平成18年に60歳を迎える。六十と縦に書くと傘に鍋蓋(亠)を載せた形である。で、「かさぶた(六十)日録」
かさぶた日録
「水濃徃方」の解読 65
(散歩道のユリの花)
午前中、金谷宿の総会。午後は、「駿遠の考古学と歴史」受講。
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「水濃徃方」の解読を続ける。
おのれは、今朝家を出る時、飯喰うたるまゝなれば、茶一つと乞うて、何やらん昼餉(ひるげ)喰うて居。長右衛門、不審し、こなた、三十里の道、今朝出て今時とは、と合点せねば、身どもらは常に山中に往来して、薬を採って渡世とすれば、朝宿を出る時、したためを能く致して、一日喰わずに歩く事は常の事にて、折り悪しければ、二日も喰わずに薬をとりて、世の中のせせこましき咄しを聞かず。病も無ければ、行歩(ぎょうぶ)もすこやかに、一日に五十里の道は苦にならずとの物語り云う様、
※ したため ➜ 食事すること。。
※ せせこましい ➜ 考え方や性質などがこせこせして、心にゆとりがないさま。
※ 行歩(ぎょうぶ)➜歩くこと。歩行。
仙人と云うはかゝる類(たぐい)にやと、長右衛門信仰心になって、どうぞ今宵はこの方に一宿し給えと留むれば、最早日も長(たけ)たれば、立ち帰るもいかゞ、ついでながら、江戸拝みたき心もあればと、草鞋(わらじ)解きて泊り、長右衛門と差し向い、何咄しけるか、夜すがら語り明かしぬ。かの山賤(やまがつ)、薬一貼(ちょう)を与え、夫婦服用しける年より、男子出産して、毎年の様に三人まで安産して、夫婦の悦び斜(なな)めならず。それよりは、長右衛門も富士参りながら、年毎に尋ね、山人も年の内には一と月、二た月、長右衛門方に逗留して、懇意大方ならざりけり。
※ 長たる(たけたる)➜ 盛りの時期・状態になる。たけなわになる。
※ 山賤(やまがつ)➜ 山里に住む身分の低い人。
※ 貼(ちょう)➜ 調合して包んだ薬などを数えるのに用いる。服。
※ 斜めならず(ななめならず)➜ 並ひととおりでない。格別だ。
※ 大方(おおかたい)➜ 普通であるさま。一般的なさま。ひととおり。
(「水濃徃方」つづく)
読書:「典雅の闇 御広敷用人 大奥記録 9」 上田秀人 著
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