転妻よしこ の 道楽日記
舞台パフォーマンス全般をこよなく愛する道楽者の記録です。
ブログ開始時は「転妻」でしたが現在は広島に定住しています。
 



やっと舅姑のお墓の掃除&お墓参りに行った。
お盆直前に行った後から、娘が帰省して私の生活も変わってしまい、
半月ほどじーちゃん&ばーちゃんのところへはご無沙汰してしまった。
きょうは墓石を拭いて蝋燭も取り替えて、お花を供えてお参りした。
前回来た頃より明らかに陽射しが和らぎ、ツクツクボウシが鳴いていて、
墓所はすっかり晩夏の雰囲気になっていた。

この週末には、いつものお寺の若院さんに
舅宅でお経をあげて頂くことになっているので、
私は明日か明後日のうちに舅宅の掃除にも行かねばならない。
草抜きだけは植木屋さんに先日して頂いたので、
最悪のジャングル状態からは既に脱却できているのだが、
やはり毎日の落ち葉もあるし、事前の掃除は必要だ。
ちょうどいい、この際、娘を動員しよう(笑)。

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帰りに本屋に寄って、ふと目についたので、
岩村暢子『普通の家族がいちばん怖い』(新潮文庫)を買った。

クリスマスツリーを飾ることには熱心でも、クリスマス料理は出来合い、
お節料理など家では作ったことがなく、お正月にはお屠蘇もお雑煮もなく、
元旦は家族がばらばらに起きてきて、それぞれしたいことをして過ごす、
……などと、ここで語られる家族像は、我が家によく似ているなあ(爆)、
と思えたので、興味を覚えてこの本を選んだのだ。
私は自分がヒドい人間であり、我が家が非常識な家庭だという自覚が
以前から結構あって、自分の現状はさぞかし話題性があるだろうと、
この日記にもときどきそういうテイタラクについて書いていたのだが、
料理をせず道楽だけしているというのは、実は世間によくある『普通』のことで、
本当は誰も驚いていなかったらしいことを知り、ちょっとガッカリした(爆)。

主婦たちのアンケートの答えや、掲載されている写真には、
「まさに私がコレだな」と思い当たるフシもあれば、
逆に「なんぼなんでも、それはないやろ」と呆れた部分もあって、
現代家族を描写する、なかなか面白い調査だというのは理解できたのだが、
私の最終的な読後感はamazonのもなかさんのレビューに近かった。
著者は『この本は「日本の伝統行事を大事にしましょう」とか
「昔ながらのやり方で手作りしましょう」と言っている本ではない』
と文庫版のための後書きに書いているのだが、
著者がわざわざそう断らなければならないということは、
それほど多くの人が、この本をそうした方向で読んだということだろう。
私自身、「昔ながらの伝統的お節さえ作れない今時主婦はダメ主婦」
と言っている本、という印象を持ったし、
むしろ後書きを読んで「そういうつもりが無かった、とは……?」
とかえって困惑させられた。

確かに、料理の仕方について揚げ足を取ることそのものが趣旨ではなくて、
このようなクリスマスやお正月の過ごし方の根底に現代家族の抱える問題がある、
ということが言いたいのだというのは理解できるのだが、
この本の手法は、一種の吊し上げになっていると思う。
伝統行事を大切にしない・昔ながらのやり方で手作りしていないという
膨大な具体例を挙げて、著者はそうした主婦たちの自己中心を非難し、
著者の生育歴や価値観を基準として、若い世代を断罪している。
クリスマス準備やお節の作り方が昔ながらのものとは違っていても、
「私中心」でない・「一緒にいら」れる、好ましさのある家族の例は、
本文には出て来ない(文庫版後書きで語られる筆者自身の娘さんの例についてのみ、
少し、こういう視点が感じられなくもないけれど)。
このような言葉遣いや表現のニュアンスから、著者の意図しない方向に
読み手が誘導される可能性が高いということについて、
後書きに見る限り、著者は無自覚であったということなのだろうと思うのだが、
確信犯だったのだとしたら、それはそれで、あんまり好きな書き方ではないな(^_^;。

もしこれが、著者の主張は途中まで見せないように文章表現を抑え、
場合によっては、読み手に
「なるほど、今時はここまで価値観も変わったということなのだな」
「時代が変わるというのは、こういうことでもあるのか」
等々と、主婦達の本音に一瞬の理解あるいは共感(の錯覚)さえ
抱かせることに成功したものだったら、
そして最終章で初めて著者の分析なり立場なりが明かされたのであったら、
本当の意味で、『普通の家族がいちばん怖い』と
読者に思わせることができたのではないかと思う。
アンケート結果を紹介する章では解釈は交えず、
ひらたく言えば「責める」口調にならない表現を徹底して使って、
最後の章になってから、一気に種明かしをして結論に持って行く、
……という構成のほうが、私自身は趣味に合う(^_^;。……と思った。

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