大相撲初場所の中日、この日も国技館まで観戦に出かける。今日のところは午前中別用があったので、午後からの観戦である。予め指定席券(といっても上のほうの指定席Cというやつだが)を買っていたので、余裕を持って場所入りできる。実によく晴れ渡った青空に、力士たちの四股名が描かれた幟がよく映えている。
この時間ならまだ館内も空いているということで、例によって(?)荷物だけ座席に置いて、土俵近くまで入る。やはり上段の指定席に比べて、迫力あるしね。土俵溜まりや桟敷席にやや遠慮がちに座っている人は、「とりあえず席の主が来るまで」前のほうで観ようという人たちだ。ちょうど三段目の取組が行われているところだったが、やはり自分の地縁・血縁のある力士が出てくると掛け声が飛ぶ。その力士の一番を観たところで土俵溜まりを後にする人もいる。相撲の幕下以下というのは、野球でいうところのマイナーリーグと似たようなところがあるが、数少ない(7番)という機会で確実に勝つことで番付があがる。一番一番の勝負は真剣そのものだ。野球にもマイナーリーグのファンがいるように、こうした三段目力士の一番一番に熱心に声援を送る人がいる。
さて今日は中日ということで、新弟子の出世披露が行われた。今場所は幕内の優勝争いよりも、ツワモノ揃いの新弟子たちに注目が集まっていたような気がする。6人が出世披露されたが、注目は新弟子史上最重量(何と233キロ!)の「上から読んでも下から読んでも」山本山=前列中央)、高校生横綱の李(四股名の読みが一字というのは初めてとか。呼び出しや行司は呼びにくいだろうな=前列左)、そして、世界選手権無差別級チャンピオンでロシア出身の阿覧(=後列右)という、将来有望な新弟子たちである。彼らが関取に昇進するのもそう遠くない話か。そうそう、幕下にはスピード関取も間近という市原というのもいるな。
一度外に出ると、ちょうど幕内力士たちが続々と場所入りする時間ということか、多くの観客で賑わっている。今場所ここまで7戦全勝の幕内最年長35歳の玉春日や、20歳小結の稀勢の里などの姿を見る。入場口に5歳くらいの男の子がいたのだが、力士の姿を見かけるたびに「玉春日関がんばれー」「豊真将関がんばってくださーい」と、四股名と顔が一致するようでかわいい声をかけている。ちょうど、興味のあることはどんどん憶える年頃だろう(それが子どもによっては鉄道の駅名だったりクルマの種類だったりするのだ)。周りの大人のほうが「あの力士誰だっけ」ということを言っていたのが、その子の掛け声で四股名を思い出すというくらいのものだ。
さて、館内に戻ると十両の取組であり、さすがにこの頃になると、桟敷や土俵溜まりにおじゃましていた人たちは席の主が来たり、あるいは場内整理係に注意されて席を離れる。十両以上となると照明が明るくなり、まわしの色や行司の装束もカラフルになり、それとともに館内の熱気も高まってくる。そうしたファンの声援が、幕下以下とは違うレベルの高い一番を盛り上げる・・・と思いきや、立ち合いの注文相撲で歓声がため息に変わり、変化で勝った力士の中にはちょっと肩身を狭そうにしている者も。
館内には外国人の観客も多い。もちろん日本人が多いのだが、結構本場所の興行、観客動員には外国人の力によるところが多いのかな、と変に考えてしまう。土日は確かに満員御礼だが、平日の興行はガラガラと聞いているし。外国人旅行客なら、曜日は関係ないしね。ただ、一口に外国人といってもその多くは西洋人。これだけモンゴル勢が日本の大相撲の上位にいるのに、モンゴルからとおぼしき観客はどのくらいいるのだろうかという気がする。まあ、日本人と顔つきが似ているから私が気づいていないだけなのかもしれないが。ただ、モンゴル人の収入がどのくらいあるかわからないが、モンゴルから日本に来るだけでも一大事だろう。ましてや、日本人ですら「高い」というイメージのある大相撲観戦のチケットを買おうとすれば、そう気軽に大挙してモンゴル力士をナマで応援しよう・・・というわけにはいかないか。ならば一度本当の「モンゴル場所」をやるか。
などということを考えるうち、そのモンゴル出身の横綱・朝青龍の土俵入りも終え、ここまで来ると幕内の勝負は進行が早く感じられる。次々に力士が登場するうち、気づけば前半終了。全勝の玉春日にも熱戦の末、土がついた。中日にして全勝がいなくなるというのもあまり聞かない。
歓声が大きかったのが、安馬と琴欧洲の取組だったかな。安馬が立ち合い左に飛んで勝利を収める。
そして結びの一番。朝青龍に稀勢の里。何と懸賞が36本。仕切り中にその垂れ幕一本一本の企業名やCFが読まれるのだが、それが長い。例えば永谷園が3本あったらそれぞれに「味ひとすじ・お茶づけ海苔の永谷園」「さけ茶づけの永谷園」「梅干茶づけの永谷園」と分けてよまないといけないし、タマホームになると「着工棟数2年連続日本一のタマホーム」「いい家建てようタマホーム」とか、NTTドコモなら「ドコモは家族を応援中」「ファミ割で家族仲良し」とか、懸賞垂れ幕ごとに言わなければならない。かといって早口にするわけにもいかず、懸賞を全て読みあげるともう「時間いっぱい」である。
熱戦が期待されたが、横綱があっさりと勝利。先ほどの懸賞は結局全て横綱の手に落ちたのであった。
これで中日を終えて1敗のトップが朝青龍、玉乃島、玉春日。2敗が千代大海、豊ノ島、高見盛。その他の大関、三役はその後方。こりゃ、今場所もあっさり横綱が優勝やな・・・・。