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アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「安倍銃撃事件」容疑者と自衛隊

2022年07月20日 | 自衛隊・軍隊・メディア
   

 「安倍晋三氏銃撃事件」の背景をめぐる報道がさまざまありますが、重要なポイントが抜け落ちています。山上徹也容疑者が2002年8月~05年8月まで在移籍した自衛隊(写真中は所属していた海上自衛隊呉基地)と事件の関係です。この事件の背景を考える上で、旧統一教会と安倍氏の関係とともに、容疑者と自衛隊の関係は避けて通れません。

 不十分な断片的報道の中から、自衛隊とのかかわりで明らかになっていることをまとめてみます。

①入隊の動機・いきさつ

 容疑者は県内有数の進学校で成績優秀でしたが、母親が旧統一教会へⅠ億円を超える献金を行い貧困に陥ったため、大学進学を断念しました。「消防士」を志望し、そのための予備校に入って試験を受けましたが、「近眼が原因で」(17日付共同)不合格。「親族の勧めもあり」(同)、2002年8月、任期制自衛官となりました。その動機は「お金を稼ぐためだった」(15日の朝日新聞デジタル)といわれています。

 母親に代わって容疑者らきょうだいの面倒をみていた伯父(元弁護士)は、「自衛官に向くタイプではない。生活が苦しくなかったら、違う道に進んでいただろう」と述べています(15日の朝日新聞デジタル)。

 自衛隊は貧困で進学できない人たちが「金を稼ぐ」受け皿になっていますが、山上容疑者の場合もまさにそのケースでした。「近眼」で消防士はダメでも自衛官にはなれるのです。消防士という人命救助を志望していた容疑者が、「災害救助」というメディアが流す自衛隊像に消防士の代替をみた可能性もあります。

②自衛官時代に自殺未遂

 2005年1月、容疑者は自衛官の任期切れ(同8月)を目前に、自殺を図りました。

「海自の聴取に(容疑者は)「旧統一教会によって人生と家族がめちゃくちゃになった」と説明」(17日付共同)しています。また伯父は、海自から自殺未遂の理由について、「困窮している兄と妹を助けるため、自らに生命保険をかけて自殺しようとした」と説明されました(15日の朝日新聞デジタル)。

 自衛隊は、容疑者から自殺未遂について聴取し、旧統一教会に強い恨みを抱いていること、保険金で兄妹を助けようとするほど生活に困窮していたことを知っていたわけです。知っていながら、「再就職の支援」などはしていませんでした(8日の朝日新聞デジタル)。

③自衛隊の教育・訓練と銃撃実行

 容疑者は3年間の自衛官時代にどのような思想教育・軍事訓練を受けたのか。それは「銃撃」という犯行の背景をみる上で重要ですが、まったく明らかになっていません。したがって事件と自衛隊員としての生活の関係の有無は不明です。

 ただ、断片的な報道の中でも、関係をうかがわせるものはあります。たとえば、銃器研究家の高倉総一郎氏は、容疑者が作った銃(写真右)のグリップの形状について、「丁寧に湾曲させている。知識が無いとできない。…一見…雑なつくりのようだが、かなり計算しているようだ」(13日の朝日新聞デジタル)と話しています。

 また、容疑者が前日に車の中から試し撃ちしていたことについて、「狭い車内からも短時間で銃を撃てるほど銃の扱いになれていたとみられる」(15日のANN=テレビ朝日系ニュース)ともいわれています。

 容疑者が3年間の自衛官生活で身に付けた銃の知識・射撃訓練が、「恨み」を「銃撃」に転化させるうえでまったく無関係とはいえないと推測されます。

 ここまでで明らかなのは、永年の自民党政治によって貧富の格差が拡大し、生活困窮者が増大している中で、自衛隊がその受け皿の1つになっていること。戦争になれば貧困者が兵卒として前線に送られる世界の軍隊に共通の構図がここにもあります。
 そして「自衛官には向いていない」青年も、銃(殺人兵器)についての知識と技術を教育され、退官すれば何の保障もないまま社会に放り出されることです。

 自衛隊という軍隊(武装集団)が存在し、容認され、浸透していくことが、社会にどのような影響を及ぼすのか、どのような社会をつくるのか、改めて考える必要があるのではないでしょうか。

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「安倍銃撃事件」で露呈、銃規制社会の抜け穴・自衛隊

2022年07月11日 | 自衛隊・軍隊・メディア
   

 「銃規制が厳しい日本でもこんな事件が起きるのか」という驚きの声が、安倍晋三氏銃撃事件(8日)で海外の市民から聞こえました。

 もっともな疑問です。銃社会・アメリカなどと比べると、日本は確かに規制が厳しい。しかし、その日本にも盲点・抜け穴があります。それが自衛隊です。

 山上徹也容疑者は、2002年8月から05年8月までの丸3年間、海上自衛隊の隊員でした。長崎県佐世保の教育隊を経て、広島県の呉基地で護衛艦「まつゆき」に乗船。第1術科学校を最後に海士長の階級で退官したとされています。
 その自衛官時代に、銃の構造・扱いを教育されました。

自衛官は原則として1年に1回程度、小銃を取り扱う訓練を受け、1回あたりの訓練は約30時間。実弾射撃のほか、小銃の一部を分解して組み立てたり整備したりして銃の構造を学ぶ」(9日付毎日新聞)

海自幹部は「自衛隊に所属していれば、銃の仕組みは一般人より詳しいはずだ」と説明する」(9日付沖縄タイムス=共同)

 犬養毅首相が青年将校に射殺された「五・一五事件」(1932年)も、高橋是清蔵相らが青年将校に殺害された「二・二六事件」(1936年)も、軍部によるテロ事件でした。軍隊がテロ・クーデターの温床であることは、古今東西、共通しています。

 今回の山上容疑者には政治的背景はないと見られますが、「「拳銃をたくさん作った」と供述している」(9日付毎日新聞)といいます。自衛隊で学んだ銃の知識によって銃をたくさん作り、実弾射撃の訓練で身に着けた技術によって安倍氏が殺害されたことは間違いありません。

 山上容疑者だけではありません。多くの若者が、自衛隊で銃の基礎知識、射撃技術を身に着け、自衛隊を辞めて社会に出ます。「SNSの暴力と直接的な暴力の境目がなくなった」(森達也氏、9日の沖縄タイムス=共同)社会、「自民党長期政権が格差を拡大した」(小沢一郎氏、8日の朝日新聞デジタル)社会に放り出されるのです。

 しかも、「特殊な技術を持ったまま自衛官を辞めることをめぐっては、防衛省側から知識を悪用しないといった誓約書を提出させることはしていないという」「同省は再就職を支援していらず、退職後の動向は把握していない」(8日の朝日新聞デジタル)という実態です。

 人を殺傷する知識・技術を教育しながら、辞めれば後は野となれ山となれ。それが自衛隊です。これはアメリカに劣らない危険な銃社会の断面と言えるのではないでしょうか。

 自衛隊は言うまでもなく憲法違反の軍隊であり、総体として、米軍との一体化・日米軍事同盟の深化によってますます戦争に近づいています。同時に、個々の自衛官のレベルでみれば、銃の知識と射撃技術を身に着けた多くの者が、自衛隊を辞めて社会のいたるところに拡散するという現実をうみます。

 二重の意味で、自衛隊の解散は急務です。それこそが今回の事件の最大の教訓ではないでしょうか。

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「自衛隊感謝決議」で問われているのは共産党だけではない

2022年04月30日 | 自衛隊・軍隊・メディア
  

 4月25日の那覇市議会で、自衛隊に対する「感謝決議」が賛成多数で可決されました(写真中)。決議名は「本土復帰50年に際し、市民・県民の生命を守る任務遂行に対する感謝決議」。自衛隊の名前は隠していますが、本文では「復帰とともに配備された自衛隊は…搬送数が総計1万件を超えるに至った。その他にも…」と、約半分を自衛隊の記述にあてています(写真左は宮古島に配備された陸上自衛隊)。

 「自衛隊業務への感謝決議は県内自治体では初めて」(26日付沖縄タイムス)のこと。「発案は元航空自衛隊救難ヘリパイロットOBの大山孝夫市議(自民)」(同)です。この時期の「感謝決議」が、石垣島などで強行されている自衛隊ミサイル基地建設と一体不可分であることは言うまでもありません。賛成20人、反対2人(保守系無所属)、退席15人と、決議案への態度はほぼ二分されました。

 この「自衛隊感謝決議」に日本共産党が自民党などとともに賛成したことは、沖縄県内にも衝撃を与えました。

「共産党は…賛成した。これまでの自衛隊に対する党の立場とどのように整合を図ったのか分かりづらい」(27日付琉球新報社説)

 決議に賛成したことにつて共産党那覇市議団の古堅茂治団長は、「1万人の命が救われており、災害と一緒だ。離島地域が多く、医療が不十分な中で役割を果たしたことに感謝をするのは当然のことだ」(26日付琉球新報)と述べています。

 岸信夫防衛相は、「党派を超えて可決され、私としても大変喜ばしい」(29日付沖縄タイムス)と共産党の賛成を歓迎しています。

 共産党は先日、「急迫不正の侵略がされた場合には自衛隊を含めてあらゆる手段を用い(る)」(10日、志位和夫委員長)と「自衛隊活用」論を表明したばかり。それに続く「自衛隊感謝決議」への賛成は、同党の右傾化をはっきり示すものです。

 見過ごせなのは、こうした自衛隊美化は、共産党だけではなく、「民主的」と思われているメディアや「識者」の間にも広がっていることです。

 琉球新報は27日付で、「議論は尽くされたのか」と題した社説で「自衛隊感謝決議」に疑問を呈しました。しかしそれは、「感謝の示し方はほかになかったのか。なぜ全会一致にならない決議という形になったのか」を問題にしているもので、むしろ「沖縄では日本復帰後、自衛隊に根深い反発があった。これが薄れ、社会への受け入れが進んだのも、民生分野で果たしてきた役割の大きさがある」と自衛隊の活動を評価しています。

 また、佐藤学沖縄国際大教授も、「「感謝」という言葉が一人歩きし、対中戦争の前面に自衛隊を立たせるという方向性を後押しすることに利用されてはいけない」と指摘しながら、「沖縄の救急医療に果たす自衛隊の役割はまともであり…県民の中で自衛隊に対する抵抗感が減り、沖縄社会で受け入れられてきたのは間違いないだろう」(26日付琉球新報)と述べています。

 こうした自衛隊美化論はもちろん沖縄の「民主的識者」だけではありません。

 ウクライナ情勢に便乗して自民党内で改憲策動が強まっていることについて、「九条の会」世話人の田中優子・法政大前総長はこう述べています。

「九条は自衛権を否定していないし、(憲法を)変えなくても自衛できる。万が一、ロシアが日本に攻めてきた場合、自衛隊は自衛する」(3月16日付東京新聞インタビュー)

 こうした自衛隊の評価は、その本質を見失った危険な自衛隊美化論です。

 自衛隊は疑問の余地のない軍隊です。したがってそれは、「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない」という憲法9条第2項に明確に違反します。自衛隊は正真正銘、憲法違反の軍隊です。これが自衛隊問題の原点です。

 災害や医療救助はそれを専門とする組織を充実させておこなうべきで、それを自衛隊に肩代わりさせているのは、憲法違反の軍隊を市民に受け入れさせるための政治的策略であることは今更言うまでもありません。

 自衛隊への「感謝決議」はもちろん、「民生分野」の活動だといって評価したり、「自衛戦」に期待するのは、その政治的策略に同調することにほかなりません。

 ウクライナ情勢に便乗して自民党などが自衛隊を憲法に書き込む改憲策動を強めているとき、こうした自衛隊美化論がかつてなく危険な役割を果たすことを直視する必要があります。 

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有事(戦時)体制加速する自衛隊の民間施設使用

2021年11月15日 | 自衛隊・軍隊・メディア

    

 自衛隊のミサイル基地化・軍事要塞化が進行している沖縄で、自衛隊が民間の施設を使って軍事訓練する計画が進行しており、大きな問題になっています。

 琉球新報(11日付)によると、防衛省は11月下旬に計画している自衛隊統合演習(実動演習)の一環として、民間の石垣港に自衛隊艦船を寄港させ、与那国島との間で人員・物資の輸送訓練を強行します(写真中は過去の実動演習、右は陸自演習、いずれも自衛隊HPより)。
 また、本島・中城湾港でも、借り上げた民間の大型輸送船で県外から人員を輸送する計画です。
「自衛隊統合演習で県内の民間港使用するのは初めて」(同紙)です。

 民間港のほか、沖縄戦の戦場になった本部町・八重岳では、「電子戦」の訓練が強行されます。

 急速に進む自衛隊の民間施設使用。県民からは、「悲惨な戦場だった八重岳で戦争を想定した訓練をするのはありえない。…沖縄を再び捨て石にするつもりなのか」(12日付琉球新報)など、怒りの声が上がっています。

統合演習で民間港を使用するのは、有事の際に民間地域を巻き込むことが避けられないことも示している。軍民混在の戦闘がどれだけ悲惨な結末をもたらすか、沖縄戦の体験を踏まえれば明白だ」(12日付琉球新報社説)

 統合演習以外でも、陸上自衛隊は宮古島の演習場に物資を搬入する際、民間の平良港を使用することを宮古島市に要求。座喜味一幸市長は、これを許可しました(9日付琉球新報)。座喜味市長は「オール沖縄」の市長です。

 自衛隊による民間施設の利用が加速しているのは、沖縄だけではありません。

 朝日新聞デジタル(11日)によれば、防衛省は9月から11月末まで、陸自の全部隊が参加する「陸上自衛隊演習」を行っていますが、これに民間の輸送業者が大規模に取り込まれています。

「輸送には自衛隊や米軍に加え、防衛省が輸送業務を発注した民間業者が参加。日本通運のほかフェリー会社14社、航空会社1社の計16社で、日本通運はJR貨物など複数の下請けにも業務を発注した。…今回は業者の総数を含めて過去最大規模という。訓練は有事が迫る中で準備を整えるとの想定」(11日朝日新聞デジタル)

 陸自幹部はこう言ってはばかりません。
「様々な意見があるのは当然だが、自衛隊だけでは国を守れないのも事実。今回の訓練が、民間の方に有事の協力のあり方を考える機会になれば」(同)

 市民を戦争に巻き込む有事(戦時)体制づくりが、沖縄をはじめ、日本中で急速に進行しています。
 しかもそれは、「国を守る」という方便とは逆の深刻な事態と同時進行です。   (明日へ続く)

 


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自衛隊のワクチン接種と中山副防衛相の暴言

2021年05月25日 | 自衛隊・軍隊・メディア

    

 菅義偉首相が防衛省・自衛隊に運営を担当させたワクチン大規模接種が24日、東京と大阪で始まりました。まったく場違いの自衛隊に担当させた狙い・効果については先に書きましたが(5月18日のブログ参照)、報道された初日の状況を見ると、案の定、と思わざるをえません。

 会場案内、そして直行無料バスまで、表示されているのは防衛省のマークと「自衛隊東京(大阪)大規模接種センター」の文字です(写真)。
 なぜ「自衛隊」とあえて表示する必要があるのでしょう。「ワクチン大規模接種センター」でいいはずです。書くなら「政府大規模接種センター」でしょう。主催は政府なのですから。あえて「自衛隊」と表記するのは、この場を自衛隊のアピールに使っていると言わざるをえません。

 そもそも、メディアは「大規模接種センター」と大騒ぎしていますが、1日の接種は東京が最大1万人、大阪は5000人です(初日はその半分)。菅首相が公約した「1日100万人」の1・5%にすぎません。NHKでさえ「自治体接種の補完的役割にすぎない」(24日朝のニュース解説)というもので、報道は過大評価です。

 さらに、「自衛隊によるワクチン接種」はとんでもない“副反応”を起こしています。それは防衛省でこれを担当している中山泰秀副大臣の相次ぐ暴言です(写真右は接種会場で自衛官に訓示する中山氏)。

 中山氏は5日、先に日韓外相会談で韓国のチョン・ウィヨン(鄭義溶)外相が日本軍性奴隷(「慰安婦」)や強制連行問題で日本側に「正しい歴史認識」を求めたのに対し、「はあっ??本音は、解決したくないんとちゃうのん??」と言ったりチョン外相を揶揄するツイートを行いました。
 これを21日の国会で追及された中山氏は、「韓国に責任を持って対応していただく必要があるという趣旨で発信した」と居直りました(23日付沖縄タイムス=共同)。

 また中山氏は12日、イスラエルによるパレスチナ自治区ガザ攻撃の最中、「私たちの心はイスラエルと共にある」とツイート。パレスチナは外交ルートを通じて日本政府に抗議しました。中山氏は21日に削除しましたが、「中東に注目してもらえた。役割を十分果たせた」と開き直りました(24日付琉球新報=共同)。

 中山氏はこのかん、5月13日の参院厚生労働委員会、20日の参院外交防衛委員会に相次いで遅刻もしています。まさに傍若無人の振る舞いです。

 中山氏の相次ぐ暴言は、たんに低劣な自民党議員の愚行と片付けるわけにはいきません。なぜなら、「中山氏が削除したツイート内容を自信ありげに語る背景には、政府が「個人の見解」(官邸幹部)と位置付け、不問にした実情がある」(24日付琉球新報=共同)からです。中山氏の暴言は菅政権(官邸)のお墨付きなのです。

 以上の中山氏の暴言・愚行は、いずれも菅首相が防衛省・自衛隊にワクチン接種を運営させると表明し、中山氏が責任者となり、メディアが連日それを大きく報道する中で起こったことです。

 自衛隊という憲法違反の軍隊を社会で公然と活動させ、違和感、抵抗感を取り除き、歓迎さえする風潮をつくりだす。それが自民党政権の基本戦略であることを改めて銘記する必要があります。


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被災地に「旭日旗」か!

2020年07月21日 | 自衛隊・軍隊・メディア

    
 20日、豪雨災害で未だに行方が分からない方々の大規模な捜索活動が、熊本県球磨川で行われました。テレビで流れたその映像に、目を疑いました。被災者を捜索するゴムボートに立てられているのは、なんと旭日旗ではありませんか!(写真左・中)

 旭日旗は、明治以降の日本帝国の侵略・植民地支配を象徴する文字通りの旗印です。

 「海外侵略の走りであった台湾出兵(1874年)や江華島事件(1875年)でも、『日の丸』(旭日旗―引用者)は日本の力の『誇示』に使われています。…日清戦争(写真右)から日露戦争台湾割譲南樺太割譲、そして韓国併合。日本はアジアへの膨張を進めていきますが、その先頭にはいつも『日の丸』がありました。…日中戦争に突入すると、またたく間に北京を占領。12月には南京を占領して『南京虐殺事件』を引き起こします。この南京城に立てた『日の丸』は虐殺のシンボルともなっています」(佐藤文明著『「日の丸」「君が代」「元号」考』緑風出版)

 けっして遠い過去の話ではありません。この侵略・虐殺・植民地支配のシンボルである旭日旗を、現在の海上自衛隊、陸上自衛隊は「隊旗」としているのです。

 そしてさらに、安倍政権はこの旭日旗を国際的イベントで政治的プロパガンダの道具として使おうとしています。「東京五輪」の客席でそれが打ち振られることをあえて公認したのです。

 東京五輪を前に、韓国国会文化観光委員会は五輪組織委員会(森喜朗会長)に対し、「侵略と戦争の象徴である旭日旗が競技場に持ち込まれ、応援の道具として使われることがないよう求める」とする決議を採択しました(2019年8月29日)。

 これに対し組織委は、競技会場への旭日旗の持ち込みは禁止しない(許可する)とする決定をあえて行い(9月3日)、安倍政権はそれを追認・擁護したのです(9月12日)。

 旭日旗に対する批判はもちろん韓国政府・国会だけではありません。2018年10月、韓国主催の国際観艦式に自衛隊が旭日旗を掲げて参加しようとしたとき、韓国のハンギョレ新聞は次のような社説を掲載しました。

 「1870年に日本陸軍が最初に使った旭日旗は、日本が太平洋戦争を起こしてアジア各国を侵略する際に全面に掲げた旗だ。それ自体が日本軍国主義の好戦性を象徴している。韓国や中国など周辺国が旭日旗掲揚に反発するのもこのような理由からだ。それでも海上自衛隊は16本の光の筋が描かれた旭日旗を、陸上自衛隊は8本の筋の旭日旗を使ってきた。『侵略国家』『戦犯国家』という事実を否定する処置だ。(中略)国際社会は旭日旗に固執する自衛隊と平和憲法改正を公言した安倍晋三総理を見つめて、日本の軍国主義復活を憂慮している。日本が真に平和を望むならば、自ら旭日旗を降ろすべきである」(2018年10月2日付ハンギョレ新聞社説)

 その旭日旗が、豪雨災害の被災地に!被災者の捜索になぜ「隊旗」を立てる必要があるのか!

 安倍政権が災害を利用して自衛隊の活動拡大・浸透を図ろうとし、「市民」も次第にそれに取り込まれつつあることの危険性について先日書きましたが(7月9日のブログ参照)、旭日旗の掲揚・誇示はたんに自衛隊の浸透にとどまらず、日本の侵略・植民地支配の歴史を隠ぺいし、国際社会の批判に対する居直りを図るものです。

 それが被災者の深い悲しみと苦しみに乗じて行われていることに、身の震える怒りを禁じえません。


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「災害派遣」ですすむ自衛隊への感覚マヒ

2020年07月09日 | 自衛隊・軍隊・メディア

    
 今回の大雨水害のテレビ報道で、自衛隊の映像、その活動に対するコメントがこれまで以上に多くなっていると感じるのは私だけでしょうか。
 客観的データはありませんが、もしそうだとしたら、理由は2つ。1つは、自衛隊の活動(「災害派遣」)そのものがこれまでより広範になっていること。もう1つは、メディアの報道がより自衛隊に接近していることです。

 安倍晋三首相は4日の関係閣僚会議で、今回の災害に対し「自衛隊1万人態勢で臨む」と早々に打ち出しました。さらに7日には、「自衛隊をさらに1万人増強し、2万人態勢に拡大する」と表明しました(写真右)。安倍首相が自衛隊の「災害派遣」を拡大しようとしていることは確かです。

 テレビ報道は、自衛隊が画像に出る機会が多いだけでなく、キャスターが「自衛隊の手によって救出される人々」(7日、NHK)と解説したり、現場で取材にあたっている記者が被災者に「自衛隊が(救助に)来た時はどうでしたか」(7日、TBS系列)と自衛隊への感謝の言葉を引き出そうとしていました。

 一方自衛隊は、救出・救援活動を自らビデオで撮影しています(写真左)。広報のためです。消防や警察では考えられないことです。そして防衛省はHPのトップページで「災害派遣」を写真とともにアピールしています。

 災害が起こるたびに時の政権(自民党)は自衛隊を出動さ、大きく報道させます。その「災害と自衛隊」の関係が、固定化するばかりか、いっそう拡大し、それに対する疑問や批判の声がだんだん縮小・消滅していっているのではないしょうか。
 これはきわめて危険な、自衛隊に対する感覚マヒであり、自民党政権(国家権力)の思惑通りと言わねばなりません。

 これまで何度も書いてきたことですが、感覚マヒに抗うために、繰り返し強調しなければなりません。

 自衛隊の「主たる任務」は、「我が国を防衛すること」(自衛隊法第3条)すなわち、武力行使・戦争です。自衛隊は憲法(前文、9条)違反の軍隊です。「災害派遣」は自衛隊法第83条に規定されている付随的な活動にすぎません。

 にもかかわらず、災害のたびに自衛隊が人命救助・救援活動の主役であるかのように報道されます。これは軍隊としての自衛隊の本質、その違憲性を隠ぺいするものにほかなりません。
 結果、日米軍事同盟(安保条約)による対米従属の軍隊の危険性、年間5兆円を上回る軍事費(多くは米国製兵器購入)の不正支出は覆い隠されます。そして、災害時の活動にあこがれて(惑わされて)自衛官の募集に応じる絶好の求人(求兵)活動になります。これが「災害」に乗じた政府(国家権力)の自衛隊認知・拡張戦略です。

 被災者が救助する自衛隊に感謝するのは当然です。しかし、それは、本来災害救助・救援の専門組織が行うべきことを、自衛隊が代わりにやっているからにほかなりません。というより、本来あるべき組織をあえてつくらず、自衛隊に代行させて上記の目的を遂行しようとする、それが自民党政権の策略です。

 憲法違反の自衛隊(日本軍)は直ちに解散しなければなりません。災害に対しては、防災・救助・救援・復旧に特化した組織(省庁)を創設すべきです。そして5兆円をこえる軍事費は医療・福祉・災害対策へ回すべきです。
 災害という非常事態に乗じて自衛隊(日本軍)への感覚をマヒさせる国家権力の策略に陥ってはなりません。


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陸上自衛隊宮古島式典で感染拡大の疑い

2020年04月20日 | 自衛隊・軍隊・メディア

    
 
 心配していたことが現実になってしまいました。

 3月25日~28日に陸上自衛隊宮古島駐屯地に熊本駐屯地から出張していた50代の男性隊員が、新型コロナウイルスに感染していたことが18日までに分かりました(写真左は19日付琉球新報)。
 同隊員は3月28日に宮古島から熊本に帰任し、29日発熱。6日に入院し、7日に陽性が判明しました。

 宮古島滞在中、「会話するなど接触があった」(陸自西部方面総監部)宮古島駐屯地の隊員が少なくとも4人おり、「7日から11日まで自室に隔離した」ものの、「発熱などの症状がないため、12日から業務に戻った」(19日付沖縄タイムス)といいます。

 報道では、4人がPCR検査を受けたとはされていません。陰性を確認しないまま、「発熱など体調に異変がなかった」から職務に復帰させたといいます。驚くべきことです。

 宮古島駐屯地では今月5日、地元住民・医師会の強い反対・抗議を押し切って、200人規模の式典(集会)を強行しました(写真右)。感染者と接触があった4人の隊員が隔離されたのは式典から2日後の7日からですから、感染の疑いが濃い4人の隊員は式典に参加していたことになります。

 また、「(陸自は)隊員4人以外に接触者はいないとしている」(同沖縄タイムス)といいますが、4人以外にまったく接触がなかった(例えば2㍍の距離以内にいた隊員はいなかった)とはとうてい考えられません。接触者・感染の疑いが濃い隊員はもっと大勢いることが推測されます。

 さらに、「(陸自は)男性(感染隊員)の島内での訪問先は明らかにしていない」(同沖縄タイムス)といいます。駐屯地以外(例えば飲食店など)で島民と接触した可能性は否定できません。

 こうした事態に対し、「ミサイル基地いらない宮古島住民連絡会」は18日、宮古島駐屯地を訪れて抗議し、要請書と質問状を手渡しました(写真中、琉球新報より)。
 この中で、「(感染した)男性隊員の宮古島での行動歴、同隊員に接触した4人の健康状態など詳細について、22日までに文書で回答」(19日付琉球新報)するよう強く要求しました。
 同連絡会の仲里成繁代表は、隊員の感染について「防衛相が会見で触れただけで、いまだ詳細が市民に伝えられていない」(琉球新報)、「1人でも感染者が出たら、島中がパニックになる」(沖縄タイムス)と怒りをあらわにしています。

 感染の事実・経過を市民に知らせようとしないのは、軍隊としての自衛隊の本質、そして安倍政権の反民主性をはっきり示すものです。

 5日の陸自式典は、安倍政権が全国の市民には「外出自粛」を要求する一方、自衛隊は200人規模の集会を、地元の強い反対を押し切って強行したものです。地元医師会は事前に、「宮古島は医療資源に乏しく、新型コロナ感染の不安が島内に広がっている。万が一、感染者が出たら大変なことになる」(宮古地区医師会・岸本邦弘副会長、4日付琉球新報)と強く中止を要求していました。

 安倍政権はそうした地元の声を無視して式典を強行。それが、住民や医師会などが危惧した通り、感染の疑いが濃い隊員が複数参加し、クラスター(集団感染)の場になった可能性が判明したわけで、自衛隊の最高責任者でもある安倍首相の責任はきわめて重大です。


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市民には「自粛」、自衛隊は行事強行の安倍政権

2020年04月07日 | 自衛隊・軍隊・メディア

    
 「可能な限り外出は自粛してほしい」。安倍晋三首相は緊急事態宣言を前にした6日夜、改めて国民に外出・イベントの「自粛」を要求しました。その安倍政権は5日、自ら200人規模の集会・イベントを行いました。地元自治体・医師会・住民の反対を押し切って。強行したのは陸上自衛隊の集会・行事、場所は沖縄・宮古島です。

 「陸上自衛隊第15旅団は5日、宮古島市上野野原の宮古島駐屯地の編成完成行事を開いた。新型コロナウイルスの感染が全国で拡大していることを受け、市や宮古地区医師会が延期や自粛を要請する中、規模を当初の約700人から約200人に縮小したものの、行事を強行した」(6日付琉球新報、写真左も)

 「宮古島駐屯地で地対艦・地対空ミサイル部隊の編成に伴う『編成完結行事』が開かれた5日、陸上自衛隊配備に反対する市民ら約30人が、同駐屯地周辺で抗議の声を上げた。…集会では宮古島地区医師会の岸本邦弘副会長(58)も声を上げた。『新型コロナウイルスがまん延する中での式典は延期するよう求めたが無視された。配慮してほしかったが残念だ』と怒りをあらわにした」(6日付沖縄タイムス、写真中も)

 宮古地区医師会(竹井太会長)はすでに3日、コロナウイルス感染防止のため、自衛隊行事の延期を求める要請文を下地敏彦市長に手渡していました。これに対し、自衛隊基地推進派の下地市長でさえ、「市としてもすでに延期要請をしている」と答えていました(4日付琉球新報)。

 市長に要請文を手渡した岸本副会長は、「宮古島は医療資源に乏しく、新型コロナ感染の不安が島内に広がっている。…国は国民にイベント開催の自粛を求めている。本来なら国が率先して延期するべきだ」と指摘していました(同琉球新報)。

 安倍政権・防衛省・自衛隊は、こした地元自治体、医師会の切実な要請、住民の強い反対を無視して集会・行事を強行したのです。

 宮古島駐屯地は、「島しょ防衛」を名目にした安倍政権の自衛隊拡張政策によって、2019年3月に住民の反対を押し切って新設され、約380人が配置されました。さらに今年3月、地対空誘導弾・地対艦誘導弾部隊(ミサイル部隊)として約240人が増員され、700人規模となりました。住民の逃げ場のない離島の宮古島が前線基地にされました。

 地震や洪水などの自然災害に際し、自衛隊を出動させて存在をアピールし、軍備増強への批判をかわそうとするのが歴代自民党政府の一貫した政略です。安倍政権はそれを露骨に繰り返しています。
 今回の新型コロナ感染に際しても、安倍首相、河野防衛相は機会あるごとに自衛隊を出動させてきました。先月28日には、地元自治体の要請がないにもかかわらず自衛隊を出動させるという一線を越えました(写真右)。

 こうした策動はすべて、自衛隊がコロナ感染防止に尽力している、という姿を見せることによってその危険性をカムフラージュしてきました。しかし、今回の宮古島における集会・行事の強行は、自衛隊にとっては「感染防止」より部隊のセレモニー=戦力誇示が優先される、「感染防止」(災害出動)は擬態にすぎないことをはっきり示しました。
 それは自衛隊が戦争を第1任務とする軍隊、憲法違反の軍隊であることを自ら証明したことにほかなりません。


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広がる「軍事と民生のボーダレス化」―筑波大が軍事研究の危険

2020年02月18日 | 自衛隊・軍隊・メディア

  

 新型肺炎に関連して安倍政権がことさら自衛隊を動かし、その存在を示そうとしているように、自衛隊の影は社会のさまざまな分野に広がろうとしています。大学の学問・研究分野もその1つです。

 国立大学協会(国大協)の会長校でもある筑波大学(永田恭介学長)が、従来の基本方針を百八十度転換して軍事研究に着手しようとしており、学内外から批判の声が上がっています。国大協の会長校であることの影響も含め、これは筑波大だけの問題ではありません。

 日本科学者会議茨城支部筑波大分会・安保法制に反対する筑波大有志の会などは今月13日、「筑波大学の防衛装備庁助成研究への応募・採択に抗議し、その中止を求めます」との声明を発表しました。

 それによると、同大は2019年12月、防衛装備庁の「令和元年度・安全保障技術研究推進制度」に応募し、採択されました(5年間で最大20億円予算)。
 同大は、2018年12月13日、「本学におけるあらゆる研究活動は、人道に反しないことを原則とし、学問の自由及び学術研究の健全な発展を図るため、研究者の自主性・自律性が尊重され、かつ研究の公開性が担保されるものでなければならない」としたうえで、「これらに反していることから、本学は軍事研究を行わない」と明記した「軍事研究に関する基本方針」を決定しています。それからわずか1年で、この方針を投げ捨てたわけです。

 筑波大が応募し採択された「安全保障技術研究推進制度」について、防衛装備庁はこう説明しています。
 「近年の技術革新の急速な進展は、防衛技術と民生技術のボーダレス化をもたらしており、防衛技術にも応用可能な先進的な民生技術、いわゆるデュアル・ユース技術を積極的に活用することが重要になっている」(同庁HP)
 キーワードは「防衛技術と民生技術のボーダレス化」です。

 日本学術会議はこの点に一貫して警鐘を鳴らしてきました。たとえば、2017年3月24日の「軍事的安全保障研究に関する声明」では、「近年、再び学術と軍事が接近しつつある中…軍事的な手段による国家の安全保障にかかわる研究が、学問の自由及び学術の健全な発展と緊張関係にある」と強調しています。

 「軍事」と「民生」の「ボーダレス化」「接近」は技術・研究分野に限りません。災害救助・復旧分野でのそれは大災害のたびに可視化させられています。今回の新型肺炎では防疫・医療の分野でそれを見せつけています。自民党政権はこの「ボーダレス化」を利用して(口実にして)、軍事(自衛隊)の民生への侵出・支配を図ろうとしています。その策動は今後ますます強まるでしょう。

 これにどう対抗すればいいか。いま筑波大学で有志らがたたかっているように、機敏な批判・反撃が重要であることは言うまでもありません。同時に根本的には、膨張・侵出する「軍事」分野そのものをなくすること、すなわち、憲法の前文・9条に忠実に従い、自衛隊という軍隊を解散することではないでしょうか。


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