カワセミ側溝から(旧続・中岳龍頭望)

好きな言葉は「のこのこ」。好きなラジオ中継「相撲」。ちょっと苦手「煮た南瓜」。影響受けやすいけど、すぐ忘れます。

夢のない国

2008-10-15 | 時事

 今年は4人の日本人がノーベル賞を受賞したという。益川さんという人のインタビューを聞く限りでは、ずいぶん時季外れな受賞になったようだけれど、素直におめでたいこととして割り切れない姿は、人間として素晴らしいと思った。自分の業績を利用した人間の業績が認められての連鎖的な受賞ということであるようだ。4人がそろってご高齢で、なおかつかなり過去の業績であるということからも、ある程度は共通して言えることなのかもしれない。しかしながら、科学は巨人の肩に乗って、つまり一定の積み重ねの上に成し遂げられているともいえるわけで、その功績が少ないということでは無い。認められるか、そうでないかという問題であるだけのことで、本当に凄すぎて誰も理解できずに埋もれている科学者だっていることだろうとも思う。生きているうちに認められたということは、大変に素晴らしい栄誉ではないだろうか。
 さてしかし、日本人の受賞で日本という国が世界に認められたという論調の報道には、かなり違和感がある。そんな事を言っている国が一体どこにあるというのだろうか。米国や中国などが今回の日本人の受賞で、基礎科学での素晴らしい国であるという認識をしたというようなことがあったり、またそのように感じた人がどれぐらいいたのかということを考えてみると、限りなくゼロなのではないか。いや、外国のことで関心がないという話ではない。たとえ4人もの日本人がノーベル賞を取ったのですよと教えたとしても、それがどの程度凄い国としてのインパクトを与えうるものなのかということさえ疑問を感じる。うへえ、こんなに小さな国から4人も出たんですか、などと感心してくれるような人は、よっぽどの日本人以外居そうに無いではないか。
 ノーベル賞ではないが、メジャーリーグで日本人選手が活躍することで、日本人が認められているというような事をいう人がいるけれど、たぶんそんなことは少しもないことだと思う。ひょっとするとイチローは米国人の誇りだとまでは思わないまでも(いや、そのように考えている人は必ずいるだろう)、普通にメジャーリーガーとして凄いということの方が一般的な米国人の認識ではなかろうかと思われる。何故なら活躍しているのはあくまで米国内でのことだから。プエルトリコとかベネズエラだとかその他もろもろの国の選手もたくさんいるけれど、そうした人がいくら活躍したからといって、米国人がそれらの国を凄い国だと考えることは少ないだろう。米国に来たから凄い選手なのであって、国の業績なのでは無いからである。たまたま凄い才能をもった人が、その国の出身にすぎないということなのだろうと思う。
 ノーベル賞に戻ると、4人というけれど、そういう訳で2人はおそらく米国の業績であるということも言えると思う。日本では育つことのできなかった人だからこそ米国で業績を伸ばすことができた(実際には受賞した業績の時期が米国での活動と重ならない人もいるようだが)ようにも見えるし、受賞した本人だってそのように物事をとらえている可能性がある。いまさら日本人といわれたって、内心では迷惑なのではないか。
 また、わざわざ英語で書かれた論文が評価されたということも言えるので、基準の前にそのようなアクションがないものでなければ選考に上がらない現実を思うと、実に狭い社会の判断であるように思えなくもない。このような賞を受けずとも、どうしても原文で取り組みたいと思えるような研究であれば、フランス語であれ日本語であれ、世界中で評価を受けるに違いないからである。
 実際に日本で優れた研究がなされていると、諸外国からも研究者は集まっている。現実として、科学の分野でなくとも日本が優れているものであれば、外国人であっても多くの人が日本にやってきて、熱心に研究がおこなわれているのである。それこそが日本が誇るべきものであって、すでに尊敬を勝ち取っていると言えるのではないか。
 日本人が凄いのだと自画自賛する姿は、ノーベル賞を取らないと自国の業績さえ分からないのが日本人だといっているようで、本当に情けない国であると宣伝しているようなものではないか。
 まあ特に科学の分野に日本が冷たい国であることは、この国を動かしている多くの人が文系であるように思われることでも分かることなのかもしれない。日本というのは本当にバランスが偏っていて、報道においてもこのような偏重を生むほどに、科学離れし過ぎている社会なのかもしれない。子供が科学に憧れをもたないのは、まともに評価できる大人が育たなかったということに尽きるようにも思える。今後も日本人のノーベル賞の受賞者が増加傾向になるということは、ますます難しいということを表している現象なのかもしれない。
コメント
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