新型コロナウイルスによる肺炎感染は拡大の一途をたどっています。安倍首相は週明けにやっと対策を発表するとしています。その緩慢さとは裏腹に、きわめて素早く、そして繰り返し行っていることがあります。それは、自衛隊を新型肺炎対策に関わらせていることです。
安倍首相は6日、横浜沖に停泊中の大型クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号(写真左)へ、「乗客の生活支援」の名目で自衛隊医官2人を派遣しました。7日には3人増やして医官5人とし、さらに「搬送作業」に当たらせるとして自衛官20人を同船に送り込みました。
河野太郎防衛相は7日の記者会見で、「自衛隊の医官5人が乗り込んで支援にあたる」と述べるとともに、「病院などに搬送しなければならないニーズで、自衛隊にやってくれと言われれば搬送する」とさらに自衛隊を派遣する意向を示しました(写真右)。
安倍首相が今回の新型肺炎に自衛隊を直接かかわらせたのはこれが3回目です。
▶1月27日 中国・武漢の日本人を帰国させるため、防衛省管轄の政府専用機(中国は軍用機と認定)を2機派遣する方針を決め、防衛省幹部に打診(中国側の反発で不履行)。
▶1月31日 武漢から帰国した日本人の一時滞在先として防衛省のチャーター船「はくおう」の使用を検討(不履行)。
▶2月6~7日 停泊中の大型クルーズ船ダイヤモンドプリンセス号に自衛隊医官5人、隊員20人を派遣。
これらはすべて、自衛隊でなければならない理由・必然性はまったくありません。現に武漢へのチャーター機はすべて民間機(全日空)で行われ、帰国者の滞在も陸上の各施設で行われています。
クルーズ船についても、「乗客の生活支援」「搬送作業」になぜ自衛隊の医官、隊員があたらなければならないのか、まったく不可解です。担当省庁でいえば、厚労省か国交省が当たるのが普通です。自衛隊という軍隊が出動する理由はまったくありません。
安倍首相がこうした不自然・不可解なことを繰り返しているのは、新型肺炎という「危機」(安倍首相)に乗じて自衛隊を動かし、その存在・活動を拡大しようとする意図と言わざるをえません。
さらにそれは、安倍首相が目論む憲法改悪の「緊急事態」とも無縁ではないでしょう。
自民党改憲草案(2012年4月27日決定)は「第9章 緊急事態」を新設し、「武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態」に、首相が「緊急事態宣言」を行い、「法律と同一の効力を有する政令」を制定することができ、地方自治体や「国民」はこれに「従わなければならない」と明記しています。
「緊急事態宣言」を行った後は自衛隊を出動させ、「治安維持」(国民統制・弾圧)にあたらせようとするのは明白です。新型肺炎に乗じてことあるごとに自衛隊を動かそうとする安倍首相の言動はその予行演習のつもりではないでしょうか。
防疫や災害復旧に軍隊が当たる必要はまったくないばかりか、きわめて危険です。平和・民主国家に軍隊は不要です。自衛隊を解散し、災害対策に特化した組織を新設する。その原点に今こそ立ち返る必要があります。