カワセミ側溝から

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

魅力的なキャラクター

2009-01-26 | 読書
魅力的なキャラクター
DEATH NOTE/原作大場つぐみ・作画小畑健(集英社)

 ずいぶん前からネット上のパロディ漫画としては知っていた。しかし紙に書いてある漫画としては一度として見たことはなかった。古本サイトを覗いていたら、全巻揃(12巻)が随分安かった(忘れたけど、1500円もしない。その後解説本まで買ってしまう)のでついクリックしてしまった。実は僕が激しく読みたいというのではなく、次男坊の雰囲気が初代エルになんとなく似ているところがあって、買ってくると家族が喜ぶんじゃないかと考えたからである。そういう思いが伝わってかどうかは不明だが、息子たちはすぐに読んでしまった。映画との違い(最近偶然にテレビ放映された。またyou Tubeでアニメなどもチェックしている様子だ)などを確認したのだというような言い訳じみたことを言っているが、彼らも楽しんで読んだのではないかとは考えている。
 単純に感想を言うと、確かに良くできたストーリーと魅力的な画力の融合したすぐれた作品だと思う。後で知ったのだが、僕がネットで知ったということでも分かるように、熱狂的に支持を集めた大人気作品で、ほとんど大ブームを巻き起こしたらしいことも頷ける内容の濃さである。そういう意味では歴史に残る見事な漫画だということはすでに定着した事実であろう。何より設定が荒唐無稽ながら見事であり、類似のものが出ても、そう簡単にオリジナルを越えられない完成度がある。製作に携わった者たちは、まさにしてやったりの気分だったのではないだろうか。
 しかしながらそういう具合に十分に感心しながら読んだにせよ、僕はレイ・ペンバー殺害から一気に興味を失ったのであった。それは倫理的な価値観の問題だけでなく、ストーリーに矛盾というか無理が多くなって、突っ込みどころがどんどん出てきたためだと思われる。この物語の面白いところは、少なからずともキラに対する共感じみたところが物語を引っ張る大きな原動力になっている気がする。そういう読者の共感を、少なくとも僕個人の共感を裏切る行為がペンバー殺しで、キラはこの行為で本当に人間としての道をある意味で裏切ったようにも感じる。そしておそらく結末はキラの死であることもこの時点で間違いなく確定したことになり、僕の中の興味が薄れていったのだろうと思う。
 まあ、しかし、このような舞台装置をつくらない限り、死の恐怖と闘いながらキラを追い詰めるというサスペンスが盛り上がらないという考え方もあったのだろう。人間を踏み外したキラだからこそ、追い詰める価値のある存在なのだという理屈も考えられよう。もっともその前に、すでに踏み外しているはずだという考え方も成り立つ。このストーリーの結末はほとんど確定しているにせよ、どのようなトリックで追い詰めるのかという興味は尽きない。または製作側も、そのことを十分承知の上で物語を構築していく自信があったということなのだろう。それはそれで後半も実に見事に展開していくのだから、作者はクリエイターとして十分勝利していると思う。単に僕が気に入らないということにすぎないだけの話なのである。
 この物語を知った者には、自分がこのノートを手にした場合のことを同時に考えることにもなるのではないかと思われる。普通は個人的な恨みに使用するケースがほとんどだと思われるし、キラのような方法を考え付く人間もいるだろうとも思われる。人間として殺人という重圧に耐えられるのかという問題は僕には分からない。しかし、この漫画のようにいくら捜査するものが優れていたとしても、現実にこの方法が可能だとすると、ほとんどつかまることは考えられない。そうであればやはり実行に移す人がいるだろうことは十分に考えられる。死神の退屈しのぎになるかどうかは不明だが、人間には殺人の欲求があるのではないかということを見事に証明した作品であるということも言えるだろう。もちろん先のことまで考えて実行しない人もいるのかもしれないが、ほとんどの人は試しに書いてみるぐらいのことはしそうだとも思う。恐ろしいが面白い。読者の多くがリュークに変貌した瞬間で、そしてこの作品は多くの支持を集めたのだろう。

 ところで、ノートなんだからいつかは文字で一杯になるはずなんだが…、というのも最初から気になった疑問である。リュークがリンゴを食べると体内の中でも食べたリンゴの姿が見えるのではないかとも思ったりした。また、排泄はどうするのか。
 こういうのは気になりだせばいろいろ出てくる。つまり漫画のリアリティは、その世界で成り立つというリアリティの確立にかかっている。そういうものなんだという了解ができない人間は(つまり僕のような)、ただの融通が利かない人間だという証明なっているのかもしれない(反省)。
コメント
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