マッチスティック・メン/リドリー・スコット監督
主人公の男は、異常な潔癖症でありながら、非常に巧妙な詐欺師として生計をたてている。相棒のなんとなく信用のできない男と組んで仕事をしている様子だ(相手はまだ未熟で考えが足りず、ちょっと仕事が雑なのだ)。普段は小さな詐欺の積み重ねで、ちょっとばかりのお金をため込んでいた。しかしながら次のヤマは少しばかり大きいようで、カモる金額がでかい。そういう中神経症の薬を誤って流しに捨ててしまい、その先生は何故か夜逃げしていない。新しい精神科医を紹介してもらい、面談をする中で、別れた妻との間に会ったことのない娘がいるらしいことと知り、娘の夏休みを利用して会うことになる。娘との一時的な関係が深まる中、精神的な安定が訪れるような感覚はあったが、時間の都合で大きなヤマの詐欺を実行する必要ができてしまい、娘を巻き込んで犯行に及ぶことになったのだったが……。
最後にそれなりに大きなどんでん返しが起こるのがミソの物語と言える。それまでは、強度の潔癖症の主人公の男の苦悩と、娘をめぐるダラダラした展開が続いている。犯罪ものには違いないが、なにかリドリー・スコット的な仕掛けがあるようには感じられない。ちょっと不思議な感覚の物語とも言えて、しかし主人公を演じるニコラス・ケイジが、後の何か変な男路線を全うする演技にも見えて(そもそもそんな人ではあるが)、そういうところがみたてとしての映画の立ち位置のようなものがあるのかもしれない。なんとなく地味ではあるが……。
何か大きなひっくり返り方だとはいえるけれど、終わり方としては見事に収斂している。そもそも地道な詐欺師の道を歩んでいる男には、決定的に詐欺師には向かない性格のようなものがあるようだ。だからこそ変に信用を勝ち取ることができたのかもしれないのだが、そもそも地道な詐欺師の職業としての道があるとは、幻想なのであろう。
ずっと気になっていたが、何故か未見のままだったので観たわけだが、別段観なくても何の支障もないようなお話だった。世の中そんなものなのだろう。