アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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稲田・自衛隊発言の背景こそ問題

2017年06月29日 | 自衛隊・軍隊

     

 稲田朋美防衛相が都議選の応援演説で「防衛省、自衛隊、防衛相としてもお願いしたい」(27日、板橋区内の集会)と述べたことは、憲法(第15条)、自衛隊法(第61条)、公選法(第136条)の明白な違反であり、即刻罷免すべきは当然です。

 しかし、稲田氏の首を斬ってすむ問題ではありません。安倍首相の任命責任が問われることはもちろんですが、それだけでもすみません。なぜなら、あの稲田発言には背景・土壌があり、それをただすことこそが重要だからです。そうでないと、低劣な大臣の首をいくらすげ替えても、この国の状況は少しも良くなりません。

 稲田氏は問題発言の前後にこう言いました(28日付共同配信より)。
<テロ、災害、首都直下型地震も懸念される中、防衛省・自衛隊と東京都がしっかりと手を携えていくのが非常に重要だ。…板橋区ではないが、隣の練馬区には自衛隊の師団もある。何かあったときに自衛隊が活躍できるのも地元の皆さま方、都民の皆さま方の協力があってのことだ。>(演説で)
練馬駐屯地も近いし…地元の皆さん方に対する感謝の気持ちを伝える一環として、そういう言葉を使った>(演説後、記者団に)

 稲田氏が無防備に本音を漏らしたほど伝えたかった「地元」への「感謝」とは、いったい何でしょうか。

 『教育に浸透する自衛隊ー「安保法制」下の子どもたち』(同時代社)と題する冊子が今年4月、市民・学者らによって発行されました(写真右は同冊子から、子どもに防護服を着せる自衛隊員)。
 それによると、「2013年に、東京都立田無工業高校の生徒が自衛隊の朝霞駐屯地『隊内生活体験』を行うという驚くべき教育の状況が生まれていた。2011年の東日本大震災に関連して、全都立高校で宿泊を伴う防災訓練の実施が始まっていた。この宿泊防災訓練に名を借りて自衛隊駐屯地での訓練を高校生に実施していたのである」(永井栄俊立正大非常勤講師)。

 稲田氏が言及した練馬区でも、都立練馬工業高校が2010年度から14年度まで「奉仕」の時間の「災害救助体験」の名目で自衛隊練馬駐屯地を訪問していました。市民らが問いただしたところ、<陸上自衛隊側は「青少年防衛講座」として、「自衛隊に対する親近感を醸成するとともに防衛を理解するため」に実施した、としている>(中川信明氏・練馬教育問題交流会)。

 市民らの抗議で、都立高校の自衛隊駐屯地での「宿泊防災訓練」や「奉仕」を名目にした駐屯地訪問は15年度以降行われていません。しかし、<一方で、都立高校で行われている「宿泊防災訓練」において自衛隊員が講話を行ったり、インターシップ名目の自衛隊施設訪問は繰り返されている>(中川氏)。

 戦争法の施行で自衛隊員希望者が減少している中、都立高校は自衛隊にとって格好のリクルートの場になっているのです。稲田氏の「感謝」の1つの理由がここにあります。
 こうした自衛隊の教育(学校)への浸透は、もちろん東京だけではありません。戦争法による集団的自衛権行使、米軍との共同・一体化の強化によってますます゛戦う軍隊”となっている自衛隊が、「防災」名目で教育へ浸透している実態は絶対に見過ごすことはできません。

 都議選はまともな政策論争がまったく行われないまま、2日の投票日を迎えようとしています。「豊洲移転」だけがクローズアップされていますが(小池戦略)、東京には横田飛行場をはじめ6つの米軍基地と多くの自衛隊駐屯地があります。首都東京の基地問題はどうなっているのか、元防衛相であり、「日本会議議連」の副会長だった小池百合子知事の下で、自衛隊の教育への浸透はどうなっているのか、どうするのか。原発廃止とともに、こうした問題こそ都議選で問われるべきではないでしょうか。
 

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