転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



なんとしても再度、映画館で観たい、と願い続けていた、
『ボヘミアン・ラプソディ』を、昼に八丁座で観て来た。
11月9日の公開以来、この映画の人気は衰えることがなく、
全国的に12月28日から上映館が増やされたのだが、
広島市内でもついに、勤務先から至近距離にある八丁座に来たので、
こんな目の前でやっているものを逃すテはない、と思い、
25日の夕方、八丁堀を通ったついでにチケットを買っておいた。
そのときは、私の道楽の鉄則「迷ったら、行け」に基づき(笑)、
とにかく席を購入してしまえば、忙しくなっても何があっても、
観に行く予定のほうが優先される!=必ず観られる!
……等々と考えていただけだったが、
きょう行ってみたら、167席の「八丁座 壱」がなんと満席だった。
つくづく、チケットを買っておいたのは英断だった。



二度目とあって、前回より細かいところを更に楽しむことができた。
この映画は、わかる人にはわかる細かい仕掛けが随所に仕込んであるので、
熱心なファンにはコタエられない内容なのだが、
それらはQUEENに思い入れのない人には一切、関係がないところでもあり、
ファンと批評家の間で作品への評価が異なるのは、無理もないことだと思う。
例えば、フレディの家にマレーネ・ディートリッヒの写真があるのは、
QUEENⅡのジャケットの元ネタになったものだからだし、
フレディ宅の壁の正面に日本の着物が飾られている様子からは、
この時期QUEENが既に、日本公演を終え彼の地でも成功していることが示され、
フレディが和服を着て歌った逸話をも、連想させられるようになっている。
またこれは、Twitterで某氏の指摘を読んでほとほと感心したことなのだが、
ジム・ハットンから贈られた指輪が、ライヴエイドの場面のフレディの指にある、
ということも、台詞では一言も触れられないのだが、
映像を注意深く観ているとわかるようになっている
(実在のフレディも、1985年7月13日のライヴエイドの映像を観ると
右手薬指に指輪をしている。しかし恋人ジムが彼に結婚指輪を贈ったのは、
事実としては86年になってから。このレベルの脚色もまた映画の随所にある)。

主人公のフレディの派手な言動の影で、ほかの登場人物たちが、
地味ながらも生き生きと、それぞれの人生を生きている、
ということにも、きょうは強い感銘を受けた。
例えば、マネジャーのジム・ビーチが一貫して良い味を出しているので、
エピソードのひとつひとつに、QUEENの外側からの視点が加わったと感じたし、
当事者であったメンバーそれぞれもまた、本当によく本人達を反映した、
巧い表現をしているので、些細な一言や、一瞬の首のかしげ方等にまで
たびたび感心させられた。
映画なのだから、すべては演出であり飽くまで虚構なのだが、
虚構だとわかったうえで、その土台にあるリアリティに惹きつけられた。

そして、フレディは本当に孤独だった、ということも胸に染みた。
表現者としての強烈な才能に比して、フレディは常に寂しい人だった。
独りである自分と向き合わないで済むように、彼は幾度も、
華やかな招待客を集めて、乱痴気騒ぎの盛大なパーティーを開き、
「フレディ・マーキュリー」を完璧に演じて「愛」を振りまいたが、
本質的に彼の心を温めてくれる人には、容易に巡り会えなかった。
彼のそばに晩年まで残ったのは、QUEENのメンバーとマネジャー、
親友メアリー、恋人ジム、両親と妹、そして彼に可愛がられた猫たち。
彼らは最後に、72,000人の喝采を浴びてライヴエイドで歌うフレディの姿を、
それぞれの場所から、真剣な眼差しで、各々の思いを込めて、見守る………。

今日、八丁座で映画が終わり、エンドロールが流れ、
最後に The show must go onのフレディの歌声がやんだとき、
満員の客席のあちこちから、自然に拍手が沸き起こった。
それは、フレディの音楽が、今もなお、こんな極東の街でも、
大勢の人達から支持されていることの証しだった。
あの世のフレディに、きょうの私たちの拍手が聞こえていただろうか。
こうなると、バルト11のほうの『胸アツ応援上映』の企画も捨てがたい。
私は滂沱と泣いて凄いことになりそうだが、この際構っていられない。
QUEENのライブを追体験するためには
DVDやテレビのサイズ感では全く駄目だ、大音響と客席が無くては。
応援上映と銘打っている回は、拍手OK!手拍子OK!発声OK!
とのことだが、スタンディングは無いのか(^_^;。
ライヴエイドの場面では、実は私は立ち上がりたい欲求を堪えている。
座ってQUEENのライヴを聴くなんて、無いよぉ(^_^;?

……ということで、きょうの八丁座の初回を見終わって出て来たら、
既に次の上映を待つ人達の長蛇の列ができていて、
15:30の回も満席の札が出ていた。
公開から日数が経ったし、11月のときよりゆったり観られるだろう、
と私は勝手に思い込んでいたのだが、事態は全然違って、
当日いきなり行って観られるような映画では、
なくなっていたのだった(汗)。
前後左右にしっかりと空間を確保した状態で、自分の世界に入って、
さめざめとハンカチ、…いや、フェイスタオルを使いながら観る、
ラストの20分間は、声は出さないまでも心の中で熱唱しながら観る、
というのを想定していたのだが……。
…それも結構、悪くないと思っていたのだが……(汗)。

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