No.997
また、この季節が来た。毎日、戦争特集をやっている。
本当は、見たくも聞きたくもない。戦争を体験していない世代だが、戦争の悲惨を、いいかと言うほど見聞きして育った。
実際に体験していないことは、むしろ、何倍にも増幅されて潜在意識に焼き付くのだと思う。
昭和40年前後に生まれた人が、自分の生まれる少し前の、昭和30年代にノスタルジーを感じるのも、同じ理屈だろう。
ノスタルジーならいいのだが、厭戦感情が染みこんでいる。
ところが、どこでどんな教育をされたのか、今の若者は、知識としてすら日本の戦争を知らない。
テレビの戦争特集や、近現代史の話で、戦争の実体に、驚いていることに驚かされる。一方で、ネット上には、妙に知ったかぶりの戦争観が広がっている。
南京事件は無かった。日本兵の残虐は無かった。といった常識ができあがっている。もちろん、他国の言う歴史は、これもまた、それぞれの都合の話だから、聞く必要はないとしても、日本聖戦説がネット世代の常識になっていることには暗澹たる思いがする。防衛戦はあるかも知れないが、他国での聖戦というものはあり得ない。
結局の所、日本の戦争体験世代と、その余波を受けた世代が、厭戦の情の強さと、戦犯国のレッテルゆえに、戦争にフタをしてしまったことが、戦争体験の不毛地帯を作ったのではなかろうか。
ただ、よくドイツと比較されるが、ドイツのような徹底して計画的な虐殺ではないし、さらに、完全にナチの仕業にすることによって、自分たちの立つ瀬を見いだしているのとは、全く違う。
日本人は、何でも残していくから、看板を変えるだけで現実が変わるとは思わない。戦犯のせいにすれば、自分たちには責任がないとは思わない。だからこそ、水に流して、すぐ忘れようとする。
有ったことや、起こった事実は消えないが、それをどう処理するかが、日本と世界の違いであり、日本が特殊なのは島国だからだろう。
世界の人が、過去を決して水に流さず、すべて、正当化に利用するということが、島国の極楽トンボには理解できない。
ヤクザを相手に、すぐ謝ったり親切にしたりすることが、どんなに危険なことか、世間知らずのお嬢さんには想像も出来ない。
しかし、まあ、あまりにも世間知らずというものは、案外、被害には遭わないもので、日本が、歴史的に何となくうまくいく国なのは、そのせいかもしれない。
天秤座というのは、元来、他から見れば、運のいい星座と言われる。
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