転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



19日に、娘と一緒に昼の部を観に行った。
娘と歌舞伎を観るのは、ずいぶんと久しぶりだった。

『悪太郎』は右近の舞踊の素養が存分に発揮された役で、
楽しく観ることができた。
猿弥が智蓮坊の役で、ここでも活躍していた。
狂言から来ているわかりやすい演目ではあったが、
「だいぶん、言葉がわかるようになった。古文習った甲斐があったワ」
と見終わって娘が言った。そりゃ良かったな(^_^;。

そして次が、娘の目的であった『若き日の信長』。
勿論、私にとっても昼の部はこれが目当てだったのだが、
私が海老蔵を見たいがために来たのとは違い、娘の方は、
信長がどう描かれているかを見たくて来たのだった。

信長の海老蔵は、目千両で見事だった。
先代の團十郎を私は舞台では一度も見たことがない世代なので、
海老蔵時代の先代が演じた信長がどのようであったかは、写真から想像するのみだが、
役者の素がよく活かされた役として、当代海老蔵の信長も、
やはり「はまり役」と言える出来映えなのではないかと感じた。
声も野性的な響きがあって、なかなか良かった。
もう少し台詞がシャープなほうが、私は更に好みだけれど(汗)。

娘は、海老蔵にはオペラグラスを上げて見入っていたが、
中務(左團次)が切腹して、その遺骸に信長が懸命に呼びかける場になると
もう涙が止まらなくなってしまった様子で、大変そうだった。
私も勿論、心を動かされなかったわけではないのだが、
物語が進むほどに、弥生(壱太郎)の可憐なことに感心してしまって、
あちらもこちらも観なければならず、忙しかった。
中務の次男・監物(亀三郎)の声が素晴らしかったのにもシビれた。

最後に信長は、藤吉郎(翫雀)に一声、陣触れを出せと命じ、
自分は弥生に鼓を打たせて舞を舞う。
海老蔵の、迸るような荒々しさがうまく大きさとなって表現された、良い場面だった。
……と私が感じ入っていたら、終わったとたんに娘いわく、
「あれって、信長が舞ってたのって、『敦盛』だよね」。
出たな、歴女。

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