羽鳥操の日々あれこれ

「からだはいちばん身近な自然」ほんとうにそうなの?自然さと文化のはざ間で何が起こっているのか、語り合ってみたい。

夏の思い出、この豊かさに耐えられるか

2005年08月28日 11時07分45秒 | Weblog
 子供のころの夏の思い出に、行水があります。
 庭にたらいを持ち出し、水を溜め、日向にしばらく置いて、ちょっとだけ温まった水で行水をする。蝉の鳴き声。草や木が放つ夏の匂い。夕方とはいえ、まだまだ暑い。そこに風が風鈴を鳴らしながら吹き込んでくる。
水気をぬぐって、シッカロールを首やわきの下にたたいて、浴衣を着る。毎年夏になる前におばあちゃんから手縫いの浴衣が届けられていて、母が用意してくれている下駄を履くと、準備完了というわけです。
 昭和30年初時、まだまだ日本は戦後でした。
 家の中を見回すと、戦前の暮らしが残っていたし、電気製品などはほとんど数えるほどでした。
 
 さて、それから十八年後の昭和48年(1973)から平成12年(2000)までの産業・運輸・民生部門の最終エネルギーの変化を描いたグラフによると、昭和48年を100とすると、産業が107、運輸が209、民生が207と二倍以上になっています。
 因みに野口三千三先生の『原初生命体としての人間』が三笠書房から出版されたのは、昭和47年(1972)です。当時は、哲学・社会学等々の新進学者を中心に、一部の進歩的文化人の間で密やかにもてはやされた著書でした。平成になってから、再び、著書や野口体操への関心が高まったことと、エネルギー問題とは、因果関係が成り立ちそうです。
 民生部門、つまり私たちの暮らしにかかわるエネルギー消費が、48年当時比べて、二倍以上になったこと。それによって将来の不安が歴然とした数値に表れる時代になったこと。
 もっと驚く数値があります。それは、数年前に群馬県医師会が1000人の五歳児の生活習慣病調査結果です。
 肥満(標準より20%以上重い)82人
 血中コレステロールが高い55人
 動脈硬化の傾向52人
 高血圧の傾向43人
 40年前なら50代・60代になってあらわれた症状が、5歳の幼児のうち5%に現れているという報告です。

 この数値が語るものは「文明の豊かさとは何ぞや」と問いかけていると思うことしきり。
『原初生命体としての人間』が包摂する内容は、この問いへのひとつの答えかもしれないと思う昨今であります。
 
コメント (1)
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