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在日朝鮮学生中央芸術コンクール。各学校の教員たちが注いできたひたむきな努力と指導が結集した、

2017-01-30 | 琉球新報記事紹介
〈民族教育と歌 8〉
音楽教育のさらなる向上へ―総聯音楽通信教育/金理花



総聯音楽通信教育の修了式の様子。(写真提供:李喆雨氏)

今年で第49回目を迎えた在日朝鮮学生中央芸術コンクール。高い技術と芸術性を誇る本大会は演目を披露する学生たちはもちろん、その成長を支える教員の的確な指導なしには決して成り立たない。だが、音楽教育の経てきた歴史を振り返るとき、全国の教員みなが常にこうした指導力を備えていたわけではなかった。こうした背景をみるとき、1970年代に実施された「総聯音楽通信教育」は、民族教育における音楽実践のさらなる発展のために教員の指導力を土台から作り上げようとする着実な取組みとして注目することができる。

総聯音楽通信教育は、各朝鮮学校の音楽教員や歌舞団員を対象に実施された教育研修(2年制が基本)で、当時の音楽教員たちが全般的に音楽理論とりわけ作曲に弱いという状況を背景に、これを改善しようという目的に沿って組織されたものだ。和声学や対位法の出張授業をはじめ、春と冬には登校授業も実施された。修了時には受講者たちが歌謡、童謡、児童洋楽合奏などの課題にそって作曲した作品が披露されるなど、教員たちの音楽の指導力を理論と実践の両面から底上げしようという試みであったといえよう。この通信教育の発足をけん引し、その総責任者もつとめた崔東玉氏は、修了式間際には徹夜で採点をおこなうなど心身両面でこの取組みを支え続けた。

50年代後半に全国の朝鮮学校共通の音楽教科書が編纂されたことを皮切りに、それまで地方によって実施にばらつきがあった音楽教科の問題は徐々に改善されていった。そして70年代、すべての朝鮮学校において音楽教育を正常化するという目標が達成された後、次なる課題として浮上したのは教育の質のさらなる向上であり、そのための取組みの一つとして総聯音楽通信教育が企画されたといえる。研修を経た各地の音楽教員たちはふたたび教育現場へと戻り、よりよい音楽教育を実施するべく奮闘する。こうした営みの蓄積が、今日の民族教育における音楽実践を下支えしてきた。

芸術コンクールの最終日に催される優秀作品発表会は、各地の朝鮮学校生徒たちが一年間の練習をかけて目指す憧れの舞台。それは、各学校の教員たちが注いできたひたむきな努力と指導が結集した、民族教育の大切な足跡なのである。

(東京外国語大学大学院、在日朝鮮人音楽史研究)


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