全員死刑/小林勇貴監督
実話が元になっているクレイジー作品。いや、クレイジー人間劇。もともと凶暴性のあるヤクザの家庭のようだけど、借金の為に隣人の一家を殺して金を奪おうということになる。その殺しは、この家族の弟の役割になってしまう。そうして弟はけなげにも一人一人殺していくのだったが、その狂気に自分の理性も飛んで行ってしまうようになるのだった。
首を絞めてもなかなか死ななかったり、頭を銃で撃ってもなかなか死ななかったり、とにかく殺人が気持ち悪い。しかし一度殺しかけているんで、一所懸命殺さなければならない。皆実際は殺すのなんて嫌だから、一番下っ端の弟にばかりお鉢は回ってくる。弟は興奮状態を保って殺しを遂行していくのだった。
狂っている以上に、出てくる人が異常に頭が悪い感じだ。死体はくるんで重しをつけて川に流すわけだが、本当にそんなんで見つからないものか、観ていて感心できない。やる前から破綻している計画性と、そうして皆前科があるので、後が無い。やばいことにマヒしていて、今やっている悪事を楽しもうとしているかのようだ。結末として皆死刑になるのは当然だという流れを映像化したということなんだろう。でも一番人を殺してしまった弟が、凶悪ながらもなんとなく可哀そうな気もする。妙な映画なのである。
正直に言ってそんなに成功した作品ではない気もするが、この狂気を描くということに専念しているとも考えられる。こんな風に人が無意味に殺されることが現実に起こる。我々は、そういうことに無頓着すぎるのではないか。いや、その原因を掘り下げて考えてもいないわけだが。社会の底辺というか、特殊な人々は、たぶん今も生活している。本当に人まで殺してしまような人はさすがに少ないだろうが(そうしても意味が無いし)、ちょっとしたはずみでも、このような事態に陥ることはあるのではないか。意味が無く無駄に残酷に。人間の愚かさというのは、浅はかで空しいものである。