マーシュランド/アルベルト・ロドリゲス監督
スペイン映画。連続少女殺人事件を追う二人の刑事と、事件を取り巻く片田舎のまちの異常な姿を描いた作品。スペインの郊外の農村の風景が、実に乾いた映像で浮かび上がってくる。警察は、いわば正義の味方で捜査をしているはずなんだが、どこか影のある二人組で、少し陽気な年上の方は、捜査中に人を殴っても平気というような、ヤクザな側面も持っている。そうして、なんだか少し妙な具合にミステリアスな展開になっていくのだった。
演出のやり方は、ほぼ科白以外での説明が省かれており、状況を見て判断していくしかない。展開を追うだけでは意味の分からない場面などもあるようで、伏線がちゃんと消化されているのかも疑わしい場面などもあった(僕の見落としかもしれないが)。もちろんそれなりに意味があるのだろうが、明確にそのようなものなのか、という自信が無いまま観終わった感じである。それでも一定のなかなかよくできている感が漂っていて、面白くない訳では無い。映画としてこれでいいのかどうかは僕には分らないが…。ホラー映画ではないが、恐ろしげな映画である。
カメラの視点から外れたところからいきなり暴力が始まったりするが、観ている方としては、なんで気付かないのだろうというような、広そうな場所(人物の死角とは思えない)からいきなり殴られたりする場面がある。そういうのはちょっと気にはなったが、まあ、そういうものという割り切りは必要かもしれない。残酷描写もあるので、心臓の悪い人は気を付けるように。
最終的には自分で判断していい仕掛けになっているが、恐らく単純に謎解きが流れのままなされた訳では無いのだろう。スペインがかかえている歴史的な闇のようなものがあって、人々はそれを引きずりながら苦しめられている。内戦というものはそういうことかもしれないし、暮らしというものはそういうものなのかもしれない。
それにしても、日常に暴力があるというのは、やっぱり暗くなるものだ。もっと距離を置いて平和にやりたいものだとつくづく思う。映画的にはいいのかもしれないが、なんとなくやりきれない思いの残る映画だった。