14日夜、NHKスペシャルで「沖縄戦全記録」という番組が放送されました。
タイトルや前宣伝とは裏腹に、新事実は乏しく、全体像にはもとよりほど遠い内容でした。しかも、「靖国神社へ行けると思って喜んで死んだと思う」など、「皇民化教育」の影響下にあった住民の証言を無批判に紹介するなど、不十分な点は多々ありました。
しかしそんな中でも、あらためて注目すべき点はありました。
★「軍官民共生共死」の名の下、「防衛召集」で住民を「根こそぎ動員」
大本営が沖縄の主力部隊を台湾に回したことから、沖縄守備隊はその穴埋めとして、14歳以上(実際はもっと低年齢から)の沖縄住民を召集しました。長勇・第32軍参謀長は「全県民が兵隊になるのだ」と公言(写真左)。住民は「軍事訓練もせずその日からすぐ実戦。一番危ない仕事」(日本軍元上等兵)をやらされました。
女性も動員され、男性とともに、「斬り込み」という“自爆戦”を命令されました。
★住民を犠牲にした日本軍
日本軍兵士は同じ壕の中に逃げていた住民を追い出したり、住民に偽装したり、「住民を隠れミノにしていた」。元大尉は「偽装」を黙認したと述懐し、元上等兵は「住民を利用したかもしれない」と証言しました(写真中)。
こうしたことは周知の事実ですが、沖縄戦が、住民を根こそぎ犠牲にする「捨て石作戦」であったこと、軍隊は住民を守らない、それどころか犠牲にするものだということが、数々の証言で示されました。
不十分なところ(例えば終戦を引き延ばして犠牲を拡大した昭和天皇の責任には一切ふれないなど)はいろいろありますが、NHKスペシャルが今の情勢で、こうした事実を示した意味は小さくないでしょう。
同時に、別の視点から注目すべき証言がありました。米軍の証言です。
番組は、沖縄戦の司令官側近だったジェームス・バーンズ曹長の「陣中日記」をたどる形で進行しました。その中でバーンズは、最大の激戦だったシュガーローフの戦い(1945年5月14日)で、海兵隊約4000人が戦死したほか、231人が「戦闘神経症」という精神の病にかかったと記しています。
またある部隊は、逃げる人々を銃撃しましたが、あとでそれが全員日本兵ではなく沖縄の住民だったことがわかりました。その時の兵士は、70年たった今もそのことが脳裏から離れず、「疑心暗鬼だった。先に撃つしかなかった」と、うつむいて慟哭しました。
南部に追い詰められた沖縄住民は、捕虜になるより死ねという「戦陣訓」によって、次々に崖から飛び降りました。目撃した元兵士は、「一番つらかったのは身を投げて死んだ子どもの無残な姿を見たこと」と声を詰まらせました(写真右)。
バーンズは戦後ジャーナリストとなり、ピューリッツァ賞も受賞しましたが、沖縄戦のことは一切語ろうとしなかったといいます。
戦争(戦闘行為)は、殺された人が犠牲になるだけでなく、殺した方も一生苦しめます。
「戦争法案」を巡る国会質疑の中で、アフガン戦争(2001~10)で25人、イラク戦争(2003~09)で29人、計54人の派兵経験自衛官が自殺していたことが明らかになりました(5月27日、日本共産党志位和夫委員長の追及)。自殺者でこの数です。精神の病に犯された自衛官はいったいどのくらいにのぼるのでしょうか。
これは集団的自衛権行使が認められていない中での実態です。「戦争法案」によって集団的自衛権が公然と行使され、戦闘に参加することになれば、いったいどれだけの自殺者、精神病者が生まれるでしょう。
自衛官の犠牲、加害者としてのこころの痛みを、他人事として傍観することは許されません。
自衛隊を戦場に送る「戦争法案」は、絶対阻止しなければなりません。