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「三河物語 第三 下」の解読 6


(裏の畑のユリの花)

近頃、カレーが残ると、昼に必ずカレーうどんを作るように決めていて、今日のお昼もカレーうどんを作った。コツが判ってきて、この頃はけっこう上手に出来るようになったと、自負している。

ネットで、話題に出来そうな古文書を探していて、「疫病神の詫び状」という古文書を見付けた。これを8月の講座の、話題の古文書にしようと、今日解読した。

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「三河物語 第三 下」の解読を続ける。

その外、若き衆、家老どもは、鳥居四郎左衛門、本田肥後守、加藤宗之丞、同九郎次郎、米津小大夫、大久保新蔵、河井やっと兵衛、杉之原なっと兵衛、榊原摂津守、成瀬藤蔵、石河半三郎、夏目次郎左衛門、河井又五郎、松山久内、賀藤源四郎、松平弥右衛門殿、何れもこの外に、この通りの衆、数多候らえども、記すに及ばず。

然る処に、信玄は犀ヶ崖にて、首どもを実検して、そのまま、陣とらせ給う所に、大久保七郎右衛門が申上げるは、かように弱々としては、弥々(いよいよ)敵方気負い申すべし。然れば、諸手(しょて)の鉄砲をお集めなされ給え。我等が召し連れて、夜打ちを仕らんと申し上げれば、尤も、と御にて、諸手を集め申すとも、出る者もなし。漸々(ようよう)諸手よりして、鉄砲が二、三十挺ばかり出るを、我が手前の鉄砲に相加えて、百挺ばかり召し連れて、犀ヶ崖へ行きて、つるべで、敵陣へ打ち込みければ、
※ 諚(じょう)➜ 貴人の命令。仰せ。おことば。
※ つるべ打ち(つるべうち)➜ 弓矢や火縄銃などにおいて、交代で続けざまに打つこと。
(「三河物語 第三 下」つづく)

読書:「呪詛の文 御広敷用人 大奥記録 11」 上田秀人 著
読書:「用心棒たちの危機 はぐれ長屋の用心棒 43」 鳥羽亮 著
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「三河物語 第三 下」の解読 5



(散歩道のネムノキ花盛り)

夕方、女房と散歩に出る。快晴、午後四時というのに、まだ日が高く暑い。日陰を求めながら歩くが、なかなか見つからない。日陰に入れば、まだ涼しいのだが、日差しはもう真夏である。

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「三河物語 第三 下」の解読を続ける。

家康、御動転(どうてん)なく、御小姓衆を討たせじと思し召して、乗り廻し給いて、真ん丸に成りて退かせ給う。馬にて御供申す衆は、菅沼藤蔵、三宅弥次兵衛、その外は降り立ちければ、馬に離れて徒歩(かち)立ちなり。中にも、大久保新八郎を悲しませられて、小栗忠蔵に馬を一つ取れと仰せければ、相心得申すとて、頓(やが)て取りて乗りける。忠蔵も手負いけるが、その馬を新十郎に貸すまじきか、と仰せられければ、忠蔵御意より早く御請けを申して、跳んで降り、新十郎に乗せて、我は腿(もも)を鑓にて突かれけるが、痛まずして御馬に付き奉りて、御城まで御供を申す。上様よりも御先へ逃げ入りて、上様は御打ち死になされたると、偽りを申す処へ、何事無く入らせ給えば、かの者どもは、こゝかしこへ、また逃げ隠れけり。
※ 動転(どうてん)➜ 非常に驚いて平静を失うこと。驚きあわてること。

上方浪人に、中河土源兄弟は、覚えの者と申しつるが、浜松へは、え退(の)かずして、懸河へ逃げてゆく。水野下野殿は今切(いまぎれ)を越して逃げ給う。山田平一郎は岡崎まで逃げ行きて、次郎三郎様の御前にて、大殿様は御打ち死にを成され候と申し上げ候処へ、上様は何事無く御城へ入らせられ成され候。諸大名も一人も何事無く引き退(の)け申すなり。但し、信長よりの御加勢、平出と、御手前の衆には、青木又四郎殿、中根平左衛門ばかり、物主(ものぬし)は打ち死に仕り候。
※ 物主(ものぬし)➜ 戦陣での部隊の長。
(「三河物語 第三 下」つづく)

読書:「孤影の誓い 問答無用 5」 稲葉稔 著  
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「三河物語 第三 下」の解読 4


(庭のキキョウが一輪咲いた)

高齢者へのコロナワクチン接種が進んで、陽性の内で、高齢者の割合が少しづつ減って来たという。これが続いて、朗報になってほしいものだ。

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「三河物語 第三 下」の解読を続ける。

敵を祝田へ半分過ぎも引き下ろさせて、切ってかからせ給うならば、易々(やすやす)と切りかたせ給わんものを、逸(はや)り過ぎて、早くかからせ給いし故に、信玄度々の陣に遭(あ)い付け給えば、魚鱗(ぎょりん)に備えを立て、引き受けさせ給う。家康は鶴翼(かくよく)に立てさせ給えば、少勢という、手薄く見えたり。信玄は、まず、郷人ばらを出(いだ)させ給いて、礫(つぶて)を打たせ給う。然るとは申せども、家康衆は、面も振らず(しころ)をかたぶけて、切って掛かる程に、早や一、二手切り崩しければ、また入れかえてかかるを切り崩して、信玄の旗本まで切り付けるに、信玄の旗本より、真っ黒に、閧(とき)をあげて、切って掛かる程に、纔(わずか)八千の人数なれば、三万余の大敵に、骨身を砕きてせり合いたれば、信玄の旗本に切り返されて、敗軍をする。
※ かたす ➜ 片付ける。
※ 魚鱗(ぎょりん)➜ 魚鱗の陣。中心が前方に張り出し両翼が後退した陣形。「△」の形に兵を配する。底辺の中心に大将を配置して、そちらを後ろ側として敵に対する。
※ 鶴翼(かくよく)➜ 鶴翼の陣。両翼を前方に張り出し、「V」の形を取る陣形。魚鱗の陣と並んで非常によく使われた陣形である。中心に大将を配置し、敵が両翼の間に入ってくると同時にそれを閉じることで包囲・殲滅するのが目的。
※ 郷人ばら(きょうじんばら)➜ 村人。さとびと。「ばら」は、人を表す語に付いて、複数の意を表す。多く同輩以下に対して、敬意を欠いた場合の表現。
※ 面も振らず(めんもふらず)➜ わきめもふらず、命も惜しまず、ここを最後と攻め戦う。
※ 錣(しころ)➜ 兜の鉢の左右・後方につけて垂らし、首から襟の防御とするもの。
※ 真っ黒に(まっくろに)➜ いちずになること。また、そのさま。
(「三河物語 第三 下」つづく)

読書:「獣散る刻 無言殺剣 6」 鈴木英治 著
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「三河物語 第三 下」の解読 3


(庭のマンリョウの花と実)

マンリョウの実は去年のもので、花は今年の蕾である。実がなかなか永持ちするものである。庭のサザンカの根元あるレンギョウの赤い実は、5月6日に紹介したが。その花が咲くようである。

夜、6月の班長会。

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「三河物語 第三 下」の解読を続ける。

然る間、信玄は、城を取りてより、東三河に、奥平道文と、菅沼伊豆守と、同新三郎、これらは、長篠、作手(つくで)、段峰(だみね)。これらが山家三方を持たるが、逆心(ぎゃくしん)して信玄に付く。菅沼次郎右衛門と、同新八郎は、御味方を申して、逆心は無し。然る間、信玄は、上方(かみがた)に御手を取る衆の多く有りければ、三河へ出て、それより東美濃へ出、それより切って登らんとて、味方ヶ原へ押し上げて、井の谷へ入り、長篠へ出んとて、祝田(ほうだ)へ引き下ろさんとしける処に、
※ 手を取る(てをとる)➜ 親愛の気持ちなどを表すために他人の手を握る。

元亀三年壬申(1572)、十二月廿二日、家康浜松より、三里に及びて打ち出させ給いて、御合戦をなさるべくと仰せければ、各々年寄どもの申し上げるは、今日の御合戦、如何に御座あるべく候や。敵の人数を見奉るに、三万余と見申し候。その上、信玄は老武者と申す。度々の合戦に慣れたる人なり。御味方はわずか八千の内外に御座有るべくやと申し上げれば、その儀は何ともあれ、多勢にて、我が屋敷の背戸を踏み切りて通らんに、内に有りながら出て咎(とが)めざる者やあらん。負くればとて、出て咎むべし。その如く、我国を踏み切りて通るに、多勢なりというて、などか出て咎めざらんや。莵に角(とにかく)合戦をせずしては置くまじき。陣は多勢無勢にはよるべからず。天道次第と仰せければ、各々是非に及ばずとて、押し寄せけり。
※ 背戸(せと)➜ 家の後ろの方。裏手。
※ 天道(てんどう)➜ 天地を主宰する神。天帝。上帝。また、その神の意思。天地間の万般を決定し、さからうことのできない絶対的な意思。
(「三河物語 第三 下」つづく)

読書:「半化粧 知らぬが半兵衛手控帖 3」 藤井邦夫 著
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「三河物語 第三 下」の解読 2


(散歩道のギボウシの花)

よく見る花なのだが、名前がどうしても思い出せない。そんな花の一つである。名前を思い出すよすがとして、その名前の由来を調べてみた。

「ギボウシ」は擬宝珠(ぎぼうしゅ)の転訛であるが、これはこの植物のつぼみ、または包葉に包まれた若い花序が擬宝珠に似ることに由来する。

多分、そんな由来だろうとは想像していたが、これで名前を思い出すことが出来るだろう。この花を見れば、橋の欄干などについている「擬宝珠」を連想して、あの欄干のネギ坊主、あれは何という名前だっけ‥‥。思い出せなければ、「ギボウシ」は「ネギ坊主」と呼べばよい。似たような名前である。 

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「三河物語 第三 下」の解読を続ける。

上様は御笑わせ給いて、その儀はまず置け。勘七郎、汝(なんじ)あやかりと云うにはあらず。見付の台より追い立てられて来たる間、急息(せいき)のせき上げたる処に、定めて汝は鉄砲を中程に手をかけて、火皿の下を持ちて放したるか。御意の如く、左様に仕り申す、と申し上げれば、左様に有るべし。中程に手をかけて、火皿の下を持ちて放せば、引息にては、筒先が上り、出る息にては、筒先が下るものなり。殊更、常の時と、追い立てられし時の、息は変わるものにてある間、外れたるも道理なり。汝が臆病と云う処にはあらず。何時も左様なる時は、諸手ながら、引きが手の下を持ちて打つものなり。何と息を荒くつきたりとも、筒先は狂わざるものにて有るぞ。以来はその心持ち有るべしと御意なり。
※ あやかり(れい)➜ 事実が明白でないこと。また、そのさま。
※ 急息(せいき)➜ 非常に急いで、息をきらすこと。息をきらして。あえぎあえぎに。
※ 引息(ひくいき)➜ 吸う息。

然る間、遠江の小侍どもが、信玄へ退きけるが、この度、供(とも)して来たりて、天方、向笠、市の宮、各和の古構い(ふるがまい)、その外の古城(ふるじろ)、又は屋敷構いを取り立て持つ。各和の構いを持ちたる小侍どもを、久野と懸河と出合いて、攻め落して、多く討ち取りたれば、その外の所をば、残らず明けたり。天方ばかり、久野弾正、その外、寄り合いの小侍どもが持ちけるを、味方ヶ原の合戦の後、天方の城を攻めさせ給いて、本城ばかりにして引き退かせ給えば、その後、明けて退く。

信玄は、見付の台より、国府(こう)台島へ押し上げて陣取り、それより、二俣の城を攻めける。城には、青木又四郎、中根平左衛門、その外籠る。信玄は乗り落とさんと仰げれば、山方三郎兵衛と馬場美濃守両人、駈け廻りてみて、いや/\この城は土井高くして、草うら近し。とても無理責めには成るまじく、竹束をもって詰めよせて、水の手を取り給う程ならば、頓(やが)て落城有るべしと申しければ、その儀ならば責めよとて、日夜油断なく、鉦(かね)太皷を打って、(閧)をあげて責めけり。
※ 閧(とき)➜ ときのこえ。戦場で士気を高めるためにあげる声。

城は、西は天龍河、東は小河有り。水の手は岩にて、岸高き崖作りにして、車を掛けて水をくむ。天龍河の押し付けなれば、水もこと凄まじき態(てい)なるに、大綱(おおづな)をもって、筏(いかだ)を組みて、上よりも流し掛け/\、何程ともきりもなく重ねて、水の手をとる。釣瓶(つるべ)縄を切るほどに、ならずして城を渡す。
(「三河物語 第三 下」つづく)

読書:「花たまご情話 南蛮おたね夢料理4」 倉阪鬼一郎 著
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「三河物語 第三 下」の解読 1



(散歩道のユーコミス・アウトゥムナリス )

一見パイナップルのように見える花である。変わった花で、初めて見た。

昨日で、「水濃徃方」を読み終えた。思いの外、日数を要し、2ヶ月半も掛ってしまった。今日からは、OE氏から依頼されている「三河物語」の第三下を読むことにする。この底本は明治になって活字化された本である。家康の遠州での活躍が主となるが、どこで終りにするか、まだ決めていない。

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「三河物語 第三 下」の解読を始める。

  三河物語 第三下
然る所に、元亀三年壬申の年、信玄より申し越されけるは、天龍の河を限(きり)で切り取らせ給え。河東は某(それがし)が切り取り申すべしと、相定め申す処に、大井河限(ぎ)りと仰せ候儀は、一円に心得申さず。然れば、手出しを仕るべく候とて、申(さる)の年、信玄は遠江へ御出馬有りて、木原、西島に陣取り給えば、浜松よりもかけ出して、見付の原へ出て、木原、西島を見る所に、敵方これを見て、押っ取り/\、乗り駈けければ、各々申しけるは、見付の町に火をかけて退くものならば、敵方、案内を知るべからずとて、火をかけて退(の)きけるに、案の外(あんのほか)に、案内をよく知りて、上の台へ駈けあげて乗り付ける程に、頓(やが)て一言の坂の下り立てにて、乗り付けるに、梅津は、しきり乗り付けられてならざれば、岩石をこそ乗り下しける。
※ 押っ取り/\(おっとり/\)➜ 押っ取り刀。急な出来事で、刀を腰に差す暇もなく、手に持ったままであること。急いで駆けつけることの形容に用いる。
※ 案の外(あんのほか)➜ 思いも及ばないこと。予想外。

その時、大久保勘七郎はとって帰して、鉄砲を打ちけるに、一、二間にて打ち外す。その時、上様の御状(諚)には、勘七郎は何として打ち外して有るが、と仰せられける時、その儀にて御座候。都筑(つづき)藤一郎が弓をもちて罷り有るによって、それを力(ちから)と仕り候て、放し申しつる。纔(わずか)一、二間ならでは御座有るまじき。定めて(くすり)はかゝり申すべく、兎角(とかく)と申す内に、我等が臆病ゆえに、打ち外し申したると申し上げければ、藤一申すは、勘七郎が立ち止(とど)まりて、打ち申すゆえに、我等は了簡(りょうけん)なくして罷(まか)りありつると申しければ、
※ 御諚(ごじょう)➜ 貴人の命令。仰せ。おことば。
※ 薬(くすり)➜ 火薬。
※ 了簡(りょうけん)➜ よく考えること。よく考えて判断すること。思慮。分別。

兄の大久保次右衛門が申すは、藤一、左様に御取り合わせ申さるぞ。御身を力とせずんば、せがれが何とて立ち止(とど)まらんや。方々の故に有りつるぞと申せば、御方の弓弓懸(ゆがけ)を外し給うを見て、我も馬弓懸を外したると申せば、藤一申すは、次右、左様に話し、坂の降り口にて、御馬の馬弓懸を外したるに心付き、我も弓懸を外したと申せば、
※ 取り合わせ(とりあわせ)➜ 調子を合わせる。うまくとりつくろう。
※ 弓懸(ゆがけ)➜ 弓を引くための道具。鹿革製の手袋状のもので、右手にはめ、弦から右手親指を保護するために使う。
(「三河物語 第三 下」つづく)

読書:「おれたちの仇討 はぐれ長屋の用心棒 42」 鳥羽亮 著
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「水濃徃方」の解読 77


(散歩道のルドベキア)

お昼頃から雷が鳴り、近くへ落ちたような雷鳴に驚き、パソコンを切って、座敷で寝転がって、外光を頼りに本を読んでいたら、そのまま昼寝になってしまった。昼寝から覚めたら、雨は上がっていた。

その後、掛川の娘が、えまちゃんを連れて、トウモロコシを届けてくれた。親戚の御前崎の農家から頂いたお裾分けと云う。毎年頂いている。えまちゃんは庭でカタツムリを二匹捕まえて、ケースに入れて持って帰った。雷雨につられて、表に出て来たのだろう。外にはダンゴムシが気になるようで、女房と話していた。

まあくんは中学に入り、野球部で背番号をもらったと喜んでいたが、スケボーをしていて、足の腱を痛めてしまったと聞く。治るにどの位係るかしれないが、残念なことである。張り切っていただけに、本人が一番残念がっているに違いない。

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「水濃徃方」の解読を続ける。

また、手代の上に置いて、伴頭、支配(しはい)なんど云うべき者は、よく人を取り立て、己れが才智に誇らず、心広き者あらばさせる。能無しと見ゆる者にても、人を引き廻わす器(うつわ)なりと知りて、申しつくべし。さて、主人たらん者は、骨折り事も家僕(かぼく)と同じく身を動かし、休息し、また酒食などある時も、家僕と同じく楽しみて、我が子なりとも衣食に隔てなすべからず。これ、武家と違う所ある教えなり。常に人を敬い、身をへり下り、夢にも家業を忘るべからず。只、人の長ぜる所をとりて、その短(たん)をとがめざる時は、よき家僕多く付きて、萬(よろず)の事、心ゆくものなり。
※ 支配(しはい)➜ 支配人の略。
※ 家僕(かぼく)➜ 家の雑用をするために雇われる男。下男。
※ 心行く(こころゆく)➜ 満足する。気持ちがよい。気が晴れる。

仮令(たとい)千金の富ありても、奢(おご)りの心一と度兆(きざ)さば、朝日の前の霜のごとく、金銀家蔵、一時(いっとき)に消失すると知るべし。この外の事は、家業に深く思い入れたる人には、おのずから商神(あきないがみ)の乗り移りて、教え給うなり。努々(ゆめゆめ)疑うべからず。これ大福帳の心なるべし。
 水能行邊巻之五 大尾(たいび)
※ 商神(あきないがみ)➜ 商売守護の神の総称。京都市伏見の稲荷神や、兵庫県西宮のえびす神、島根県出雲の大黒神などが、多くの信仰を集めた。
※ 努々(ゆめゆめ)➜(あとに禁止を表す語を伴って)決して。断じて。
※ 大尾(れい)➜ まったくの終わり。最後。終局。結末。
(「水濃徃方」おわり)

読書:「歴史のくずかご とっておき百話」 半藤一利 著
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「水濃徃方」の解読 76


(裏の畑のボタンクサギ )

女房はワクチンを打った腕が痛くて上に上がらないという。詳しく聞けば、じっとしていれば、痛みはないが、動かしたり触ったりすると痛いという。自分も二日ぐらいは痛かったが、自然に治ったから我慢するしかないと話す。発熱はないようだから心配は無用だろう。

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「水濃徃方」の解読を続ける。

その中に、遠ざけて召し仕うまじきものは、塵ひとつにても、筋なきものを身に着けて、したり顔に思える者。恥を知らざる者。言葉多く、身に面(おもて)麗しくし、人の気に合わさんとて、追従(ついしょう)する者。余りに大酒をし、醉狂(すいきょう)して闘争を好む者。博奕(ばくち)にふけりて身を忘るゝ者。好色深きもの。常に言葉の違う者。是らの人はその始め、よく試(ため)して、堅く召し仕うべからず。
※ 筋ない(すじない)➜ 筋が通らない。見当はずれである。また、思慮分別に欠ける。
※ したり顔(したりがお)➜ してやったという顔つき。得意そうな顔。自慢そうな顔。
※ 追従(ついしょう)➜ 他人の気に入るような言動をすること。こびへつらうこと。
※ 醉狂(すいきょう)➜ 酒に酔ってとりみだすこと。

商人の家にて、才能して、持てはやすべき人は、第一に、心偽りなき者。柔和にて、笑皃(えがお)よき者。物の変を知りて、売買の時を過(あやま)たず、心聡き者。主人にても、過ちある事は、憚(はばか)りなく云う者。物よく書き、もの地算(じさん)、達者なるもの。骨を惜(お)しまで、働(はたら)く者。使いに遣りて早く帰る者。酒呑ぬもの。女色に遠き者。心剛(ごう)にて、云い難き事をも能く云うもの。倹素(けんそ)にて、勘弁(かんべん)深き者。是らの内、一色、生れつきたらんも、重宝の人なるべし。
※ 地算(じさん)➜ 基礎的な算術。足し算と引き算。加減算。
※ 倹素(けんそ)➜ むだな費用を節約して、飾らないこと。倹約で質素なこと。
※ 勘弁(かんべん)➜ 物事をうまくやりくりすること。とくに経済的な面でのやりくり算段や計算についていう。
(「水濃徃方」つづく)
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「水濃徃方」の解読 75


(ワクチン接種会場そばのノウゼンカズラ)

夕方、女房の第1回目のワクチン接種に付いて行った。帰宅後、2回目は来月13日に予約できた。これで夫婦ともにワクチン接種の目途が立った。その頃には、ワクチン接種が進んで、陽性の発生が激減することを期待したい。そして、オリンピックだ。人生を掛けて、オリンピック出場までこぎつけた選手たちに、是非ともオリンピックの場を残して上げてほしい。どうせ観戦はテレビだから、無観客だろうが、観客制限があろうが構わない。

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「水濃徃方」の解読を続ける。

人の生れつき、様々にて、心短く腹悪(あ)しきものは、主人に対しても、怒(いか)れる色を表わし、無礼の詞(ことば)をも云う。また生れつき、ぬるく遅き者は、万ず云う甲斐なく、心に叶わざる事、多かるべし。斯様(こうよう)の者も、さるべきよし有りてこそ、家の内の者とはなりたるらめ
※ 生れつき(うまれつき)➜ 生まれたときから備わっていること。 また生まれたときから、ある性格、能力などを持ち続けていること。
※ 斯様(こうよう)➜ このよう。かよう。
※ らめ ➜(現在推量の助動詞「らむ」の已然形。)だろう。

追出したらんも不便(ふびん)の業(わざ)なりと思い取りて、様々に(すか)て、何とぞ、世を渡る活計(たつき)をも知らせて、しかな上、凍(こご)ゆる苦し
みをも免れねと、深く憐(あわれ)みて云い教えるを、人、面倒をみるとは云うなり。この心を大きに用うれば、仁とも申し侍るべし。仏の大慈大悲とても、この理(ことわ)りの外、あるべからず。
※ 賺す(すかす)➜ 相手をうまくその気にさせる。おだてる。
※ 活計(たずき)➜ 生活の手段。生計。
※ しかな ➜ 貧窮するさま。
※ 大慈大悲(たいじたいひ)➜ 広大無辺な仏の慈悲のこと。大慈悲。
(「水濃徃方」つづく)

読書:「三谷幸喜のありふれた生活 16予測不能」 三谷幸喜 著
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「水濃徃方」の解読 74


(庭のサフランモドキ )

午後、座敷で、ゆっくりと昼寝がてら、時代小説を読んでいた。今の季節暑くもなく、気持ちのよい気候で、一冊読んでしまった。

昨日、今日と庭に植木屋さんが入った。植木屋さんもかなり高齢だが、身のこなしがすごいと、女房が驚いていた。ワクチンは一回目を打ち、二回目を待っている所だと聞いた。

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「水濃徃方」の解読を続ける。

   亀山丈人(きさんじょうじん)大福帳説
大福とは福分(ふくぶん)の至りて大きなるを申し侍(はべ)るなり。福分という事をば、世の人多くは、金銀を貯えたる人をのみ云うと思える事、愚かなる事なり。福はなり。倆とは百順の名なりと云いて、家の内にあり。ある人、上は親子、娵舅(よめしゅうと)、兄弟、下は召し仕う男女までも、節だちたる事なく、思い合いて、睦ましきを、和順とも和睦とも云いて、福分の、至って大きなる事にて侍り。
※ 大福(だいふく)➜大きな福運。非常に富んで運のよいこと。
※ 福分(ふくぶん)➜ 運のよい生まれつき。好運。
※ 倆(りょう)➜ わざ。うでまえ。
※ 百順(ひゃくじゅん)➜ 何でも人に従うこと。
※ 節立つ(ふしだつ)➜ ふしくれだつ。ことばや表現が、とげとげしく、なめらかでない。
※ 和順(わじゅん)➜  気質が穏やかであること。

かくの如くなる家は、おのずから繁昌して、金銀、米銭も乏(とも)しからず、出で来たる理(ことわ)りなれば、誤りて金銀持ちたる人をのみ、福分の人と称し来たれるなり。たとえ金銀は、蔵に満つるばかり多くとも、父子、兄弟、睦まじからず、召し仕う者、常に恨(うら)みを含まんは、金銀却って、不祥(ふしょう)のものとなりて、終には家をも身をも亡ぼしなん。子弟たらん者、この志(こころざし)をよく存知せしめて、僮僕(どうぼく)に情をかけ、よく人の面倒を見届け遣わすべし。
※ 不祥(ふしょう)➜ 不吉であること。また、そのさま。
※ 僮僕(どうぼく)➜ 少年の召使い。男の子のしもべ。
(「水濃徃方」つづく)

読書:「投げ文 知らぬが半兵衛手控帖 2」 藤井邦夫 著
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