アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「陸自性被害」問題の核心は何か

2022年10月04日 | 自衛隊・軍隊・メディア
    

 2年前から自衛隊内で性被害を受け続けた元陸上自衛官・五ノ井里奈さんの告発を防衛省・自衛隊は、9月29日にやっとその一部を認めました。しかし、加害者の謝罪がないうえ、他の被害実態も明らかにされていないなど、問題はまだ山積しています(写真左・五ノ井さん=左と陸自幹部)。

 性被害者の勇気ある告発が防衛省・自衛隊に一撃を与えた意義は小さくありません。

 同時に、これは単なる職場内の性暴力事件ではないことを見逃すことはできません。

 第1に、自衛隊は言うまでもなく軍隊であり、軍隊と性暴力は不可分の関係にあることです。

 それには2つの側面があります。1つは、軍隊が外部に対して行う性暴力の不可避性です。軍隊は「敵国」市民に対する性暴力を軍事行動の一環として行います。また、「従軍慰安婦」という名の性奴隷問題も軍隊による性暴力の表れです。

 もう1つの側面は、軍隊内部の性暴力の不可避性です。たとえば、米国防総省の報告(2018会計年度)によると、米軍内の1年間の性暴力被害は届け出があったものだけで7623件に上りました。国防総省は届け出は被害者の3人に1人とみており、被害者は2万人超と推定しています(2019年5月4日付沖縄タイムス)

 アメリカでは上記のように国防総省が実態を調査して発表しています(その精度はともかく)。日本でも自衛隊内の性暴力・性被害の全体調査を直ちに行って公表すべきです。

 見過ごすことができない第2の問題は、政府・自民党が女性を自衛隊に取り込む動きを強めていることです。

 植村秀樹・流通経済大教授はこう指摘しています。

「2017年版(防衛)白書は「輝き活躍する女性隊員」を特集している。自衛隊発足当初は看護職のみであった女性隊員は、1976年から職域に拡大され、その数を徐々に増やしてきた。…「国家を守る、公務員」のポスターに登場する隊員も過半が女性である。今年の隊員募集カレンダーも半数以上が女性である。

 自衛隊は長年、隊員募集に苦労してきたが、今や日本の女性には…「戦う」職場で「輝く」道が開かれている。「提言」(自民党安全保障調査会が4月岸田首相に提出した「新たな国家安全保障戦略等の策定に向けた提言」)が「女性自衛官の更なる活躍」「女性自衛官の積極的な活用」と再三にわたって女性に注目しているのも、他の分野で「ガラスの天井」を断固として維持しておいて、自衛隊へ誘導するためなのかと疑いたくなってしまうほどである」(「世界」10月号)

 防衛省・自衛隊が五ノ井さんの訴えを遅まきながら認め、なんらかの措置をとろうとしているのは、追い込まれたうえでの世論対策であると同時に、ジェンダー問題を逆手にとって「女性自衛官の積極的な活用」を図ろうとしていることと無関係ではありません(写真中・右は自衛隊HPより)。

 軍隊と性暴力は不可分の関係であり、戦争(殺戮)を任務とする軍隊はけっして女性が「活躍」すべき場ではありません。憲法違反の軍隊=自衛隊の存否を根本的に問い直すことなしに「自衛隊の性暴力」問題を考えることはできません。
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