アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「ハラスメントのない自衛隊」などあり得ない

2023年11月15日 | 自衛隊・軍隊・メディア
   

 岸田文雄首相は11日、航空自衛隊入間基地の観閲式で、「あらゆるハラスメントを一切許容しない組織環境を作り上げ、ハラスメントを根絶して仲間同士助け合い、励まし合って任務に臨むことを忘れないでいただきたい」と述べました(写真左)。

 実際、自衛隊内のハラスメント(パワハラ、セクハラ)は後を絶ちません。昨年からの防衛省・自衛隊自身の調査でさえ、ハラスメント被害の申し出は1325件に上っています(11日付朝日新聞デジタル)。もちろんこれはほんの氷山の一角です。

 ハラスメントが許されないことは言うまでもありません。しかし、自衛隊からハラスメントを「根絶する」ことなどできません。

 パワハラについて、防衛省幹部はこう吐露しています。「『戦う組織である以上、これぐらい耐えて当たり前』という意識が組織に染みこんでいる。かつてパワハラを受ける立場だった幹部も多く、負の連鎖が続いている」(8月2日付朝日新聞デジタル)
 上意下達の極みである軍隊において、パワハラをなくすることはできません。

 セクハラはどうでしょうか。

 先日の瀬戸内寂聴氏三回忌にあたり、親交があった作家の平野啓一郎氏が、瀬戸内氏が戦争に強く反対した背景をこう語っています。

「瀬戸内さんのフェミニズムとも関わりますが、暴力をふくめ、男性の権威主義に対して非常に強い反発を持っていました。マッチョな考えを持った人が社会を牛耳って戦争に突き進みます」(9日付朝日新聞デジタル)

 帝国日本が戦時性奴隷(「慰安婦」)制度を設けたのはなぜか。世界の紛争・戦争地で性暴力が絶えず、それが「武器」としてさえ行使されているのはなぜか。
 人を殺傷し人権を踏みにじる戦争・軍隊とセクハラ(性暴力)は一体不可分だからです。

 自衛隊は紛れもない軍隊です。したがってセクハラもパワハラもなくすることはできません。岸田首相の「ハラスメント根絶」は世論対策以外の何ものでもありません。

 重大なのは、政府を批判するメディアや「識者」の中にも、この点で自衛隊に対する誤った「期待」を示す論調が流布していることです。

 例えば、朝日新聞編集委員の藤田直央氏は11日の岸田首相の自衛隊に対する訓示を批判する中で、「自衛隊でのハラスメントを根絶しないといけないのは首相自身」「人づくりは自衛隊の根幹」(11日付朝日新聞デジタル)と述べています。八田進二・青山学院大名誉教授は、「自衛隊は社会の重要な公共財だ。…組織を根こそぎ変革させるというドラスティックな改革をやってもらいたい」(3日付朝日新聞デジタル)と要望しています。

 こうした言説は、自衛隊(政府・防衛省)に対して誤った幻想を抱かせ、軍隊としての自衛隊の本質を覆い隠す役割を果たしています。そもそも、ジャーナリスト、学者であるなら、自衛隊が憲法違反の存在であることをどう認識しているのでしょうか。

 繰り返しますが、軍隊である自衛隊からハラスメントをなくすることはできません。人権を踏みにじり人を殺傷する憲法違反の軍隊は直ちに廃止するしかありません。
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