危険なメソッド/デヴィッド・クローネンバーグ監督
割合に有名なフロイトとユングの話なのだが、改めて映画で観ると、そうだったのか! という感じだろうか。患者としてやってきた女性と恋仲になるユングだが、そういう情交と恋愛を通じて治療することで、フロイトと決別してしまうという一連の流れを描き出している。今ではちょっと考えられない時代背景があるようで、まあ精神病が治ったから良かったものの、やっぱり問題の多いユングなのではないか。今となってはフロイトもだいぶ怪しいことは分かっているけど、いまだに精神医学の父のようなことになっていたりして困る。いや、僕は特に困らないが、一般の人は勘違いしたままなのではないか。でも伝説なんだからいいのか。
さらにクローネンバーグ監督作品だから観たのに、ちょっと拍子抜けするくらいひねりの無い展開かもしれない。実話を味付けするのはあまり得意では無いのだろうか。ともかく普通に失敗作と言えるだろう。まったく面白くない訳では無いだろうが、ほとんど面白くはなっていない。キーラ・ナイトレイの演技が賞賛されているようだが、ちょっとわざとらしいだけのような気もする。そんなんで賞賛しては、よくないのではないか。美人だから冒険の演技というのは、そんなにたいしたことなのか。美人だから顔を崩した演技をすることが、特に苦痛なんだろうか。それはそれで、美人では無い女優に失礼ではないか。
大らかな昔を懐かしむという人向けなのか、やっぱりセックスがショッキングだと考えた監督の考えを深読みするのかは自由だが、それがそんなに現代的にウケないことくらいは、分からなかったのだろうか。確かに禁断の愛かもしれないけれど、なんとなくさばさばしてて、かえって僕には不思議な感じがした。恋愛なんだから、もう少し執着してドロドロして欲しかった。向こうの人は、メンツが生活の邪魔をするのかもしれない。本音と建前が大切な西洋人らしいという事だけは、見て取れる作品なのかもしれない。やっぱり恋愛は、昔っから日本の方が自由だな、と思います(まあ、昔にもよるけど)。