まつなる的雑文~光輝く明日に向かえ

まつなる兄さんのよしなしごと、旅歩き、野球、寺社巡りを書きます。頼りなく豊かなこの国に、何を賭け、何を夢見よう?

大井川の近鉄特急

2016年08月30日 | 旅行記D・東海北陸
静岡県をめぐる夏旅の2日目となる19日朝、テレビをつけるとニュースはオリンピックのメダルラッシュに沸いていた。

その中でも特に歓喜に沸いていたのは、バドミントン女子ダブルスの高橋礼華・松友美佐紀選手の「タカマツペア」の金メダル。最終セットも相手に終盤までリードされてからの逆転勝ちである。

一方で「まさか」の逆転負けとなったのが、レスリングの吉田沙保里選手。銀メダルでもすごいのだが、インタビューで「ごめんなさい」と号泣していたのが印象的。金メダルは確実、ここまで相手にポイントを与えない圧勝で勝ち進んだのに、勝負には「絶対」というものはなく、負ける時はほんの一瞬の隙からでも負けるものだなという感じだった。

ただ、タカマツペアも吉田選手も、日々プレッシャーのかかる中での対戦を潜り抜けている。呑気な旅のビジネスホテルのベッドに寝転がって、翌朝に結果だけテレビで観ている私がどうのこうの言えたことではない。この後1階で朝食を取りながら、心の中で拍手する。

・・・話を私の旅程に移すと、19日は大井川鐵道をメインとする。始発の金谷は掛川から東に2つ目の駅で、前日に掛川に泊まったのは、金谷から早い時間の列車に乗るというのもある。今回の旅のプランニングは、大井川鐵道をどう乗るかというのも大きかった。時刻表をひっくり返していろんな旅程を考えた中で決めたのが昨日からの動きである。SL、トロッコ、アプト式、元私鉄特急・・・いろんな楽しみ方ができる。またSLも何種類かあるし、運転日の関係もある。その中で出したのが、朝の時間に金谷から千頭に移動し、トロッコ&アプト式列車で接岨峡温泉まで向かう(終点の井川でないのは後述)。折り返して、千頭からSLに乗るものである。これも、大井川鐵道で人気の「きかんしゃトーマス号」ではなく、昔ながらの蒸気機関車が牽引する列車である。千頭からのトロッコ&アプト式列車の始発がゆったりなので、ホテルで五輪のニュースを観ながら朝食を取るくらいの時間ができた(といっても、このステーションホテルの朝食が6時半からだったから。一般的な7時開始なら間に合わない)。

掛川7時14分発の熱海行きで出発。通勤の時間帯で、6両のロングシートがほどよく埋まる。金谷までは2駅だが15分かかる。小夜の中山の峠のある山がちなところである。茶畑も広がる。

この辺りの景色を見ると、その昔寝台列車で迎える朝を思い出す。15年以上前のことだが、当時広島勤務で、会社の組合の青年部の役をしていたのだが、年に何回か、組合の会議で東京に行くことがあった。組合からは規定の交通費が出て、どのような手段で行くかは本人任せ。いろんな行き方をしたのだが、広島から頻繁に乗っていたのが、当時走っていた寝台列車の「富士・はやぶさ(さくら・はやぶさ)」。列車で一晩過ごすと朝に静岡県を走る。当時はロビーカーもあったので、寝台を抜け出してくつろいだこともあった。その時に見た茶畑や行き違う貨物列車というのが、写真には残していないが記憶に残っている。今ではもう体験できないことである。

金谷に到着。通勤で下車する人もそれなりにいる。隣接する大井川鐵道の金谷駅に行き、キャリーバッグをコインロッカーに入れる。ここから接岨峡温泉まで往復だが、「すまた・せっそ周遊きっぷ」を購入する。2日間有効で3900円で、価格だけ見れば結構高いように思うが、単純に途中下車なしで往復するよりも安い。地方の私鉄は経営の厳しい路線が多く、どうしても運賃を割高に設定せざるを得ない。こうしたフリーきっぷは、観光などの利用客誘致のものである。

まず乗るのは7時48分発の千頭行き。そしてホームにいるこの車両は、私の地元・近鉄南大阪線&吉野線を走る16000系である。一部ワンマン仕様に改造されているが、ほぼ原型をとどめている。千頭までの車両がどれに当たるか楽しみだったのだが、これが来た。

観光客と地元客が半々くらいの感じで出発。新金谷で機関車や客車の姿を見て、大井川沿いに出る。昔は「越すに越されぬ大井川」と呼ばれ、水量も多かったそうだが、今は上流にダムができていることもあり、水が少ししか流れていない。その分砂利が目立つし、中には河原にクルマを乗り入れてキャンプをする人もいる。まあ、雨も降らないし大丈夫だとは思うが、大水で川の中洲に取り残されるという事故もあるので、ちょっと不安にも思う。夏は川の事故のニュースも結構聞く。

信楽焼のタヌキの置物が出迎える神尾、昔ながらの駅舎を構える家山など、面白い駅にも出会う。家山では列車行き違いとなり、千頭から来たのは元南海高野線のズームカー。近鉄と南海が大井川べりですれ違うのも面白い。近鉄、南海とも元はそれぞれ吉野山、高野山を目指す線を走っており、それが山合を目指す大井川鐵道においても違和感がないのがよい。最近のステンレス製の車両だとなかなかこうはいかないだろう。

大井川が進行右手から左手に移る。河川敷は相変わらず砂利のほうが目立つ。その中に塩郷の吊り橋が見える。長さ220メートル、高さ11メートルというもので、線路の上も通る。人が渡っている写真をネットで見たが、安全柵もなく、下は板が渡してあるだけ。生活には必要なのかもしれないが、高所がダメな私には渡るのはとても無理。愛称が「恋金橋」というそうだが、いくら恋愛や金運にご利益があるといっても勘弁してほしい。

金谷から一時間あまり、終点の千頭に到着。SLにはまだ早い時間だし、客の姿も少ない。

ここからホームが変わり、接岨峡温泉行きの列車に乗り換える。近鉄特急の次はトロッコ列車にて・・・・。
コメント