転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



一昨日の午後、母が電話して来て、
「泥棒が入って、部屋の金庫(=貴重品入れ)の鍵がなくなった。
いつも使っている鞄を見たら、中身が全部ないから財布も盗まれたと思う」
という内容のことを訴えてきた。
某ホームの部屋には、ホテル個室の貴重品入れのような小さい金庫があり、
それの鍵は住人が自分で管理しているのだが、
母はそれを箪笥のとある場所に入れておいたのに、
ふと思いついて見てみたら、無かったのだそうだ。
また、鞄のほうは、日常、母が売店に行くときなどに持っていくもので、
中には財布やハンカチ?などを入れていたそうなのだが、
今、「はっ」と思って調べてみたら、
それらがごっそりなくなって、中はカラになっていた、と言う。

しかし話を聞いてみると、部屋は全く荒らされていないし、
そもそも自分たちはほとんどいつも部屋に居るし、
廊下もスタッフさんが絶えず歩いているし、
コロナの件で面会禁止だから外部の人が来ることも全くないしで、
いつ泥棒が入ってその品々が消えたのか、全然わからないという。
住人たちは自分の居室に鍵をかけてもかけなくても良いことになっているが、
面倒なのでいちいち施錠などしない人が大半ではある。
また、食事時間など、父も母も、隣の部屋の住人も、
確かに一斉に食堂に行くから、居室周辺に人が少なくなるタイミング、
というのが、絶対に無いわけでは無いので、
その半時間ほどの間に誰か(って例えば誰?)が母の部屋を狙ったのだ、
と、言って言えないことは、ないのだが……。

それにしても、忍び込んで手当たり次第に探し回って
現金や財布を盗んでいった、……というならともかく、
部屋に入り、よけいな抽斗ひとつ開けず、何ひとつ荒らさずに
住人本人も気付かない手際で「金庫の鍵」を的確に取り出し、
かつ、それとは離れた場所の「鞄」の「中身」を財布ハンカチちり紙すべて持ち出す、
という行動を、ごく短時間に完遂して逃走した、
………なんてことが、あり得るだろうか?

どうも母が何か勘違いをしているように思えてならないのだが。
ここに置いた、と思っている場所が記憶違いで、
鍵も財布も、実はどこかほかのところに保管しているのでは。
それらは自分なりに大事なものである筈なので、
きちんと仕舞っておかなくてはと思うからこそ、
入れ場所を工夫して変更したりして、今はそれを覚えていない、等では……。
あまり決めつけては悪いが、家に居た頃から
高齢者の毎日は探し物の連続だった。
とにかく二人とも、ものをなくしては、どこに置いたか思い出せずに
探し続けていたものだった。
通帳、免許証、鍵、マイナンバー通知カードなど、次々となくなった。
再発行でカタをつけたものも多かった。

母は勿論、スタッフさんに訴えたそうだ。
そうしたらお忙しいのにスタッフさんは一緒に探して下さって、
部屋のあちこちから財布がいくつか出てきたのだそうだが、
どれも、母の思っている財布ではなかったそうだ。
「よぅ似た財布は出てきてんけど、いつも使うとんのは、
それよりもうちょっと色の濃い、5ミリずつほど大きいやつやねん」
と母は妙に厳密なことを言っていたが、確かなんだろうかね(^_^;。

その後、夕方になって母が再度電話してきて言うことには、
鍵については、スタッフさんが、
「泥棒などここでは入ったことが無いから、何も心配しなくて良いと思うけれども、
仮に鍵がなくなったのだとしても、ここの設備関係は全部、決まった業者さんがあり、
同じ鍵をすぐ作って貰えるから、なくしたことは何も問題ない」
と言って下さったそうで、母はそれですっかり安心したとのことだった。
「私らがここを出るとき、この部屋だけ違う鍵がついとったら
後で入った人に迷惑かけるからね。同じ鍵つくって貰えるんやと。良かったわ」
そんなのでいいんだ……??
本当に鍵を盗まれたのなら、完全に新規に錠前ごと取り替えないと
危険ということになるのではないの??
盗られたのと同じ鍵を業者さんがつくってくれたら、もう安心なのかね??
まあ、どうでも良いわ、母が良いなら(^_^;。

それにしても、「何かが見当たらない→泥棒に盗られた」
という思考は、なんとも見事な、高齢者の典型的なパターンではないか。
しかも鍵とか財布とか、教科書に出ていそうな、どストライクのアイテムだ。
「まあ、そのうちどっかから出て来るて。しもうた場所を忘れてんねや。
無くしもんをして、『泥棒に盗られた』いうのは、ボケの始まりとして
典型的なパターンやで。気ぃつけや(^_^;」
と私が言ったら、母はそれが気に入ったようで、
「そうか、ボケたらあかんね。私も、なんしろトシやからね」
と機嫌が良かった。

あれから何も言って来ないので、気が済んだのだろうか。
もしかして、この騒動や私に電話をかけたことなども
もうすべて、忘れてしまったのだろうかな。
かつて『七度探して人を疑え』と幼い私に教えてくれたのは、
おかーさんだったのですが、ねぇ(^_^;?

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