているということです。

 これに対し北朝鮮が対抗手段として、いつ「ミサイル発射」を行っても不思議ではありません。たとえ北朝鮮はデモンストレーションや実験・訓練のつもりでも、トランプ氏はそれを口実に(あるいは「兆候」をねつ造して)北朝鮮攻撃を開始するでしょう。
 まさに「第2の朝鮮戦争」、いいえ、朝鮮戦争はまだ終結していませんから、「朝鮮戦争の再開」にほかなりません。
 これに対し日本は、日米軍事同盟によって米国と運命を共にし、さらに戦争法(安保法)によって直接的に米軍を支援(共同行動)することになります。

 これは日本が明確な戦争当事国になるということです。
 その戦争は、トランプ政権による北朝鮮侵略戦争です。上記の事実経過で明かなように、一方的に戦争をしかけているのはトランプです。安倍政権はトランプ政権とともに、かつて日本が侵略し植民地にした朝鮮をふたたび侵略することになるのです。

 日本のメディアは例外なく常に、「北朝鮮の挑発」という表現を使っていますが、挑発しているのはアメリカの方です。上記の出来事は米韓軍事演習が行われている中で起こっていることです。
 北朝鮮は一貫して朝鮮戦争の平和条約締結と、アメリカとの直接会談を望んでいます。それを拒否し、韓国、日本に基地を置き、共同演習を繰り返して軍事的圧力をかけ続けているのはアメリカです。どちらが挑発しているか明らかではないでしょうか。「核保有」についても、アメリカが核大国であるみずからの核保有は合理化し、さらにインドなどの核保有は容認しながら北朝鮮にだけ放棄を迫るのは道理に合いません。
 事実に基づかず日米両政府がいうままに「北朝鮮の挑発」と繰り返す日本のメディアは、「大本営発表」の戦前・戦中の新聞・ラジオとどれほどの違いがあるでしょうか。
 
 トランプの北朝鮮攻撃と同時に、日本は戦争当事国となり、その瞬間に日本国憲法第9条は死滅します。1931年~45年の侵略戦争の歴史的教訓も吹き飛びます。
 そういう歴史的岐路に、今私たちは立っているのです。

 その「今」を生きている者の責任として、主張します。
 トランプ大統領は北朝鮮に対する挑発・圧力を直ちにやめ、武力攻撃を断念せよ。
 安倍政権はトランプ政権への従属、自衛隊と米軍の一体化をやめよ。
 日米安保条約第10条に基づいて直ちに同条約の廃棄を通告し、日米軍事同盟を解消して、非同盟・中立の日本にしよう。


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「トランプ氏の核戦争」に巻き込まれる現実的恐怖

2017年04月08日 | 日米同盟と安倍政権

           

 トランプ大統領によるシリア空爆、それを間髪入れず支持した安倍首相。日本が戦争しかも核戦争に巻き込まれる現実的な恐怖に身震いします。

 シリアが化学兵器を使ったという証拠はなく、仮にあったとしても、空爆は一般市民も巻き込む無差別の殺戮であり、それによって事態が好転するどころか悪化するのは必至で、どこからみても「あまりに乱暴で無責任な武力の行使」(8日付朝日新聞社説)です。

 とりわけ重大なのは、この空爆が、国連安保理も、(オバマ前大統領によるシリア空爆に歯止めをかけた)米議会も無視し、トランプ氏の独断・即決によって行われたことです。しかもその動機は、低迷する支持率の挽回やオバマ氏への対抗心というきわめて恣意的なものです。

 明かなことは、トランプ氏が民主主義のルールや国内外の世論、まして良識などまったく眼中にない、自分がやると思ったらいつでも戦争のボタンを押すこの上なく危険な大統領だということです。

 この恐怖は、言うまでもなくシリア・中東だけの問題ではありません。むしろ米中首脳会談の最中に行われた今回の空爆は、北朝鮮をめぐって中国をけん制する狙いだったともみられています。トランプ氏はすでに北朝鮮に対する武力行使(金正恩氏の暗殺を含め)のボタンに指を置いており、いつ実行しても不思議はありません。

 情勢がまだ今ほど緊迫していなかった時に新聞で読んだ専門家(米モントレー国際問題研究所部長ジェフリー・ルイス氏)の論考が思い起こされます。

 「2016年2月、トランプ氏は金正恩氏について聞かれ、次のように言ったものだ。『私なら、あれやこれやのやり方で、一瞬にして中国にあいつを消してもらうようにする
 今から1年前、この脅しに誰も注意を払わなかった。トランプ氏はまだ米大統領ではなく、朝鮮半島は今ほど危機的状況ではなかった。しかし、トランプ氏は今や大統領なのだ」
 「北朝鮮は、日韓に駐留する米軍と武力衝突する事態になれば、核兵器を先に使う計画だ。米国にショックを与え、北朝鮮への侵攻を阻止するために」(3月5日付中国新聞=共同配信)

 トランプ氏は8日(日本時間)の習近平氏との会談で、中国が北朝鮮を抑えないならアメリカが自分でやる、と言いました。中国が金正恩氏を消さないのなら自分が消す、ということでしょう。トランプ氏のこのサインによって、北朝鮮が核兵器を先制使用する恐れはきわめて大きくなったと言わざるをえません。その標的は、韓国であり日本です。

 まるで小説か映画のようなシナリオですが、これは現実です。そして日本は間違いなく当事国の1つです。沖縄をはじめ全土に米軍基地があり、安倍首相が世界のだれよりも早くトランプ氏の空爆を「支持・理解・評価」する日本は、いつ北朝鮮の核攻撃の標的になっても不思議ではありません。

 この根源は、日米安保条約による日米軍事同盟です。日米安保・軍事同盟を解消する以外に、何をするか分からないトランプ氏が引き起こす核戦争に、私たちが巻き込まれる恐怖から逃れる道はありません。


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