殿は今夜もご乱心

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現場はいま…ゴーヤ騒動記・1

2024年05月26日 16時37分04秒 | シリーズ・現場はいま…

我々のお目付役、ピカチューが

F工業のF社長とゴールデン・ウィーク明けに会う…

このことは前回のシリーズでお話しした。

 

改めてご説明するが、彼は隣の商売仇、アキバ産業と癒着している。

そこで、うちと一緒に仕事をするF工業との契約を切り

アキバ産業と仲良しの反社系会社

T興業を招き入れるための準備として、F社長と面談したがっていた。

酒好きの彼は契約を切る前に

F工業とT興業を天秤にかけるそぶりを見せ

F社長から酒の接待を受けるつもりでいた。

 

彼に契約を切ったり結んだり

天秤にかけて接待をさせる権限があるのか…

そう問われれば、無い。

所長から所長代理に降格した現在は、ますます無い。

しかし彼は、あると思い込んでいる。

隣とT興業、そしてうちの事務員アイジンガー・ゼットにそそのかされ

すっかり勘違いしているのだった。

 

ピカチューは連休明けの5月7日、F社長に電話をして

会う日を決めるはずだった。

しかし結論から言うと、彼がF社長に電話をかけることは無く

当然ながら二人の面会も泡と消えた。

うちの夫を辞めさせようとした件で腹を立てているF社長が

ピカチューと会ったら面白いことになると思っていたが、残念である。

期待してくださった皆様、すみませんでした。

 

さて、F社長とピカチューの面会が立ち消えた理由は二つある。

一つは、河野常務に止められたから。

 

松木氏に始まり、藤村、ピカチュー…

本社から回された歴代のお目付役は

毎日のスケジュールを入力する義務がある。

それを本社に居る河野常務がチェックするのだが

彼らお目付役は、このスケジュール入力作業が苦手。

何もわからなくて一日中ブラブラするしかないのに

毎日、何かをやるフリをしなければならないのだから

いくら嘘つきとはいえ、さすがにつらい。

しかもいい加減なことを書くと、ガンガン追求される。

彼らは、それを心底恐れていた。

 

肝の小さい者なら誰でも、この恐怖から逃れたい。

常務の叱咤は、それほど厳しいものらしい。

我ら一家は義父アツシの怒号に慣れているため

常務が優しく感じられるが、この環境が初めての者は

頭がおかしくなる級の恐ろしさのようだ。

 

そのおかしくなった頭で、やがて考えつくのは

夫を追い出して成り代わること。

子会社の責任者である夫に、スケジュールの報告義務は無い。

本社直轄の営業所長と、子会社のトップを兼任すれば

何となく忙しそうな雰囲気になり

報告義務から解放されると思うらしい。

 

夫が本社からスケジュール管理をされてないのは

取引先の管理と入荷出荷の調整を行いながら

ダンプ輸送にまつわる各種の管理をこなしつつ

重機での積込み作業をしているから。

一日中、用事があるのは明らかなため

わざわざ報告するまでもないというわけ。

 

しかし彼らには、それがわかってない。

長年の経験と勘だけで仕事をこなす夫が悠長に見え

恐怖から逃れたい一心で、夫の排除に血道を上げるようになる。

彼らお目付役がおかしくなるのには

この恐怖心も大いに影響しているのだ。

 

7日の朝も、“恐怖”が発動した。

河野常務から、ピカチューに着信だ。

「おまえ、今日の仕事は電話1本だけか!」

“F工業、F社長に電話でアポ”

ピカチューは事務所のホワイトボードに書き込んだように

スケジュール報告にも同じことを入力したらしい。

 

「F工業に何の用事ね」

「挨拶に…」

「何の挨拶ね」

「社長に挨拶がまだだったので…」

「はあ?1年も経ってからや」

「はい…向こうの都合が合えば今日、行くつもりで…」

「行かんでええ。

ガソリンと時間の無駄じゃ」

 

こうしてF工業訪問は泡と消えた。

「で、今日は何するんね」

その後、ピカチューが常務がらネチネチと突っ込まれたのは

言うまでもない。

 

F社長との面会が未遂に終わったもう一つの理由…

それはF工業を切ってT興業をうちへ入れるアキバ計画に

肝心のT興業が、待ったをかけたことである。

 

我々ギャラリーとしては

鳶(とび)職由来の伝統的任侠系、F工業と

背後が反社系組織のT興業との対決を見たいところだが

現実はもっと地味。

これはひとえに、両社の規模の違いなのだ。

かたや多角経営のかたわらダンプ数十台を所有し

県の内外に幅広い顧客を持つF工業。

かたや計画的とはいえ、一度倒産した過去を持ち

数台のダンプで細々と営業するT興業とでは

社会的信用や資金力に大きな差がある。

 

F工業を切ってT興業を入れると言ったら柔らかく聞こえるが

我々の業界でそれは、T興業がF工業に喧嘩を売るということだ。

実際に仕事を盗った盗られたに至らずとも

ピカチューがF社長と会って本題に触れた瞬間から

両社は敵同士になる。

天秤にかけられたF工業は、絶対にT興業を許さない。

業界の体面上、許してはならないのだ。

それがこの業界のワイルドな所である。

 

よその仕事を盗ろうとした時から

仕返しも邪魔もOKの長い戦いが始まり

何だかんだ言っても最終的には資金力のある方が勝って

弱い方が潰されるものだ。

仲間と夢を語っているうちは良くても

いざ実行に移すとなると、T興業がひるむのも無理は無かった。

《続く》


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2 コメント

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Unknown (田舎爺S)
2024-05-27 09:31:03
新シリーズ、面白くなりそうですね。
楽しみにしています。
暑くなってきたので、今朝、扇風機を出しました。
もう20年以上も使っているものですが、
だいぶん草臥れて来たなあ、と自分の姿と重なってしまいました。
返信する
Unknown (みりこん〜田舎爺Sさんへ)
2024-05-27 13:09:21
楽しみにしていただけて嬉しいです。
ありがとうございます。
頑張って情報収集に努めます。

うちも一週間前に扇風機を出しました。
朝晩は寒くても昼間は暑くなりましたね。

草臥れてきた扇風機がご自分の姿と重なる…
田舎爺Sさん、やっぱり詩人!
私も古い物に自分の姿を重ね合わせて
大切にするようにします。
返信する

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