まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

宇野港へ

2019年12月20日 | 旅行記F・中国

12月15日を最後に、四国フェリーの宇野~高松航路が休止となった。瀬戸大橋の通行料金値下げなどの影響で利用客が減少する中、最後まで運航を続けていた四国フェリーが撤退することとなり、109年の歴史に幕を下ろした。ニュースでは最終便の様子として、銅鑼を鳴らし、多くの人たちが船上と桟橋で手を振りあって「ありがとう」と別れを惜しんだり、出ていく船を敬礼で見送る姿を流していた。

宇高航路の休止については、11月に発表された時にこのブログでも触れたが、その中で私は「別に乗りに行く予定はない」としていた。

そんな中、冬の青春18きっぷと有給消化のために12月13日に日帰りでどこかに出かける予定とした。その時は日帰りで中国観音霊場めぐりで福山に行こうかとか、あるいは札所めぐりから離れて名古屋・岐阜の辺りに行こうかとか、はたまた北陸もいいのではということを考えて、時刻表でいくつかの乗り継ぎプランを組んでいた。しかし、休止が決まってから宇高航路を訪ねる人が増えているという記事を見て、いわゆる葬式鉄のようでどうかと思うが、やはり最後に乗りに行くことにした。

私自身思い出を語るほど宇高航路に縁があるわけではなかったが、初めて四国に渡ったのが瀬戸大橋開業にともない廃止される直前のJRの宇高連絡船だったし(その時は高松駅に降りただけでそのまま宇野に戻ったのだが)、せっかくなので乗ってみよう。13日は平日だから混雑もまだましだろう。

朝6時半の大阪駅。平日なので早くも通勤客で混雑している。6時51分発の新快速で姫路に向かうのだが、何やら駅がざわついている。6時頃、茨木駅で人身事故が発生したため、上下両方の運転を見合わせるという。幸い、これから乗る新快速は大阪始発のため、この列車だけは動かすとの案内があった。後の行程には影響無さそうだが、もし東や北に向かうプランだったらぐちゃぐちゃになったことだろう。

神戸線方面のダイヤも乱れる中、ほぼ定刻に姫路に到着。8時01分発の岡山行きに乗り継ぐ。青春18きっぷの時季なので混雑する列車だが、平日のためか運よく座って行くことができた。

宇高航路には、宇野から高松に向かう便に乗ることにする。9時41分発の児島行き各駅停車に乗り、茶屋町に着く。

茶屋町から10時13分発の宇野行きで宇野を目指す。現在は宇野みなと線の愛称があり、朝と夕方以降は岡山からの直通運転があるが、日中は宇野と茶屋町の折り返し運転というローカル区間である。この日乗った車両は国鉄末期に登場した213系で、かつては宇野線から宇高連絡船につなぐ「備讃ライナー」や、瀬戸大橋線の「マリンライナー」に使用された車両である。今は2両単位、ワンマン対応化されて宇野みなと線や赤穂線、伯備線のローカル運用に当たっている。

車内にはさまざまな外国語も飛び交う。宇野の先には今やアートで国際的にも有名になった直島がある。先ほど、瀬戸大橋線の鈍行から茶屋町で乗り継ぐ時、英語の乗り換えアナウンスも「Uno and Naoshima」と流れていたような。

途中駅では待合ベンチに絵が描かれているのを見たり、かつての児島湾干拓事業を紹介するパネルがあったりして、のんびりかつ味わいある一時の後、宇野に到着。今や四国へのアクセスポイントというよりはアートの島への玄関駅と言ってもいいだろう、駅舎含めて周辺もそうした風情である。

次に出る高松行きフェリーは11時50分発で、1時間ほど時間がある。効率よく移動なら次の列車でも間に合うが、それだとぎりぎりの到着である。一方宇高航路は1日5往復しかないので、次の便となると間隔が開きすぎる。宇野の町を少し回るにはちょうどよい時間だろう。

港を見つつぶらつく。宇野港がある玉野市は漫画家・いしいひさいちさんの出身地である。そのために玉野市のキャラクターにはいしいさん描く「ののちゃん」が使われている。そのギャラリー「ののちゃんち」が駅近くにあるので行ってみると、来年3月まで市立図書館・中央公民館に出張展示中とある。

もう数分歩くと玉野市役所があり、向かいの天満屋ハッピータウンなどが入る商業施設の2階に図書館・中央公民館がある。このギャラリースペースを活用しての展示である。

コーナーには「ののちゃんち」や「がんばれタブチくん」などの作品や、昔の単行本、原画などが展示されている。私も何冊か文庫化されたのを持っているが、あのごちゃごちゃした作風が面白い。いしいさんは現在も玉野市(漫画では(たまのの市))の広報に4コマ漫画を連載していて、直近ものでは宇高航路の廃止を取り上げていた。

しばらく見学した後、四国フェリーの高松行き乗り場に向かう。出航までまだまだ時間があるが、乗船を待つ人たちがすでに待合所の中や外にあふれている・・・。
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