バリ島でケチャダンスを観た。20代前半の頃、TVか何かでこのダンスの存在を知った。半裸の男達の合唱で
チャッ、チャッ、チャッ、チャッ、ケチャ、ケチャ、ケチャ
で始まる、この踊りが不思議で面白いものだと興味を持った。「いつかはバリ島にケチャを聞きに行こう!」とその時思った。二十数年を経てその夢は叶った。
大きな建物の中に、ステージがあり、ベンチのような席が設けてある。観客はざっと200人ぐらい。日本人が半分ぐらいはいたろうか。開始時間になると、まずステージの奥から、
チャッ、チャッ、チャッ、チャッ、ケチャ、ケチャ、ケチャ
という合唱が聞こえてくる。数秒の後、出てきました。白と黒のチェックの腰巻をした半裸の男性合唱団が。両手を掲げ、手のひらをヒラヒラさせ、歌いながら出てきた。小生はこの人たちが歌って踊るだけと思っていたのだが、ちゃんと物語があった。王子やお姫様が出てくる。悪い奴も出てくる。王子を助けるガルーダも出てくる。そういう物語のバックミュージックの役目をこの合唱団は担っていたのだ。一時間ほど、演じた。現地語なので意味は解らなかったが、面白かった。
ケチャが終わった後、引き続いて「サンヒャン・ドゥダリダンス」というのをやった。サンヒャン=神聖、ドゥダリ=天使という意味だそうだ。化粧をした可愛らしい二人の少女が踊るのだが、多少のこころもと無さが、まことに可愛い。特に右側で踊っていた娘は、踊る時にクビだけを左右に動かすのだが、それが機械仕掛けのように、微妙にカク、カク、カクと動くのでいっそう愛らしかった。
また、最後に、燃え上がる焚き火の上で男性が踊る、というか暴れるダンスがあったが、これも迫力があって楽しめた。
総じて、沖縄で観た太鼓の踊りと共通した明るさと楽しさを感じた。こういった“踊り”は陽気で稔り豊かな南国の島でなければ、生まれないものなのかもしれない。