まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

第31番「花岳寺」~新西国三十三所めぐり・27(大石神社と坂越牡蠣の名店)

2017年02月19日 | 新西国三十三所
花岳寺の山門から南下する。昔の城下町の面影を残す一帯である。

突き当たりに堀と石垣があり、左へ曲がると櫓がある。赤穂城の大手門跡である。赤穂城は、浅野家が松の廊下事件でお家断絶となった後は森家が幕末まで治めたが、明治になって取り壊された。昭和になって少しずつ整備されるようになった。赤穂城には何回か来たことがあるが、最初は小学生の頃、ちょうど大河ドラマ「峠の群像」(緒形拳が大石内蔵助役)をやっていたからか、両親に連れられて来た。その時、大阪城のような天守閣がないのに子ども心にがっかりしたのを覚えている(城跡というのは多くがそういうものだと知るのはもう少し大きくなってからだった)。

大手門をくぐるとまた普通の平地となり、大石神社に向かう。かつて大石家の邸宅があった場所に建つ。赤穂義士の討ち入りの後、地元の人たちが小さな祠を建てて拝んでいたのを、明治になって正式な神社として建てることが許可されたものである。

鳥居をくぐると四十七士の石像が両側から出迎える。その間には「大願成就」の幟が並ぶ。大石神社の一番の御利益とされている。

そして神門に着くと大石内蔵助、主税親子の石像が並び、門をくぐる。この神門は太平洋戦争中に神戸の湊川神社から移されたものである。湊川神社といえば楠木正成を祀る。戦時中、楠木正成、忠臣蔵・・・神社というのは大なり小なりそうなのかもしれないが、この組み合わせは、そちら系の色が濃く出てるなと感じさせる。

また訪れたのが建国記念の日ということで、拝殿では建国祭が行われていた。拝殿の中には協賛会というのか、大石神社のいわゆるシンパの方たちがいるようだが、式典の進行の様子はスピーカーで外にも聴こえる。来賓で兵庫県議会議員や赤穂市議会議員が挨拶していたが、その中には現在の東アジア情勢とか、自衛隊の海外派遣について触れる場面もある。建国記念の日というのは大なり小なりそうなのかもしれないが、大石神社というのは、そちら系の色が濃く出てるなと感じさせる。

こちらにも宝物館や木像館があるので見学する。先の花岳寺と比べると、四十七士を神として祀っているからか、討ち入りについてよりフォーカスされているなと感じる。

木像館に入る。浅野内匠頭、そして四十七士それぞれの木像というよりは彫刻が並ぶ。それぞれに、こうした場面や情景を想像して作成したという説明書がある。数少ない史料からその人間性まで表現しようというのだからなかなかのものである。

この後で大石家の庭園を見て、大石神社を後にする。城跡内を歩き、次に向かったのが歴史博物館。館内撮影禁止のために画像はないが、まずは赤穂といえば・・・ということで製塩の歴史が紹介される。瀬戸内が製塩に適していたことの説明だが、塩をなめてもいないのに、口の中がしょっぱく感じるのは妙である。昔ながらの製塩は、今は歴史体験の中でしか接することができないのだが・・・。同じく2階は赤穂義士関係の紹介で、その中で歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」に関する展示が目立つ。今、その舞台とされて設定されている「太平記」を読んでいるが、高師直についてボロカスに書かれているのが、忠臣蔵の吉良上野介に(同じ高家として)見事にリンクしているのにうなるばかりである。いや逆か。いずれにしても、そこに目をつけて歌舞伎の話にしたのはすごいなと思う。

9時すぎに播州赤穂駅に着き、博物館を出たのが11時15分頃。少し早いが昼食とする。再び大手門に出て、駅方面に向かう途中に一軒の店がある。店の前に行列ではなく人だかりがしているのは、順番待ちの紙に名前を書いてから待っている人たちである。店の名前は「かましま」。赤穂の牡蠣で知られる坂越の網元である。坂越に水産会社の拠点はあるが、数年前に赤穂の観光客で賑わう通りに店を出している。

並ぶのが嫌いなので、普段であれば人だかりを見ただけでパスするところである。ただこの日は、遠くまで来たのだし、この後も夕方までは予定が空いているので、待つことにした。そうする間にも、駅からの歩きやクルマでの来店で、待ち客は増えていく。表には、これまで取材で来た関西のテレビ番組絡みの色紙や写真が並ぶ。結構広く知られているようだ。

相当長く待つから別にどこかに行ってもいいのだろうが、何が起こるかもわからないので店の前にいる。読もうとしてなかなか進んでいなかった「太平記」を持っていてよかった。これでページ数が結構稼げた。結局、私の名前が呼ばれて店に入ったのは、順番待ちの紙に名前を書いてから2時間後。うーん、これって、先ほど播州赤穂駅に降り立って、花岳寺、赤穂城跡、大石神社、そして博物館までのルートに要した時間と変わらない。それほどまでに人気なのかなと思う。それなら、駅から先に直接「かましま」に来て順番取りしてからルートを回ったほうが効率が良かったりして。

入口横のミニカウンターに通される。メニューにはさまざまな牡蠣料理が並び迷うところだが、店のおすすめは「忠臣蔵御膳」。生牡蠣1個、焼き牡蠣2個、カキフライ3個。これにオイカバ丼(オイスターに蒲焼きのたれをまぶした丼)、牡蠣入りの吸い物。牡蠣好きにとっては一通りいただけるセットである。坂越の牡蠣は身が大きく、シーズンだからかより美味しくいただく。焼き牡蠣がもう少し焼きが強いほうがよかったが。

これと合わせたのが「坂越ロール」。牡蠣入りのお好み焼きである。薄い生地で目玉焼きと牡蠣をくるむ焼き方である。おやつ感覚で食べる感じだ。

牡蠣そのものは本場の味で良かった。ただ、シーズンとは言え「2時間並ぶ」ということに見合うものだったかと聞かれれば、うーんと考えてしまう。ちなみに「かましま」は年中牡蠣が食べられる店としても知られているようだ。夏なんかはどういうメニューになるのだろうか。岩牡蠣とかになるのかな。

食事を逐えると14時を回っていた。夕方に大阪に戻る必要があり、赤穂線から新快速に乗り継ぐ。大雪の影響は滋賀県内でもあるようで、敦賀行きが米原止めに変更されていた。

この冬は当初は暖冬の予報ではなかったかと思う。ただ雪が降るところは例年の数倍と極端に降る。やはりこれも異常気象なのかなと思うのである・・・・。
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