昨夜の三浦友理枝ピアノ・リサイタルに、
大変感銘を受けたことを書いたけれども、
実は、客層は、決して良いとは言えなかった。
私が到着した時点では、開場まもない時刻だったので、
まだ人もまばらで席は大いに選ぶ余地があり、私は、
やや後方の自分的ベストポジションに座った。
全景の見える、最後部下手寄り、というのも考えたが、
せっかく空いているのだから少し前で見るのもいいだろう、
と思い直した。我ながら良い場所が取れたと満足だった。
すると、それからしばらくして、俄にドヤドヤと、
ピアノ教室の子供たちと思われる小学生軍団がやって来たのだ。
彼らは遠慮もなんもなく、私の周囲の空いている席に群がり、
私は瞬く間に、まわりじゅうを喧しい子供らに囲まれてしまった。
そのとき、私の考えていたことは。
『私がこいつらの引率だと思われたら、イヤだな(^_^;)』
あとから来た人がこの状況を見たら、
どうしたって、私が子供らを侍らせていると思うだろう。
彼らが静かに聴けないことは、悪いけど顔を見たらわかった。
演奏中、彼らはきっと、かたときもじっとしていまい。
そうなったとき、私自身が迷惑なのは勿論だが、
ほかの客が、『あの女、責任者だろ、なんでほっとくんだ!』
という目で、私のことを見るのではないかと思うと心外だった。
みなさーん、聞いて下さーい!!
私はこの子らと関係ない、皆さん同様の一般客なんです!
今夜いちばん可哀想な人間のひとりは、私じゃないでしょーか!?
(↑自意識過剰)
しばらく観察していたが、子供らはやはり危険そうだった。
当たり前だ、よほど好きで来たのでなければ、こんな小学生が、
ラヴェルだのフォーレだの、プロコの6番だのに、
耐えられる筈がないのだった。
だがここまで来ると、最初考えた後部ブロックにも既に人がいて、
席を移るとしたら、とんでもなく端っこのほうしか無かった。
諦めの境地に至ったとき、開演ブザーが鳴り、場内が暗くなった。
拍手の中、本日の演奏者が登場した。
途端に、私の目の前の二席にいた女児らが、プログラムを取り出し、
ステージ上の人間を指さして、何か言い始めた。
『写真と全然ちがくない?』
その子らの更にとなり、つまり私の斜め前に居た女児も、
なかなかのモノだった。
一曲目は『舟歌』、彼女は即座に自分で船をこぎ始めた。
おい、いくらなんでも、早くね(^_^;)?
私の更にその隣にいた別の女児は、漕ぎ手ではなかったが、
不規則に揺られていた。
ギーコ、ギー・・・・コ、ギコ。
うぅむ。そのリズム、全然、曲と合っとらんよ。
ってかそういう問題じゃないけど。
正面の女児の片割れは、それから、
自分の髪を結んでいたゴムをほどき、髪を結わえ直し始めた。
小さな手で、器用に髪をなでつけ、ポニーテールにするのだが、
惜しい、右の下のほうに後れ毛があるぞ。
だが女児は構わず、ゴムで括ろうとした。
おいっっ、待てっっ、まだ、ケが出とるっつーに!
そのときだった。
私のふたつおいて隣の席にいた男児が、いきなり、
ぴょーーーーん!!
と座席から飛び上がったのだ。
っっっ!!!!!
私はあまりにも驚いて、それこそ口から心臓が出そうになった。
正面の女児にばかり気を取られていたら、まさか脇が飛ぶとは。
あなどりがたし、まるでモグラ叩き。
ってゆーか!
ええ加減にせえよ(T.T)!!!
なお、場内の子供達が全員、こういう手合いだった訳ではない。
中には、固唾をのんで聴き入っているような小学生達もいた。
年端の行かない子供でも、音楽の好きな子というのは、いる。
友理枝嬢の演奏は、彼らの無垢な感性に、
きっと大切な何かを与えたことだろうと思う。
栴檀(せんだん)は双葉にして芳(かんば)し、
と、昨夜私は、つくづくと思わずにいられなかった。
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