まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

大井川鐵道 アプト式列車に乗る

2016年09月01日 | 旅行記D・東海北陸
近鉄特急の車両で大井川に沿って北上して到着した千頭。ここから先は井川線のトロッコ列車に乗り換える。SLに乗るのは午後であり、まずはこの先の終点まで行くことにする。単に折り返すだけでなく、途中下車も可能である。

同線の始発列車である9時12分発の接岨峡温泉行き。先頭が運転台つきの客車で、5両つながっている。ディーゼル機関車が最後尾につく。後から列車を押し上げ、戻る時はブレーキの役割も果たす。女性車掌に、「真ん中の車両のほうが窓が大きく開いていて涼しいですよ」と案内される。朝の掛川や金谷に比べれば標高も上がっているが、日差しを受けると暑い。上3分の2が開いた窓の車両に乗る。乗客もさほど多くなく、1両あたり2~3組いる程度でゆったり座れる。車掌が各車両の扉を手で閉めて回り、フォーンが鳴って出発する。

千頭から先の井川線は、元々水力発電所建設の資材や人員輸送のために敷かれた中部電力の専用線である。今は大井川鐵道の路線として運行されているが、施設そのものは今でも中部電力のものだという。線路の幅は一般的な狭軌だが、元々は軽便鉄道、ナローゲージで建設されたため、カーブがきつかったり、トンネルや車両も小ぶりである。ただそれが独特の風情を出している。

大井川は進行右手ということで、日差しが気になるがそちらに座る。時速20~30キロくらい、いやそれより遅いだろうか、ゆったりした走りである。次の川根両国を過ぎると、本格的な山岳路線となる。日常では乗ることのない形式の列車の車窓を楽しむ。

元々が山奥の工事用路線であり、人口が多いわけではない。駅はあり、集落も見えるのだが、日常生活で井川線を利用する人というのはほとんどいないだろう。

奥泉に到着。ここから乗ってくる客がそこそこいる。この人たちは地元客というよりは、夏休みの帰省や旅行で来た感じで、せっかくなので井川線にちょこっと乗ってみるというところである。折り返しで奥泉に戻る、あるいは行った先にクルマで先回りするとか。

アプトいちしろに着く。ここから次の長島ダムまでは、日本で唯一のアプト式区間である。2本のレールの間に歯車があり、機関車は歯車を噛みながら上り下りする。井川線は非電化路線だが、この区間だけ電化されており、ディーゼル機関車の後に電気機関車がついて客車を押し上げる。長島ダムの建設にともない周囲が水没することになったが、大井川鐵道は新線を建設して存続する道を選んだ。その結果急勾配のルートとなったが、この時に採用されたのがアプト式である。ループ線を敷くと距離が長くなることから採用されたそうである。開業は1990年で、アプトいちしろ駅には「25周年」の看板もある。ここで機関車をつける作業を多くの乗客が見に来る。そして90パーミルの勾配に挑む。1キロ走って90メートル上る計算だ。あっという間に、先ほどいたアプトいちしろの辺りが小さくなり、右手に巨大なダムが出現した。高さ109メートル、幅308メートルという、見た感じ「要塞」である。

ここで電気機関車を切り離し、さらに進む。今度はダム湖が広がる。朝から線路沿いに見た大井川は砂利ばかりが目立っていたが、ここまで来ると別の表情である。そのダム湖にかかるレインボーブリッジを渡り、奥大井湖上に到着。鉄橋とダム湖の眺めがよいところで、奥泉から乗ってきた人を含めて半数以上の客が下車した。この列車が接岨峡温泉から折り返して来るとまた乗るのだろう。

10時22分、終点の接岨峡温泉に到着。井川線は本来この先の井川が終着駅だが、2014年に土砂災害があり、接岨峡温泉から先が運休となっている。復旧は来年1月の予定だそうだ。

折り返しまで30分ほどあり、駅から坂を下って集落に出る。千頭までバスがあり、トロッコ列車なら1時間以上のところ、30分で走るそうだ。ここはその名の通り温泉もあるし、パンフレットによれば奥大井湖上までのウォーキングコースもある。一列車遅らせてこれらを楽しもうかとも思ったが、接岨峡温泉についてはそのまま折り返しに乗ることにした。

奥大井湖上で先ほど下車した人たちを乗せ、長島ダムまで来た。ここで今度は前に電気機関車がつくが、その作業の間に荷物を持って列車を降りた。途中下車のポイントは長島ダムということで・・・・。
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