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アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

自衛隊迷彩服が街中かっ歩、その先には?

2023年12月08日 | 自衛隊・軍隊・メディア
   

 <島に溶け込む「迷彩服」>―という見出しの記事(「記者の眼」)が4日付の琉球新報に載りました(以下、抜粋)。

<陸上自衛隊石垣駐屯地が開設して9カ月近く。駐屯地は島の市街地からやや離れた場所にあるとはいえ、しばしば迷彩服姿の隊員を目にする。

 11月にあった地域のまつりでは、広報活動の一環で自衛隊が迷彩服姿で目抜き通りを行進した(写真左)。隊員の通勤退勤時にも着用しているのを見る。不安を抱く市民は少なくない。

 市民らは通勤時や日常生活では着用を自粛するよう駐屯地に繰り返し求めている。が、こうした要請への対応は、決まって駐屯地の門前だ。誠実さを欠く。(八重山支局・平良孝陽記者)>

 自衛隊の「迷彩服」。それは災害時の出動でも常態化しています。それどころか、被災者に「迷彩服」のライフジャケットを着用させたこともあります(2018年7月9日のブログ参照=写真中)。

 「迷彩服」は言うまでもなく戦闘服です。ちなみに手元の国語辞典を引いてみると、「迷彩」とは「敵の目をくらますために、建物・軍艦・戦車などにいろいろな色を塗って、まわりと区別がつかないにようにすること。「-服」」とあります。

 災害は戦争ではありません。「敵」はいません。「迷彩服」を着る必要性は全くありません。普通の作業着でいいのです。まして被災者にも着用させるなどもってのほかです。

 こうした「迷彩服」の着用、汎用化が意識的に行われていることは間違いありません。その狙いは、「記者の眼」が指摘している通り、自衛隊(軍隊)の市民生活への「溶け込み」を図ることです。

 7年前に初めて韓国を訪れたとき、仁川空港からソウルへの電車・地下鉄で「迷彩服」の兵士が乗り込んできたのを見て驚いたことがあります。日本では見かけない光景だからです(写真右)。

 しかしすぐ合点しました。韓国は朝鮮民主主義人民共和国と軍事的緊張関係にあり、朝鮮戦争はいまだ終結していません。そしてなにより、韓国には徴兵制があるのです。まさに軍隊が市民生活に「溶け込んでいる」のです。

 日本の街中を「迷彩服」の自衛隊員がかっ歩している光景は、韓国の後追いをしているように思われます。だとすれば、この先にあるのは、徴兵制の導入であり、戦争当事国になることか―。

 それはけっしてありえない話ではありません。そうならないように、自衛隊は憲法違反の軍隊であるという原点に立って批判を強める必要があります。


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「ハラスメントのない自衛隊」などあり得ない

2023年11月15日 | 自衛隊・軍隊・メディア
   

 岸田文雄首相は11日、航空自衛隊入間基地の観閲式で、「あらゆるハラスメントを一切許容しない組織環境を作り上げ、ハラスメントを根絶して仲間同士助け合い、励まし合って任務に臨むことを忘れないでいただきたい」と述べました(写真左)。

 実際、自衛隊内のハラスメント(パワハラ、セクハラ)は後を絶ちません。昨年からの防衛省・自衛隊自身の調査でさえ、ハラスメント被害の申し出は1325件に上っています(11日付朝日新聞デジタル)。もちろんこれはほんの氷山の一角です。

 ハラスメントが許されないことは言うまでもありません。しかし、自衛隊からハラスメントを「根絶する」ことなどできません。

 パワハラについて、防衛省幹部はこう吐露しています。「『戦う組織である以上、これぐらい耐えて当たり前』という意識が組織に染みこんでいる。かつてパワハラを受ける立場だった幹部も多く、負の連鎖が続いている」(8月2日付朝日新聞デジタル)
 上意下達の極みである軍隊において、パワハラをなくすることはできません。

 セクハラはどうでしょうか。

 先日の瀬戸内寂聴氏三回忌にあたり、親交があった作家の平野啓一郎氏が、瀬戸内氏が戦争に強く反対した背景をこう語っています。

「瀬戸内さんのフェミニズムとも関わりますが、暴力をふくめ、男性の権威主義に対して非常に強い反発を持っていました。マッチョな考えを持った人が社会を牛耳って戦争に突き進みます」(9日付朝日新聞デジタル)

 帝国日本が戦時性奴隷(「慰安婦」)制度を設けたのはなぜか。世界の紛争・戦争地で性暴力が絶えず、それが「武器」としてさえ行使されているのはなぜか。
 人を殺傷し人権を踏みにじる戦争・軍隊とセクハラ(性暴力)は一体不可分だからです。

 自衛隊は紛れもない軍隊です。したがってセクハラもパワハラもなくすることはできません。岸田首相の「ハラスメント根絶」は世論対策以外の何ものでもありません。

 重大なのは、政府を批判するメディアや「識者」の中にも、この点で自衛隊に対する誤った「期待」を示す論調が流布していることです。

 例えば、朝日新聞編集委員の藤田直央氏は11日の岸田首相の自衛隊に対する訓示を批判する中で、「自衛隊でのハラスメントを根絶しないといけないのは首相自身」「人づくりは自衛隊の根幹」(11日付朝日新聞デジタル)と述べています。八田進二・青山学院大名誉教授は、「自衛隊は社会の重要な公共財だ。…組織を根こそぎ変革させるというドラスティックな改革をやってもらいたい」(3日付朝日新聞デジタル)と要望しています。

 こうした言説は、自衛隊(政府・防衛省)に対して誤った幻想を抱かせ、軍隊としての自衛隊の本質を覆い隠す役割を果たしています。そもそも、ジャーナリスト、学者であるなら、自衛隊が憲法違反の存在であることをどう認識しているのでしょうか。

 繰り返しますが、軍隊である自衛隊からハラスメントをなくすることはできません。人権を踏みにじり人を殺傷する憲法違反の軍隊は直ちに廃止するしかありません。

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自衛隊機はなぜイスラエルに飛んだのか

2023年10月24日 | 自衛隊・軍隊・メディア
   

 21日午前3時すぎ、イスラエルから退避した日本人60人、韓国人18人ら計83人が羽田空港に到着しました。乗っていたのは航空自衛隊のKC767輸送機です。なぜ自衛隊機なのでしょうか。経過を振り返ってみましょう。

13日 松野博一官房長官は「邦人退避の(民間)チャーター機を14日にイスラエルに派遣する」と発表。

同日 上川陽子外相が木原稔防衛相に、自衛隊法84条の4に基づき自衛隊機による邦人輸送を要請。

同日 木原防衛相がKC767輸送機1機とC2 輸送機2機の計3機の派遣を命令。

14日 チャーター機1機と自衛隊機3機がそれぞれ出発。

15日 チャーター機は日本人8人を乗せてアラブ首長国連邦のドバイに到着。

20日 KC767機が83人をヨルダンに輸送。

 以上の経過から少なくとも2つの不可解なことが浮かんできます。

 1つは、自衛隊機と民間のチャーター機の派遣が同日に決定され、同日に出発していることです。それならわざわざ自衛隊機を飛ばす必要性はないでしょう。
 もう1つは、チャーター機の方が自衛隊機よりも5日も早く避難民を退避させていることです。自衛隊機がなぜ手間取ったのか事情は分かりません。

 「自衛隊機の派遣は戦闘が激化し、チャーター機の運航が困難になるなど不測の事態に備えるため」(14日付京都新聞=共同)と報じられていますが、少なくとも今回の退避はチャーター機でよかったし、チャーター機の方が迅速だったわけです。

 不可解さは、派遣された自衛隊員の実態を見るとさらに深まります。

 松野官房長官は13日の会見で、「(チャーター機)利用予定者は明言せず」、一方で「ガザには少数の邦人が滞在中」と述べていました(14日付京都新聞=共同)。
 にもかかわらず、「自衛隊はイスラエル退避のため、統合任務部隊を編成している。空自と陸上自衛隊で計約420人。空自は輸送機を運用し、陸自は移動する邦人の支援や関係機関との調整に当たっている」(22日付京都新聞=共同)。あまりにも過剰な派遣人数・態勢ではないでしょうか。戦争に行くわけではないのです。

 植村秀樹・流通経済大教授(安全保障論)は、今回の自衛隊派遣は「危機に乗じた政治的アピールでしかない」「危機を利用して自衛隊に経験を積ませ、自衛隊を活用するのが当たり前だと国民に見せたいという政府の思惑が透ける」(22日付京都新聞=共同)と指摘しています。

 一方、産経新聞は18日付の社説で、政府の自衛隊派遣は「韓国と比べ遅くはないか」と題し、「邦人退避のために働く自衛隊員や現地の外交官らへの期待は大きい」と述べています。韓国は軍の輸送機が13日にはイスラエルに到着し、14日夜には日本人と配偶者51人を同乗させてソウル空軍基地に帰着していました。

 木原防衛相が長崎の衆院補選応援演説で「(自民候補を)応援していただくことが、自衛隊のご苦労に報いることになる」と述べたのは、自衛隊機がイスラエルへ出発した翌日の15日です。

 植村氏が指摘する通り、今回の自衛隊派遣は「自衛隊を活用するのが当たり前だと国民に見せる」ため、さらには韓国軍への対抗意識だったと言えるのではないでしょうか(写真はすべて防衛省がメディアに提供した今回の自衛隊機による輸送のもよう=朝日新聞デジタルより)。

 自然災害に乗じた「災害出動」は自衛隊を「国民」に浸透させる政府の常套手段ですが、パレスチナの危機的な重大事態をも自衛隊のアピールに利用しようとする政治的思惑は醜悪としか言いようがありません。



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「自衛隊の隠蔽体質」が示す「真の恐怖」

2023年08月04日 | 自衛隊・軍隊・メディア
   

 4カ月前の4月6日、沖縄・宮古島周辺で陸上自衛隊のヘリが墜落し、坂本雄一・第8師団長ら10人が死亡しました(写真左)。「10人という人数はもちろん、師団長の乗った機体の消息が分からないというのは前代未聞のこと」(元陸上幕僚長、4月7日付朝日新聞デジタル)でした。
 しかし、その真相は十分明らかにされないまま、岸田首相の葬儀参列(非公開、6月18日、写真中)で幕引きが図られました。

 そのことに鋭い疑問を提示したコラムが、7月30日付琉球新報に載りました。見出しは「陸自ヘリ墜落の真の恐怖」。以下、抜粋です。

「事故は既に重大だが、そこに師団長などの幹部が含まれていたことで事態はさらに深刻化した。その割には事故に対する防衛省、自衛隊の情報公開の速度が鈍いと感じる。
 フライトレコーダーも回収され、自衛隊内部にはかなりの情報が蓄積されているはずだ。情報開示が少ないのはあるいは何かを隠したがっているのか、と勘ぐりたくならないでもない。
 ナチスドイツ、ファシズムイタリア、軍国主義日本のうち、ドイツとイタリアは大戦を徹底総括して軍隊の制御法を学んだ。…日本は第2次大戦の徹底総括を怠った。そのために日本軍の欺瞞、横暴、隠蔽体質などがひそかに自衛隊に受け継がれた可能性がある。
 陸自ヘリ墜落事故の真の恐怖は、自衛隊が日本軍と同じ隠蔽体質を持っている、と明らかになることである」(仲宗根雅則氏=イタリア在住、TVディレクターの「島人の目」)

 関連して、ずっと気になっていることがあります。

 6月14日、岐阜の陸上自衛隊射撃場で、自衛隊候補生(18)が射撃訓練中に隊員3人を殺傷する事件が起こりました(写真右)。候補生はその場で逮捕され、取り調べの結果起訴されましたが、逮捕・取り調べを行ったのは警察ではありませんでした。「陸自警務隊」です。

 詳しい規定(法的根拠)は分かりません(知りません)が、自衛隊基地内の事件の捜査・取り調べは警察ではなく自衛隊の「警務隊」が行うようです。身内で処理するわけです。
 それで公正な捜査・取り調べが行われるでしょうか?弁護士は容疑者と接見することができたのでしょうか?取り調べはビデオ録画するなど可視化されたのでしょうか?疑問だらけです。

 この事件の数日後、札幌の陸自基地でも、銃を持った隊員が行方不明になりました。隊員はまもなく発見され、「道に迷っただけだった」という発表が防衛省からありました。本当でしょうか? 岐阜の事件との連鎖性はなかったのでしょうか?

 米軍基地内の事件は日米地位協定によって治外法権にされていますが、自衛隊の基地も、地位協定はないものの、事実上治外法権と言って過言ではないでしょう。

 それが軍隊です。軍隊(自衛隊)は「軍事秘密」のため、事実を隠蔽し、真実を公表しないのが特性です。報道機関が自由に取材し真実を報道することもできません。

 こうした軍隊・基地の実態は、明らかに日本国憲法の基本的人権・主権在民原則に反します。憲法が及ばない組織・エリアが国内に存在することは重大な問題です。

 そうした軍隊の反憲法性は、基地内にとどまることなく、基地外の一般市民にもかかわってきます。それが示されたのが宮古島周辺での陸自ヘリ墜落の経過です。

 自衛隊という軍隊は、憲法前文・9条の平和原則に明らかに違反していますが、市民の「知る権利」をはじめ基本的人権の原則からも明白に憲法違反です。そういう軍隊が存在し活動を広げていること自体が「真の恐怖」と言わねばなりません。

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“日本版インターネット・アーミー”狙う防衛省

2022年12月12日 | 自衛隊・軍隊・メディア

   

「防衛省が世論工作研究」―10日付地方紙がいっせいに1面トップで報じた共同通信のスクープ記事はきわめて重大です。

「防衛省が人工知能(AI)技術を使い、交流サイト(SNS)で国内世論を誘導する工作の研究に着手したことが9日、複数の政府関係者への取材で分かった。インターネットで影響がある「インフルエンサー」が、無意識のうちに同省に有利な情報を発信するように仕向け、防衛政策への支持を広げたり、有事で特定国への敵対心を醸成、国民の反戦・厭戦の機運を払拭したりするネット空間でのトレンドづくりを目標にしている」(同記事)

 記事によれば、「政府・防衛省は数年前から「戦略的コミュニケーション」として、防衛政策を進めるに当たり、国民世論が有利に働くよう手法や内容を選択して情報発信するようになった」「防衛省・自衛隊によるネット配信は2020年夏ごろから急速に活発になった」といいます。

 その上で記事(石井暁・共同専任編集委員)は、「今回研究に着手した世論操作は、防衛省・自衛隊が姿を現した上で起きた事象を発信し、関心を引きつけようとする戦略的コミュニケーションとは決定的に違う」とし、企業が「一般の投稿を装い宣伝するステルスマーケティング(ステマ)」と似た性質をもつことを重視し、「軍事組織が国民の内心の領域に知らぬ間に直接介入する危うさ」に警鐘を鳴らしています。

 防衛省・自衛隊が姿を現さず「ステマ」的に行う世論操作が言語道断であることは言うまでもありません。
 しかし、では姿を現した「戦略的コミュニケーション」ならいいのかというと、決してそうではありません。

「「世論工作の研究」が…国内向けの戦術として使うことを企て、研究を進めるというのであれば、憲法が保障する精神的自由にも民主主義にも反する」(憲法学者の志田陽子氏、10日付琉球新報)。防衛省・自衛隊の「世論工作研究」が「国内向けの戦術」であることは明白であり、「ステマ」であろうとなかろうと、明らかな憲法違反です。

 インターネットの「インフルエンサー」を軍事上の「世論工作」に利用している実例を、私たちはこのかん目にしてきました。それは「国家総動員」体制下の現在のウクライナです。

 ゼレンスキー政権はロシアの軍事侵攻の4日後に、早くも「インターネット・アーミー」を公募しました。その狙いを責任者は、「ロシアの言い分がまかり通る隙を与えずにウクライナの主張を理解してもらう」ためだとし、「ゼレンスキー大統領を筆頭に政府と国民が同じメッセージを発することが大切」だと強調しています。「インターネット・アーミー」には政府から毎日、具体的な指示が行われ、ネットで流す「情報」の例文まで送られているといいます(4月18日のブログ参照)。

 これは「インフルエンサー」を使ってSNSで「国民」の思想統制を図り、「反戦・厭戦の機運を払拭」し、戦争への総動員体制をつくりだすものに他なりません。

 防衛省・自衛隊の「世論工作研究」はまさにこれに倣うもので、“日本版インターネット・アーミー」の組織化を狙うものです。その策動は、事実上数年前の「戦略的コミュニケーション」からすでに始まっているのです。

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「陸自性被害」問題の核心は何か

2022年10月04日 | 自衛隊・軍隊・メディア
    

 2年前から自衛隊内で性被害を受け続けた元陸上自衛官・五ノ井里奈さんの告発を防衛省・自衛隊は、9月29日にやっとその一部を認めました。しかし、加害者の謝罪がないうえ、他の被害実態も明らかにされていないなど、問題はまだ山積しています(写真左・五ノ井さん=左と陸自幹部)。

 性被害者の勇気ある告発が防衛省・自衛隊に一撃を与えた意義は小さくありません。

 同時に、これは単なる職場内の性暴力事件ではないことを見逃すことはできません。

 第1に、自衛隊は言うまでもなく軍隊であり、軍隊と性暴力は不可分の関係にあることです。

 それには2つの側面があります。1つは、軍隊が外部に対して行う性暴力の不可避性です。軍隊は「敵国」市民に対する性暴力を軍事行動の一環として行います。また、「従軍慰安婦」という名の性奴隷問題も軍隊による性暴力の表れです。

 もう1つの側面は、軍隊内部の性暴力の不可避性です。たとえば、米国防総省の報告(2018会計年度)によると、米軍内の1年間の性暴力被害は届け出があったものだけで7623件に上りました。国防総省は届け出は被害者の3人に1人とみており、被害者は2万人超と推定しています(2019年5月4日付沖縄タイムス)

 アメリカでは上記のように国防総省が実態を調査して発表しています(その精度はともかく)。日本でも自衛隊内の性暴力・性被害の全体調査を直ちに行って公表すべきです。

 見過ごすことができない第2の問題は、政府・自民党が女性を自衛隊に取り込む動きを強めていることです。

 植村秀樹・流通経済大教授はこう指摘しています。

「2017年版(防衛)白書は「輝き活躍する女性隊員」を特集している。自衛隊発足当初は看護職のみであった女性隊員は、1976年から職域に拡大され、その数を徐々に増やしてきた。…「国家を守る、公務員」のポスターに登場する隊員も過半が女性である。今年の隊員募集カレンダーも半数以上が女性である。

 自衛隊は長年、隊員募集に苦労してきたが、今や日本の女性には…「戦う」職場で「輝く」道が開かれている。「提言」(自民党安全保障調査会が4月岸田首相に提出した「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」)が「女性自衛官の更なる活躍」「女性自衛官の積極的な活用」と再三にわたって女性に注目しているのも、他の分野で「ガラスの天井」を断固として維持しておいて、自衛隊へ誘導するためなのかと疑いたくなってしまうほどである」(「世界」10月号)

 防衛省・自衛隊が五ノ井さんの訴えを遅まきながら認め、なんらかの措置をとろうとしているのは、追い込まれたうえでの世論対策であると同時に、ジェンダー問題を逆手にとって「女性自衛官の積極的な活用」を図ろうとしていることと無関係ではありません(写真中・右は自衛隊HPより)。

 軍隊と性暴力は不可分の関係であり、戦争(殺戮)を任務とする軍隊はけっして女性が「活躍」すべき場ではありません。憲法違反の軍隊=自衛隊の存否を根本的に問い直すことなしに「自衛隊の性暴力」問題を考えることはできません。

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自衛隊で始まって自衛隊で終わった「安倍国葬」

2022年09月28日 | 自衛隊・軍隊・メディア
      

 多数の反対を押し切って岸田文雄政権が強行した27日の「安倍晋三国葬」。午後2時前から4時過ぎまで、NHKはじめ民放各局(テレビ東京除く)が特番を組みました。その中継を見ていると、この「国葬」の主役は自衛隊だと思わざるをえませんでした(写真は左から①~⑥)。

自宅前 午後1時半、安倍氏の遺骨が渋谷区の自宅を出発。自宅前には多数の儀仗兵が整列し、頭を下げました(写真①)

立ち寄り 遺骨と昭恵氏を乗せた「日の丸」を掲げた車は、会場へ向かう途中で寄り道。向かった先は防衛省でした。庁舎の前で多数の自衛官が出迎える中、車はゆっくり通過(写真②)。防衛省に寄ったのは「遺族の希望」(中継キャスター)だとか。

遺骨先導 2時前、遺骨を抱いた昭恵氏が武道館に到着。出迎えた岸田首相と共に館内へ。2人を先導したのは、自衛隊の儀仗隊長でした(写真③)。

弔砲 武道館へ到着と同時に、自衛隊による弔砲が19発(写真④)。弔砲は階級によって11発~21発まで6段階あり、19発は「皇族・国家元首・大統領」の21発に次いで2番目(首相、副大統領など)。

遺骨を祭壇へ 昭恵氏から遺骨を受け取って祭壇へ置いたのも3人の儀仗兵でした(写真⑤)。

演奏 会場で「君が代」などを演奏したのは、陸上自衛隊中央音楽隊(防衛相直轄)。

儀仗隊大挙入場 2時10分、銃剣を携えた儀仗隊が大挙して入場(写真⑥)。異様な光景です。それを待っていたように、黙とうが行われました。

遺骨見送り 6時すぎ、「国葬」が終わり、遺骨が武道館から自宅へ戻る際、「花は咲く」を演奏したのは海上自衛隊音楽隊でした(この中継はなかったのでテレビが報じた「予定表」から)。

1390人 この日「安倍国葬」に動員された自衛隊員は、約1390人とされています。

 まさに自衛隊で始まって自衛隊で終わった「安倍国葬」でした。それは、安倍氏と自衛隊のただならぬ関係を象徴しています。

 安倍氏が首相になって(第1次安倍政権)真っ先に行ったのは、教育基本法改悪(2006年12月)と防衛庁の防衛省への“昇格”(07年1月)でした。

 第2次安倍政権ではさらに拍車がかかり、「防衛装備移転(武器輸出)三原則」の閣議決定(14年4月)、憲法違反の集団的自衛権行使を容認する政府見解決定(同7月)、それを法制化した戦争法(安保法制)強行(15年9月)。

 政権期間を通じてアメリカの兵器を爆買いし、軍事費はうなぎ上り。憲法違反の軍隊である自衛隊を憲法に明記する憲法「改正」をライフワークとしたのは周知の事実です。

 自衛隊にとって安倍氏はまさに守護神だったのです。

 しかし、上記のもようを、ただ安倍氏と自衛隊の親密な関係の表れとして済ませることはできません。なぜなら、これは安倍氏の私的葬儀ではなく、国が多額の税金を使って行った「国葬」だからです(7月の私的葬儀でも儀仗隊が動員されたことも大問題ですが)。

 自衛隊は「国葬」の場を最大限利用してその存在をアピールし、政府は「国葬」によって自衛隊をいっそう社会に浸透させようとしたのです。

 1943年6月5日、東条英機内閣は連合艦隊司令長官・山本五十六の「国葬」を行いました。目的は戦意高揚。それから79年。ウクライナ戦争の中、年末までに「国家安全保障戦略」など安保関連3文書が改定されます。
 自衛隊が取り仕切った「安倍国葬」は、日本人に新たな“戦意高揚”を促しているように思えてなりません。



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自衛隊統幕が自ら予算査定、レール敷いた安倍政権

2022年08月10日 | 自衛隊・軍隊・メディア
   

 きのうのブログで、自衛隊の策動が強まっていると書きましたが、9日付地方各紙(共同配信)に驚くべき記事が出ました。自衛隊「制服組(武官)」を統括する統合幕僚監部(統幕)が、軍事費(防衛予算)の査定に加わった、というのです。軍部(陸自、海自、空自)が要求する兵器をお手盛りで認めようとするもので、軍部の権限強化はここまできたか、という思いです。

 防衛省が財務省に要求する予算の査定は、従来「背広組(文官)」の防衛政策局と整備計画局が行ってきました。「背広組」ももちろん防衛官僚で、防衛省・自衛隊の利益を図ることに変わりはありませんが、それでも「制服組」=実戦部隊が直接予算編成に口出しすることは抑えてきました。その歯止めが無くなったのです。

 共同の記事は、「背広組のチェック機能が低下し、制服組の軍事的意見に偏重する恐れがある」「「文民統制(シビリアンコントロール)」の原則が脅かされる懸念もある」「省内からは…「予算は文民統制の要。原則逸脱につながりかねない」と疑問も出ている」など、省内にも疑問の声があると報じています。

 もともと「文民統制(シビリアンコントロール)」という言葉は、自衛隊の違憲性をカムフラージュするイチジクの葉でしかありませんでしたが、もはやその葉っぱすら公然と取り除かれようとしています。

 見過ごせないのは、こうした統幕の権限強化は、2015年6月の防衛省設置法改悪で、「背広組」が「制服組」をコントロールする「文官統制」の規定を全廃したことが大きな転機になったことです。

 2015年といえば、安倍晋三内閣が憲法違反の集団的自衛権行使を容認する戦争法(安保法制)を強行成立(9月19日)させた年です。
 防衛省内の軍部(統幕)の権限強化と、戦争法(集団的自衛権行使容認)はまさに一体のものです。

 また、共同の記事(9日付)によれば、15年の防衛省設置法改悪は、「災害派遣などでの自衛隊の地位向上を背景に」行われたといいます。自衛隊の「災害出動」が「制服組」の権限強化の理由づけになったのです。「災害出動」の狙いがここに表れています。

 岸田・自民党は「防衛予算の2倍化」を掲げ、来年度予算では通常予算とは別に、必要な兵器のリストを示し予算額は後で決めるという「事項要求」というトリックが導入されました。財政民主主義に反するばかりか、軍事費は青天井になりかねません。

 こうして自衛隊・軍部の権限強化と軍事費の大膨張が、同時並行的に強行されようとしています。そのレールを敷いたのが安倍晋三元首相であったことを、改めて想起する必要があります。

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自衛隊がミャンマー国軍幹部を訓練―知られざる加害性

2022年08月02日 | 自衛隊・軍隊・メディア
   
 7月23日に民主活動家を死刑にしたミャンマー国軍(写真左。写真中は死刑に抗議する人々)。30日には日本人ジャーナリストが拘束されました。そのミャンマー国軍の幹部を、自衛隊が組織的に訓練している、という驚くべき事実が、日本ジャーナリスト会議の機関紙「ジャーナリスト」最新号(7月25日付)に掲載されました。

 記事を投稿したのは、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチの笠井哲平氏(アジア局プログラムオフィサー)。記事の要旨は次の通りです。

< 日本政府は2015年以降、外国籍の軍人の教育や訓練を認める自衛隊法第100条の2の規定に基づき、ミャンマー国軍の軍人を受け入れてきた

 訓練は防衛大臣の承認の上、防衛省管轄の防衛大学校や自衛隊施設で実施されている。

 防衛省はクーデター(2021年2月1日)後も2名の士官候補生と2名の士官を受け入れ、22年には、再度2名の士官候補生と2名の士官を受け入れた。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチは21年12月、防衛省に「軍事訓練の停止」を要求。防衛省は訓練を受けた国軍の軍人が帰国後何をしているか把握していないと説明した。しかし、22年4月26日の衆院安保委員会で、防衛省は「今どういうポストについているか、一定程度把握している」と述べた。

 ヒューマン・ライツ・ウォッチと人権団体ジャスティス・フォー・ミャンマーの調査で、16年8月から17年3月に日本で訓練を受けたラン・モウ国軍空軍中佐がマグウェイ空軍基地に所属していることが分かった。現地メディアは同中佐が無差別空爆に直接関与したと名指しで批判している。

 日本政府がミャンマー国軍の軍事訓練を続ける限り、「人権外交」は建前にすぎない。ただちに軍事支援を停止するべきだ。>

 ヒューマン・ライツ・ウォッチのWEBサイト(5月23日)によれば、ジャスティス・フォー・ミャンマーも、「ミャンマー国軍が残虐な犯罪を犯していることを知りながら、日本が国軍の幹部候補生の訓練を続けることは許しがたい」と厳しく批判しています。

 日本の国会は昨年6月、「ミャンマーにおける軍事クーデターを非難」する決議を可決しました。防衛省・自衛隊による国軍幹部の訓練(軍事支援)は、この決議にも反します。国会(国会議員)はこの事実を把握しているのでしょうか。

 軍事評論家の小西誠氏(元自衛官)は、「近年、いわゆる制服組の「現場」の権限の肥大化が顕著」だと指摘しています(6月9日付琉球新、6月10日のブログ参照)。国会決議にも反するミャンマー国軍支援は、制服組の「権限肥大化」の1例といえるでしょう。

 また青井未帆・学習院大教授(憲法学)は、「防衛法制」と国会の関係について、「安全保障部門の常時監視や特定秘密へのアクセスなど、国会が統制する制度は十分整備されていない。これは重大な欠陥である」と警鐘を鳴らしています(7月30日付中国新聞=共同)。

 そもそも自衛隊の「文民統制」とは名ばかりですが、現場=制服組の危険な暴走がますます加速しています。

 自衛隊は憲法違反の軍隊です。それは戦争(交戦)と市民弾圧の2つの側面を持ちますが、ミャンマー国軍支援は、自衛隊が日本の市民を弾圧するだけでなく、軍事訓練・支援によって他国の軍隊の民衆弾圧・虐殺にも手を貸す存在であることを浮き彫りにしています。
 自衛隊の知られざる新たな加害性です。

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自衛隊勧誘資料にみる“貧困と軍隊”

2022年07月30日 | 自衛隊・軍隊・メディア
  

 「6市町村、自衛隊に名簿 住民周知なく提供、勧誘利用」―琉球新報は19日付Ⅰ面トップで、自衛隊が勧誘のため、18歳を迎える住民名簿も提供を自治体に要求し、沖縄県の宮古島市、名護市と4町村が本人に無断で名簿を提供していた事実を報じました(写真中)。

 前田定孝三重大学准教授(行政法)は、「自衛隊員の募集のために個人情報を記した名簿を提出することについて、いかなる法律や条令からも根拠は見いだせず、違法だ」(19日付琉球新報)と断じています。

 名簿(個人情報)を要求する自衛隊も、提出する自治体も、ともに違法であり、直ちにやめさせる必要があります。

 琉球新報はさらに27日付でこの問題を続報しました。その中で、自衛隊が沖縄県内の高校生らの自宅に送付している資料の一部を載せました(写真左)。

< 自衛隊の魅力って・・・!

①公務員だから、安定、安心、魅力があって、待遇がいいよ。

②一日3食(朝・昼・夕)の食事が美味しくて無料だよ。

③他の公務員にはない特例退職手当が、自衛官にはあるよ。

宿舎費(無料)、食事(無料)、被服、寝具等が支給または貸与だから、生活費の出費が少なく、貯金ができるよ。 >(太字は実際の資料では赤字)

 書かれているのは待遇面、しかもカネのことだけです。「食事が無料」を2カ所で繰り返し、3食の大きな写真まで付けているのはまさに異常。これが「自衛隊の魅力」だというわけです。

 ここに表れているのは、進学できない高校生の家庭は貧乏でカネに困っているだろう、自衛隊に入れば食うに困らず、貯金までできる、というカネで自衛隊員を釣る発想にほかなりません。市民を愚弄するにもほどがあります。

 岸信夫防衛相は22日の記者会見で、「対象者や保護者に職業としての自衛官を正しく理解していただくために募集案内を送付している」と述べました(27日付琉球新報)。この資料のどこが「自衛官を正しく理解する」ことなのでしょうか。

 自衛隊・防衛省の所業は腹立たしい限りですが、実はここには自衛隊をめぐる真実の一面が表れています。
 永年の自民党政治、とりわけ新自由主義政策によって社会の格差・差別は深まり、庶民の貧困がますます拡大している。その貧困層が収入をえるための近道に、自衛隊の門が開けられている。

 ここに、貧困と自衛隊=軍隊の本質的な相関関係があります。

 国家権力は一方で貧困者を大量に作り出し、一方でその貧困層を兵士とする軍隊で戦時体制を作る。貧困が軍隊を支え、軍隊が新たな貧困を作り出す。悪のスパイラル(螺旋)です。

 琉球時代の日本の侵略とその後の構造的差別によって、とりわけ貧困と社会保障の遅れを余儀なくされている沖縄。米軍基地を押し付けられている上に、自衛隊のミサイル基地にされようとしている沖縄で、カネをエサにした「自衛官募集」が自治体ぐるみで行われている。貧困と軍隊の悪のスパイラルは、まさに沖縄で顕著に表面化するのです。

 「安倍銃撃事件」の山上徹也容疑者もまた、この悪のスパイラルに巻き込まれた1人であることを改めて想起する必要があります。


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