転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



昨日は、午後から『広島サマーコンサート』を聴きに行った。
この音楽会は、広島を地元とする若い演奏家(の卵)たちが、
夏休みを利用して集まり、それぞれの成果を披露し合い、切磋琢磨する、
という主旨で毎年行われており、今年は25周年記念でもあった。
この会を主宰なさっている小嶋素子先生の門下生関係にとどまらず、
様々な若いピアニスト達を中心に、声楽や弦楽器の学生さんも参加して、
午後1時半から7時過ぎまで、大勢のソリストたちが次々に登場・演奏した。
二部構成のうち、私は主として第一部だけを聴かせて頂いたが、
いずれも意欲的な内容で、なかなか聴き応えがあり、楽しかった。

出演は学年順で、最初は高校1年生の演奏者から始まり、
16時過ぎまでの第一部の最後のほうは、大学1年生の方々だった。
後半の第二部は、大学生から大学院生までの出演となっていた。
中には、以前おさらい会を聴かせて頂いたことで、
名前を知ることになった生徒さんも何人かあり、
彼らが一段と成長して、有望な若手になりつつあるところを見るのは
地元の愛好家として、なんとなく保護者的な喜びもあった(笑)。

皆、若いからテクニックには自信があるのか、
それとも本番の気分の高揚がおさえられないからか、
かなり速いテンポで弾く人が多いような印象が、私にはあった。
ショパンの難度の高いエチュードやプレリュードを、
いきなり疾走するような勢いで弾き始めるのを聴くと、
その速さで最後まで行けるのか!?と客席にいて心配になったりしたが、
皆、たとえ途中で危うくなっても、とにかく弾ききっていたのは見事だった。
そういう、ふらついた箇所があっても力で押してしまうような、
良い意味での強引さは、発展途上の若い学習者たちならではだと思った。

一方、途中で一瞬止まったり、弾き直した人達もあり、
本番のステージの「魔」なのだろうな、という怖さも感じた。
ほかの実技系でもよくあることだが、誰かがこれに捕まると、
次の人にも伝染してしまって、途端にミスタッチが連続したり、
暗譜が落ちそうになったりして、崩れる人が続出することがあるのだ。
しかし昨日の演奏者は皆、こういうところでも、
弾き直しているうちに、ちゃんと短時間で元の演奏に戻ることができ、
やはりレベルの高い生徒さん達であればこそだと、感じ入った。
失敗しないように弾くのが第一ではあるけれども、
誰しも偶発的なミスは避けられないのだから、
現実に失敗してしまったときの対処の仕方も、ステージでは大事なのだ。
そして、仮に、止まってしまうほどのミスがあったとしても、
やはり音の綺麗な人は綺麗なのであり、基本的に巧い人は巧いのだ、
ということもはっきりと感じられた。

骨格としてはとても良いのに、細部が雑に聞こえて残念、
というタイプの演奏も、何人かあった。
ステージアピールが鮮やかで、大変に惹きつけられる演奏なのだけれど、
ちょっとしたフレーズが粗雑だったり、ペダルが大味だったりして、
聴き手としては「あと一歩、忍耐して丁寧に仕上げてくれていたら…」
と、そういう人の演奏を聴くと、つい想像させられてしまった。

オマエ自分が弾けないくせに、どこまで偉そうなんだ!?
というご批判もおありかとは思いますが(^_^;、
良いのだ、弾き手としての私は、ド素人の極みであり趣味のおばさんなのだから。
そもそもが、私は彼らと同じ土俵で発言していない。
昨日弾いた方々は、この先、お金を取って弾くようになるであろう人達であり、
自分が楽しく弾けていれば良い、という次元でやっているのではない筈だ。
そして、私は将来、お金を払って彼らを聴くほうの側にいる人間だ。
であればこそ、私は、存分に、得手勝手な要望を言わせて貰うとも(笑)。
彼らが近い将来、相手にせねばならない「聴衆」「一般大衆」とは、
例えば、私のような人間のことなのだよ(笑)。

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