まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第7回四国八十八所めぐり~遍路もバスに乗る

2017年02月07日 | 四国八十八ヶ所
昼を回った室戸に到着。およそ6時間バスに揺られて来たからお腹も空いた。体調については大丈夫だろう。

当初の予定では、この先にある道の駅「キラメッセ室戸」に行こうかと思っていた。以前ドライブで訪れた時に鯨料理が美味く、また捕鯨に関する資料館もあったので、室戸に来たらそこまで向かおうと思っていた。しかし行く前にホームページを見ると、道の駅が改修工事中ということで、レストランは2月に入ってから営業再開、捕鯨の資料館は春まで休館となっていた。そのため、その手前で食事をしなければということになった。

バスが到着したのは海の駅「とろむ」。その名前は「むろと」をひっくり返したものだろう。海の駅といっても立派な建物があるわけでもなく、漁港の敷地の一部を活用したような簡素な造りである。観光スポットとしては室戸岬のドルフィンセンターというのがあり、イルカに触れたりすることができるそうだ。ただこういう施設は春や夏が人気のようで、私が訪れたこの日は見学客の姿もほとんどなかった。

それよりも食事ということで、レストランの「ぢばうま八(や)」に入る。元々倉庫かなと思う建物である。メニューを見て「これは」というのはやはりカツオのタタキ、そして鯨の竜田揚げである。太平洋の味、甲乙つけがたいところがあり、ここはカツオのタタキの定食と、鯨の竜田揚げは単品でいただくことに。

ややあって運ばれてきたカツオのタタキ。玉ねぎが上からたっぷりかかっていて見た目はカルパッチョのような感じだが、身も厚く切られていて食べごたえがある。ベースはタレ味だが、一旦取り出して、室戸海洋深層水から作ったという食塩をつけて塩タタキ風にいただくのもよい。

一方の鯨の竜田揚げも歯ごたえがある。後から来る鯨独特の風味も、鯨をいただいているという実感がする。高知県産の米のごはんともよく合う。

この後は隣接する地元の土産物コーナーを回り、安芸行きのバス停がある室戸営業所に向かう。集落との間は防潮堤で仕切られており、この間を抜ける形で昔ながらの家が並ぶ静かな集落に出る。次の安芸行きは14時55分。これで今夜の宿泊地である奈半利までは1時間の乗車である。そのバスは室戸営業所で乗務員が交代するが、先客は1名だけ。こうしたローカルバスも大いに乗ってほしいところだが、地元の人たちも普段の移動はクルマなのだろう。区間にもよるが、バス停そのものは短いところで100mおき、長くても数百メートルおきにあるのだが・・・。

前に歩いた景色だなと思い出すうち、室戸の中心街の入口である室戸に到着。第25番の津照寺の最寄である。ここで一人の巡拝者が乗ってきたが、大きなリュックと菅笠、金剛杖を手にした西洋人の男性である。四国の巡拝者にはこうした外国人も見られるそうで、弘法大師信仰というよりは、日本の風土や日常の姿を体験するプログラムとして人気があるようだ。それにしても、ローカルバスのバス停をきちんと押さえるとは。この後、室戸の市街地を通ったバスは、次の金剛頂寺への上り口にあたる元橋に到着。青年は迷う様子もなく降車ボタンを押し、バス代も釣銭なく普通に料金箱に入れて降りて行った。この様子では日本語も普通に理解しているのだろうし(別にバスの内外に英語表記があるわけでもなく)、日本人ですらバスの料金の支払いはとまどうものだが、手慣れた感じで下車した様子は、四国遍路そのもののリピーターかもしれない。

キラメッセ室戸に到着。果たして捕鯨の資料館は改装工事中で足場が組まれていた。そしてここからも一人の巡拝者が乗ってきた。笈摺姿で頭に手ぬぐいをかぶり、金剛杖も2本持つという出で立ち。これはガチの歩き遍路のように見えるが、そういう人でもバスに乗るところではバスに乗る。キラメッセから乗って来たのは、金剛頂寺から元橋バス停ではなく、反対に奈半利方面に向かう山道を下ったところに当たるからである。

伝統的な町並みが残る吉良川を過ぎる。この辺りは台風の通過も多く、風雨が激しいことでも知られている。その風雨を防ぐために石垣の塀が並ぶとともに、土佐漆喰の壁、そして水切り瓦という庇を持つ家屋が並んでいる。今回ここで途中下車することも考えたが、ひとまず、宿泊地である奈半利まで向かうことにする。奈半利にもそうした町並みがあるそうで、単に宿泊して翌朝早くに出てしまうのでなく、ホテルに入るまでの少しの時間、町歩きをしようということである。

宿泊地であるホテルなはりが目の前にある法恩寺前で、笈摺姿の巡拝者が下車した。この人もこのホテルに泊まるのだろうなと、出口に向かう後姿を見ると、笈摺には「南無阿弥陀仏」の文字。え?四国なら「南無大師遍照金剛」じゃないのか?と目を疑う。まあ、八十八所には阿弥陀如来を本尊とする札所もあるし、幅広い意味での巡拝ルートではあるが、「南無阿弥陀仏」にはちょっと違和感を覚える。大正ドームでのバファローズの試合で、タイガースのユニフォームを着たファンが紛れ込んでいるような感覚である。何を拝むかはその人の自由だし、南無阿弥陀仏を着てはいけないという決まりがあるわけではないのだが・・・。

かく言う私はこの日、白衣も笈摺も来ておらず、金剛杖も袋に閉まったままで、要は普通の旅行者と変わらない。

少し時間があるのでもうしばらくバスに乗り、到着したのはごめん・なはり線の起点である奈半利駅。ここからホテルまで歩いて戻りながら、奈半利の町を少し見てみることに・・・。
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