今夜は中秋の名月だ。
西日本の住人にとって、この夏はひどい詐欺だった。
暑い! さあ、もっと暑くなるぞと、思うまもなく、土砂降りが始まり、いっこうに暑くならないうちに、秋風が立ち始めてしまった。
一週間遅らせても、稲の刈り入れが出来るのはまだ良い方で、刈り入れどころではない地域もある。
そんな中、皮肉なことに、今宵は雲一つ無い名月だ。
満月の夜は、琵琶湖の西の大津側から観ると、湖面が金色に輝き、その中から月が昇ってくる。
湖西道路を高島方面から南に、満月と走り続けたことがあるが、湖がいつまでもキラキラと輝いて、月の女神がそこにいるような、あらたかな気持ちになった。
今宵の名月もまた、淡海は光り輝いている。
澄み切った中秋が、輝けば輝くほど、今年は何故か、もの悲しい。
淡海の海夕浪千鳥汝が鳴けば 情もしのに古念ほゆ
柿本人麻呂
淡海の海月夜見尊たちませば 錦もしのに露に濡れなん
蛇足居士