殿は今夜もご乱心

不倫が趣味の夫と暮らす
みりこんでスリリングな毎日をどうぞ!

新犬

2020年12月20日 11時15分57秒 | みりこんぐらし



社員の山本さんの娘一家が、念願のマイホームを手に入れた。

そして犬を飼うという夢を実現。

今どきはネットの譲渡会があるそうで

娘さんはこれを利用し、生後3ヶ月の子犬をもらった。

ダックスとビーグルのミックスである。


ところが、もらってすぐにギブアップ。

子犬があんなに鳴くとは…

子犬があんなに動き回るとは…

子犬があんなにいたずらをするとは…

子犬があんなに粗相をするとは…

つまり子犬があんなに手のかかる生き物だとは

知らなかったのだ。


子犬の粗相で、新しい家が汚されていく。

だからといって檻に閉じ込めたら、クンクン鳴き続ける。

「赤ちゃんより大変」

小学生の子供がいる娘さんは思った。

そこで決断…誰かに譲渡しよう。


娘さんは実家に相談したが、母親に引き取りを断られた。

そこで父親の山本さんを頼る。

が、山本さんは奥さんと別居中なので、アパート暮らし。

飼えるはずもない。


困った山本さんは、うちの長男に相談した。

相談と言えば聞こえはいいが

要するに子犬の引き取りを頼んだのだ。


長男は即座に断わった。

だってうちには10才のパピヨン、パピがいる。

ずっと家族のアイドルとして君臨してきたのに

子犬が来たら、パピの精神的苦痛が大きいと考えたからだ。


あてにしていた長男に断られ、山本さんは困った。

娘は子犬のせいで、ノイローゼ状態。

子犬を楽しみにしていた孫は、いざ飼ってみると無関心。

何とかしなければ、娘の家庭の存続が危ぶまれる。


他の人にもあたってみたが、血統書付きでもなく

小さくて人気の犬種でもなく

何より見た目があんまり可愛くないので

もらい手は無かった。


困り果てた山本さんは、うちの次男に話を持ちかけた。

我が家の兄弟の性格を知り尽くす山本さんは

弟なら断らないと考えたようだ。

何しろ弟は人当たりがいい分、無責任。

目の前の親切を優先して、後のことを考えない。


次男はいとも簡単に了承したと思われる。

というのも我々家族に、このことは秘密だったからだ。

「ちょっと出てくる」

先日の晩、次男はそう言って出かけた。


そして帰った時、彼は右手に大きなカゴをぶら下げていた。

カゴの隙間からは、ゲロらしき物体がダラリと垂れ下がっている。

中には茶色の子犬が入っていた。

長男が山本さんに子犬の引き取りを頼まれた時

皆が反対したので、いきなり連れて帰る作戦だったらしい。


「山へ捨てるしかないとまで言うけん

引き取るしかないじゃないか」

次男はさも良いことをしたように言うが

こいつの魂胆はわかっている。

連れて帰れば、誰かが何とかすると思っているのだ。

ずいぶん前に人からもらった、つがいのウズラもそうだった。

連れて帰るだけで世話は一切せず

エサ1袋買うでもなく、無視。

ウズラは6年だか7年だか生きて

一昨年、相次いで亡くなった。


ともあれ12日17日の夜、我が家に突然子犬がやって来た。

聞きしに勝る、大変ないたずらっ子だ。

お暇を出された理由がわかるような気がする。

家が新築で、仕事をしながら初めて犬を飼うのでは

難しいかもしれない。

このようなワンパク者には、犬に慣れ、ボロ家に住み

生活やしつけを分担できる大人数の家族がふさわしい。


先住民のパピは、想像通り機嫌が悪い。

新人、いや新犬をいじめはしないが

「ふ〜ん、あんたら、そういうつもりだったんだ…」

とでも言いたげな表情。

次男が生まれた時の長男に似ている。

当惑しつつ耐えている様子がフビンなので

パピは今まで通り自由に暮らし

子犬は義母の部屋に組み立てた檻を拠点とした。


大きな檻は、この子の婿入り道具の一つだ。

他にも座布団や毛布、エサとおやつ、おもちゃ

ペットシーツに消臭剤と、豪勢な品揃え。

山本さんの娘の意気込みが伝わる。

最初は誰でも張り切るものよ。


翌日、獣医さんの所へ行く段になって

取り急ぎ名前を付けることになった。

名前を付けておかないと、カルテが作れないからだ。

ワンパクぶりから「ゴジラ」が候補に挙がったが

獣医さんで名前を呼ばれて恥ずかしくないもの…

ということで、義母が提案した「リュウ」に決まった。


獣医さんの話によると、リュウはかなり大きくなるらしい。

楽しみなような、怖いような。
コメント (8)
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