静岡県をめぐる旅の最終日である20日は、遠江、駿河ときて残るもう一つの伊豆に向かう。その伊豆半島もどのように回ろうかということでいろいろ考えたのだが、とある乗り物が決め手になったかもしれない。
そのことはまた後々出てくるとして・・・とエラソーなことを言っているが、今回に限らず、静岡県は行っているようで行けていない県である。前にも触れたが、遠江の中心である浜松は駅の改札口から出たことすらないし、静岡も駅前の居酒屋しか知らない(以前に、大道芸の祭典が行われていたのを少し見た程度)。本当ならこうしたところをゆっくり見物するべきなのだろうが、いろいろと動き回りたいというのが私の旅の習性なのかもしれない。
この日は5時28分発の熱海行きで出発する。普段からこういう時間に出発することはあるので、早起きは別にどうということはない。駅のほうはもっと早起きで、東京行きのサンライズ瀬戸・出雲が4時38分に停車することもあって早くからコンコースも開いている。この日、静岡にもう一度戻るということもあり、キャリーバッグをコインロッカーに入れてから、青春18きっぷに改札印をもらう。熱海行きはロングシート車だが、ポツポツと乗車がある。
清水を過ぎ、由比のあたりからは駿河湾が見える。東海道線から海が見える数少ないスポットである。車窓としては結構好きなところだ。
富士川を渡る。富士山の姿も見るが、残念ながら裾のほうしか見えない。山頂は雲で覆われている。これは夏だから仕方のないことだと思う。新幹線で東京に向かう時でも、冬のような空気が澄んだ時は、頂上に雪をかぶったあの姿を見ることができるが、夏の富士というのを見た記憶がほとんどない。昔からそういうものだろう。いろんな絵に描かれている富士山の絵が決まって雪をかぶっているのも、そういう季節にしか頂上を見ることができないからではないだろうか。
静岡からちょうど1時間の6時28分に三島に到着し、ここで下車する。下車したのは、この後で伊豆箱根鉄道の駿豆線に乗るためである。中伊豆の中心にあたる修善寺を目指すということである。
ただ、今回はそれに加えて、三島というところそのものを見物の対象にした・・・というのがある。ここも新幹線での通過、あるいは伊豆箱根鉄道との乗換駅というくらいの接点しかなく、街並みを歩いたことがない。
その認識が変わったのが、司馬遼太郎のエッセイ「裾野の水、三島一泊二日の記」を読んでからのことである(読んだのは、文春文庫『以下、無用のことながら』所収のもの)。「富士の白雪 朝日でとけて とけて流れて 三島にそそぐ」という宴席での唄にもあるように、富士山からの水の恵みを豊富に受けているところである。夏の暑い時期、そうした「水の町」というのを聞くだけでも涼しげだし、司馬遼太郎が感心するというのはよほどのものかと思う。それなら朝早い時間のほうがいいかなと思い、朝5時半の出発となった。
その湧水も、三島駅から離れたエリアというわけではなく、町中、それこそ駅前にもある。
駅からすぐの楽寿園という庭園の南に水路がある。源兵衛川と呼び、自然の川というよりは、湧水を農業や生活用水として使うために造られた用水路である。源兵衛川で遊ぶ昔の子どもたちのパネルもある。ただ、生活環境の変化でこの川もいつしか環境破壊が目につくようになった。そこで町の人たちがせせらぎを取り戻すとして整備した。今は水の町としての三島のシンボルと言える。
新幹線の駅から歩いて5分でこのような涼しげなスポットがあるとは、これまで気づかなかった町の美しさである。地元の人の憩いの場として。
そんな水の町の中心に鎮座するのが三嶋大社である。古くから伊豆の国の一ノ宮として信仰を集めていたが、源頼朝が源氏の再興を祈願し、それが叶ったことでより一層信仰を集めた。朝の参拝ということで境内に人は少なかったが、大社の人たちが境内を掃き清めている光景を見たり、清々しい感じがする。このところ札所めぐりをやっていることもあり、どちらかといえば神社より寺院に肩入れしているのだが、三嶋大社の感じはよかった。もっとも、初詣や他の行事の時に来れば、混雑のために違った感想を持つのかもしれないが。
三嶋大社で折り返しとして駅に戻る。途中の水上通りには「三島水辺の文学碑」として、水路に沿って文学碑が並ぶ。十返舎一九の『東海道中膝栗毛』もあるし、司馬遼太郎の一節もある。他には井上靖、若山牧水、太宰治など。その地を題材としたり、あるいは間接的にでも取り上げた文学碑というのはそう簡単に揃うものではなく、それだけ三島の湧水、水の町というのが、文学者の心に響くものがあると感じさせる。
文学碑の終点である白滝公園も、湧水をベースに自然を残した趣のあるスポットである。これもいいなと思う。駅前を少し歩いただけだが、その中でこの町のよさが印象に残った。実際に住むとなるとここならではの不便や短所も目の当たりにするのだろうが、静岡県ではあるが首都圏の空気も少し入ってくるところもプラスではないかと思う。
朝の三島散歩を終えて、これから乗るのは伊豆箱根鉄道。目的地は修善寺温泉というよりは、その手前の「世界遺産」・・・・。
そのことはまた後々出てくるとして・・・とエラソーなことを言っているが、今回に限らず、静岡県は行っているようで行けていない県である。前にも触れたが、遠江の中心である浜松は駅の改札口から出たことすらないし、静岡も駅前の居酒屋しか知らない(以前に、大道芸の祭典が行われていたのを少し見た程度)。本当ならこうしたところをゆっくり見物するべきなのだろうが、いろいろと動き回りたいというのが私の旅の習性なのかもしれない。
この日は5時28分発の熱海行きで出発する。普段からこういう時間に出発することはあるので、早起きは別にどうということはない。駅のほうはもっと早起きで、東京行きのサンライズ瀬戸・出雲が4時38分に停車することもあって早くからコンコースも開いている。この日、静岡にもう一度戻るということもあり、キャリーバッグをコインロッカーに入れてから、青春18きっぷに改札印をもらう。熱海行きはロングシート車だが、ポツポツと乗車がある。
清水を過ぎ、由比のあたりからは駿河湾が見える。東海道線から海が見える数少ないスポットである。車窓としては結構好きなところだ。
富士川を渡る。富士山の姿も見るが、残念ながら裾のほうしか見えない。山頂は雲で覆われている。これは夏だから仕方のないことだと思う。新幹線で東京に向かう時でも、冬のような空気が澄んだ時は、頂上に雪をかぶったあの姿を見ることができるが、夏の富士というのを見た記憶がほとんどない。昔からそういうものだろう。いろんな絵に描かれている富士山の絵が決まって雪をかぶっているのも、そういう季節にしか頂上を見ることができないからではないだろうか。
静岡からちょうど1時間の6時28分に三島に到着し、ここで下車する。下車したのは、この後で伊豆箱根鉄道の駿豆線に乗るためである。中伊豆の中心にあたる修善寺を目指すということである。
ただ、今回はそれに加えて、三島というところそのものを見物の対象にした・・・というのがある。ここも新幹線での通過、あるいは伊豆箱根鉄道との乗換駅というくらいの接点しかなく、街並みを歩いたことがない。
その認識が変わったのが、司馬遼太郎のエッセイ「裾野の水、三島一泊二日の記」を読んでからのことである(読んだのは、文春文庫『以下、無用のことながら』所収のもの)。「富士の白雪 朝日でとけて とけて流れて 三島にそそぐ」という宴席での唄にもあるように、富士山からの水の恵みを豊富に受けているところである。夏の暑い時期、そうした「水の町」というのを聞くだけでも涼しげだし、司馬遼太郎が感心するというのはよほどのものかと思う。それなら朝早い時間のほうがいいかなと思い、朝5時半の出発となった。
その湧水も、三島駅から離れたエリアというわけではなく、町中、それこそ駅前にもある。
駅からすぐの楽寿園という庭園の南に水路がある。源兵衛川と呼び、自然の川というよりは、湧水を農業や生活用水として使うために造られた用水路である。源兵衛川で遊ぶ昔の子どもたちのパネルもある。ただ、生活環境の変化でこの川もいつしか環境破壊が目につくようになった。そこで町の人たちがせせらぎを取り戻すとして整備した。今は水の町としての三島のシンボルと言える。
新幹線の駅から歩いて5分でこのような涼しげなスポットがあるとは、これまで気づかなかった町の美しさである。地元の人の憩いの場として。
そんな水の町の中心に鎮座するのが三嶋大社である。古くから伊豆の国の一ノ宮として信仰を集めていたが、源頼朝が源氏の再興を祈願し、それが叶ったことでより一層信仰を集めた。朝の参拝ということで境内に人は少なかったが、大社の人たちが境内を掃き清めている光景を見たり、清々しい感じがする。このところ札所めぐりをやっていることもあり、どちらかといえば神社より寺院に肩入れしているのだが、三嶋大社の感じはよかった。もっとも、初詣や他の行事の時に来れば、混雑のために違った感想を持つのかもしれないが。
三嶋大社で折り返しとして駅に戻る。途中の水上通りには「三島水辺の文学碑」として、水路に沿って文学碑が並ぶ。十返舎一九の『東海道中膝栗毛』もあるし、司馬遼太郎の一節もある。他には井上靖、若山牧水、太宰治など。その地を題材としたり、あるいは間接的にでも取り上げた文学碑というのはそう簡単に揃うものではなく、それだけ三島の湧水、水の町というのが、文学者の心に響くものがあると感じさせる。
文学碑の終点である白滝公園も、湧水をベースに自然を残した趣のあるスポットである。これもいいなと思う。駅前を少し歩いただけだが、その中でこの町のよさが印象に残った。実際に住むとなるとここならではの不便や短所も目の当たりにするのだろうが、静岡県ではあるが首都圏の空気も少し入ってくるところもプラスではないかと思う。
朝の三島散歩を終えて、これから乗るのは伊豆箱根鉄道。目的地は修善寺温泉というよりは、その手前の「世界遺産」・・・・。