まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

大井川鐵道 SLかわね路号に乗る

2016年09月03日 | 旅行記D・東海北陸
朝から大井川鉄道の本線と井川線を往復。長島ダムでの途中下車では惜しいこともしたが、近鉄特急とトロッコ列車の乗車には満足した。それほど混雑もしておらず、のんびり列車に揺られるのはよい。特にトロッコは秘境を行く感じがして、もっと観光客の注目を集めてもよいのになと思った。そして最後はSLで締める。最近の大井川鐵道では同じSLでも「きかんしゃトーマス号」のほうで注目されていることが多いそうだが、私が乗りたいのは、昔ながらの、現実世界を走ってきたSLが牽引する旧型客車である。

その千頭まで列車が戻ると・・・朝とは全く違って賑やか。というか騒がしい。中でも目立つのは子ども連れ。訪れた8月19日は、平日ではあるが学校は夏休みの最中。千頭では6月11日~10月10日まで駅構内で「トーマスフェア」というのをやっていて、トーマス号やその仲間たちと触れ合えるというイベントである。外から機関車を見る分には無料だが、エリアに入るには小学生以上500円とある。それでも、ホーム上、駅の待合室には子ども連れであふれていて、駅の隣の建物2階にある休憩・飲食ゾーンは家族連れでびっしり。走り回ったりグズッたりする子どもの声と、それを叱る親の声。とても一人旅の人間がいられる場所ではない。

駅周辺にも食堂はあるが、混雑しているようだし、メニューを見てももう一つそそるものがない。昼食がまだだったが、結局は駅スタンドの立ち食いそばと、川根茶のソフトクリームというもの。前々日の日帰り四国八十八所めぐりでは昼食抜きになったし、前日の伊良湖岬も名物料理というほどでもない。このところ昼食が雑になっている。

気を取り直してホームに戻る。昼に新金谷から走ってきたSLかわね路号が停車している。本日の出動はC11 190号機。トーマス号の運転もあり、新金谷から走ってきたそのままで停車している。こうした写真なども撮りつつ時間を過ごす。改めて、こうした昔の姿を今に伝えるというのは貴重なことだと感じる。

14時前になると、14時10分発のトーマス号の乗車案内がされる。駅構内や駅周辺にいた子ども連れが次々とホームに向かう。旅行会社の旗を持った添乗員に連れられる一行もある。なかなか維持が大変だとは聞いているが、トーマス号(日によってはジェームス号)の集客はすごいものだと感心する。先ほどC11を見て「昔の姿を今に伝えるのは」と書いたが、今度はトーマス号を見て、ファンタジーの姿を現実にするのも思い切った策なだと感心する。

私の乗るかわね路号の発車はまだ先だが、私も再び改札内に入り、ホームの先端まで行く。ここで、出発するトーマス号の後姿を見る。客車はどれも大入り満員である。子どもたちにとっては、夏休みのよい思い出になることだろう。

さて、ホームに残ったC11だが、まだホームの車止めを向いたまま止まっている。これを金谷方面に持ってこなければならない。少し早めにホームに行ったのは、その一連の作業を見るということもある。まず列車全体がいったんバックした後、C11を切り離す。そして前に出て、今度はポイントを渡り、隣の線路をバックで走行する。そして駅を出た先で停車。手動でポイントが変わり、今度は転車台に向かう。都度、前進したり後退したりという作業に、見物客の中からは「結構手間がかかるもんだね」「こりゃ大変だ」という声があがる。

そして転車台。「あの回すやつって、機械で動くのかしら」という話し声の中、C11が所定の位置に収まると、5~6人がかりでレバーを押して転車台を回す。「あら、手でやるんだ~」という驚いた声をする。そして再び先ほどのところまで戻り、最後はバックで入線してくる。そして連結。「1回1回こんなことやってたら大変だろうね」、まさしくそんな感じだし、1回の入れ替えに何人の人が登場するかというところでもある。だから蒸気機関車のこの形が、両方に運転台を持つディーゼル機関車や電気機関車に代わり、そして車両そのものの両方に運転台がつく気動車や電車に代わっていったのも確かである。

C11が連結されて、カメラを構える人も多いが、都市部の駅で撮り鉄が罵声・奇声を発してバトルを繰り広げるような感じではなく、静かなものである。そういえば子どもの姿もそれほど見かけない。やはりトーマス号のほうに人気が行き、これは「ただのSL」という見方なのかもしれない。まあ、昔を知っているわけではないから(私もそうだが)無理もないのかな。もっとも、新金谷からの行きがかわね路号で、帰りがトーマス号という行程だったのかもしれない。

トーマス号が子どもたちに人気なら、C11が牽引するかわね路号は「大きいお友達」に人気というところか。いや、「大きいお友達」というのは私のようなごく一部だけで、大多数は「鉄道ファンというわけではないが、SL列車ってなかなか乗ることもないから観光の一つで」という感じの客である。

・・・ということで、乗るまでの記述が長かったのだが、旧型客車のオハ35に座る。7両の客車という堂々としたもので、ボックスにいい感じで埋まっていく。私のボックスには他の相客もなく、一人で占領する形になった。満席になるほどでもなく、1グループに1ボックスという形で席を割り当てた感じである。

ここは、旅のお供としてこういうものを持ち込む(「大きいお友達」にはあるまじきことだが・・・)。居酒屋で楽しむのもよいが、旅に出た先の景色、この日なら大井川沿いを眺めながらというのがよい。SL列車に乗ることのデメリットを一つ挙げるとすれば、「自分が乗っている列車、機関車の姿を見ることができない」ということで、これは乗り鉄の宿命で仕方がないこと。ならば呑み鉄という要素があっても・・・となる。

14時58分に出発。どの窓も大きく開け放たれての発車である。蒸気機関車で、そんなに窓を開けていたらトンネルの中に入ったら煤まみれになるのでは・・・と心配するが、案内放送では「窓から手や顔は出さないでください」とは言うものの。「窓を閉めろ」とは言わない。大井川鐵道のSLで使われる石炭は煙や煤の成分が少ないという話を聞いたことがある。たまのイベントではなく毎日走るものだから、沿線にも配慮しているということか。このため、トンネルの中も「少し煙るかな」という程度で突き抜けてしまう。

そんなことから、トンネルの中の車内の様子をカメラに収めると、昔の「夜汽車」という感じに見えなくもない。今はボックス席の夜行列車というのもなくなったことであるが、こういうのもどこかで復活運転されないかなとと思う。

景色は行きに見たのと同じであるが、SLが走るということで見物客の姿も多い。川沿いに露天風呂のある川根温泉では、入浴客が手を振っているのが見える。私も以前、入浴しながら鉄橋を渡るSLを見送って手を振ったことを思い出す。今回、川根温泉での立ち寄り入浴も考えたが、井川線にも乗るためにパスした形となった。ただそう言えば、今回の旅では翌日も含めてさまざまな温泉地を通過する形となったが、温泉には全然入らなかった。旅の後に会った友人とその話をしたら「何ともったいない」と言われたことである。

車掌が各車両を回り、ハーモニカの生演奏も披露する。これもまた旅の趣である。

家山では行き違いのために停車。金谷方面から来たのは、朝乗って来た近鉄特急の車両である。SLと近鉄特急の組み合わせというのもうならせるものである。

千頭からの1時間あまりはあっという間に過ぎ、新金谷に到着。SLはここが終点で、多くの客は改札口に向かうが、JRで金谷まで来た客はもう一駅乗り継ぎとなる。その接続列車として登場したのが、南海ズームカーである。この日、この形式に乗ることがあるかどうかというところだったが、一駅5分足らずだが乗車することができた。

金谷に到着。コインロッカーからキャリーバッグを引っ張り出し、東海道線に乗り継ぐ。この日の夜は静岡泊まりということで移動する・・・。
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